王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶 作:dwwyakata@2024
いよいよ惑星アラタを巡る決戦が開始されようとしています。
宇宙空間でもアラタ星系を巡る戦闘が激化。
血迷った侵略者の指導者による非道な作戦が始まろうとしています。
序、異変
マーザン中将は、異変を知らされていた。確かにおかしいとは思ってはいたのだが。どうも様子が妙だという。
星系外縁部。
侵略者の軍勢が展開している拠点。
其処に、人工惑星が次々に到着している。ついに五つ目が来た。どれも直径1000㎞クラス以上のものばかり。
どれも恐らくはブラックホールから回収した資源で作ったものなのだろうが。
あまりにも多すぎる。
それに増やしたところで、今の彼我の戦力差だ。
揚陸艦も工場ユニットも、どれだけ飛ばしても惑星アラタには届かない。何か狙いがあるのではあるまいか。
考え込んでいると。
参謀の一人が提案してくる。
「何か相手が考えているのは確実でしょう。 それも、あの侵略者の指導者です。 何をやらかしてもおかしくない。 私が考える最悪を述べても良いでしょうか」
「うむ、頼む」
「惑星アラタから肉を回収し次第、この星系を粉々に消し飛ばすことです。 敵味方の艦隊もろとも」
「……っ!」
無茶苦茶だが。
それをやりかねない相手だ。
マーザン中将も分かっている。
4000億の恒星が存在するこの銀河ですら、それはタブー中のタブーだ。だが、侵略者の指導者は、本当に何をしてもおかしくない危険な相手なのである。
それを考えると、やりかねないと考えて動かなければならない。
「あの人工惑星群に、それをなせる手段が隠されているのか」
「例えばですが、超巨大な反物質炉を暴走させるとか……」
「それだけだとパワー不足だな」
反物質兵器は存在しているし。
大量の反物質を、一度に熱エネルギーに変換する技術も存在している。実際問題として、大規模な戦線で、使用されたこともある。
最悪の場合、超新星爆発に匹敵する火力をたたき出すケースすらもある。
物質の純エネルギー化というのは。
それほどに危険な結果を生み出すのだ。
ただし、それらには条件がいくつも必要になる。あの程度の人工惑星群で出来るだろうか。
マーザン中将は、しばし考えた後。
部下達に指示を出す。
「よし。 その最悪の事態を起こすのに必要な条件を割り出せ。 あの惑星群はデコイに過ぎない可能性もある」
「は……」
「惑星アラタの戦況は」
「敵の西大陸をもう少しで包囲できそうだ、ということです。北極大陸の残り敵基地は二つ。 大きな被害を出しながらではありますが、確実に戦力を削ぎ、敵を孤立させています」
既に敵に奪われたり、敵の大規模攻勢を受けた無人惑星の戦況は安定している。奪回したり、敵をほほ押し返して追い詰めたりしている。
仮に星系ごと吹き飛ばすとしたら、それはどこでやる。
いくつか懸念がある。
参謀本部とは既に連絡を取り合っていて、敵をまとめて始末する準備を進めている途中である。
それに加えて。
いくつか切り札を用意しておいたほうがいいかもしれない。
それとだ。
もう一つ、やるべき事がある。
「惑星アラタの上空にいる敵艦隊を、完全に駆逐しろ。 これからまず第一に、艦隊の目標はそれとする」
「分かりました。 何か策がおありですか」
「最悪の事態に備える。 早めに、希望する新たの民と、原生の生物の脱出と保護を実施する」
マーザン中将は軍人だ。
戦場で散る覚悟は出来ている。
だが、多数の新たの民はまだまだ惑星アラタにいる。
侵略者が手を出してから、支援者が支援に入るまで間があまりなかったこともあって、生存者は少なくないのだ。
遺伝子データなどは取得してあるから、最悪別の場所でクローン技術を用いて再生させることは可能だが。
命はそういうものじゃない。
民間人を守らなくて、何が軍人だ。
それがマーザン中将の誇りであり。
軍人としての最低要件だった。
「そのためには、邪魔な侵略者艦隊の排除が必須だ。 塵一つ残すな」
「分かりました。 これより大攻勢に出ます」
「……」
こちらの戦力は敵のほぼ倍だが、それは数だけの話。敵には大型艦艇も多く、まともにぶつかり合った場合は、まだ其処までの戦力差は開いていない。
