王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶 作:dwwyakata@2024
愛機の同型機、同僚を餌にしてミランの実力を測った解体屋。
そのクレバーな思考は、他の親衛軍とは一線を画するものです。
それだけの難敵と言うことですね。
親衛軍NO4_022311は、戦場から戻ると、工場で指導者に報告をしていた。
自分と同型機を使った親衛軍NO4_022319を利用して、相手のデータを取得した。その結果、いくつも分かってきたことがある。
指導者に、まずは予定通りに事が進んだことを説明すると。
指導者は不愉快そうに声を荒げていた。
「それはいいとして、あの親衛軍ウォーリアも高コストの兵器だったのだがな。 親衛軍NO4_022319とて、お前と同じように作り出すのは相当なハイコストなのだが」
「分かっております。 しかしながら、今までの戦闘データを見る限り、今回の肉は今までと違うと判断しました。 勿論ただの肉であることに代わりはないのですが、それでも解体には対策が必要です」
「それでどう対策する」
「分析した結果、あれには僕と同じような分析力が備わっています。 元々のスペックに加えて、即座に相手を分析、解析する力。 それが強さの源と言っても良いでしょう」
特に、親衛軍ウォーリアに装備されていた簡易位相変換シールドを打ち破ったあの兵器。今までからくりは解けていなかった事を考えると。
あれを短時間で解析してきた事は、充分な脅威になる。
ひょっとすると、肉どもが作り出した遺伝子改造肉なのかもしれないと、親衛軍NO4_022311は思ったが。
それについては、指導者にはいわない。
同じ事を相手がしていると知ると、指導者は怒る。
そして癇癪に任せて、どれだけ高コストを費やした部下であっても、その場でナノマシンを活性化して焼却する。
十度ほどそれをやられて。
親衛軍NO4_022311は、それを学習していた。
勿論体内にあるナノマシンは極めて高性能で、指導者を見透かすような真似をしても爆発する。
思考すら、常に選んでしなければならないのが難しい。
「たかが肉ごときが、私自慢の精鋭を打ち破ったのは、偶然ではないというのか!」
「必然であったかと」
「おのれ。 どのような詐術を使いおったのか!」
「それはなんとも。 ただ、肉どもはどうも人権の類を重視している節があり、クローンを作ることはあっても、遺伝子改造までする事はあまり例がないようにございます。 つまりあの肉を倒してしまえば、即座に次はないかと」
指導者が大きく舌打ちした。
親衛軍NO4_022311は理解している。
指導者は衰え始めている。
そう考えると即座に爆発してしまうので注意が必要だが。だからそう感じる、くらいしか出来ない。
昔は、あらゆる情報を即座に取り込んで。カウンター兵器を作ったり、兵装の改善をしていた。
だが、あまりにも流れ込んで来る情報量が増えた結果。
指導者も。
指導者が選んだ精鋭達も。
パンクしかけている。
特に親衛軍の面々は、毎回新しい情報を埋め込まれて固定されているが。それらが完全にキャパオーバーを起こしている。
それは悔しいながらも親衛軍NO4_022311も同じだ。
だから古くには、肉どもの新戦術には即座に対応できて。それで被害を減らせていたのだが。
今では新戦術を見ても。
今まで蓄えた経験があまりにも多すぎるために、逆に生かすことが難しくなっている。この辺り、生物としての限界かも知れない。
勿論そうダイレクトに考えると即座に爆発四散だ。
だから、考えを常に工夫しなければならないのだが。
それに指導者はあらゆるセーフティネットを張っているため、どれだけ巧妙に思考し行動しても、絶対に逆らうことは出来ない。
それもまた、事実だった。
「確実に勝つ手段は何かあるか。 申してみよ」
「今まで敗れた面々をまとめてぶつける事が確実かと」
「そのような事を肉相手にしろと言うか!」
「確実な手段であればそれだと愚考いたします」
しばし考えた後、指導者は却下、と言った。
そして、別の親衛軍を作るという。連携はするなとまで釘を刺される。今回得た情報を元に、相性がいい親衛軍を作ってそれで肉を潰すというのだ。
そうか。
まあ、それならそれで別に構わない。
今まで覚えてもいないほどの回数死んだ。
戦死したし、指導者の癇癪を受けて理不尽に殺されたことだって散々ある。
