王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶 作:dwwyakata@2024
惑星アラタを巡る戦闘からしばしして。
ミランはコヴァルライト星系に来ていました。
コヴァルライト星系は、コヴァルライトという種族が母星としていた惑星コヴァルライトが存在する(第四惑星です)星系で、彼らを守り切れず、100期ほど前に支援者が撤退した星系です。
今、侵略者の勢い鈍化にともなって、支援者がこの星系を奪還するべく動いています。
指揮官は歴戦で名高いパドフ中将。
その麾下の支援者第四艦隊が、侵略者相手に苛烈な奪回戦を続けている状況です。
序、変わる環境
ミランは移動中、催眠学習で宇宙戦闘の訓練を受けた。そもそもとして、侵略者と支援者で、地上戦をしている戦線はあまり多くはない。
ミランには専用機が渡される。
ウォーリア三型。
二型に比べて推力を格段に上げ、装備も更に強化した新型である。ただ、武装についてはまだ設定の段階。
今は機体を使いこなす訓練の最中だ。
宇宙空間での戦闘は、地上とはまるで勝手が違う。
ウォーリアは地上戦では使い捨ての前衛だった。
宇宙でもそれは同じだ。
親衛軍ウォーリアのような異常なカスタム機は話が違うが、基本的に敵の兵器の矢面に立って、それで味方を守るための兵種。
それがウォーリアである。
ミランはウォーリア二型を貰ってから、それとは別方向の運用をされていた。今回もそれは同じである。
シミュレーションを何度かやって、今度は実戦形式の訓練だ。
宇宙での戦闘は、基本的に連携戦となる。
地上戦以上にだ。
ウォーリアだけでは何も出来ない。
宇宙では飛び交う亜光速ミサイルが、ウォーリアにとっては最大の脅威となる。対Gでどうにか出来る代物ではない。
親衛軍ウォーリアですらどうにもできない代物だ。
それだけではない。
大気がないことが、どれだけ兵器の「速度」を解き放つか、戦闘訓練をしながら思い知らされる。
宇宙では光速の攻撃がデフォルト。
そうでなくても亜光速が基本だ。
ウォーリアがどれだけ推力を出そうと、特に亜光速で飛んでくる質量体をまともに受けてしまうと一発で終わりだ。
それで、いくつかの約束を覚えなければならない。
最初は、制空権を確保していない状態では出るな、である。
宇宙戦闘では砲撃戦から開始され、中距離では戦闘機が制空権をとる。そして制空権をとった後、攻撃機や爆撃機の出番になる。
勿論今の時代は、宇宙戦闘の艦艇は位相変換シールドをはじめとする防御が充実している。
盾艦もいる。
それもあって、互いの距離は近接していき、最終的には至近距離での殴り合いになっていく。
ウォーリアの出番は此処からだ。
実戦形式の訓練でミランが最初に味わったのは、亜光速ミサイルに狙われたら助からない。
それからだった。
移動中に、何度も実戦形式の訓練をする。
敵艦を至近にしての近距離戦闘で優位をとる。
その訓練だ。
宇宙だと敵は通常のウォーリアを出してくる。
その実力はあまり高くない。
味方のウォーリアと大差ないと言えるだろう。いや、むしろこちらの技術が上回り始めている今は、下かも知れない。
兵種ごとに仕事がある。
万能兵器なんぞ存在しない。
それを徹底的にたたき込まれて。訓練を過ごす。そして、訓練をしながら、少佐の辞令を受けて。
正式に特務となった。
給金などの説明もされたが、別に興味はない。生活は軍の備品で出来ているし。
家屋をもらえるという話だが。
特務でどうせ年がら年中最前線だ。
家屋なんかあったところで使えるとは思わないし。子供を産むことも今後はない以上、別に家庭を其処で育むつもりもない。
何かしらの趣味に金を使っても良いとも言われたが。
そもそも支援者が用意してくれる美味しい食べ物も。
アリカが勧めてくれても。
どれも口にはあわなかった。
まずいとは思わないが、新たの民であるミランは、基本的にファーガの栄養液に適応している。
あれが味の基準であって。
それ以外の食べ物は、全て作り物と感じてしまうのである。これは勿体ない話だと言われるのだけれども。
そういう生態なので仕方がないとしか言えない。
黙々と訓練を続けているうちに。
宇宙戦闘にもなれてきた。
程なくして、連絡が入る。
第四艦隊司令官である、パドフ中将からだった。アリカによると、これから向かう戦線の司令官であるらしい。
現在コヴァルライトという星系で、支援者が攻勢に出ている。
此処は100期程前に支援者が守り切れなかった星系で、コヴァルライトという種族が暮らしていた星を内包している。
つまり惑星コヴァルライトだ。
