王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶 作:dwwyakata@2024
それは地獄というのも生やさしい光景でした。
ちなみに本章より、「一般の侵略者個体」が登場します。
かなり描写が強烈ですので、気をつけてください。一応念の為。
駆逐艦が地上に迫ると、わんさか敵が群れているのが見える。
ワーカーはいない。
これは意外だ。
いや、正しいのか。
考えてみれば、ワーカーは生物を収穫するための兵器で……兵器ですらないと聞いている。
元々此処は不毛の惑星で、生物なんて存在しなかった。
侵略者もワーカーを生産する必要なんてなかったのだろう。
代わりに大量のイーターが待ち構えていたが、それは宇宙からの砲撃で、既に数を著しく減らしていた。
惑星全土で1000隻を超える駆逐艦が降下して、残敵の掃討作戦を開始している。その中の10隻なんて、敵もかまけている余裕がない。
地上付近で戦力を展開。
イーターを蹴散らすと、まずはウォーリア隊が出る。
そして、ミランは見た。
こちらに向けて、同じ衣服だろうか。とにかく青い服を着た、アリカより背が高くて、痩せているのがたくさん走ってくる。
全力で走ってくるそれらには、目に意思の光がなかった。
「侵略者だ!」
「警告後、発砲する!」
「非武装では」
「奴らは体そのものが武器なんだ!」
ミランの冷静な言葉に、降下作戦をしたことがある佐官が応えてくる。そして、その言葉はすぐに本当だと分かった。
ウォーリアの前に展開していた地上戦用ドローンが、周囲を制圧射撃していたが、それに一斉に侵略者が飛びかかる。
そして、爆発。
恐らく体内のナノマシンを発火させたんだ。
あれは全部、走る爆弾と言う訳か。
意思なんてありはしない。
親衛軍も指導者の意思をそのまま口から垂れ流している節があったが、こいつらもそれは同じか。
誰も襲いかかるのを一切ためらわないし。
銃撃を恐れてもいない。
奇声を上げることもない。
無言、無表情のまま、全力で走ってくる。そして、体が千切れようと、這ってでも迫ってくる。
ミランは状況を見ながら、パルスレーザーで寄ってくる侵略者を払わなければならなかった。
明らかにオーバーキルの攻撃だが、あれに集られて爆発されたら、どうなるか。
それに現在、既に非武装の作業チームが降りてきている。彼らを守らなければならないのだ。
「ブレイカーです!」
「来やがったな……」
「私が相手をします」
突貫。
ミランのウォーリア三型に追いすがろうと、侵略者の大群が飛びかかってくるが、中空を飛んでいるウォーリア三型に届くわけがない。無視。
侵略者を赤い霧に変えながら、ブレイカーがドリルを咆哮させる。それも一機ではない。ミランは真っ先に突撃。
「民間人」を相手にするより、こっちのが遙かに気楽だ。
飛び掛かってくるブレイカー。
だが、推力がウォーリア二型の時とは段違いに上がっているのを見せつけてやる。
すれ違いざまに、長槍で両断。
前はかなり危なかったが、余裕を持って回避できた。そのまま、ブレイカーが爆散。二機目。
今度は回避したところを狙ってきたが、上空にふっと飛んで飛び越す。それに追いすがってくるのは流石だが。
そのまま長槍で突き下ろして、串刺しにしてやる。
長槍を引き抜き、近くにある建物……でいいのだろうか、それに蹴り込む。
そこでブレイカーが爆発していた。
立て続けに二機を屠ったが、この程度で済むはずがない。
イーターが来る。
侵略者が巻き込まれるのなんてお構いなしに、水平射撃をしてくる。建物らしいのが吹っ飛ぶ。
それも関係無しか。
ジグザグに飛んで回避しながら、パルスレーザーを浴びせて確実に撃破していく。此処は孤立している地点だ。
しかも、調査チームが探っているのはゴミ山だろうか。
とにかく何か大量に捨てられている場所である。
敵はそれこそ、なんらためらいなく仕掛けてくる。
戦闘機隊も攻撃機隊も、困惑しながら戦闘を続けていた。
「特務が出てきてるが、本当にこんな場所でいいのか?」
「油断するな! 戦闘用に改造されている惑星ではないとしても、油断するとやられるぞ!」
「分かってる!」
味方のウォーリアが、大量の侵略者に飛びつかれる。
爆発。
ウォーリアから、必死に逃げ出そうとしている操縦者が、火だるまになっているのが見えた。