だから別に今更、死ぬことに興味はない。
何度も壊されて作り直されて。
知ったのは、魂なんてものはないということだ。
新しく作り直されて、記憶を全部埋め込まれると、その時点でまた同じように動くことが出来る。
肉体に宿る魂なんてものは幻想だと、既に肌で親衛軍NO4_022311は知っているのだ。
だとしたら、今更死のうがどうでもいい。
そして表だっては考える事は出来ないが。
負けることすらも、どうでも良かった。
勿論、理解している。
この星は、近いうちに肉に奪いとられる。その時には、仮に戦死を免れても、壊される。そして別の戦場にて、また再構築されて。
壊れるまで戦うだけだ。
装甲を減らすわけにはいかない。
そうハコトは言う。
親衛軍ウォーリアとの戦闘では、紙のように引き裂かれるウォーリア二型の装甲だけれども。
しかしながら、それでも命綱だ。
今までも、コアを擦るような攻撃は何度も貰った。
それで生きているのは、装甲があったから。
これでも役に立っているのである。
それにしても、親衛軍ウォーリアとの差は大きい。特に解体屋の機体は、簡易位相変換シールドを全身に展開している。あまりにも無法すぎると言える。
これから、更に親衛軍ウォーリアとの戦闘も想定されることを考えると。
確かに、装甲を減らすわけにはいかなかった。
「しかしそうなると速度を上げられないですね」
「残念ですが。 今でさえ、タータス大佐が睨んでくるくらいコストがこの機体には掛かっているんです」
「実績がまだ足りないと」
「ミラン大尉が、指揮官となってそれで実績を上げれば或いは」
ハコトの提案に、首を横に振る。
やはりミランは指揮官に向いていない。
今考えているのは、全体の勝利ではない。勿論親衛軍ウォーリアを倒せば、一戦場では圧倒的優位に立てる。これは事実だ。ワーカーの大軍と、他の兵器と必死に戦っている戦場も、被害を出しながらも押し返す事は出来てはいる。
此処に親衛軍ウォーリアが加わると、それもかなり怪しくなる。
しかしながら、戦場全体で考えればどうか。
一局地戦で負けても。
他の場所から戦力を持ってくれば、幾らでもひっくり返せるし。
いくら親衛軍ウォーリアが圧倒的に強くても、数は少数。
しかも一機辺り掛かっているコストは、他の兵器の比ではない。ウォーリアで換算しても最低五十倍。
この間戦闘して倒した解体屋に至っては百数十倍。
それを考えると、どうにかしてそれらを倒そうと考えているミランは、やはり指揮官向きではない。
指揮官だったら、凡人と量産兵器でどうあいつらを仕留めるかを考えるのであって。
実際今までの戦場では、うんざりするほどの被害を出しながらも、凡人と通常兵器であいつらを倒してきたのだ。
タータス大佐が来る。
敬礼をして、軽く話をした。
「報告書は受け取った。 やはり速さも推力も足りていない、ということだな」
「はい。 現状はどうにか出来ていますが、工夫でどうにかするにも限界があると思います。 この間交戦した解体屋は頭が悪かったからどうにか出来ました。 しかしその解体屋の残骸を始末したもう一人の解体屋には勝てるか分かりません。 それに他の、例えば速度特化の親衛軍ウォーリアが出てきた場合には……」
「そうだな。 ウォーリア単体の性能で言えば、決して我が軍は侵略者に負けていない。 だが、あそこまで無体なカスタムタイプを出してきて、しかも操縦手まで無茶な改造を施しているとなると、流石に量産機と凡人ではどうにもならないのが現実だ」
とはいっても、これ以上の強化改造に許可を出せないというのも事実だと、心苦しそうにタータス大佐は言う。
確かに毎度親衛軍ウォーリア相手に多大な被害を出していて。
武装が全壊したり。
装甲が全部やられたりして。
全て取り替えになることも多いのだ。
親衛軍ウォーリアは頻繁にミランを狙ってきている事もある。今後、これを相手にして、消耗し続けるのは好ましくない。
その理屈は、ミランも分かる。
「現在北極の戦線は少しずつ押し返している。 だが宇宙では、更に工場ユニットを落着させようと侵略者が猛攻を仕掛けてきている。 コレが一段落するまでは、とにかく守りに徹するしかない」
「それはいつまで続くのですか」
