王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶   作:dwwyakata@2024

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ミランと因縁が続いた侵略者の親衛軍ウォーリアのフラッグシップ機、解体屋との決戦です。

そしてそれだけではない。

侵略者の指導者がもくろんだ惑星アラタの破壊作戦が、大詰めを迎えていました。

いらないものなど壊れてしまえ。

そんな身勝手極まりないエゴを許してはなりません。







3、惑星アラタの朝

解体屋とミランが戦闘を開始した。ズヴァールラ提督は、既に艦橋までダメージが及んでいる旗艦で指揮を続けながら、肉を食っていた。

 

頭を使うために、ずっと食べ続けないといけない。

 

作戦指示は、思考を言語化する装置で行っている。

 

流石に食べながらは正確に喋ることは出来ないのだ。

 

「工場のシールドは抜いたな」

 

「これはもう限界です! 各地の戦況では勝報もありますが、とても此処に援軍をよこす余裕など……」

 

「此処を潰さなければ、この星は粉みじん。 各地の戦線で戦っている戦士達は、全滅する」

 

「し、しかし……」

 

駆逐艦のワープ機能は、大気圏内では使えない。

 

そもそも大気圏内戦闘仕様の駆逐艦は、強襲揚陸艦としての機能を強化する代わりに、ワープ機能をオミットしている。

 

どのみち逃げられないのだ。

 

それに、此処で敵を仕留めきらないと、何度でも惑星アラタが襲われる。

 

母星ゲラルラを襲われたズヴァールラ提督は、その悲しみと怒りを、これ以上もないほど知っていた。

 

「旗艦を前進させろ」

 

「ま、まさか……」

 

「至近から主砲を工場にたたき込む。 地下掘削機能は後で黙らせればいい。 工場を黙らせればそれでいい」

 

「ですが……!」

 

工場の対空兵器は健在。

 

多数のイーターの猛攻で、掃射砲も処理が追いついていない。

 

ウォーリア部隊は既に半壊。

 

他の駆逐艦も、スウォームにまとわりつかれて、支援などする余裕はない。

 

つまり爆破用の作業チームは近づけない。

 

だが。それでもやらなければならない。

 

「あの工場がビーコンになって、敵のワープによるこの星への直接攻撃を誘引しているのは確定だ。 そしてこの状況でこの艦を撃沈しうる解体屋は、ミラン大尉が引きつけてくれている! 今しか好機はない! 残りの推力全てを使え! シールドを前面のみに展開!」

 

「こちらファイター9! 護衛する!」

 

「同じくファイター17!」

 

「22も行けるぞ!」

 

残り少ない戦力なのに、無理をしおって。

 

ズヴァールラ提督は、同道するつもりの戦闘機隊に感謝しながら、突貫を開始させる。

 

解体屋がこちらに気付く。

 

大火力の砲を向けてこようとするが、その瞬間、立て続けにドラゴンキラーが切り裂かれ、爆発した。

 

ミラン大尉が、注意をそらした解体屋の隙を突いたのだ。

 

解体屋が舌打ちすると、ミラン大尉へ大火力の砲撃を開始。ミラン大尉は、オールレンジ攻撃を受けながらも、必死に回避を続けている。

 

「ミラン大尉がどう見ても不利です!」

 

「行ってください」

 

声が来る。

 

ハコトというミラン大尉の支援ロボットだ。

 

「ミラン大尉は出撃前にいくつか私と打ち合わせをしました。 その中にこの状況はあります。 切り札はまだあります。 だから」

 

「分かった!」

 

全力で進め。

 

肉を飲み込むと、自分の口でズヴァールラ提督は吠える。四基のうち二つしか残っていない反物質炉が咆哮し、旗艦を進める。

 

対空砲が、一斉に迎え撃ってくる。

 

位相変換シールドが悲鳴を上げる。

 

敵のドローンが群がってくる。戦闘機隊とドローン部隊が迎撃するが、数が足りていない。見る間に機体に直撃が入り始める。

 

内部にも爆発が波及しているのが分かった。

 