あれは、助けられない。
文字通りの人海戦術か。
ミランのウォーリア三型にも、あちこちの建物らしき……建物なのだろうか。とにかく、それらから命なんてどうでもいいように、侵略者が飛びかかってくる。ウォーリア三型に届かず落ちて潰れても、誰も一瞥さえしない。
泣いている子供もいなければ、逃げようとしている老人もいない。
あの指導者だ。
役立たずと認識して、生産していないのだ。
そう思うと、苛立ちが募る。
不意の一撃。
避ける。
地面が爆発し、大量の侵略者が飛び散っていた。
中空から襲いかかってくるのは、戦闘機だ。嫌に動きがいい。親衛軍かも知れない。
連続して、荷電粒子砲を放ってくる。回避。狙いは正確だが、今のウォーリア三型はそれ以上の性能だ。
左右に移動しながら下がる。
戦闘機の親衛軍が出てきた場合の対策は、既にミーティングでしている。
ウォーリア三型は、動きが速い戦闘機を相手にするのには向いていない。向いていないので、味方に任せる。
駆逐艦が、猛烈な対空砲火を戦闘機にたたき込む。
ミランはそれを一瞥しつつ、また出現したブレイカーを相手に向かう。別方向に展開しているウォーリア隊が交戦中だ。
エネルギーの残量。
まだ行ける。
親衛軍ウォーリアと互角の性能というが。
連中はこんな代物に乗っていたのかと、少し呆れてしまう。
戦闘機は、親衛軍かは分からないが。ともかく猛烈な対空砲火で追い払われる。それでいい。
相手にしないに限る。
「地上戦闘用ドローン、消耗40%!」
「ウォーリアも五機やられた! 調査チームはまだか!」
「現在調査中! もう少し耐えてくれ!」
「一体何を探しているんだよ!」
兵士が悪態をつく。
気持ちはミランも大いに分かる。そのまま、ウォーリア隊を圧倒しているブレイカーを、真後ろから襲う。
ブレイカーは即応して反転してくるが、遅い。
反転しきる前に、通り過ぎるようにして長槍を一閃。そのまま切り裂いていた。
大量の侵略者が飛びついてくるが、ウォーリア三型の速度にそのまま振り落とされる。地面で爆ぜているのを見て、無言になる。
「助かった! 流石は重カスタム機だ!」
「いえ。 それよりも危険な戦線は」
「此処はもう大丈夫だ! 他を頼む!」
「分かりました」
ブレイカーはもう相手ではない、とまでいうつもりはないが。
少なくとも、だいぶ戦いやすくはある。
あちこちの戦闘に加勢。
その過程で見た。
建物と思っているもの。
その一部が破壊されて、内部があらわになっている。其処にあるのは、ずらっとならんだ寝床らしきものだ。
画一的で、極めて不衛生。
食事はどうしているのか。
いや、分かっている。
恐らくは、侵略者が現在進行形で襲っている星から採取した「肉」の中で、指導者がいらないと判断したもの。
更には、それらをクローンで培養したもの。
それらをただ機械的に食べている。
それを示すように、固形化したもはや餌としか呼べないものが、散らばっているのが見えた。
ファーガやテフもあんな風に加工されたんだ。
そう思うと、怒りが湧く。
一瞬だけ見えた光景でも、情報量が極めて多かった。詳しい調査なんて、出来ればしたくはない。
「敵工場40%沈黙!」
「攻撃を集中。 工場ユニットを潰してから、他を制圧してください」
「了解!」
パドフ中将の冷静な指揮が飛んでいる。
地上部隊は殆どが無人兵器を使っているようだ。人が乗っているウォーリアを使っているのは此処だけかも知れない。
だとすると、敵が集中攻撃を仕掛けてくる可能性もある。
ウォーリアの羽を広げて、エネルギーを回復させる。
少し時間は掛かるが、少しでもやっておいたほうが良い。
上空で、駆逐艦の対空レールキャノンが、飛来する攻撃をたたき落としている。だが、駆逐艦も被弾しはじめたようだ。
「二番艦被弾!」
「そろそろまずいぞ」
「ブレイカー接近! 十機以上!」
「くそっ! 調査チーム!」
焦ったクラフ中佐が声を荒げるのが分かった。
ミランは冷静にブレイカーの配置を見る。
迫ってきているのは、全方位から。つまり各個撃破の好機だ。あれはウォーリアを倒すのではなく、多分駆逐艦を狙っている。
ならば。
どれから倒すか、クラフ中佐に連絡。
許可を貰ったので、後はすっ飛んでいく。
案の定、狙いを定めているブレイカー。だが、ウォーリア三型を見て、向きを変える。そして、いきなり突っ込んできた。