「分からない。 敵の消耗は相当に早く、旗艦級の超大型戦艦まで撃沈している例が出ているが、それでも攻勢をとめない。 更に増援を出してくる可能性もある。 他の戦線ではこちらが優位に立っているし。 なんなら敵が戦力を引き抜いたことで、こちらの優位が決定的になった戦線まである。 それなのに、敵はこの辺境の……天の川銀河という単位では、だがな。 この辺境の戦線に、割けるだけの戦力を投入してきている。 これは合理とも論理ともほど遠い行動で、とにかく相手の狙いも考えも一切読めない。 だからいつまで続くかは、全く分からないのだ……」
タータス大佐が苦しそうに言う。
大佐も侵略者に襲われ、蹂躙された民は幾らでも見てきたのだろう。
中には全滅まで追い込まれ、遺伝子情報から復活させた種族もいるという話だ。
そういう話を聞くと、心苦しいのは分かる。
ただ、ミランからしてみれば。
ただ生まれ育った土地から、侵略者を追い出したいというだけの話だ。
そのために親衛軍をたたけるのであれば。
「親衛軍ウォーリアを生産できる工場は少ないと聞いています。 特定は出来ませんか」
「それも厳しい。 強力な欺瞞工作がされている。 それにこの間の大量の工場ユニットの落着もあった。 あの中に、追加で親衛軍ウォーリアを生産する工場が含まれていても不思議ではない」
「では守るしかないのですね」
「私からも出来るだけの物資は回す。 対親衛軍装備も出来る限り優先的に回そう。 君は出来るだけ、親衛軍ウォーリアを引きつけ、撃退をしてほしい。 味方との連携については、可能な限り手を回そう」
敬礼をかわす。
そして、タータス大佐も苦しそうに戻っていった。
ミランはハコトと軽く話す。
「あり合わせの材料で改良をするしかなさそうですね」
「……ウォーリアのプログラムは改善が続けられていますが、推力を細かく調整する事を更に厳密にすれば、もっと細かい動きが出来るかも知れません」
「詳しく」
「特にスラスターは、思考に反応して動きを調整しているのですが、これを更に補正すれば、もっと速くなるかも知れません。 ただし、あくまで小手先の動きに限定した事ですが」
小手先か。
そもそもコストで言うと下手をすると十倍掛かっている相手との戦闘だ。
小手先では限界がある。
同等、とまではいかないが。
それに近いコストが掛かったウォーリアに乗れれば。
いや、そもそもだ。
ウォーリアは属人的な兵器だ。
相手のハイエンドモデルである親衛軍ウォーリアにと同じものを、と求めても仕方がない。
ミランは相手と戦えている。
だったら、ミラン自身がどうにかするしかない、というのが実情だろう。
ため息をつく。
今まで、確認されている親衛軍ウォーリアのデータを見ながら、シミュレーションマシンに潜る。
様々なタイプがいる。
その中で厄介だと思ったのは、炉を複数搭載しているタイプだ。
当然出力がそれだけ増す。
極めて厄介な相手だとミランは思った。
推力が桁外れである。
ただ推力が強い分、炉が大きいので、其処が弱点にもなる。
更には、もう一種類が厄介だと判断した。
それは、相手に対する対抗兵器を短時間でくみ上げてくる相手だ。
しかし確か侵略者の指導者は自分が制御できないものを嫌っているのでは、という研究報告があったはず。
対抗兵器をどんとん組んでくるような相手は。
それこそ侵略者の指導者は、忌み嫌うのではあるまいか。
何かしらのからくりがあると見て良いだろう。
それらとの戦闘シミュレーションをしておく。
ハコトにはプログラムの改良が出来ないか、調べて貰う。この辺りは、ミランとは全く得意分野が違うので、頼むしかない。
そうする間にも、ワーカーが多数攻めてくる。
そのたびにミランは戦場に出て。
味方が被害を出すのを見ながら。
敵を撃退し続ける。
ズヴァールラ提督は、概ね戦線を整理し終えたようだが。それでもかなり戦線は下がった。
これから西大陸の周囲にある亜大陸を安全にするために、無人島などに落着した工場ユニットを潰して回るそうだ。
外堀から埋める、というのか。
いずれにしても対応できない戦力を動かして、確実に相手を倒していくという。
ミランには声は掛からない。
親衛軍は来ないか、来ても対応できる準備をしているからだろう。
四度ワーカーを雪原で撃退した頃。
東大陸の北基地から手紙が来た。
北基地では、ファーガがたくさん子供を産んだこと。
試験的に、基地の外にファーガを育てる牧場を作ることの許可が出て。植林が始められたこと。
ただし、いつまた工場ユニットの落着があるか分からないから、あくまで限定的で、逃げられる範囲でそれらを行うこと。