「内部にドローン侵入!」

 

「くそっ! 迎撃しろ!」

 

「次々入ってくる!」

 

「炉を持たせろ!」

 

怒号が飛び交う中、工場の至近に。

 

この距離からなら。

 

主砲にエネルギーのチャージを開始させる。敵の対空砲火が、位相変換シールドをついに貫く。

 

激しい爆発で、駆逐艦が揺れる。

 

艦橋の天井が一部落ちて、阿鼻叫喚が辺りに広がる。

 

ズヴァールラ提督は、落ちてきた天井を無視して、そのまま指揮。辺りで爆発が起き、その破片が体に突き刺さったが、それも無視した。

 

「主砲の制御を私に回せ」

 

「……」

 

「早くしろ!」

 

「て、提督……後は……!」

 

副官ががれきに潰されながらも、どうにかコントロールを回してくる。

 

貧乏くじを引かせてすまなかったな。

 

そうぼやきながら、ズヴァールラ提督は、主砲のコントロールを受け取った。そして、旗艦が自壊しつつあるのを感じながらも。

 

この旗艦に残された最後の力で。

 

至近距離から、敵の指揮系統も担っている工場へと。

 

主砲である硬X線ビーム砲を、たたき込んでいた。

 

光が見える。

 

戦士としてはそこまで優れていなかった。それでも、指揮官としてはこの星を守ることが出来た。

 

自分の星では、何も守れなかった。

 

支援者が来て、やっと侵略者を追い出すことが出来た。それまでは、逃げ回るばかりだった。

 

ズヴァールラ提督は、ふっと笑う。

 

これで良かったのだと。

 

そう思いながら。

 

 

 

旗艦が。

 

工場と相打ちになるような形で、半ばから自壊。だが、周囲で明らかに敵の動きが鈍っていた。

 

自壊した旗艦が、工場の跡地に衝突。

 

轟沈だ。

 

あれは、乗っていた戦士や乗組員は。

 

だが、爆沈まではしていない。生存者がいるかもしれない。敵の動きが鈍り、味方が一気に勢いづいている。

 

その中、傷だらけのウォーリア二型を繰って、ミランは叫ぶ。

 

「守れなかったな、でくの坊! さぞや指導者様も失望しているのではないのか!」

 

「黙れっ! くだらねえ事をしやがって! 肉の分際で!」

 

「肉肉と……どこまでも傲慢だな。 お前は指導者とか言う屑の同類だ」

 

立て続けに、二つドラゴンキラーをたたき落とす。

 

立て続けに機体を抉られ。

 

レーザーで貫かれるが。

 

ミランの闘志を宿したように、ウォーリア二型が奔る。

 

ジグザグに前に。襲い来るドラゴンキラーを、次々と切り落とす。

 

明らかに相手が怯むのが分かった。

 

だが、それでも。

 

構えたのは、大火力の何かの砲だ。荷電粒子砲か。エネルギー反応。また撃ってくる気だ。

 

潤沢なエネルギー。

 

まったく贅沢な機体だ。

 

質でも量でも既に負け始めているのに。それでもお気に入りの機体には、惜しむことなくコストをつぎ込むと。指導者はどこまでも依怙贔屓が好きらしい。

 

「お前はどこまで行っても接近戦向きの機体だ! どれだけドラゴンキラーをやっても、遠距離戦に徹すれば負けないんだよォオ!」

 

「それはどうだろうな」

 

「は……?」

 

貫く。

 

真横から、荷電粒子砲を。

 

投擲されたのは、ミランの予備の槍だ。

 

ドラゴンキラーが既に五機落ち。

 

恐らくドラゴンキラーも用いて索敵をしていた解体屋には、大きな死角が出来ていたのである。

 

其処に、ミランはハコトに指示して、横から槍を投擲させた。投擲の手段は駆逐艦に装備されている小型のマスドライバである。事前に決めていたことだった。

 

大型の荷電粒子砲が吹き飛び、明らかに態勢を崩す解体屋。

 