ギリギリをかすめた。
直撃を受けると、このウォーリア三型でも危ない。火花が散る。それでも、必死に回避する。
コアが激しく揺れた。
ブレイカーの装備しているドリルに擦ると、これだけのダメージをウォーリア三型でも受けるのか。
直撃なんてしたら一巻の終わりだな。
そうミランは内心でぼやいていた。
そのまま、飛んでいったブレイカーだが、駆逐艦との直撃コースから外れている。そうなると、対空砲火の好餌だ。
空中で爆発。
粉々に消し飛ぶ。
立て続けに、横殴りにブレイカーが飛んでくる。二機連続。
ミランは冷静に右、もう少し右、と避けた後。一気に左によける。真下に忍び寄っていたイーターによる射撃。
即時で反撃して、撃ち抜く。
爆発に大量の侵略者が巻き込まれるが、それについてもう何も考えるべきではないとミランは判断した。
程なく、通信が入る。
「見つけた! DB……というかデータセンターの残骸だ! 大きすぎて回収は厳しい! 輸送艦を手配してくれ!」
「輸送艦だと……」
「これをまるごと回収できれば、侵略者どもの秘密に迫れる可能性が高い! 急いでほしい!」
「了解! 皆、もう少し踏ん張ってくれ!」
クラフ中佐が、すぐに輸送艦を手配し始める。
ミランは次々に来るブレイカーを撃破していく。丁寧に一機ずつ。ウォーリアと交戦しているブレイカーは、確実に味方の戦力をこそぎ取っていく。
味方の無人機も、一切死を恐れない侵略者の群れに集られ、次々と爆散していた。これが特務の仕事か。
厳しい。
そうミランは思う。
通信だ。
ハコトからだった。
「侵略者の群れがそちらに向かっています!」
「群れの規模は」
「今交戦している群れの十倍以上です!」
「……分かりました」
すぐに連絡を入れる。クラフ中佐にだ。
クラフ中佐に、ミランがそれを引きつける提案をすると、正気かと聞かれたので。正気だと応える。
しばし黙り込んだ後。
クラフ中佐は、嘆息した。
「分かった。 ファイターチーム、ミラン少佐を護衛! 何機行ける!?」
「六機、どうにか出して見せます!」
「了解! グッドラック! くれぐれも無理はするな!」
そのまま飛び出す。
やはり此処で何かしてると気付いたな。ミランは回復もそこそこ、敢えて低空飛行で、迫っている侵略者の群れへ進む。
戦闘機が六機、それに続いた。
追いすがってくる侵略者。好都合だ。それだけ、本体から戦力が削がれる。ブレイカーへの対処が大変になるが、耐えて貰うしかない。
「4番艦被弾! ブレイカーです!」
「叩き潰せ!」
「火力集中! 駆逐艦に多少被害が出ても構わん! 内部にプラズマ砲をたたき込まれるよりマシだ!」
「また来ます!」
阿鼻叫喚。
だが、今迫っている侵略者の群れを通したら、もはやそれどころではなくなる。全滅不可避だろう。
此処以外の戦場は、悪くはないようだ。
既に60%の工場が沈黙したようだ。だとすると、此処が正念場である。此処を耐え抜けば、どうにか出来る。
「敵視認!」
「ウォーリア隊だ!」
敵ウォーリア、十機以上いる。
ただあれは、動きから見て、親衛軍ではない。ミランは雁行陣を敷いている敵を見て、敢えて進軍方向を変える。そして、エネルギーの残量を見ながら、速度を上げていた。
突貫。
すれ違いざまに一機を、上下両断。更に、包み込んでくる敵の包囲網の内、一番分厚いところを敢えてパルスレーザーで射撃して、其処を無理矢理突破する。
突破の際、装甲がぶつかり合って、激しい火花を散らした。
みるみるエネルギーの残量が減る。
戦闘機隊が支援攻撃してくれる。
ミランは下がりつつ、パルスレーザーで射撃。一機、また一機と葬る。戦闘機隊も支援をしてくれるが、あくまで制空権をとるのが通常の戦闘機だ。火力不足で、ウォーリアを蹴散らすわけにはいかない。
下がりつつ、見る。
確かに地平を埋め尽くすほどの侵略者が走ってくるのが見える。
こんな距離を、あんな劣悪な食事で走れるのか。
そう思ったが、或いは。
体内のエネルギー全部を燃やしながら走っているのかも知れない。
これから自爆するのだ。
残りの体内のエネルギーなんてどうでもいいし、なんなら野垂れ死にしてもそれで良いのだろう。
種として色々終わっている。
そうとしかいえない。
そういえば、ハコトやアリカは髪が存在しているが、走ってくる連中は皆髪の毛が存在しない。
