王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶 作:dwwyakata@2024
凶悪な親衛軍ウォーリアである潰し屋に目をつけられたミラン。
幸い南極では被害はあまり出ません。
此処での撃破を狙います。
此奴は撃破例が極めて少ない危険な敵ですが、だからこそに倒した時は値千金のデータが得られることに成り、他の被害を減らすことが出来るのです。
援軍と合流した支援者第十三艦隊は、620000万隻にまで膨れ上がった。これに対して、増援を加え続けている侵略者の艦隊は、合計で410000隻を少し割り込んでいる。
惑星アラタのある星系は、14の惑星が存在しており、アラタは第二惑星だ。
この星系ではアラタの内側に一つしか惑星が存在せず、岩石惑星とガス惑星複数がその外側に展開しており。
しかもそのうち二つは連星になっている。
星系としてはかなりの変わり種である。
現在半数の惑星を支援者が奪還したが、逆に言うとまだ半数は侵略者の手の内にあり。アラタでは係争が続いている。
いずれにしても、戦況は良いとは言えない。
支援者の暗黙のルールとして、あらゆる知的生命体は守らなければならない。他の生命体も可能な限り守る。
これがある。
枷にはなる。
知的生命体の中には身勝手な者もいるし。
何があっても戦わなかったり。恩を仇で返すような輩も散々存在しているからである。
だが、手を差し伸べることで。
支援者は勢力を増してきた。
六つある支援者の主要種族だけではなく、様々な種族が協力して。ある者は戦場に立ち。ある者は技術を開発してくれている。
これが「至高存在」を自称する「指導者」が支配だけをしている侵略者とは違う強みである。
マーザン中将は連日の激しい乱戦を指揮しながら、部下の報告も聞く。
親衛軍ウォーリアを退け続けているエースが出ているという話は、マーザン中将も聞いていた。
今まで対応事例が存在しない「潰し屋」を単騎で退けたウォーリア乗りが出たと聞くと、少しだけ疲れも和らぐ。
「新たの民はひょっとして戦士としての適性が高いのか」
「まだ調査中です。 遺伝子データを回収して調査中なのですが、能力だけを見ると其処まで突出して高いわけではない、筈なのですが」
「何かしら特殊な能力を持っている可能性がある。 それを考えて、データを常に調べてほしい」
「確かに親衛軍に対応できる戦士と言うだけで貴重です。 しかし、惑星アラタでの戦闘データを見る限り、今話題になっているミラン中尉だけが特別なように思えるのですが……」
勿論その可能性はある。
いずれにしてもデータはあればあるほどいい。
部下に情報収集を命じると、作戦指揮に戻る。
前線に面倒なのが出てきているのだ。
「親衛軍戦闘機確認!」
「また出てきたか……」
「飽和攻撃で対処しろ! 戦闘機一個中隊がいると思え! 間違っても絶対にドッグファイトを挑むなよ!」
戦闘機部隊に指示が飛ぶ。
現在の宇宙での戦闘は、ある程度パターンが決まっている。
まず距離が開いている場合は、艦艇同士の砲撃戦から開始される。
レーザーや硬X線などの光速で飛ぶ兵器、更には亜光速ミサイルなどが主体になるが、相手の行動を封じるためにばらまくレールキャノンも戦闘では飛び交う。それらを様々な対抗手段で防ぎながら、ある一定まで距離が詰まると、まず戦闘機隊が出る。
戦闘機隊は制空権……宇宙の場合は制宙権だが。ともかくそれを制圧するべく動く。宇宙では細かい動きをするウォーリアよりも、直線的に高速で飛び交う戦闘機隊が、中距離戦闘の王者だ。
そして戦闘機隊と連携しながら戦闘を進め、敵と距離が近くなってくると、攻撃機が出て。
更には戦闘機と連携しながら、ウォーリアが出る。
ウォーリアは戦艦が近づいてからのゼロ距離戦闘で力を発揮する兵器で。それは相手がこちらを識別して、動きが鈍ることも理由になる。