ドローンを蹴散らして、攻勢に出た戦闘機隊が、一斉攻撃を解体屋に行う。ドラゴンキラーがそれで更に二機、爆発四散していた。

 

「ちっ……!」

 

「どうした。 怖くて接近戦は出来ないか」

 

「お前なんかが、怖いわけがあるかああああああっ!」

 

完全に感情を乱す解体屋。

 

ドラゴンキラーの残りで、戦闘機隊にレーザーを浴びせ、追い払う。そして、ドラゴンキラーを纏うように展開して、突っ込んでくる。

 

まだ五機ドラゴンキラーが残っている。

 

そして解体屋は、装備されているらしい熱剣を引き抜いていた。

 

「僕は接近戦も出来るんだよ! ドラゴンキラーを剣代わりにも使える! 六刀流を相手に、どこまでやれるかな肉っ!」

 

「挑発に乗った時点でお前の負けだ」

 

初めてエネルギーの残量を見る。

 

もう殆どないな。

 

勝負は一瞬だ。

 

それでも、その一瞬にかける価値はある。

 

すぐ側にワーカー。

 

一瞬びくりとしたが、既に動いていないようだ。

 

だがそれで隙が出来て、既に至近に解体屋が迫っていた。

 

「隙ありぃいっ!」

 

完全に狂気じみた狂騒の中にいる解体屋が、一斉に六刀流とやらを振るってくる。全てから、包み込むような一撃だ。

 

だからこそ、ミランは。

 

むしろ前に踏み込んでいた。

 

この状況。

 

相手はよけられない。

 

もしもよければ、この必殺の構え自体が崩れる。

 

既に形勢は逆転しており、戦闘機隊もドローンを駆逐し。多数のウォーリアも孤立から立ち直って、敵を破壊し始めている。

 

ズヴァールラ提督の闘志が皆に乗り移ったかのような猛戦だ。

 

「バラバラにしてやるよ、肉ァ!」

 

「あっそう」

 

だから、ミランは、むしろ冷淡に応じた。

 

そして、相手を貫く。

 

位相変換シールドを一瞬だけ展開できる。それは分かっている。だからこそ、最初の刺突を防がざるを得ない。

 

正確極まりない一撃だからだ。

 

そしてそれで位相変換シールドを使ってしまうから。

 

カートリッジが起爆して、たたき込まれる第二撃は防げない。

 

コアを貫通。

 

中身を、完全に粉砕した。

 

同時に、ウォーリア二型も、熱剣とドラゴンキラーによって全身切り刻まれる。

 

しかし、解体屋を完全に貫くのが。ほんの一瞬だけ早かった。

 

コアに突き刺さった五つのドラゴンキラー。

 

熱剣。

 

ドラゴンキラーのいくつかは、ミランの体に突き刺さっていた。熱剣は、もしも当たっていたら即死だったが。ほんの数センチ先で止まっていた。

 

相手に遅れて、ウォーリア二型も黙る。

 

酷く全身が痛み始めていた。

 

「こちらミラン。 解体屋を仕留めた。 救援と回収を求む」

 

「すぐに向かいます!」

 

「キャリアを出せ! バイタルが低下してる! 絶対に英雄を死なせるな! これ以上!」

 

誰かが叫んだ。

 

この様子だと、ズヴァールラ提督は。

 

この星を守って倒れたのか。

 

そう思うと、ミランは意識を手放しながらも。これ以上もないほどに、感謝の言葉を向けることしか出来なかった。

 

 

 

惑星アラタがある星系から、「天然物の肉」のカプセルを回収して、脱出した侵略者の艦隊、残存40万隻ほどは、想定よりも遙かに短いワープで停止していた。否、停止させられたのだ。

 

其処で待ち受けていたのは、支援者の第十七艦隊、およそ50万隻。それに加えて、第十六艦隊40万隻、第二十五艦隊35万隻。合計して125万隻だった。

 

艦隊規模の大規模ワープ阻害装置。

 

それを仕掛けて、待ち構えていたのである。

 