試験的に育てられているファーガは、最悪の場合見捨てなければならないこと。
西大陸等から逃げてきた新たの民とは仲良くやれていること。
それらが手紙には書かれていた。
目を細めて、それらを見る。
見覚えがある名前もいくつもある。
無事だったのか、と喜ぶ。
戦争がなければ、新たの民は、そうは死なないのだ。
他にも手紙が来る。
電子データで送られてきた。これは支援者の法で、送らなければならないものらしい。
ミランに送られてきたのは、ミランのクローンだという子供の映像だ。後方の安全な星で育てられているらしい。
まず三人育てて様子を見るそうだ。
円筒形の育児ロボットが育てているが、最初からウォーリアでの戦闘を想定した訓練と勉強をしているらしく。
色々と複雑な気分になる。
ミランと全く同じ体を持っているのだから、素質はあるかも知れない。
だが、あの子らが戦場に出るのをみなければならないのか、と思うと、極めて複雑な気持ちになる。
ミランによる親衛軍ウォーリアとの戦闘データも学習させているそうだ。
或いはだけれども。
支援者は、ミランを量産して。
今までうんざりするほど被害を出していた親衛軍ウォーリアを、押さえ込む。
そのつもりなのかも知れない。
合理的な戦略だが。
気分が良くないのもまた事実だった。
少し休憩を入れる。
そして、起き出して食事をしていると。
また出撃の依頼が出ていた。
うんざりするほど出てきているワーカーを、確実に仕留めていく。そろそろ親衛軍ウォーリアが出てきてもおかしくない。
ミランは周囲と連携はしているが、自身は距離を取っている。これは親衛軍ウォーリアとの交戦を想定しての事だ。周りを巻き込むのは最小限としたいのである。
「親衛軍ウォーリア確認」
「!」
「他はお願いします。 距離を取ります」
「了解。 武運を祈る!」
タータス大佐と同じ種族のウォーリア乗りが、そう勇壮に言う。
たてがみがあるから女性か。
女性の方が大きく戦闘向きの種族だと言うから、前線には女性戦士が出てくるケースが多いのだろう。
凄まじい勢いで接近してくるそれは。
展開していたドローンを蹴散らし、まっすぐにこちらに突っ込んでくる。
両肩に小型の動力炉。
更には大型の動力炉。
見たことがある機体だ。シミュレーションマシンで何度か戦闘をしておいた相手。
通称殲滅屋。
手当たり次第に辺りの兵器や人員を破壊することで知られている、危険な相手だ。推力を武器に戦場を縦横無尽に移動し、被害を拡大させていく。しかも容赦のない殺戮をするので、殲滅屋として恐れられているが。
速度が出すぎるので、機雷などに引っかかりやすく。
戦闘中に戦艦にぶつかって爆発四散したり。
戦艦の主砲に巻き込まれ、回避しようにも他の戦艦の主砲に引っかかって爆沈する例がいくつもあったそうだ。
威圧的に中空から見下ろしてきて、そして声を掛けてくる。
此奴も青と白を主体としたカラーリングか。
コレがやたらと多いな。
そうミランは思った。
「目標発見。 殲滅する」
「あの赤い解体屋は出してこないのか」
返事なし。
いきなり大推力で襲いかかってくる。
手にしているのは高速で振動している剣だ。間合いはそれほどではないが、攻撃を貰うと危険だろう。
突撃してきたそれだが、やはり大推力が災いして、動きが直線的になりがちだ。
三つの動力炉をうまく使っているが。
それが災いして、スラスターでの機動がどうしても限定的になりやすい。
長槍で一撃を受け止めつつ、下がり、受け流す。
ぐんと速度を上げた殲滅屋が、随分と後ろまで抜けると、反転して襲いかかってくる。立て続けの一撃。
炉が三つあるだけあって、大したパワーだ。
だが、こっちはとにかく受け流すことに終始する。
シミュレーションマシンでの戦闘では、此奴とは相打ちが精一杯。攻撃を受け流しつつ、通信を入れる。
やるべき事は、置き石戦法だ。
パワーが違いすぎる。
弾き飛ばされて、体勢を立て直す。すぐに至近に迫ってきている。剣が振り下ろされる。肩口を抉られる。
だが、ウォーリアの肩口。
コアにも届いていない。
機体は若干動きが鈍るが、それでもどうにでもなる。
振るわれる剣を、長槍で防ぐ。
激しい攻撃で、パワーもあるが。
剣の技量そのものは、白い奴の方が上だな。
此奴の機体は推力特化だ。パワーもスピードも出るが、技術が決定的に足りていない。それが、三十合ほど渡り合って理解できた。
すっと離れるだけで、無駄に間合いを取る。
