王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶 作:dwwyakata@2024
西大陸での大攻勢をしのぎきったミランは、北極にうつって戦闘をしていました。
北極大陸は惑星アラタの中ではそこまで重要な大陸ではなく、よっつある大陸の中でも最も小さいです。南極に比べると寒さもそこまで厳しくないため、まだ住んでいる新たの民がいます。基地から危なくて外には出られませんが。
戦線整理のため、しばらくは守りの時間です。
最終的な勝利のための守りです。
序、北極の戦い
早朝にミランはたたき起こされる。新たの民の朝は早いが、その基準でもかなりの早い時間である。
ファーガの世話をする者でももう少し遅く起きてくる。
この時間にたたき起こされたと言うことは。
敵襲と言うことだ。
顔を手早くお湯でぬらしたタオルで拭って、目を覚ます。ファーガの栄養液をそのまま飲み干し、さっとトイレにも出向く。
そうしながら、話を聞く。
タータス大佐は、状況を説明してくれる。
「新しく落着した工場ユニットが稼働を開始した。 ワーカーがかなりの数出てきているようだ。 ドローン部隊がその姿を捉えているが、明らかに通常の編成ではない」
「ワーカー以外にもいるということですね」
「うむ。 ブレイカーが三機いる。 その背後に、カッターがいるようだ」
「カッター……」
聞いたことがない相手だ。
映像を出して貰う。
ブレイカーは巨大な戦闘用ドリルを装備している無人兵器だが、こいつは違う。前面に一つ。側面に二つ。
回転式の刃を装備している。
それは長大で、殺傷力も高い。
回転しながら威圧的な音を立て、生半可なウォーリアよりも手強く、間合いも長いようである。
「他の惑星では確認されていた敵の大型兵器だ。 この星でもとうとう出現した、というところだな」
「新型兵器ということですか」
「いや、そういうわけでもない。 出現例が少ない、ということだ。 あの大きさだ。 ブレイカーよりも更に戦闘力が高く、コストが掛かるからそうたくさんは生産できないのだろう」
なるほど。
着替えを終えて、ウォーリア二型に乗り込む。
既に報告してある。
親衛軍ウォーリアとやりあうには推力が不足している。
今後、侵略者が何を考えているかは分からないが、下手をすると親衛軍を複数繰り出してくる可能性もある。
ミランをそれで絶対に殺そうとしてくる、というわけだが。
それを考えると、更に機体の強化がほしい。
機体の馬力を上げる事よりも、コアの対G性能を上げること。
そして速度を上げることが、現在提案している要件だ。
初見殺しの能力を持っていることが多い親衛軍ウォーリアとの戦闘を考えると、初撃はどうしてもよけたいのである。
現時点ではスラスターの追加などで補っているが。
それでもエネルギーの残量にいつも苦労させられている。
親衛軍ウォーリアみたいに、通常機五十機分のコストを、とまでは言わないが。
現状では厳しいし。
このままだといずれは負ける。
ミランだって、いつまでも若いわけじゃない。
この星を奪還するまで何期掛かるかしれたものじゃないし。
奪還した後だって、宇宙軍で戦ってほしいと、声を掛けられるかもしれない。ズヴァールラ提督のようにだ。
戦闘データは毎日提供はしている。
一応それで、親衛軍との戦闘に関する研究は進んではいるようだが。それも絶対ではない。
それに今まで戦ってきた親衛軍ウォーリアは二種だけ。
まだまだ色々な親衛軍ウォーリアがいるということを考えると。
この程度のデータでは足りない。
それが事実だった。
言われたまま、キャリアに乗って戦場に出向く。
かなり大きな砲台が移動している。
移動式掃射砲。
定点目標として狙われやすいが、ワーカーの大軍が出向いてきた時に、たまに投入されるものらしい。
タータス大佐が依頼して、派遣されてきた兵器だそうである。
ちなみに無人兵器だ。
戦場になるのは、雪が溶けかけてきている沼沢地だ。ワーカーの足が鈍ることを期待しての戦場だが。
当然ウォーリアもエネルギーが切れたら、足を取られる可能性が高い。
既に上空にはドローン部隊が展開していて。
敵スウォームを待ち受けていた。
ウォーリア隊が展開。