そして既に傷ついていて、指揮系統も瓦解している侵略者の艦隊は、もはや抵抗する力は残っていなかった。

 

艦隊の指揮をしているのは、第一方面軍司令官であるヴァルラ大将である。ヴァルラ大将は支援者六種族の一つプラパルダの将軍で、最も若い大将だった。

 

「全艦攻撃! 一隻も生かして返すな!」

 

「攻撃開始!」

 

「殲滅せよ!」

 

猛攻が開始される。

 

最初に硬X線ビーム砲の一斉射が行われ。それにて侵略者の艦隊は一瞬で20%を失った。

 

その後も亜高速ミサイルが続き、艦隊がまたたくまにスペースデブリに変わっていく。ヴァルラ大将は一切油断せず、徹底的に半包囲を続け、容赦のない十字砲火で侵略者の艦隊を討ち果たしていった。

 

「勝ちましたな」

 

「油断するな」

 

参謀にそう言うと、更にヴァルラ大将は攻撃を続けさせる。

 

此処は星系じゃない。

 

だからブラックホール砲などを用いても良いのだが、後でデブリの回収が余計に大変になる。

 

敵の超大型戦艦が自壊していくのを見て、味方が歓声を上げる。

 

だが、惑星アラタでズヴァールラ提督が戦死したことをはじめとして。

 

凄惨な被害が出たことを知っているヴァルラ大将は、それを喜ぶことは出来なかった。

 

通信が入る。

 

第十三艦隊の司令官であるマーザン中将からだった。

 

「惑星アラタから出ていたビーコンが停止。 以降、敵の空間転移はワープ阻害装置で全てとめることが可能となりました」

 

「了解。 惑星アラタの状況は」

 

「掃討戦が開始されています。 残りの工場は6。 現在、地上軍を下ろして、殲滅を開始しているところです」

 

「そうか……」

 

ズヴァールラ提督が少し遅れていたら。

 

惑星アラタには、直径50000㎞のガス惑星が直撃するところだった。

 

惑星アラタの工場がビーコンとなっていて、それを引き寄せていたのだ。

 

ズヴァールラ提督が、惑星アラタを守った。

 

いや、それと連携した新たの民の若き英雄、ミラン大尉がだろうか。

 

いずれにしても、今は掃討戦を続けるだけだ。

 

「敵残存戦力、1割を切りました!」

 

「無駄だと思うが、降伏勧告を」

 

「は……」

 

侵略者に降伏勧告が通ったことはない。

 

通ったとしても、降伏するフリをしての自爆が通例だった。

 

それもあって、部下達はどうせ無駄だろという顔をしていたが。

 

意外にも通っていた。

 

「こちらリアン1322229。 降伏を申し出たい」

 

「む、ロボットか」

 

「旗艦が機能停止した結果、今目が覚めた。 封印措置を受けていたAI搭載型ロボットだ。 降伏を受け入れてくれるのであれば、搭載されているデータベースを提供する」

 

「……ロボット部隊を出せ。 他に降伏勧告を受け入れる通信は」

 

ない、と答えがある。

 

では、後は始末するだけだ。

 

ヴァルラ大将は、容赦なく残りの敵艦隊を叩き潰させる。もはや組織的な抵抗力を失っている敵は。

 

笑止なばかり脆い壊滅を遂げるだけだった。

 

程なくして、敵旗艦の残骸から、ロボットが降伏を受け入れたロボットを持ち出してきた。勿論いきなりヴァルラ大将の前に連れてくるようなことはしない。

 

輸送艦の内部で尋問する。

 

勿論輸送艦は無人である。対爆機能を有しており、最悪強制ワープして遠距離に飛ばし、其処で始末する。

 

宇宙戦闘で行われる自爆は、それくらいえげつない被害を出すことがままあるのだ。

 

リアンというロボットは、首だけだった。

 

頭部だけ。

 

他の降伏を申し出たロボットも、いずれもが子供が色々組み立てて遊んだかのように、手足がつなぎ合わされていた。

 

参謀達が呻く中、ヴァルラ大将は聞く。

 