或いはだけれども、無駄だから遺伝子操作で取り去ってしまったのか。
あの指導者だったらあり得る話だと思って、ミランはげんなりする。
「敵スウォーム接近!」
「スウォームの対処を。 まともにぶつからないで、誘導するように戦ってください」
「了解! 英雄も武運を!」
戦闘機隊が、スウォームを誘引すべく、編隊を組んで飛んでいく。
ミランも後退しながら、斬りかかってくるウォーリアを、一機ずつ斬り伏せていく。親衛軍がどれだけのコストが掛かっているか。こうして通常の侵略者ウォーリアと戦ってみるとよく分かる。
二機同時。
左右から。
だが、下がりつつ、左に寄り。
振りかぶってきた大斧を振り下ろす前に、両断。
更にバックステップしながら、長槍を回転して。後ろにいる敵のコアを突き刺し、貫いていた。
まずい。
エネルギーの残量が、もう殆どない。
今のでウォーリア隊は片付けた。羽を広げて回復しながら、迫る侵略者の大軍を見る。さて、どうするか。
連絡をくれたのが、アリカ中佐だ。
「無理をしていますね」
「仕方がありません」
「誘導しますので、そちらへ」
「……分かりました」
わずかだけ回復したエネルギーを無駄にしないように、迫る膨大な侵略者の群れに、敢えてゆっくり下がりながら逃げる。追いすがってくる。指示された方向は、谷間になっているようだ。
殆ど地形は平らにされてしまっているのだが、或いはこの辺りは何かを作るつもりだったのかも知れない。
その谷間に、入り込むようにして、ゆっくり下がる。
侵略者の群れがボトルネックを起こす。
それでも、膨大に追いすがってくる。
「先頭部隊に石でも蹴り落として、時間を稼いでください」
「石、ですか」
「彼らは体内にナノマシンを入れられていて、死ぬためだけに生きています。 思考する能力もなく、ただの生体ロボットとして動かされています。 気にしないで、そのまま倒してください」
「……っ」
侵略者すら。
これは犠牲者ではないのか。
そういう考えが浮かぶ。
指導者がどのようにして、この種族の長に収まったのかは、ミランには分からない。何かどうしようもない事情でもあったのかもしれない。
だが、これはあんまりだ。
支援者の構成種族の中には真社会性を持っていて、他種族と協調できないため、自分たちの惑星でひたすら支援のための物資を作ることに集中している種族もいるらしい。他にも他種族との協調が性質上どうしても難しい種族や、思想上他種族とともにあることが難しい種族もいるらしい。
それでも、ここまで酷くはないはずだ。
ミランはわずかな迷いの果てに、石を蹴り落とす。
石が大量の侵略者を挽きつぶしながら、転がり落ちていく。追いすがってきた侵略者が、無言のまま、味方の亡骸を踏み越えてくる。
一度やると、感覚が麻痺する。
坂になっている谷間で、いくつも石を蹴り落とす。そのたびに、大量の侵略者が倒れる。
直後、である。
ボトルネックを起こしていた侵略者の群れに、空からの光が突き刺さった。
宇宙からの砲撃だと、言われなくても一発で分かる。
文字通りの蒸発である。
今の状態の侵略者に痛みとか感じる事が出来るのかは、ミランにも分からない。ただ、これは。
蒸発した侵略者だけじゃない。
超高熱による砲撃で、爆発が起きる。
それに巻き込まれた侵略者が、火だるまになりながら、手足がバラバラに千切れながら、吹っ飛んでいく。
こんな死に方をするために。
こいつらは生まれてきたのか。
更に砲撃が、後続の侵略者に突き刺さる。爆発。連続して、それらが十度以上も続いた。
侵略者は消し飛ばされ、爆風に引きちぎられ、殆どが消し飛ぶ。わずかな生き残りも、地上でひくひくと蠢くばかりだった。
パドフ中将が通信を入れてくる。
「目標、97%消滅。 ミラン少佐、無事ですか」
「はい」
「任務を続行してください。 この戦争を終わらせるために」
ぐっと歯を噛む。
戦争なんてこんなものだ。
それは分かっている筈だ。相手があまりにもおかしい集団だから、それをどこかで忘れていたかも知れない。
合流する。もうこの侵略者の群れは無力だ。
味方部隊はまだ苦戦している。
輸送船が来て、増援部隊が敵を押し返し始めたようだが。それもまだまだ予断を許さない。
エネルギーの残量を回復しながら、味方と合流。
戦闘機隊も、どうにか傷つきながら戻ってきていた。
「作業チーム、まだか!」