ただ、惑星アラタ付近でハラスメント攻撃を繰り返している敵の部隊については、そこまでの数じゃない。
今なら、大急ぎで駆逐する事が可能なはずだ。
後は、星系辺縁でおかしな動きをしている敵に注意を払わせる。
いくつか星系もろとも破壊するような方法について、参謀本部が可能性を出してくる。やはり恒星の超新星化が現実的なようだ。
これだけだと、可能性はある。
何種類か手段はあるのだが、小型ブラックホールを用いて、恒星内部で強烈な輻射熱を発生させるのが手段としては一般的らしい。
技術的に出来るかどうかで言うと、出来るそうだ。
やってはいけないから、やらないだけ。
他にもいくつかの手段があるが、いずれもブラックホールを利用するものが現実的だとか。
だとすると、あの人工惑星群は、仕込みに過ぎないのかも知れない。
しかし仕込みと言っても、一体なんの。
ともかく、惑星アラタ付近の敵艦隊の排除を急がせる。
その後は、全体に連絡を入れて、脱出希望者を急いで脱出させる。新たの民用に調整した無人惑星は既に用意してある。
いつでも移住が可能だ。
まだ問題はある。
参謀本部が懸念しすぎではないか、と言ってきているのだ。
一応実績を上げているマーザン中将の提案を、言下に拒否、という真似はしてきてはいないが。
それでも、ワープ阻害装置などの準備は、流石に参謀本部としても色々と手間が掛かるのだろう。
銀河中心を抑えていて、そこから無尽蔵に物資を取り出せるとしても。
それを無尽蔵に加工できるわけでもないし。
兵力そのものは、無限に湧いてくるわけでもない。
人材は宝だ。
それは支援者にとっての不文律であり。
戦艦などで生存性が優先された設計になっているのも、それが理由である。
さて、此処からどうするか。
無言でしばし状況の推移を待つ。
味方が惑星アラタ近辺に展開している敵艦隊の排除を始める。既に数の差は決定的である。
特に星系の中枢から、惑星アラタの外側二つくらいまでの惑星軌道くらいの範囲までは、圧倒的に味方が有利である。
排除まで、推定二日。
そういう連絡が来た。
まだゲリラ戦をしている部隊もいるようだが、それも確実に片付けていくそうである。
では後はアラタでの戦況だな。
ズヴァールラ提督は、確実に西大陸の敵主力を引きつけつつ、他の敵を削り取ってくれている。
これならば、まもなく侵略者の戦力を、西大陸に押し込むことが可能になる。
更に、もう少しで参謀本部と折り合いがつく。
そうなったら、アリカ少佐の提案通り、相手の射出する肉入りカプセルを敢えて見逃す。
いや、なんなら。
こっちから、ダミーのカプセルを打ち出しても構わない。
作戦を一つずつ進めていき。
最終的には、この星系から侵略者をたたき出す。
マーザン中将は、その準備を一つずつ進めていた。
北極大陸に残った最後の工場を攻撃している味方の少し後方で、ミランは様子をうかがう。
やはり妙だ。
あの嫌に弱い親衛軍ウォーリア以降、親衛軍ウォーリアが姿を見せていない。
解体屋はずっと西大陸で暴れ回っているようだ。
だが、それで限度。
西大陸が孤立しつつある今。
どうして他への反撃をしてこない。
南極や東大陸。
更には各地の亜大陸や無人島なども、大量のドローンが展開して、守りを固めてくれているが。
それらからも、敵を発見した報告はないそうだ。
今の時代は、あらゆる手段での索敵が行える。
完全に勢力圏に入った地域では、潜入作戦は困難を極める。如何に親衛軍でも、欺瞞工作は難しいだろう。
ミランは少し疲れてきた。
工場はシールドがまもなく破れる。
駆逐艦の攻撃は容赦がなく、相手をまもなく屠るのは確実だが。それにしても、一体どういうことか。
北極を落としたら。
西大陸に、全方位から攻め込む。
それはズヴァールラ提督が言っていたが。
別にズヴァールラ提督でなくてもやる作戦だ。
勿論全方位から攻勢を掛けるのではなく、主力の攻撃部隊を絞って、他は締め付け、程度ではあるとしても。
それでも、不意に敵の防御が弱まっている気がするのである。
親衛軍ウォーリアも出てこない。
あきらめた、とは思えない。
親衛軍の傲慢な言葉を聞く限り、諦めるような連中だとは、とても考えられないからだ。
工場に着弾。