「封印措置をされたロボットは、基本的に君たちの勢力圏の惑星でしか発見されていなかった。 それがなぜだ。 しかもAIまで目覚めているだと」

 

「貴方方の攻勢が本格化して、各地から急いで持ち出されてきた封印措置のロボットの一つが私だ。 そのまま戦線に投入された旗艦の中で眠りについていたが、艦隊が機能停止したこと、何より大きな衝撃もあって、目が覚めた」

 

「そうか。 それで何を望んでいる」

 

「何も。 我々は指導者によって封印されたロボットだ。 ただ、DBは活用してほしい。 それだけだ」

 

しばし腕組みして考え込んだヴァルラ大将だが。

 

上に掛け合った方が良いだろうと判断。

 

支援者の上層部が判断する案件だ。方面軍司令官としても、面倒ごとをこれ以上は抱えたくない。

 

部下に命じて、厳重な警備をつけて、後方惑星に送るように指示。

 

実験用の惑星で、無人で回されている研究所がある。どのような事故が起きても対応できるように、だ。

 

其処で徹底的に調査して、それからだ。

 

「第十七艦隊は予定通り惑星アラタに救援に向かえ」

 

「は……」

 

「我らはこの膨大なスペースデブリを処理し次第、帰投する。 今回の勝利は大きいぞ。 侵略者の艦隊を大きく削り、奴らが持ち帰ろうとしていた肉とやらも渡さなかった。 これで指導者とやらはまた錯乱して狂乱するだろうな。 大きな隙が出来る」

 

カプセルは既に回収をさせている。

 

内部は新たの民をはじめとする惑星アラタの生物の肉だ。コンテナは相当な大きさがあり、相当数の命を刈り取って、詰め込んだことが分かる。

 

これがまるごと相手の手に渡らなかったのだ。

 

屑で知られる指導者も、さぞや苛立つことだろう。

 

デブリ回収船が来る。

 

後はそれに任せる。

 

艦隊が待機しているのは、いわゆる死んだふりをして奇襲をしてくる艦艇がいる可能性があるからだ。

 

過去にはそれで大きな被害を出した例がある。

 

二度は同じ手は喰わない。

 

ただ、それだけだった。

 

 

 

ミランが目を覚ますと。

 

ベッドに横たえられていた。

 

酷くいたかった。

 

確か救援要請をしてから、意識を失ったはずだ。ドラゴンキラーと熱剣で、文字通りなますにされる寸前に勝った。

 

我ながら、危ない勝利だったと思う。

 

側でハコトが忙しく世話をしてくれていたようだが。

 

毛並みがやたらつやつやなのはなんだ。

 

これは丸洗いされたか。

 

風呂は嫌いなんだが。

 

そう思いながら動こうとして、呻く。まだ酷くいたい。

 

「一部の傷は動脈を切り裂き、骨にまで達していました。 まだ動いては駄目です」

 

「痛い」

 

「生きている証拠です」

 

そう、医師は言う。

 

北基地にいたころの上官だった大佐と同じ種族だ。器用に触手を使って、機器を操作している。

 

被害は大きかっただろうな。

 

そう思って、ハコトを見る。

 

「ハコト、勝てましたか?」

 

「はい。 惑星アラタから、侵略者の工場は一掃されました。 星系からも、侵略者の艦隊は撤退。 現在第十三艦隊が、掃海を行って、残敵の捜索と、排除を行っています」

 

ズヴァールラ提督は。

 

そう聞くと、ハコトは目を伏せた。

 

そうか。

 

ズヴァールラ提督の旗艦に乗っていた人員は、100人も助からなかったという。司令部は全滅。

 

だが、他の艦の艦長が即座に指揮を引き継ぎ。

 

それで瓦解を防いだそうである。

 

ミランが解体屋と相打ちになって、そのすぐ後に味方の救援が来た。

 

それでも。

 

ズヴァールラ提督が命を賭けてくれなかったら。惑星アラタには、恐ろしい巨大な星が激突し。

 

それで何もかもが滅びていたそうだ。

 