戦闘機もそうだが、侵略者から奪い、リバースエンジニアリングした兵器を、支援者も用いている。
それによって相手の自動兵器は反応が遅れる。
格闘戦になるとウォーリアは真価を発揮できるが。
しかし艦と距離が離れている場合は、いい的になってしまう。特にミサイルに狙われると、ほぼ助からない。
このため、航空母艦では、まず戦闘機隊を出し。
多数のドローンを展開して。
それから、ウォーリアが出るのが普通だ。
その間も主砲やミサイルが飛び交っているわけで。戦場における一戦闘単位は基本的にはそれほど重視はされないのだが。
ただ親衛軍は別だ。
そして現在、このアラタ星系では、この間出現した潰し屋も含めて、四体目の親衛軍が姿を見せた。
双方100隻を超える艦隊がぶつかり合う戦闘になると、親衛軍が十体くらい出張ってくることはあるのだが。
今回の戦闘では、合計して100万隻ちょっと程度である。
この規模で四体の親衛軍は多い。
ましてや地上に二体。
砲艦乗りの親衛軍である狙撃手に至っては、砲艦で地上に潜り込んで、ズヴァールラ提督の艦隊と交戦までした。
それを考えると、やはり敵の行動はおかしい。
親衛軍戦闘機に、雨あられと攻撃を浴びせかけ、とにかく近づかせない。しかしそれでも、数機の戦闘機が瞬く間に落とされる。
動きがおかしすぎる。
勿論強力なカスタム機を用いているのは分かるが。
それでも連日の被害に、艦隊では頭を抱えている有様だ。
「主砲準備」
「旗艦の主砲をですか」
「親衛軍は極めて厄介だ。 消し飛ばす」
「分かりました。 味方とデータリンク。 斜線上から離れるように指示を出します」
十万人以上のクルーが乗り込む全長10㎞を超える巨大戦艦である旗艦は、当然強力な主砲とシールドを備えている。
侵略者側の旗艦は、現在惑星外縁に存在していて、仕掛けてくる様子がない。
しかも、あいつを落としたところで、戦闘がすぐに終わるかというと、それは否だ。
今の時代、六期七期と、同一の星系で戦闘が続くことは多く。
そういった場合には、戦後のデブリ処理で皆相当に苦労するのだ。
ともかく、主砲をチャージ。
味方の砲艦が親衛軍戦闘機に爆沈させられる。
火力も爆撃機並みか。
やりたい放題をしおって。
ぼやきながら、主砲を斉射の指示を出す。
主砲が投下される。
戦艦主砲は何種類かから切り替えられるのだが、今回は硬X線ビーム砲だ。破壊力は折り紙付きで、斜線上にいる敵艦隊を100隻以上、盾艦の防御ごと貫通していた。
更には親衛軍戦闘機も、如何に逃れようと、攻撃範囲が広い。
如何にカスタム機であろうと、逃れることは不可能だ。
消し飛ぶ。
「親衛軍戦闘機、撃墜確認!」
「よし。 全戦線を前進させろ。 今日中に第四惑星の衛星軌道を抑える。 新たの民を始め、生物が侵略者以外いない星だ。 降伏勧告をした後は、容赦なく徹底的に衛星軌道上から叩き潰せ」
マーザン中将はそれだけ指示を出すと、タブレットを取り出して。そこから栄養剤を出して飲み下す。
どうしても消耗が激しくてうんざりするが。
常にクリアな頭を保つのが作戦指揮官の義務だ。
栄養剤を飲み下すと、作戦指揮に戻る。
今日も、戦闘は苛烈なまま続きそうだ。
戦況を示す図が、まるで軟体生物のように動き続けていた。
大量のワーカーが来る。
やはりミランのいる基地に明らかに集中的に狙いを定めている。今日はイーターもいるようだ。
「イーターの数は少ないが、それでも気をつけてほしい。 出来るだけ急いで落としてくれ」
「了解」
展開する味方の後方から移動して。
ドローンにかかりっきりになっているイーターの位置を確認。
雪原をうまく利用して遮蔽を作りながら、射撃。
パルスレーザーのマガジンを使い切る勢いで火力を投射し、イーターを粉砕する。爆発したイーター。