その中に、黄色い塗装をしている、目立つのがいる。
巨大な武器……刀だったか。そう言われる長刀を手にしていた。それも、機体と同等か、それ以上くらいも長さがある。
「あれはカスタムタイプですか」
「実験的に投入された次世代型だ。 対ワーカー、場合によってはブレイカーとの戦闘も想定している。 十期ほど掛けて計画が練られて、それで少しずつ前線に配備がされている。 もっともマイナーバージョンアップに過ぎないがね」
「……」
ウォーリアは基本的に、マイナーバージョンアップを繰り返していく兵器だ。これは他の兵器類も同じである。
中核になる部分をそうやってマイナーバージョンアップし、それが機能が優れていると判断されれば、それぞれに派生型が出来る。
今ミランが乗っているウォーリア二型も、バージョンアップ型が有用だと考えられたら、機体を改良されるかも知れない。
昔は侵略者の方がこのマイナーバージョンアップは早く、ウォーリアの性能には一日の長があったようだが。
それも最近は逆転し。
少しずつ素の性能で差を縮めつつある。
ちなみに敵通常ウォーリアは、惑星アラタでは確認されていない。
おかしな話で、侵略者は親衛軍ウォーリアを地上戦で用いることはあっても、通常ウォーリアは地上戦には出さず、宇宙主体で使うようだ。
この辺りは、ワーカーに相当する支援者の兵器がいないことも要因かも知れない。ドローンはAIを搭載しており、敵ウォーリアを迅速に識別するため。ワーカーのように反応速度が鈍ったりしないのだ。
「ミラン大尉。 実験機のパイロットも腕が良い人物だが、一応気に掛けてやってくれ。 出来るだけ有用なデータを取りたい」
「分かりました」
「敵接近!」
連絡が来る。
一気に戦場が緊張した。
溶けかけの雪原に、ワーカーが押し寄せてくる。ブレイカーの姿も見えた。地下からの奇襲を仕掛けてくる可能性もある。
三機いるが。
もっといる可能性もある。
沼沢地後方に展開している戦車と自走砲が、攻撃開始。
ワーカーに着弾し始めるが、効果が薄い。
ワーカーの複合装甲は強力だ。
この距離だと、射すくめるのは簡単ではないだろう。
「敵兵力多数! 航空部隊の支援は必須です!」
「分かっている。 しばらくは敵を引きつけろ。 沼沢地にワーカーが入ったら戦闘開始だ」
「了解!」
前衛で佐官が命令を出している。
指揮車両は数両来ているが、それだけ規模が大きい会戦だと言うことだ。
ミランはまずブレイカーを潰す。
最前衛のブレイカーを出来るだけ急いで潰して、それで。
考えているうちに、ワーカーが沼沢地に到着。
ワーカーは重い。
明らかに足を取られて動きが鈍る。其処を、一斉に攻撃が開始されていた。
だが、ワーカーは味方を足場にして、どんどん進んでくる。それぞれが歯車でしかない。無人機とは言え、徹底しすぎている。
戦車部隊も自走砲部隊も攻撃を続けているが、それでも敵は確実に浸透を進めている。
兵士達が生唾を飲み込むのが分かる。
上空では既にスウォームとドローン部隊の交戦が開始されている。イーターもドローン部隊に食いついているようだ。
迫撃砲部隊も攻撃を開始。
その次の瞬間。
いきなり、ブレイカーが突貫してきた。
元々宇宙空間で戦闘することを前提としている兵器だ。ブースターを噴かして、凄まじい勢いで突撃してくる。
三機ともだ。
一機が、逃げ遅れたウォーリアを瞬く間に粉々にして、暴れ狂い始める。
つづけて残り二機も味方陣地に着弾。
それぞれ大暴れを始めていた。
これは大変な戦いになるな。
無言で暴れ狂うブレイカーの背後に回り込む。即時で反応してくる。どうやら相当警戒されているらしい。
だが、それでいい。
相手の旋回速度も侮れないが、突出しているのは救いだ。
イーターにもこっちを狙っているのはいない。
威圧的にドリルを振り回して襲ってくるブレイカーだが、こっちが後ろに回り込むのが早い。
しかも沼沢地だ。
ブレイカーがどうしても動きを鈍らせる。
背中から、刺し貫く。
引き抜いて、爆発するのを見届けると、次に。
そっちも大暴れして、大きな被害が出ていた。戦車隊がパニックになって射撃を浴びせているが。
戦車砲を耐え抜き、更に戦車を瞬く間に粉々に打ち砕いていく。
ブレイカーの破壊力は、基地や大型艦船にダメージを与えるほどのものだ。ウォーリアや戦車では、ひとたまりもない。