「もう終わる! 輸送船、指定の通りトラクタービームを!」
「了解。 大量のゴミもろとも、宝を引き上げる」
「やっとか畜生!」
兵士達の悪態が、嫌に生々しく聞こえた。
ミランは消耗が激しいウォーリア三型に、もう少しだと、言い聞かせる。まだブレイカーがいる。
まだ休めない。
特務が撤退を開始する。追いすがってくる敵を、ミランがどうにか蹴散らす。
調査チームは無傷のまま撤退。
だが、護衛チームの損害は極めて大きかった。
それに、だ。
辺りには、侵略者の爆発の跡。侵略者の残骸。それらが文字通り幾らでも折り重なっている。
侵略者の血は赤いらしい。
だが、あまりにも流れすぎて、もはや辺りは黒ずんでいた。
最後の部隊が引き上げてくる。ミランが支援攻撃をして、敵を追い払う。両腕を失っている侵略者が、まだこちらに歩み来る。腹からは、内臓がはみ出していた。
あれはどう見ても助かる傷じゃない。
ミランは無言で、パルスレーザーを浴びせた。それでパンと爆ぜ散る侵略者。せめてもの介錯だ。
彼らは何も喋ることさえ出来ない。
そんな機能は必要とさえされなかったのだろう。
文字通りの生きているだけの道具。
指導者の私物と言う訳だ。
「ミラン機、帰投します」
「よくやってくれた。 親衛軍はいなかったとしても、記録的な戦果だ」
「はい」
「メンタルケアプログラムを準備してある。 すぐにそれを受けてほしい」
クラフ中佐が、そういう。ミランも、そうしなければならないだろうなとは思った。
特務が引き上げていく。この星は、まもなく陥落する。
侵略者は降伏なんかしない。
いや、そうする選択肢すらない。
家族なんていない。
子供も親も恋人もいない。ただの道具として指導者の気まぐれで作り出されて、指導者の思うように働かされて。
戦場になれば、自分を爆弾として、敵に襲いかかるだけの、モノ。
ハコトやアリカ中佐が流ちょうに喋るのを見る限り、元々侵略者がこういう存在だったとは思えない。
親衛軍も指導者に都合が悪い事は言えないようだが、それでも個性らしいものは存在している。
それすら奪われたあの姿。
おぞましいというよりも、もはや痛々しかった。
「作戦完了。 特務帰還します」
「被害をまとめて報告してください。 得られた情報は、最終的な勝利のために必ず生かすことを約束します」
パドフ中将の言葉だ。
そうでなければ困る。
ミランはそう思いながら、第六惑星がずっと遠ざかっていくのを見る。凄惨な地上戦は、まもなく終わりを迎えるようだ。
地上侵攻軍が勝利しつつある。
後はドローンだけで行ける。
「残存敵工場4」
「最後まで気を抜かないように。 何をしてくるか分からない以上、まだ油断はしないようにしてください」
「了解」
ミランが空母に戻ると。
特務に参加した左官達が、敬礼して迎えてくれた。
誰も何も言わない。
ミランも一つだけ頷くと、自室に戻る。メンタルケアプログラムとして、風呂に入った後、ヘルメットをつける。
それで、脳に焼き付いたダメージをこそぎ取る。
新たの民の精神治療はまだ発展段階だが、それでも目に見えて効果があるのも分かる。ただ、一度でやると脳への負担が大きすぎる。
一度ヘルメットをとると、指示された薬剤を口に入れて飲み下す。
お世辞にも美味しいものではない。
それでも、必要なことだ。
「ミラン少佐、一眠りしてください」
「しかし、まだ戦いが続いているのでは」
「そうですが、これもメンタルケアプログラムの一環です」
「……分かりました」
ハコトに急かされて、それで眠ることにする。
眠っても、あの侵略者達の壮絶な死に様が浮かんでくる。恐らく睡眠導入剤も飲んだはずだが、それでも眠りは浅かった。
目が覚めた後は、メンタルケアプログラムをまた受ける。
これはしばらくは、これを続けなければいけないかも知れない。
ただ、もう一度同じ事をやって、それでまた一眠りしてから、パドフ中将に呼び出しを受ける。
親衛軍かと思ったが。
どうやら違うらしかった。
旗艦で、直接話を聞く。パドフ中将は蠕動し、触手を蠢かせながら言う。
「第六惑星での戦闘は勝利に終わりました。 見事な働きでしたね、ミラン少佐」
「ありがとうございます」
「分かっています。 つらい戦いをさせました。 しかし、このままではあの悲劇が銀河系全土、それどころか最悪宇宙全土まで拡大するでしょう」