コヴァルライトがあるので星系コヴァルライト。
色々ややこしいが、こう呼ぶ決まりになっているらしい。
ともかく、である。
この間の勝利で、敵の戦線にいくつも穴が開いた。そこを押し込んでいるのが、この戦線ということだ。
パドフ中将はルルグランテと言われる種族だ。巨大な筒状の体をしていて、一番上に大きな口がある。体は藍色をしていて、蠕動をしながら、触手を震わせて周囲とコミュニケーションを取る。
食事は生きた生物しか受け付けないという難儀な性質を持っているらしいのだが。母星にいた生物しか食べられないらしく。
食事は基本的にクローン培養した生物を丸呑みにするらしい。
ただ一度食事をすると一期から二期は食事をしなくてもいい燃費の良さであるらしく。
寿命も長いそうだ。
支援者六種族には含まれないが、かなり古参の種族の一種であるそうだが、
種として元の母星では圧倒的頂点にいて、それもあって数も繁殖力も低く。
クローンで培養するのも難しいそうで、かなりの希少種になるそうだ。
「貴方がミラン少佐ですね。 私がこれより直接の上司となるパドフ中将です。 第四艦隊の司令官をしています。 よろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いします」
恐ろしい姿だと畏怖する者もいるらしいが。
話してみると、パドフ中将は非常に理性的だ。
食事方法はぞっとするほど恐ろしいらしいが。
長く生きる種族で、そのため知能を蓄えて、高度な知恵を獲得するに至った種族であるらしい。
相手を見かけて受け付けないと判断するのは勝手だが。
それで相手の本質を見間違うのも本末転倒だろう。
「現在コヴァルライト星系では、侵略者の防衛艦隊20万隻と、我が艦隊44万隻が戦闘をしています。 目標となる惑星コヴァルライトにこれから降下部隊を送り込みたい、ところではありますが、現時点では敵の防衛線をまだ破ることが出来ていません。 そればかりか、惑星コヴァルライト以外に二つの惑星がテラフォーミングされており、其処には侵略者がコロニーを作っています」
そうなると、前回とは状況が真逆か。
こちらが侵攻する側だ。
だが、そもそもコヴァルライトは侵略者が皆殺しの末に奪い取った惑星である。元の住民を戻さなければならない。
それに、である。
「知っているかも知れませんが、侵略者の一般個体は、侵略者の指導者の私物となっています。 もしも捕虜になる可能性が出てくると、その場で爆発してしまうのです。 彼らを捕虜にして情報を聞くことも、侵略者の指導者の手から解放することも、難しいのが現状です」
「相手の遺伝子情報などのデータを分析して、何か対処は出来ませんか」
「それについては私の権限を越えた話になります」
「……分かりました」
侵略者は、指導者の私物となっている種族だ。
実質指導者しか個体は存在していないと見て良いだろう。
そう考えると、残念だが。
今いる侵略者は、全て殺すしかないのかも知れない。だが、何か他の手はないのだろうか。
考えてしまう。
「貴方には、敵の親衛軍ウォーリアを叩く役割を果たして貰います。 今までも対親衛軍ウォーリア部隊は何度か設立されました。 いずれもが戦果を挙げていますが、大きな被害も出しています。 貴方は単騎で親衛軍ウォーリアを幾度も倒し、生還している希有な存在です。 この星系でも、戦果を出してください」
「分かりました。 最大限に尽力します」
「お願いいたします」
触手でぐるんと円を描くようにするパドフ中将。
親愛の挨拶だという説明をコミュニケーション支援機から告げられて、最敬礼で応じる。
通信が切れた。
ミランが特務だから、わざわざ艦隊司令官が挨拶をしてきた事になる。
惑星アラタの戦線でも、司令官クラスと話はしたが。それは親衛軍ウォーリアを単騎で倒した実績があったからだ。
此処からも、実績を上げなければならない。
コヴァルライト星系が近づいてきたので、アリカがブリーフィングをする。
「コヴァルライト星系は、壮年期の恒星と、11の惑星がある星系です。 このうち惑星コヴァルライトは第四惑星。 第五、第六惑星がコヴァルライトとともにテラフォーミングをされています」
「なるほど」
「現時点で、第四艦隊は第七惑星のラインまで戦線を進めていますが、頑強な抵抗を受けているようですね。 パドフ中将の慎重な用兵もありますが、確実な戦線の押し上げを行っていて、まだ惑星降下作戦は実行されていません」
なるほど。
用兵家にも様々な人がいるということだが。
パドフ中将はどちらかというと堅実な戦いをするタイプと言うことか。
ズヴァールラ提督が生きていたら。