他のイーターが狙いに来ようとするが、即座にドローンが上空から襲いかかり。それに対応するためにそちらに向く。
あくまでメインは対空兵器なのだ。
対空兵器を水平射撃で用いることもあるらしいが、それは本来の使い方じゃない。ミランは移動を続け、次を破壊。
羽を展開して、エネルギーを回復。
三機目に掛かる。
「毎日毎日仕掛けてきやがって……!」
「エースのおかげで被害が少ないのが救いだが、どうせ潰し屋がまた来るんだろ」
「冗談じゃねえよ」
「お前達、集中しろ。 ワーカーだけなら良いが、ブレイカーが出たら洒落にならないぞ」
それで皆黙る。
前職の隊長がブレイカーに粉みじんにされたことを思い出したのかも知れない。
最後のイーターが、ドローンの飽和攻撃を対処できず。
爆弾を抱えたドローンの特攻で、粉みじんに砕けていた。
展開地点を変更。
以降は味方の支援に入る。
問題は親衛軍だ。
あの潰し屋は、今の時点で目撃報告が来ていないようだ。破壊された親衛軍ウォーリアの再構築に手間取っている、というのは楽観だ。
ただ、あの使っていた槌。
下手をするとあのカスタムされたウォーリアよりも高コストなのではないかとさえ思えたが。
下がりながら、ワーカーを始末していく。ドローンは自爆攻撃から、ワーカーの監視に任務を移す。
ドローンが送ってくる情報を横目に、味方の支援をしながらミランも下がる。
ワーカー相手に油断は許されない。
集られたらひとたまりもないのは今も同じなのだ。
一瞬、油断しただけでミンチにされるのだから。
それでもワーカーを掃射砲の範囲に引きずり込み、駆逐することに成功。これで一旦は可とする。
ドックに皆が戻る。
最後尾で敵を監視しながら、ミランも戻ると。
風呂が開いていると聞いて、入らせて貰う。
新たの民も入浴の習慣はある。
ただそれほど頻繁ではない。
これはそもそも体臭がコミュニケーションの一つとなっていたからだ。相手の臭いで相手の状態を確認する。それは新たの民も、多くの動物と同じようにやっていた。
支援者が様々なツールを持ち込んだのもあるが、今では新たの民以外に、多数の支援者が来ている。
それもあって、強い臭いはこのまれないことも多い。
入浴して臭いを落とすのはあまり気が進まないのだが。
それでもやっておかなければならなかった。
風呂は嫌いだが、仕方がない。
上がってそれで、寝床で丸くなる。
ハコトが声を掛けてきた。
「ミラン中尉」
「何かありましたか」
「問題が起きたわけではないんですが、今後の希望はありますか? 戦果を挙げているので、何かカスタムでの武装が追加できるかもという話のようです」
「そうですね、現時点ではもっと速度を上げたいですが、それも少しずつですね。 シミュレーションで試してみても、いきなり速度が上がりすぎても対応できませんので」
わかりましたと、ハコトが頭を下げて。
ぱたぱたと走って行った。
あの子がどんな用途で侵略者に作られ、使われていたかと思うと反吐が出るが。
ともかくとして、今は不満もなさそうだ。
ロボットに不満も何もないという考えも出来るが。
ミランはそこまで割り切っては考えられなかった。
丸まって休んで、それで起き出す。
なんだか大きな声のが騒いでいる。
巨大な口が歩いている、という風情の支援者がいる。かなり変わった姿をしている。初めて見る種族だ。
カメイラ大佐がいるので、聞いてみる。
「あちらはどなたですか」
「ああ、上層部からの査察に来たラネル少佐だ。 いわゆる憲兵だよ」
「……」
憲兵か。
軍内部で警察みたいな事をする仕事だ、と聞くが。
そもそも軍が存在しないも同然だった新たの民である。
一応学習は受けているか、そんなものかとしか言えない。
巨大な口がそのまま歩いている風情のラネル少佐は、体色もドス赤くて、ちょっと独特の姿だ。口に並んでいる臼歯も、見ていて恐怖感があるかも知れない。
