王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶 作:dwwyakata@2024
マーザン中将は報告を受ける。
今回この星系に来た敵艦隊が、面倒なものを牽引してきたことが確認されたという。乱戦が一段落して、どうにか戦線を再構築したさなかだ。いやでも報告は聞かなければならない。
「移動式惑星です。 岩石惑星で住民はいませんが、全てが資源として活用されるものになっています」
「要するに、この星系……いや恐らくだが惑星アラタを、何が何でも攻略するための前線基地か」
「恐らくは。 揚陸艦だけではなく、今後は工場ユニットを弾道弾として、惑星アラタに撃ち込もうとしてくる可能性があります」
「侵略者の指導者は何を考えている」
マーザン中将の問いは、半ば自問自答だ。
指導者の思考回路についての研究はいくつかされているが、いずれもが行動を読みづらく、予測は難しいという結論である。
惑星アラタに固執して、それをどうしてでも奪い取ろうというなら、もっと兵力を集めないと無理だし。
既に兵力でも生産力でも逆転している今、侵略者が惑星アラタを奪い取るのは極めて困難だ。
それくらいは計算が出来る筈なのだが。
続報が来る。
持ち込まれた移動式惑星は、いわゆるブラックホール展開装置を用いて。ブラックホールから取り出した資源を固めたものであるようだ。自然に作られる惑星としては構造が複雑すぎる。
ブラックホールは蒸発するものだが、それを利用してブラックホールから物質を取り出す装置は既に500期以上前にどちらの陣営でも実用化されている。
これだけ長期間戦争が続いても、どちらも息切れしない理由だ。
ブラックホールや白色矮星などを資源化することで、兵器の材料には困らないのである。
200期以上前に、銀河系の中枢部分は支援者が勝利して制圧した。
それもあって、資源は支援者の方が豊富。
戦況が味方有利に傾いているのはそれが理由の一つでもあるのだが。
短期的に見て、この戦線は少しまずいかも知れない。
「移動式惑星を兵器として活用してくる可能性は」
「質量兵器として使ってくる可能性はあります。 ただこちらの艦隊規模からして、例えば惑星アラタを狙ってくる場合は、その前に撃沈が可能です」
「そうだな……」
さて、相手が何を狙っているのか。
それを見極めなければならない。
敵が攻勢失敗で疲れて、一度距離を取った今が好機だ。
出来るだけ今のうちに。
相手の狙いを、正確に割り出さなければならなかった。
惑星アラタに落着した工場ユニットの一つ。
その中に格納されていたカプセルが開く。
カプセルに入っているのはクローンの材料だ。ハイコストな親衛軍は、基本的に現地で製造する。
そうでなくても、戦闘で潰れるのだ。
材料を用いて、親衛軍を作る。
今回落着したユニットは、どれも親衛軍の素材を多分に輸送するものだった。
作り上げた親衛軍に対する絶対的な指導者の自信。
それが、この長期的に見てマイナスでしかない作戦を、実施させたのである。
工場に搭載されている端末に、指導者がアクセス。
超光速通信を用いて工場を操作。
やがて、それが作り出されていた。
親衛軍は基本的にどれも指導者が「優れている」と考えた存在だ。能力は当然のこと、顔なども遺伝子操作で指導者好みに変えてある。
このため、全身が筋骨隆々としていながら、顔だけが違和感がある親衛軍も存在しているのだが。
それに対して、疑念を抱くことは侵略者では許されていない。
作り出された親衛軍は、指導者がデザインした軍服を着ると、跪く。
相手がただの端末であっても、指導者がいるのであれば、其処に跪かなければならなかった。
親衛軍NO4_022311。
それが彼の名前だった。
もっとも、親衛軍も含め、既に侵略者には性別はない。元は存在していたのだが。勝手に繁殖すると困るので、指導者が繁殖不可能にした。そのため、今では親衛軍だけではない。侵略者に性別は存在しないに等しい。性欲も全てオミットされていた。代わりに敵への加虐欲に変えられている。
そういったデザインは、指導者が「必要で」「優れた処置」だと考えて、行っているのだった。
「偉大なる指導者様、此処に参上しました」
「うむ。 此処でNO4_009123とNO4_072144が倒された」
「あの二人がですか」
「ああ。 それで貴様を此処で作り出した」
この星はなんとでも収穫したい。
そう指導者が言うと。
親衛軍NO4_022311は、深々と頭を下げていた。
「僕は平和を愛するものです。 指導者様の優しさを妨げるものは、絶対に許すことが出来ません」
「そうかそうか。 素晴らしい考えだ。 戦闘データを送る。 問題になっている肉を潰せ」
「は……」
親衛軍NO4_022311は即座に専用の親衛軍ウォーリアに向かう。
速度、攻撃力、それぞれを武器にしていた前の二人の親衛軍ウォーリアと違って、これはまた別の特徴を持っている。
そして、指導者はこいつなら勝てるだろうとは思っていたが。
まだ布石は練っていた。
今回の作戦で、充分な資材は落着させた。
この星の資源を食い尽くす前に、いくつかやっておくことがある。
調子づいた肉どもを潰すための作戦だ。
各地の戦線で押されている無能どもを処分するのは当然として。
それはそれとして、根本的な対策をする必要があるだろう。
指導者は戦争をしているなどとは思っていない。
全て自分のものなのに、分不相応に肉が逆らっている、くらいにしか考えていないのである。
だから、認識が最初からおかしい。
行動もそれで狂っているし。
その狂った行動を絶対に認めないから、更にどんどんおかしくなっていく。
指導者にとっては宇宙の全てが自分だけのもの。
気にくわないものは全て排除すべき存在。
それが指導者の思考。
行動は、全てその思考に基づくものだった。
(続)
※親衛軍NO4_022311
わざわざ侵略者の指導者が呼び出したこともあり、親衛軍の切り札とも言える強者です。
詳細は今後明らかになります。
ちなみに指導者が資源云々言っているのは「肉」の事ですね。
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