迎撃兵器が、次々に破壊されていく。
順当に駆逐艦隊の方が火力があるのだから当然だ。まもなく、工場は完全に沈黙。周りは湧いている。
これで北極大陸からも侵略者を追い払った。
勝利だ。
そういう声が聞こえるが。
ミランは喜べなかった。
「タータス大佐」
「うむ」
「何か罠があるのではないでしょうか」
「確かに不意に敵の抵抗が弱まった。 それを懸念するのはもっともな話だ」
警戒はしている。
しかし、やはり油断があったのだろう。
駆逐艦の一隻が、工場にとどめを刺すべく、バンカーバスター砲撃をしようと、工場の上に出た瞬間。
工場が炸裂したのである。
爆発の破壊力は凄まじかった。
展開していた地上軍よりも、工場を潰そうとしていた駆逐艦が思い切り巻き込まれていた。
大破した駆逐艦は、近くに不時着する。
多くの被害が出たようだが。
全滅は免れた。
即座に救急車両と消火車両が向かう。周りがざわついていた。
「工場が自爆しやがった!?」
「ここまで追い込んだ状態での自爆は今までに例がないぞ。 今更敵がどうしてこんなことを」
「分からないが、奴らにはこの星の生物の肉への興味が失せたのか?」
「ともかく生存者を助けろ! 被害甚大!」
周りは地獄絵図だ。
此処で親衛軍ウォーリアが来たら地獄が加速する。
ミランは見通しが良い場所に出て、展開。
それについては、許可もタータス大佐に貰う。どのみちこのウォーリア二型では、救援作業など出来ないのだから。
駆逐艦が火を噴いている。
乗っていた人員の三割以上が死傷する悲惨な状態のようだ。
無言で周囲を警戒。
だが、親衛軍ウォーリアは仕掛けてこない。
何を狙っている。
それが、分からない。
「北極は落ちましたが、最後にケチがつきましたね」
「うむ。 周囲から敵接近の予兆はない。 生存者を救出し次第、工場の残骸をロボットにて調査。 それが終わったら、それぞれ各地の基地に一時撤退。 北極大陸の守りを固めるぞ」
「了解……」
戦士達も、あまり士気が高くない。
いや、冷や水を掛けられて、士気が下がったというところか。
基地に戻る。
ズヴァールラ提督から、連絡が来ていた。
「マーザン中将から連絡が来た。 作戦を早める」
「何があったんですか」
「どうも侵略者の動きがおかしいようでな。 何かもくろんでいる様子だ。 君は私の艦隊に加わって貰う。 私の艦隊が主力となって、西大陸にのこった敵戦力を掃討する作戦を開始する」
勿論、最近の惑星アラタ全域での広域戦闘で、被害は大きく増えている。
だが、ここで惑星アラタから侵略者をたたき出せば。
かなりの速いペースでの侵略者を排除という実績にもなる。
勿論宇宙艦隊はまだ追い払えていないのだが。
それはそれとして、この惑星アラタでワーカーに襲われて死ぬ新たの民は減るのである。それも戦闘が長期化した場合に比べて、桁違いにも少なく。
「問題は現在確認されている解体屋だ。 奴の動きで、うんざりするほど被害を出している」
「はい」
「そこで、君は奴を倒すべく、隠蔽工作をして出てきて貰いたい。 君の代わりには、対親衛軍ウォーリア部隊を配置して。 君のウォーリア二型と同型の機体をデコイとして、西大陸包囲網の一角に配置する」
今まで四回の攻撃を解体屋に受け。
それで相当なダメージを貰っているらしい。
それでズヴァールラ提督も、ついに堪忍袋の緒が切れたそうだ。
よく分からない表現だが。
「既にそちらにフリゲートを送ってある。 即座にそれに乗って移動してほしい。 見たところ、ウォーリア二型は問題ないようだな」
「はい。 ただし解体屋は強いです。 確定で倒すのには、相当な苦労が必要になるかと思います」
実際問題、乗っている奴がザコのアホであった状態でも、あれほど苦戦させられたのである。
恐らくは、本来の乗り手である解体屋が繰る親衛軍ウォーリアは、この間戦闘した狂獣を超える実力を持つと判断していい。
乗り手自体は、恐らく狂獣の方が強い。
だが、機体性能を考えると、更に実力は上だと見て良い。
要するに、勝てるかは分からない。
「可能な限り支援をする」
「分かりました。 こちらでも、どうにか作戦を組んでおきます」
通信終わり。
駆逐艦より二回り小さい艦艇が来る。
フリゲート。