実際、あからさまに怖がっている支援者もいるようだ。
姿を怖がっているのか。
憲兵を嫌がっているのかまでは分からないが。
「おお! 貴殿がミラン中尉だな!」
「よろしくお願いします」
「うむ、うむ!」
なんだか上機嫌で、こちらを見つけたラネル少佐が来る。巨大な口に、無数の足があって、それがせわしなくちょこちょこと動いてくる。
そして口の中から、長い何かの器官が伸びてきた。
それを握るのが友好の証であるらしい。
ミランは貰っている携帯端末の「コミュニケーション支援ツール」の指示に従って、その長い器官を握っていた。
それにしても、声がとても大きいな。
「戦闘記録は見せて貰った! まさかあの潰し屋を単騎で撃退するとは! 快挙だよ快挙!」
「ありがとうございます。 ただ単騎ではなく、味方支援と連携して、時間稼ぎをしただけです」
「そうかそうか。 でも白い悪魔とは互角以上に渡り合ったようではないか」
「白い悪魔? ああ、白い親衛軍ですか。 あれも単騎で倒したわけではありません」
正直に事実を言うと。ラネル少佐は、謙虚で結構とゲラゲラ笑った。そうであるらしい。とにかく声が大きくて、眉をひそめてしまう。
コミュニケーション支援ツールは、好意の表れだと言っているので、素直に対応するとする。
コレのおかげで、種族同士の摩擦が減っているのも事実だし。
ミランも随分助かっているのだ。
「君の戦闘データをもっと取りたい。 其処でだ。 親衛軍との戦闘をもっと積極的にやってくれるかね」
「向こうから仕掛けてくるので、敗れるまでは嫌でもデータを多数取ることになると思いますが」
「そうかそうか」
警報。
皆黙る中、カメイラ大佐が来る。
そして、まずいと言った。
「潰し屋だ。 またあの槌を手にこの基地に迫っている。 相当数の部隊が随伴しているのも同じだ。 ミラン中尉、出撃してほしい」
「来ましたか。 支援をお願いします」
「そうかそうか。 間近で戦闘を見せて貰うよ」
「いえ、憲兵どのはすぐに退避を。 潰し屋は基地ごと潰しに来ます。 前回はミラン中尉の奮戦で撃退しましたが、ミラン中尉の実力でも、ウォーリアの両腕を失うほどでしたので」
そう言われて、そうかねと残念そうにラネル少佐が下がるが。
これはどうやら厄介払いだったらしい。
畑違いの憲兵に口出しされるのは嫌だったのだろう。ミランはそういうのはよそでやってほしいと思ったが。
ウォーリア二型に乗り込む。
追加でいくつか改良をして貰った。
ハコトから説明を聞く。
少し動かしてみて、まあ問題はなさそうだ。つなぎを着ているハコトに、礼を言う。そして、基地を出た。
味方部隊が、こちらに向かっている。
敵後衛に既に食いついたようだ。
だが、あの潰し屋は、恐らくはそのための餌としての随伴部隊も用意していると見て良いだろう。
それだけじゃない。
「ワーカー接近! ブレイカーもいます!」
「……潰し屋との接敵予想時間は分かりますか」
「およそ17分後!」
「それまでにブレイカーを潰します。 支援、お願いします」
ブレイカーがいると、通常のウォーリア隊では対処できないだろう。
既に空中でドローン部隊が展開していて、相手のスウォームに備えているが。ミランは長槍を手に、真っ先に敵ワーカーに突っ込む。
スピード勝負だ。
ブレイカーにたどり着くまで、ワーカーを切って切って斬り伏せる。エネルギー残量を見ながら、一撃で仕留めるべく急ぐ。
見えてきた。
ブレイカーがドリルを威圧的に回転させながら、こちらに迫ってきている。あれ一機だけではないな。
そう判断した瞬間、横っ飛び。
下から、凄まじい勢いでブレイカーが飛び出してくるが。
攻撃の瞬間こそ、最大の隙が出来る。
ワーカーが飛びかかってくるが、それはまとめて後続のウォーリアが射撃して射すくめてくれる。
取りこぼしは、ドローンが自爆特攻して始末してくれた。