だが、サイズ的にはブレイカーも大型には分類されない。駆逐艦などと比べると、ファーガと子虫ほどもサイズ差がある。
強くてもやれるということだ。
血を浴びて狂うように暴れているブレイカーを、横から刺し貫く。一瞬の事だ。景気よく暴れていて、接近するミラン機に気づけていなかったと言うことだ。
二機目、爆発。
最後の三機目。
例の黄色い新鋭機が立ち向かっているが、機体が速すぎて振り回されている。あれはかなりの手練れが乗っているらしいが、調整が不十分だな。急ぐ。振り回され気味であっても、ブレイカーの気は引けているのだ。
それでどれだけ他への被害が減らせるか、分からないのである。
ブレイカーのドリルが、新型機をかすめる。
それだけで、装甲を大きく抉られて、吹っ飛ばされた。
とどめを刺そうと飛びかかるブレイカーだが、頭上からミラン機が襲いかかり。逃げる暇も与えず刺し貫く。
爆発。
これで三機とも始末したが。
既に周囲では、ワーカーとの戦闘が開始されている。
ブレイカーが大暴れして、ワーカーが突入するための時間を作ったのだ。それが意図的か、そうではないかは分からないが。
ワーカーは沼沢地であるので動きは鈍いが。味方を足場にしてどんどんやってくる。そして足場がある地点では、普段とまるで変わらない動きをする。
ウォーリア隊が必死の防戦をしているが。
ミランは無言で下がって、回復に。
三機立て続けにブレイカーを仕留めたのだ。それに後方から、カッターが迫ってきている。
あれは対応が骨だ。
間合いも長いし、どう動くかよく分からないからである。
味方が戦線を下げながら、攻撃を続行。
敵を引きつけていく。
そして、充分なところまで引きつけたところで、移動式掃射砲が攻撃を開始。ワーカーを片っ端から射すくめ始める。
基地に装備されている掃射砲と威力、機能は同じか。
一気にそれで戦況がひっくり返るが。
戦場の規模が規模だ。
それに、このまま敵がやられっぱなしだとは思えない。
ワーカーの一部が、何かしている。
何かを撒いているようだが。
警告が来た。
「沼沢地、温度が下がっています! 全域の温度が、急激に低下! ワーカーが撒いているのは、冷凍液だと思われます!」
「足場を固めるつもりか……」
「他ワーカーの足場になっているワーカーも、冷凍液を撒いている模様です!」
「やはり一筋縄ではいかんな……」
タータス大佐がぼやく。
ミランは回復を終えると、パルスレーザーで味方の支援を開始。前衛に出る。前衛で、突っかかってくるワーカーを斬り伏せながら、ひたすら味方の援護。
開幕ブレイカーの奇襲で被害は出したが、これなら恐らくはどうにかなる。どうにかなると思いたいところだ。
戦場の環境を変えることは、ワーカーはたまにやってくる。
それについては知識があったので、驚くことはない。
タータス大佐がぼやいたのは、味方に警告を促すためである。ワーカーの数が多いし、敵が何かしらの緻密な作戦を立てている可能性もあるから、である。
掃射砲がうなりを上げてワーカーを打ち砕き続けているが。
嫌な予感がする。
上空に、戦闘機隊が到着。
スウォームを蹴散らし始める。
制空権をとれれば、味方は一気に有利になるが。
しかし、その時だった。
戦闘機三機が、瞬く間に翼をえぐり取られる。即座に旋回して、後退を開始。翼を失ってもどうにかなる。
だが、それでも今のはなんだ。
翼だけを的確に狙ってきたように見えたが。
上空に何かいる。
ほどなく、結論が出ていた。
「親衛軍ウォーリアです!」
「!」
「急いで照合しろ」
「はい! ……えっ」
士官が声を上げた瞬間。今度は、何かが飛来して、移動式掃射砲を瞬時に真っ二つにしていた。
タータス大佐が、なんだとと叫ぶ。
更に、上から一方的に攻撃が来る。
戦闘機隊が地上戦用のレーザーを放つが、いずれも回避される。非常に鋭い動きをしているようだ。
「しょ、照合確認! 解体屋です!」
「……っ。 厄介な奴が来たな」
「解体屋ですか」
「そうだ。 ウォーリアの手足や戦闘機の翼をもいでいくことで知られる危険な親衛軍ウォーリアだ。 戦場でそんなことをされれば高確率で死ぬ。 奴はしかもかなり親衛軍ウォーリアの中でも強いことで知られている」