即座にパルスレーザーを浴びせるが、それを大げさなくらいの動きでよける。よし。このまま。
狙い通りに、大きく上によけて、そこから狙ってくる。
予想より動きが速い。
斜め上から、両断しようと襲いかかってくる。
細かく通信を入れながら、攻撃を捌く。
腕を、また肩を、足を抉られる。
長槍もダメージ甚大。
下がりながら、猛攻をいなす。
「目標健在。 このまま殲滅する」
「それしか言えないのか無能」
「……」
「その機体、パワーが有り余りすぎて制御できていないな。 動きを見れば分かる。 これほど性能差がある機体を押し切れなくて、恥ずかしくないのか」
一気に大上段から振り下ろしに来る。
そう来るだろうと。
思っていた。
推力ではかてっこない。
だったら、技量で押し切るだけだ。
一撃をスラスターで細かく調整しながら、長槍で受け流す。長槍が凄まじい火花を散らすが。耐えてくれ。そう呟きつつ、長槍を回転させる。それによって、無理に力が掛かった剣が、ばきんと中途から折れる。
反動でぐんと上体を反らす殲滅屋。
吹っ飛んだ剣の上半分が、ミランのウォーリア二型の頭部を抉るが、別にどうでもいい。そのまま上体を反らした殲滅屋の肩の炉を切り裂く。
爆発。
また大げさに下がろうとするが、明らかに機体制御が揺らぐ。
それはそうだ。
三つの炉で無理矢理稼働している機体だ。
炉が一個破損すればどうなるか。
激しく後退した殲滅屋に、パルスレーザーをたたき込む。必死に回避しながら、上空に逃げる殲滅屋だが。
よし。
此処だ。
態勢を整えようとした瞬間、横殴りに直撃したのは。近くで戦闘していたタータス大佐の座乗艦からの主砲、硬X線によるビーム砲撃だった。
それでも親衛軍の意地か。
直撃は防いで、逃れてみせる。
だが、今ので無理をしたことで、体勢が決定的に崩れた。
二本目の剣を抜くが。
その時には、ミラン機がもう迫っていた。
長槍で貫きに行く。
回避される。
流石だ。
だが、横薙ぎに移行。
剣を持っている右手をたたき落とす。吹っ飛んだ右手が、回転しながら、地面へと落ちていった。
それで互いに距離を取る。
左手で剣を抜く殲滅屋だが、戦闘機が対ウォーリア用のレーザーを発射。殲滅屋は舌打ちしたようだ。
「厄介な肉だ。 プランを練り直し、次は殲滅する」
「返り討ちに殲滅してやる」
「……」
戦闘機に変形すると、凄まじい初速を出しながら、殲滅屋は戦場を離脱する。
それを見届けてから、ミラン機は着地。
全身ボロボロだ。
着地の衝撃で、左腕が滑落した。そして激戦に耐えた長槍も、限界が来て半ばから折れていた。
エネルギーの残量も相当にまずい。
それに、あいつ強い。
親衛軍ウォーリアを生かし切れていないが、それでなおあの強さだ。もしもあれを乗りこなしていたら、とんでもない存在になっていただろう。
いや、待て。
とにかく帰投することにする。
また多くのダメージを受けた。
ただ、収穫もある。
切り落とした奴の右腕は、ほぼ無傷だ。これは、今までほとんど爆散していた事を考えると、大きな戦果である。
「タータス大佐」
「ああ、分かっている。 すぐに回収してくれ」
勿論今までも比較的無事な状態のウォーリアの回収例はあるが、親衛軍ウォーリアのは少ない。
大きな意味があるはずだ。
一度基地に戻って、機体を乗り換えようと思ったが、とめられた。
「戦況は問題ない。 君は温存してくれ」
「しかし被害を減らせるかも知れません」
「侵略者の指導者は何を考えているか分からない。 立て続けに、君に親衛軍をぶつけてくるかも知れない」
「……」
そうか、そう来るかも知れない。
また侵略者の指導者ご自慢の精鋭が退けられたのだ。
手段を選ばなければ、そういうことをしてくる可能性もある。
それに、推力に振り回されているとは言え、今の殲滅屋はかなり冷静な戦闘を見せていた。
最後も深追いせずあっさり引いた。
かなり危険な相手だ。
より格上の機体に乗っていたアホの方の解体屋よりも実力は上とみるべきだろう。つまり、今は温存するべきだ。
ハコトがすぐにウォーリア二型の修理を始める。他にも多数のロボットと、専属の整備員が取りかかってくれる。
また長槍が。
そういう声も聞こえたので、返す言葉もない。
だがあいつが装備していた振動剣、凄まじい威力だった。一瞬で斬り割られなかったのは、進歩しているとみてほしかったが。
まあ、結果が全てか。
ファーガの栄養液を固めて焼き、いくつかの作物を煮込んだものに刻んで入れたものを食べる。