此処からだ。
スローモーションで動く全ての中。ミランは、紙一重で回避したブレイカーの横っ腹に、長槍を貫き通す。
そして、引き抜く。
ブレイカーが火花を散らしながら、着地と同時に、痙攣するように震えた。ダメージ甚大。
更にもう一機が突貫してくる。
凄まじい速度だ。
だが。
追加武装。
スラスターを全部フルパワーで噴かし、前回戦闘よりも速度を上げて、突撃を回避。それでもかわしきれず、装甲を擦って火花が散る。
擦るだけで、機体が激しく揺れる。
それでも歯を食いしばって耐えて、そのまま下から長槍で抉り挙げる。
両断されたブレイカーが、機能停止状態のもう一機に突っ込み。
ともに爆発四散していた。
「ブレイカーを二機撃破!」
「おおっ! 素晴らしい! 戦闘データはとれたかな!?」
「ラネル少佐、今は戦闘中です。 お静かに」
「ああ、そうだったな。 すまなかった、すまなかった」
いちいち声が大きいな。
下がりながら、ダメージの確認。
エネルギーの残量もそうだが、今ので左腕にダメージが出ている。戻って修理している時間はないな。
これでやるしかない。
突貫してきたウォーリア隊にワーカーを任せつつ下がる。其処に、スウォームが姿を見せる。
数は前回以上に多い。
ただし、既にブレイカーは倒した。
嫌な予感もしない。
恐らく、今のでブレイカーは打ち止めだ。
「戦闘機隊、現着! スウォームどもをたたき落とす!」
「相手にはあの潰し屋が来る! くれぐれも気をつけてくれ!」
「了解! 任せたぞエース! 俺たちが空はどうにかする!」
「任されました」
とはいってもだ。
一旦乱戦の中から逃れて、回復を開始。激しい乱戦をする味方から距離を取りつつ、ワーカーをパルスレーザーで撃破して支援。
地上空中で入り乱れての乱戦だが。
味方はやや有利にやれている、と見て良いだろう。
問題はこの後だ。
エネルギー残量を保ちながら待っていると、いきなりそれが来た。
ワーカーだ。
それがとんでもない速度で飛んできた。回避しつつ、長槍で両断する。擦った。それだけで、また機体にダメージが入る。
ワーカーがまた飛んできた。
今度はさっきより回避が早く、間に合う。続けて飛んできたのはスウォームである。それも回避すると、真上に殺気。
着地。
辺りが吹っ飛ばされていた。
雪の中で、一対の目が威圧的に光る。
潰し屋だ。
機体は万全じゃない。それに、潰し屋が手にしている槌も、更に改良が加えられているようだった。
「肉。 今度こそ潰す」
「貴方も肉だ。 いや、爆発物だったな」
「黙れ。 俺の許可なく口を開くな」
「嫌に決まっているだろう。 お前なんかの命令を誰が聞くか。 ましてや喋る権利なんて誰にだってある。 お前の敬愛する指導者がおかしいんだ」
頭に来たが。それはそれで、頭は冷静に回っている。
突然、超加速で突っ込んでくる潰し屋。まだ手の内は見せない。下がりつつ、相手の槌の動きを良く見る。
見た。
スラスター全開。
一瞬の差で回避。
以前とは、槌から出る謎の斬撃の軌道が違う。雪原がばっさりと切り裂かれていた。そして、機体もまたかすめた。肩口がやられている。火花が散っているが、致命傷じゃない。
「またよけやがったな、思考する能力なんかない肉の分際で」
「思考する能力がないのはお前だ。 指導者のいいなりの爆発物」
「指導者様を二度も馬鹿にしたな……死ね! 死ね死ね死ねっ!」
「いやだね。 何度だって馬鹿にしてやる。 お前の指導者はただの屑だ」
もう此奴にまともに取り合うつもりはない。
前の親衛軍も大概だったが、此奴は素で色々と駄目だ。まったく何一つとして理解できる点がないのは仕方がないが。
この、相手に、自分が気にくわないから死ねと言ってくる精神構造は。理解できない以前に許してはいけない。
そんな思想を侵略者全体が持っているのだとしたら。