宇宙戦闘では、数で勝負する艦艇であるらしい。それでも内部に十機のウォーリアを搭載する事が可能なくらいのサイズである。
既に北極の安全は確保。
現在、ズヴァールラ提督の指揮で、西大陸以外の残った工場を潰しているが。それらからの敵に襲われる可能性は低い。
駆逐艦より小さく、更に戦力は落ちるが。
これでも正面から親衛軍ウォーリアであってもやられることはまずないという。
フリゲートの艦長は中尉だった。
驚くことに新たの民である。
或いは最初期から戦闘に加わっている人員かも知れない。かなりの高齢の新たの民だった。
敬礼を受ける。
「速度は駆逐艦よりでます。 大気圏内であってもです。 すぐに移動してください、ミラン大尉」
「分かりました。 すぐに乗り込みます」
フリゲートの艦内はかなり手狭だ。医療設備もないようである。
駆逐艦だと専用の医師がいるのが普通だが、フリゲートにはいない。
そもそもフリゲートは宇宙空間での運用では一人から二人で動かすことも多いらしい。地上戦仕様のフリゲートは主に快速の輸送艇として用いられるので、医療設備はロボットが管理する最低限のものだけが置かれているそうである。
それぞれに必要な設備だけ、か。
西大陸に向かう。
西大陸を完全に包囲する状況が整った。
親衛軍が暴れていたせいで、西大陸の戦線は荒らされ放題だったようだが。それもこれから変える。
変えなければならない。
そして、今まで親衛軍ウォーリアを生産できる工場が破壊されたという話は入っていない。
西大陸が最初から敵のこの星における拠点だったとみてよく。
そういう意味では、此処を陥落させることには、とても大きな意味があるとも言えた。
殆ど時間も掛けずに、戦線に到着。
戦闘は今は起きていない。
すぐにズヴァールラ提督の座乗艦に移って、挨拶に出向く。
相変わらず肉を食べていたズヴァールラ提督だが。
作戦指揮をしながらなので、これは仕方がないことなのだろう。
「よく来てくれた。 北極でも複数の親衛軍ウォーリアを仕留めてくれたと聞いている」
「運が良かっただけです。 相手の方が殆どの場合総合力で上でした」
「そうか。 いずれにしても頼りにさせて貰う。 これから、いよいよ敵の本拠を叩く。 敵も全力で抵抗してくると見て良い。 当然、親衛軍ウォーリアも出てくるだろうな」
解体屋がまだ無事だし、まず間違いなく出てくるだろう。
それに、だ。
ここのところの敵の抵抗の弱さ、気になる。
いくら宇宙艦隊が押されているといっても妙だ。
それも伝えると、頷かれた。
「マーザン中将もそれを懸念しているようでな。 いくつか作戦指示を受けている」
「分かりました。 事前に共有願います」
「ああ」
そして、作戦の共有を受けると。
ミランは一度休憩して、戦闘まで英気を養うようにと言われたのだった。
※ワープ阻害装置
星間国家を作るのならワープ航法ぐらいないと話にならないのですが(どんなに頑張っても光速しかでないのでは至近の星系を渡るだけで数年かかる)、光年単位の空間転移が出来るのなら、それを利用した兵器も当然登場しますし、なんなら相手の領内にいきなりワープして奇襲なんて真似だって出来る筈です。
それを防ぐためのものが、空間転移阻害用のシステムですね。基本的には大型の工作船に装備され、強力な位相変換シールドを張られているのが普通です。
現在では侵略者支援者ともに、国境や戦線にはこれが多数配備されていて、簡単にはそれを跳び越えて相手領に行くことは出来ません。
また空間転移用の兵器を防ぐ盾の役割も果たします。
勿論性能には限界があるのですが、それでも絶対に必要な兵器です。
本作にどういった要素がほしいですか。要望があれば遠慮なくどうぞ。
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詳細なマシンデザイン
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圧倒的な武力による蹂躙
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種族や文明の描写
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近接した力量のライバルとの死闘