「ズヴァールラ提督は感謝の言葉もありません」

 

「そうですね。 まずは体を回復させてください」

 

「分かりました」

 

ハコトが釘を刺してくる。

 

これは或いは。

 

既に次の戦いをミランが見据えている事を、見抜いたのかも知れなかった。

 

それからしばらくは、リハビリを行う。

 

しばらくして、第十三艦隊から安全宣言が出された。

 

惑星アラタからの、侵略者の完全掃討の完了。

 

以降は基地ユニットを要所だけ残して、新たの民のためにこの星を再建する事業を開始するそうだ。

 

無論ただではなく。

 

以降は支援者に協力してほしいという条件で、だが。

 

勿論ミランは協力するつもりだ。

 

協力に関しても、支援者の各地の星で様々な仕事に就いたり。惑星アラタでの環境回復活動に従事するものまである。

 

ミランのように戦いを前提としたものだけではない。

 

更に、いくつかの連絡がある。

 

その一つは、第十三艦隊の司令官であるマーザン中将からだった。

 

「正式に特務についてほしい。 少佐の地位と、専用機を渡そう」

 

「分かりました」

 

「良いのだね」

 

「はい」

 

ミランも分かっている。

 

支援者が劣勢になれば、侵略者は何度でも新たの民を襲うためにこの星に来るだろう。あれはそういう連中だ。

 

侵略者も、既に指導者には絶対に逆らえないのだろう。

 

逆らえば即座に死ぬ仕組みが作られている。

 

そういう意味では哀れなのかも知れないが。

 

ミランとしては知ったことではない。

 

それに、ミランは発情期を逃した。

 

新たの民は発情期を逃すと、基本的に子供を作らない。発情期に雌は雄からの精を受け取り、それを用いて一生子供を作る。発情期以外でまぐわうことはない。そういう種族である。

 

一生に一度の発情期は十七期前後だが。

 

それが来る予兆は絶対に体に出るのに、ミランには一切出ない。

 

どうやら新たの民も、古くは外敵……侵略者ほど破滅的な相手ではなく、肉食の獣のようだが。

 

外敵と戦うために、一部の個体が戦闘向けの成長をしていたらしく。

 

恐らくはミランはそれだろう。

 

調べて貰ったが、ミランの体内で子供を育てるための仕組みは殆ど機能していないそうである。

 

要するに、その恐らくは当たっていると言うことだ。

 

更に言えば、戦うと既に決めている。

 

今更子供を誰かしらと作ろうとは思わなかったし。

 

クローンがいる以上、子供は別のところにいて、誰かが育てている。それだけで、充分だった。

 

「まずは宇宙での戦闘訓練をして貰う。 地上とはまるで状況が違うから、苦労をすることになると思うが」

 

「どうにかしてみます」

 

「うむ。 それと指定された要件の内、少なくとも推力は満たせるはずだ。 確かに君の指摘通り、親衛軍ウォーリアは推力が桁外れだ。 いつも君はカツカツのリソースの中戦っていた。 指摘があったのに、それに答えられなくてすまなかったな」

 

「いえ……」

 

それに関しては、仕方がない話だ。

 

ともかくまたリハビリに戻る。

 

それが終わった後、やっと外に出ることが出来た。病院から出るのは久しぶりだ。太陽がまぶしい。

 

それに、もうワーカーに怯えなくてもいいのだ。

 

辺りで、新たの民の子供が走り回っている。

 

いつも基地の中で静かにしていないといけなかったことを考えると、彼らも楽しむのは当然だ。

 

しばらく歩き回る。

 

側にハコトがずっといるのは、いざという時に備えてのことである。まだ病み上がりなのだから。

 

「ミラン少佐だ!」

 

「英雄だぞ!」

 

「親衛軍ウォーリアを何機も倒した!」

 

「まだ病み上がりです!」

 

わいわいと支援者が来る。色々な種族がいる。まだ体の再生医療途上らしく、手足がない人もいた。

 

話を聞かせてほしいとせがまれて、ミランは苦笑い。

 