此処だけではなく、侵略者に脅かされた種族全てが、怒りを抱くのも納得できると言える。
立て続けに、二回槌が振るわれる。
槌にもブースターがついていて、一気に加速。だがその動きは前に見た。
潰し屋が振るってくる不可解な攻撃が、雪原を襲ってくるが。一度目は脇を抉られ。二度目は左足を抉られたが、少しずつ傷が浅くなっている。
三度目。
槌がいきなり槍に変形して、真上から襲ってくる。
しかしミランはむしろ前に出ると、槍を跳ね上げていた。
ばきりと音がする。
やはりな。
変形ギミックばかりつけているからだ。
鈍器は元々接近戦では向いていない。ミラン達が等身大で戦うなら意味があるかもしれないが。
質量兵器は、例えば質量弾の拳銃だが。とんでもない速度まで加速して、それでやっと殺傷力が出る。
如何にブースターで加速しようと槌の威力は知れているし。
変形ギミックをつければ、硬度は落ちるばかりだ。
そして懐に入ると、体当たりを仕掛ける。
ごつい機体だが、意外とパワーはどうということもない。むしろこいつ、この槌を動かすことに機体のスペックを使っている。
突貫。
明らかに蹈鞴を踏んだ潰し屋が、槌にまた切り替えて振るおうとするが、その間に接近。
槌を長槍で押さえ込みながら、蹴りを思い切りたたき込む。
吹っ飛んだ潰し屋が、喚き散らす。
「殺す! なんでなんで! 俺は何もかも捧げているんだ! たかが肉ごとき、なんで!」
「何もかも捧げたら、何をしてもいいという理屈がどうして通る。 そんなことを言っているからお前は負けるんだ、爆発物」
「ぴぎゃあああああああっ!」
喚き散らす潰し屋。
実はミランのウォーリア二型も相当なダメージを受けていて、必ずしも有利ではないのだが。
初見殺しに対処でき。
あの槌が実のところ打撃武器としては見せかけだけだと言うこと。
更にごつい機体も、槌を振るうことが主体であること。
これを見抜いた上。
潰し屋が明確に冷静さを失った今、好機だ。
突貫。
潰し屋が、槌を振るおうとして、飛び退く。飛び退きながら、槌を振るおうとするが、真上に全力で飛ぶ。
凄まじい斬撃が、ミラン機の腹の辺りを抉るところだった。
そうだろうな。
明らかに劣勢になった今、コアを狙ってくるよな。
ミランとしても、この外道には、もはや怒りしかない。
「畜生! これだけ肉体改造して何もかも捧げているんだぞ! もっとだ! もっと力をよこせ! このガラクタが!」
「一番のガラクタはそのウォーリアじゃない。 お前だ」
「黙れこの肉!」
喚いた潰し屋が突貫してくる。
エネルギー残量わずか。
槌を変形させ。
全てを刃にして、両断しに掛かってくるが。敢えてこれも前に出て、長槍ではじき返す。
長槍に限界が来て、へし折れる。
それだけじゃない。
相手の剣化した槌も、その瞬間砕けていた。
だが、それでも相手は重度のカスタムをしている機体。エネルギー残量は多く、それで競り勝ってくる。
猛烈な回し蹴りを食らって、吹っ飛ぶ。
雪原にたたきつけられたミラン機。
凄まじい衝撃に、意識が飛びそうになるが。喚き散らしながら真上から襲いかかってくる潰し屋が。
その瞬間、レールキャノンの十字砲火をもろに食らっていた。
下手なダンスを空中で踊る潰し屋の親衛軍ウォーリア。
全身が見る間にバラバラになっていく。
相手がどう動くか、完全に見切ったミランが、指示を事前に出していたのだ。
手足を吹き飛ばされた親衛軍ウォーリアが、戦闘機になって逃げようとした瞬間。飛来した戦闘機が、荷電粒子砲をたたき込んでいた。
絶叫が響く。
潰し屋が乗っていたコアが、その瞬間爆発四散し吹き飛んでいた。完全破壊。撃墜である。
呼吸を整える。
「獣を罠に掛ける動き、見事! 流石だ」
「自分もボロボロにやられましたけどね。 それに相手が、初見殺し主体で、それに頭も悪かったから勝てただけです」