レールキャノンを始め、対空砲が浴びせられるが、余裕を持って親衛軍ウォーリアは回避しているようだ。
こっちを見ているな。
即座に回避。
地面に突き刺さったのは。レーザーの類ではない。
非常に薄く鋭い、何かの刃のようなものだった。しかもブースターがついていて、即座に戻っていく。
「僕は戦いたくないのに。 肉達はどうしていつも抵抗するんだろう。 戦っても苦しいだけだよ。 さっさと解体されて、指導者様の食卓に並ぶことを選んだ方が良いのにね」
いきなりその声が聞こえてきた。
こいつは、まずい。
潰し屋の時とも違う。
なんというか、異常に穏やかで。それでいながら、自分がやっていることになんの疑問も持っていない。
狂信者とかいう連中が支援者の中にもいるらしく。
後方の安全地帯で、好き勝手なことをしている輩がいるそうなのだが。
それの言動に近い。
声に抑揚がなく、まるで相手を諭すかのよう。
それも白い親衛軍ウォーリアよりも、更にそれが極端だ。
完全にいかれている。
新たの民だって、全てが善良なわけではない。
ミランもそれは知っているから。
こういうのがいることは、素直に受け入れることが出来ていた。
「僕のドラゴンキラーをよけるとはやるね。 肉にしては出来るようだ」
「肉肉とうるさい。 それで、戦うというなら相手になるが」
「ははは、僕に肉がかなうわけないだろう。 君は僕の刃を受けて、気づきもしないうちに死ぬという慈悲を受けるべきなんだ」
「そうか、お前とは話すだけ無駄なようだな」
此奴は潰し屋以上に不愉快だ。
そして分かった。
此奴は此奴の親玉の同類だ。その言葉を素直に受け入れているタイプ。潰し屋と同じだが、それ以上に、考える事が出来るのにそれを放棄している。最悪のタイプだと判断して良いだろう。
「まあいい。 今日は様子見だ。 準備をしてから狩りに来るよ」
「逃がすか!」
「待て。 放っておけ」
戦闘機隊が仕掛けようとするが、タータス大佐が待ったを掛ける。
確かにあんなのを相手にしても、無駄に被害が出るだけだ。高笑いをすると、解体屋は戦闘機に形態変化して、飛んで戻っていく。
速度は、生半可な戦闘機よりも速いようだった。
相当に強力なカスタムをしている。
親衛軍ウォーリアの中でも、今までの機体よりも更に強力なカスタムをしているのかも知れなかった。
気を取り直して、敵の迎撃に戻る。
親衛軍ウォーリアがいなくなったことで、味方も調子を取り戻している。
一戦場に限れば。
親衛軍ウォーリアは、確実に強力な制圧力を持っている。
それはまた、事実でもあるのだった。
少しずつこちらの技術が進み、追いつきつつある今でも、だ。
タータス大佐が声を掛けてくる。
「ミラン大尉」
「はい」
「今の奴が使っていた武器。 対応できそうか」
「回避だけなら出来ました。 ただしあいつは、ドラゴン?キラーという装備を多数搭載していたように思います。 あれを多数放って、それで敵を切り刻むのが得意なのかと思います」
問題は多い。
あいつの装備が、あのドラゴンなんとかだけとは限らない。
あの自信満々な様子。更には強力なカスタムをされているウォーリア。まだ隠し球があっても不思議ではない。
それでも、次にまた狙ってくるのは確実だ。
しかもあいつを相手にして引きつけて。ズヴァールラ提督の戦線整理を、手伝わなければならないのだった。
※解体屋
親衛軍ウォーリアです。親衛軍NO4_022311の愛機ですね。
通常のウォーリア百数十機分のコストが掛けられた超ハイコスト機であり、いわゆるフラッグシップ機です。
主な特徴となるのは、「ドラゴンキラー」と言われる独立攻撃ユニットを十二機装備していることです。これは自律稼働する上に強力な刃物であり砲撃機能も有しています。速度も精度もえげつなく、同時に襲いかかるため生半可なウォーリア乗りでは回避すらできません。特に地上戦で出てきた場合、ウォーリアの一部隊が瞬く間に切り裂かれる凶悪装備です。
この機体にはまだ強力な機構が備わっています。それについてはおいおい説明いたします。
本作にどういった要素がほしいですか。要望があれば遠慮なくどうぞ。
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