「はい。 分かっています」
分かっているが。
わざわざ呼び出したのは、それが理由ではないだろう。
咳払いらしいのをすると、パドフ中将は言う。
「次の作戦です。 第五惑星軌道上に、敵の主力が集結しています。 普通だったら此処は持久戦を狙うのが定石ですが、どうみても短期決戦の構えです。 何かしらの策を敵が狙っている。 私はそう判断しました」
「は……」
「現在、味方の第十九艦隊がこちらに向かっています。 戦闘用の艦艇30万隻に加え、様々な工作艦を有する支援艦隊でもあります。 ほんのわずかな前の戦闘で、侵略者は星系内にブラックホールを撃ち込むという信じられない行動に出ています。 今後は、彼らが何をしてもおかしくない。 そう判断して、司令部は動くことにしたようです」
そうか。
それは多少動きが窮屈になるだろうが。
それでも、必要な措置だろう。
それに、あの侵略者の指導者だ。負け自体を認めないかも知れない。だとすると、この状況下でまた無理な攻勢を狙ってくる可能性もあるのか。
いずれにしても厄介極まりない話だ。
「ミラン少佐は、メンタルケアプログラムを受けて、体調を万全にしてください。 その間に、第四艦隊は第十九艦隊と合流。 形式的には第四艦隊のままで、私が指揮をとります。 第五惑星の攻略戦に向けて、英気を養ってください」
敬礼すると、空母に戻る。
現在敵艦隊は20万隻を割り込んだようだが、此処で更に味方は30万隻を追加か。
コヴァルライト星系に来る前にアリカ中佐に聞いたが、現在いくつかの戦線では問題なく味方が平押ししているらしい。
敵が放棄した星系を、150ほど制圧もしたそうだ。
勝ってはいる。
だがどうも嫌な予感がする。侵略者の指導者は、何をしでかすか、本当に分からないからである。
言われたとおり、メンタルケアプログラムを受ける。
今のままでは、手元が鈍る。
それについては、ミランも分かっていた。侵略者という種族ですら、指導者の犠牲者なのかも知れない。その考えは、膨れ上がる一方だった。
※一般的な侵略者2
侵略者という存在の現状がこれです。
侵略者の指導者は、基本的にコントロール下に置けないものを極めて嫌っています。そのため、侵略者に何重もの枷を掛けています。
今の侵略者は全ての個体がクローン生成され、大人として誕生します。性別はなし。髪の毛などの無駄な要素も全て無し。全ての個体は指導者が「優秀」と判断した遺伝子から作り出されたものですが、生まれた瞬間制御用のナノマシンを入れられます。
このナノマシンは管理用で、親衛軍に入れられているのと同じです。指導者に対して疑念を抱く、口答えをする、憎悪する、不興を買う、更には超光速ネットワークから外れる。指導者がその個体に死ねと思念する。それらで即座に爆発します。一応肉体の調整用でもありますが。
侵略者の一般個体はこのほかにもあまり長生きできないように調整されている他、栄養と言うだけの餌を与えられ、休憩を最低限だけ与えられ、生まれてから文字通り死ぬまで一生指導者が考えた「適切な」労働をさせられます。一般個体は指導者が「バカは考えても無駄」と考えているため、まともな思考力すらオミットされています。研究者などの個体ですら、殆どオミットされているほどです。親衛軍は一般個体に比べてまだ自由がある方なのです。
そして戦闘になると、彼らは自走爆弾と化します。
支援者の兵器に襲いかかり、体内のナノマシンを爆発させるのです。
もはや其処には、知的生命体の意思も尊厳もありません。
本作にどういった要素がほしいですか。要望があれば遠慮なくどうぞ。
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詳細なマシンデザイン
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圧倒的な武力による蹂躙
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緻密な人間ドラマ
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種族や文明の描写
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近接した力量のライバルとの死闘