「……そうだな」
これから、潰し屋に対する戦術を分析できると思う。
奴が取り落とした槌のデータは、今回は機体が爆発はしたものの。槌そのものは比較的無事だ。
あの謎の遠距離攻撃、恐らく角度も変えられる。
接近戦は自殺行為だと思われていたが、違う。威圧的な装備と姿でそう思わせていただけで、むしろ撃たれ弱いし接近戦こそ正解だったのだ。
キャリアが来て、回収してくれる。
機体はボロボロ。
またフルチューンが必要だそうである。
機体から降りると、全身が痛い。
格闘戦をバリバリにやったのである。しかもその前はブレイカーと二連戦。相手としては、ブレイカーと同時に相手をさせるつもりだったのかも知れない。だが、こちらが大胆に打って出て、各個撃破を決めた。
指導者とやらが作戦を指揮していたのだとすると。
はっきりいって、其処まで凄くはないのではないか。そうとさえ思う。ともかく、医務室で診察を受ける。
フィードバックダメージが深刻だから、今日は休むように言われた。
味方がまだ戦っていると言うが。
勝てるから心配するなと医師に言われて。後は黙るしかなかった。
ハコトが来て、説明してくれる。
「潰し屋の親衛軍ウォーリアのデータをまた詳細にとれました。 あいつとの戦闘で本当に大きな被害がウォーリア隊に出ていたんです。 今後は通常機でも対策できるかもしれません」
「楽観的過ぎます。 今回だって、かなりギリギリの勝負でした」
「ですが、鮮やかな勝利でした」
「……」
褒めてくれるのは嬉しいが。
其処まで褒められるほどの事をしたという自覚はない。むしろもっと早く倒せていれば、とさえ思う。
後は回復促進用のカプセルポッドに入る。
これは新たの民用に調整されていて、寝ているだけで相当なリラックス効果がある。大気の状態も回復に最適化されており、また同時に回復薬を呼吸するだけで吸い込んで。回復を更に加速できる。
皆は勝ってくれるはずだ。
そう信じて、今は眠る。
まだ、親衛軍には単独では勝てない。
それでも今日は、相手をこちらのペースに巻き込むことが出来た。それで被害を減らせるなら、言うことなど何もなかった。
※ウォーリアの対Gシステム
基本的に人型ロボットに人間が乗る場合、問題なのは対Gです。18mとかある機体が歩いた場合、それだけで電車にはねられるくらいのダメージが人体に来ますからね。
ウォーリアに装備されていた対Gシステムは、重力操作などの複数のシステムを用いて、本来かかるGを十分の一から数十分の一にまで落とすものとなっています。
精密機器であり、ウォーリアのコアですね。
侵略者はこれを採算度外視で開発して、ウォーリアを実用兵器にまで昇華させたのです。
そのシステムはリバースエンジニアリングされて、支援者でも利用しています。
基本的にカスタム機ほどこの対G性能が高く、特に通常のウォーリアの百数十機分にも達するコストを費やしている強力な親衛軍ウォーリアは、1000Gを耐えられるコアを装備しているものもいるとか。
本作にどういった要素がほしいですか。要望があれば遠慮なくどうぞ。
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詳細なマシンデザイン
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圧倒的な武力による蹂躙
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緻密な人間ドラマ
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種族や文明の描写
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近接した力量のライバルとの死闘