槍と盾で、それぞれの役割を分担できたのかも知れない。
そんなことをミランは思った。
まだ話は続く。
「第七惑星のラインを突破した後は、第六惑星の攻略戦に入ります。 この辺りは、前の戦いで敵が戦線を食い破られた結果、無防備で、惑星は要塞化されていません。 対宙兵装を黙らせた後、地上軍を降下させて制圧することになるかと思います」
「なるほど。 それで」
「パドフ中将の判断にもよりますが、ミラン少佐の仕事は宇宙で親衛軍ウォーリアを迎え撃つか、地上で同じ事をするかのどちらかの可能性が高そうです」
「……」
想定されるいくつかの戦場を見せられる。
いずれにしても、この星系で戦闘が始まったのはつい最近。
奪われて以降はずっと戦闘とは無縁だったため、スペースデブリなども殆ど存在していないそうだ。
「ただ、今回は少しばかり特殊な作戦があるそうです」
「特務だから、ですか」
「はい。 第七惑星の防衛ラインを突破した後、調査チームを護衛して、第六惑星に侵入する作戦が検討されているそうです」
まだ敵の支配下なのにか。
それに対して、アリカ少佐は淡々と説明する。
この間の戦闘で、一体。
封印措置をされていたロボットが、降伏してきた。
その提供してきたDBに、コヴァルライトの第六惑星に、同じく封印措置された大型のDBがあるというものが出てきたそうだ。
しかも放棄されて久しいらしく。
うまくいけば、回収できるかも知れない、ということである。
敵は基本的に撤退となると、星を更地にしてから引き上げていくのが普通だ。通常の攻囲戦では、このDBを回収できない可能性が高い。
「侵略者については、分かっていない事だらけです。 少しでも相手のことが理解できる情報を得られるのであれば、と上層部はミラン少佐という切り札を選んだようです」
「分かりました。 作戦が決まり次第、声を掛けてください」
また無茶な作戦をやらされそうだ。
アリカ少佐はそのまま戻る。
移動中の輸送船の中で、少し休むかと思ったが。
だいたい武装がそろったと言うことで、ハコトが声を掛けてきたので。様子を見に行くことにした。
ウォーリア三型は、二型よりも一回り大きい。
反物質炉を二基搭載する事で、エネルギーの残量に泣かされていた状況を改善するだけではない。
倍になった推力を生かして、更にダイナミックに動けるように、ブースターもスラスターも強化したためだ。
装備は長槍だが、これも以前より切れ味が上がっている。
親衛軍ウォーリアが時々使ってきた熱剣と同じ仕組みを槍に導入しており、いわば熱槍に仕上がっているのだ。
それだけではない。
パルスレーザーも、二連式になり、収束式レーザーに切り替えも出来るようになっている。
ピンポイントで相手を狙える状況なら、パルスレーザーよりも収束式レーザーの方が必殺の威力が出る。
一応、重さなどは確認してあったが。
これはなかなかだ。
後は、装備として、大型の盾が用意されている。
これは宇宙戦闘専用のもので、これ自体に反物質炉が搭載されていて、一瞬だけ位相変換シールドを展開することが出来る。
また羽は一対だったのが二対になっている。
これはより急速なエネルギーの残量回復を出来るようになっているようだが。
その分、コストも割高だ。
一機辺りの製造コストは、通常のウォーリアの53機分。
つまりこの機体とミランは、それだけの活躍が期待されていると言うことである。
「どうですか。 できるだけ期待に応えたつもりです」
「悪くないですね」
「良かった」
ハコトが満足げだ。
もっとも、ミランはこんなものを使わなくてもいい日が来るのが一番だと思うのだけれども。
最低でも侵略者の指導者は倒さなければならない。
それが必須になるだろう。
いくつか機能の説明を受けた後、移動中に試しておく。いきなり実戦で使うほどミランも無謀じゃない。
そして、試験運用をしている間に。
コヴァルライト星系に、輸送船は到着していた。
旗艦に挨拶に出向く。
側で見上げると、パドフ中将は想像以上に巨大な姿をしていた。文字通り見上げるようである。
星に君臨していたというのもよく分かる。
文字通りの頂点捕食者だったのだろう。
「よく来てくれましたね。 現在、各戦線で支援者の軍勢は有利に戦いを進めています。 それでも、惑星アラタの戦いでは、多くの犠牲が出ました。 この戦線では、出来るだけ被害を抑えて勝ちたいものです。 貴方はその中核になってくれる筈。 期待していますよ」
「はい。 微力を尽くします」
「それでは、早速仕事です。 ラメール大佐」
「此処に」
姿を見せたのは、ひょろっとしたつるつるの種族だ。いわゆるヒューマノイドだが、ミランとは雰囲気が随分違う。