比較的贅沢な品だ。
戦場ではごちそうに近い。
ただ、ミラン自身もエネルギーの消耗が激しい。それもあって、ハコトが作ってくれていたのだ。
その後はトイレを済ませて、丸くなって仮眠を取る。
起き出した時には、ワーカーを主軸とした敵部隊は殲滅完了。
戦後処理が始まっていた。
半壊したウォーリアが、キャリアに運ばれて基地に戻ってくる。支援者の整備員に混じって、新たの民の整備員もいる。
ウォーリアの操縦手は、まだ若い……11期か12期くらいの新たの民だ。あんな子供が。
よく生きて帰ったと周囲が褒めていたが。
ミランは、いたたまれなかった。
ウォーリア二型は、もうほぼ修理が完了している。基本的にパッケージ化されているのは、二型も同じ。
破損箇所はまるごと取り替えて。
そして破損した部品は溶かしてから3Dプリンタでまた作り直すのだ。
ブラックホール展開器とやらを使って、物資は無尽蔵に取り出せる。更に言えば、天の川銀河の中枢にある巨大ブラックホールやらを抑えているそうで。そういう意味でも物資ぎれの恐れはないそうだ。
通信が入る。
ズヴァールラ提督だった。
「敵の攻勢が弱まりつつある。 力負けし始めたのだ。 宇宙艦隊が、敵を押し返し始めた。 恐らく近いうちに、落着ユニットの可能性はなくなる」
「朗報ですね」
「短期的にはな。 敵が更に増援を投入してくる可能性もある。 それに……」
今、惑星アラタには稼働中の親衛軍ウォーリアだけで二人いる。
これがかなり手強い組み合わせだ。
更に増えるかも知れない。
猛将ズヴァールラ提督も、今攻勢に出るつもりはないそうだ。
「君の活躍は見事だ。 今は報告書を出してくれ。 可能な限り便宜は図る」
「は……」
「少佐に昇進するべく推す声もある。 私からは推薦状を出すが、どうなるかはわからない。 少佐に昇進できたら、恐らく特務に格上げだ」
特務、か。
この間説明を受けたが、厳しい任務を専門でやる精鋭の略称。
支援者の軍隊は1000億人くらいいるらしいのだが。
その中でも特務は2万人いるかいないか。
それも最前線で戦う特務となると、千数百人程度だとか。
これらの特務は基本的に大規模戦線で活動するそうだが。その九割以上がクローンの戦士だそうだ。
望んで記憶を受け継いでいる者も多く。
親衛軍をもっとも多く屠っているのも特務だそうである。もっとも、特務でも多くの被害を出すのが常識となっているそうだが。
「もうしばらくは耐えてくれ。 今少しずつ敵の工場ユニットを減らしている。 敵を西大陸に追い詰めたら、親衛軍を生産している工場ユニットを潰す攻勢に出る。 その時には、君に活躍して貰う事になるだろうな」
「分かりました」
記憶を受け継ぎながら。
クローンの体を用いながら。
侵略者と戦う。
普通は出来ない事だ。恨み、憎しみ。そういった力が原動力なのだろうか。可能性は低くない。
星を蹂躙され。家族を侵略者に皆殺しにされた者はたくさんいる。そういった者は、どんな手を使ってでも、侵略者を倒そうとするはずだ。
侵略者を倒し終わったら、そういう人達はどうするのだろう。
ミランには分からない。
そしてミランの未来の姿もそうなのかも知れない。少し、悲しい話だった。
※殲滅屋
これもまた厄介な親衛軍ウォーリアです。全高16.9m。
この機体は三つの炉を装備するという無茶な構造をしており、推力がそれだけ凄まじいものとなっています。
速度もパワーも尋常ではなく、武装の貧弱さを機体性能で全てカバーしている代物です。
更にこの機体には秘密があります。
本作にどういった要素がほしいですか。要望があれば遠慮なくどうぞ。
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詳細なマシンデザイン
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圧倒的な武力による蹂躙
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緻密な人間ドラマ
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種族や文明の描写
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近接した力量のライバルとの死闘