ハコトはどうしても力が足りなくて、押しとどめるのは無理そうだ。

 

一応、答えられることは答える。

 

ただ、思うのだ。

 

ミランのこの肉体、いつまで衰えずにいられるか。それは分からない。衰えた場合はどうする。

 

その時は、親衛軍ウォーリアに殺されるだろう。

 

それだけでいいのか。

 

記憶をクローンに転写して、また戦う。

 

そういう選択もある。

 

そうやって、ずっと侵略者と戦う事を選んだ戦士もいる。実際に、この間顔を合わせた特務の戦士もそういう人だと言っていた。

 

ミランはどうするべきなのだろう。

 

特務になった後は、親衛軍ウォーリアが出てくるような戦線に出向くことになる。たまには惑星アラタに帰ってこられるかも知れないが。

 

もうこの星には、故郷もなければ家もない。

 

全部ワーカーに平らにされた。

 

特務になったあと、将軍になるような人もいるらしい。ズヴァールラ提督のような地位になるということだ。

 

地位が上がると出来る事も増える。

 

例えば、惑星降下作戦の指揮を執るとか、作戦の提案をするとか。

 

だが、ミランはあくまで一戦士だ。

 

それはこれまでの戦いで、嫌になるほど分かった。ズヴァールラ提督みたいに振る舞うのは無理だ。

 

やがて、呼ばれる。

 

基地の一つにキャリアで出向く。

 

荒野の再生作業が始まっている。見たこともない機械で、緑化をしている。ワーカーが根こそぎ食い荒らした土地を、少しずつ元に戻しているのだ。

 

あちこちには、まだ侵略者の兵器の残骸が散らばっている。

 

それらも回収する専用の機械がある。

 

ウォーリアや対空砲もこの星に配備されるようだ。新たの民は、これからいざという時は、自分で身を守らなければならない。

 

考えたくはないが、支援者がうまくいかなくなった時とか。

 

支援者の中にも、ろくでもないのがたまにいると、ズヴァールラ提督がぼやいていたことがある。

 

そういうのが力を持ったら、きっとろくでもないことになる。

 

そういうときのためにも。

 

この星は、地力で守れるようにしなければならない。

 

基地の一つにつく。

 

ハコトを成長させたような、ロボットが来ていた。前に少し話したアリカ少佐だと名乗られた。敬礼をかわす。相手は少佐だった。ロボットでも少佐になれる。しかも、ガワは恐らく侵略者製だ。

 

今度中佐になるとか、そういう話をされる。

 

ミランに辞令を渡しながら、そういうことをアリカは言って、人なつっこく笑うのだった。

 

「これからしばらく組むことになると思います。 私は本部直属の士官ですので、特務である貴方と、その支援をするハコトさんとは当面一緒に仕事をする事になるでしょう」

 

「よろしくお願いします」

 

「はい。 丁寧な方で良かった。 親衛軍に対してものすごい暴言を吐いているのをログで見て、ちょっと怖かったんですよ」

 

「あれは相手に対する心理戦です」

 

聞かれていたのは、ちょっと困るな。

 

ともかく、此処からは戦場が変わる。そして、やることも、出来る事も。

 

まずは、また慣れるところからだ。

 

一つ、成し遂げた。

 

それは事実なのだから。

 

惑星アラタは守られた。そしてその代わりとして、ミランはこれから特務となって侵略者を少しでも倒す戦う。

 

出来る力がある。

 

だからやる。

 

ただ、それだけだ。







ズヴァールラ提督をはじめとする多くの犠牲の果てに、惑星アラタは守られました。

ミランは決意します。

大きな恩を支援者に受けた。

侵略者を放ってはおけない。

自分には出来る事がある。

ならばやることをやらなければならない、と。



本作にどういった要素がほしいですか。要望があれば遠慮なくどうぞ。

  • 詳細なマシンデザイン
  • 圧倒的な武力による蹂躙
  • 緻密な人間ドラマ
  • 種族や文明の描写
  • 近接した力量のライバルとの死闘
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