肌は銀色をしていて、頭部らしき場所には目が四つある。
敬礼をかわし、名乗りあった後。ラメール大佐が言う。
「現在頑強に抵抗している敵部隊ですが、明らかに親衛軍です。 砲艦と親衛軍ウォーリアがどちらも狙撃型で、極めて厄介な連携をしてきています。 これの連携を崩すのが、最初のミラン少佐のこの星系での任務となります」
「分かりました。 相手のデータを出来るだけください。 作戦を立案します」
「頼もしい。 それではデータを回します。 作戦案ができ次第、すぐにでも提出してください」
敬礼をして別れる。
ラメール大佐はあれでかなりの若さで、成人もしていないそうだ。
それで大佐なのは、いわゆる天才であるかららしく。各地で実績を上げてきているのだとか。
ちなみに成人になると頭部が更に肥大化して、基本的に補助具を用いて歩くことになるそうである。
そういう種族なのだ。
別にそれを奇妙だと、ミランは思わなかった。
そして輸送艦から、空母に移る。
とんでもなく巨大な船で、島が一つまるごと浮いているかのような錯覚すら感じさせられる。
旗艦級の戦艦も巨大だったが、それ以上だ。
大きさに関しては、ずんぐりとしている分、それ以上に思える。
空母は戦艦よりも数が少ないくらいで、宇宙艦隊では最も守らなければならない艦であるらしい。
艦内には2000機以上の戦闘機をはじめとした、様々な兵科が満載されていて。ウォーリアもずらっと並んでいた。
宇宙で戦闘をしている間は、此処にしばらくは住むらしい。
特務が来たらしい。
そういう噂が周囲でされているようだ。
アリカ少佐が、部屋に案内してくれる。
別に他の兵士達と同じ部屋で構わないと話をしたのだが、そうもいかないというらしい。ミランはそれだけの戦果を挙げたので、相応の対応を受ける義務があるのだとか。
ため息が出る。
「分かりました。 ただ、地上戦に移ると、こんな巨大艦を拠点には出来なくなると思います。 その時には周囲と同じ扱いでお願いいたします。 自分だけで親衛軍ウォーリアを倒せた回数なんてほんのわずかです。 周りにいた戦士達の力戦が、親衛軍ウォーリアを退ける原動力だったのですから」
「ミラン少佐はストイックですねえ」
「よく分かりませんが、とにかくそのように計らってください」
「分かりました。 これから私はラメール大佐と打ち合わせがありますので」
アリカ中佐が行くと。
ハコトが部屋の中を整え始める。
一応新たの民にあわせて、色々調整はされているようだ。風呂があるので、うっとなったが。
出来れば風呂は入りたくない。
毛皮がない種族は、風呂に入るのが必須、みたいなところがあるらしい。
だが毛皮持ちには、風呂は苦痛である。
ただ、周囲とあわせるためには仕方がないか。大きなため息が出る。
ファーガの栄養液を食べられるという説明を受けて、それでも多少は機嫌を直した。それならば、まあある程度は我慢できるか。
その後は、連携して戦闘する部隊長達に挨拶して回る。
この空母の艦長が中佐であるので、部隊長達は殆どミランと同じ少佐か、或いは尉官ばかりだった。
それでも、丁寧に接する。
ミランは親衛軍のような連中でもない限り。相手に非礼を働くつもりはなかった。
※ウォーリア三型
少佐になり特務になったミランに提供された重カスタムウォーリアです。
製造コストが量産ウォーリアの五十機ぶんに相当。主に反物質炉を二基積んでいる事、それによる継戦能力の強化にコストがつぎ込まれています。
炉が強化されたことでずっとミランが悩まされた親衛軍ウォーリアとのパワー差、スタミナ差がなくなりました。
しかしながら親衛軍ウォーリアが持っているような多彩な能力は存在せず、あくまでパワーがあるだけのウォーリアです。
武装は長槍とパルスレーザー砲。どちらも出力が上がっただけで、以前と同じものです。
本作にどういった要素がほしいですか。要望があれば遠慮なくどうぞ。
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詳細なマシンデザイン
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圧倒的な武力による蹂躙
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緻密な人間ドラマ
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種族や文明の描写
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近接した力量のライバルとの死闘