王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶 作:dwwyakata@2024
※戦闘機と攻撃機
現在地球では戦場の主役である戦闘機ですが、本作世界では基本的に制空権確保用の兵器であって、現在地球ほどの万能存在ではありません。宇宙戦闘では中距離戦を担い、地上戦では侵略者の空中兵器との戦闘を行って、制空権を確保するのが主任務です。
制空権を確保した後は攻撃機が出ることになります。
攻撃機の火力は圧倒的で、ワーカーをゴミ屑のように引き裂く事が出来る他、大型兵器も相手にして戦闘が可能です。
もっとも制空権を抑えられていないと、簡単にたたき落とされてしまうのは、現在地球と同じですね。
侵略者の使っている工場を一つ破壊しても、皆は別に喜ばなかった。むしろ支援者の方が喜んでいるくらいだ。
ミランもそうだが。
戦いなんて別に好きじゃない。
喰われるのは嫌だから戦っている。それ以上でも以下でもない。
侵略者は極めて好戦的で。
同種でも殺し合い、食い合うほどの種族であるのだとか。
だとすると、自分たちのルールをこちらに持ち込んでいるのかも知れない。
それだけは許せない。
どうして自分は自分、他人は他人と思えないのだろう。
新たの民ですら、色々な考え方があって。
他人に自分の思想を押しつけないのは当たり前の話だ。
戦争の時ですら、戦いたくない者はいる。
そういう者は、ファーガの世話をしても選っていたり。テフの面倒を見てもらったりしている。
ミランだって戦いなんかしたくないけれど。
それでもやるしかないからやっている。
今ウォーリアに乗っている者も。
基地の銃座に座っている者だって。
それらは同じの筈だ。
無言で迫り来るワーカーの群れを見る。
この間親衛軍のウォーリアを見てから、明らかに支援者は殺気立っている。何かしらの戦略の転換があったかもしれない。
そう判断している支援者の佐官もいた。
「よし、いつも通り撃退する!」
「前衛、いつも通り時間を稼げ!」
「おおっ!」
気合いを張り上げたのは、支援者のウォーリアだ。
この間の戦い以来、増援が来るようになった。主にウォーリア乗りが主体だが、たまに空軍も来る。
この近くの宇宙での戦いが激しくなっているようで。
侵略者はこの星をどうしても奪い取りたい。
そう支援者は分析しているようだ。
勿論、この星を奪い取られたら。
住んでいる皆は侵略者に喰われることになる。
絶対に御免だ。
ワーカーの群れに、パルスレーザーをたたき込み続ける。次々に倒れるが、やはり燃費が悪い。
ウォーリア二型の弱点は既に周知されていて。
周囲の随伴機が常にカバーしてくれている。
前回の西基地での戦闘では、随伴機一機が破壊され、一機が半壊した。それを聞いても、誰も随伴を嫌がらない。
前衛で暴れている支援者もそうだが。
基地で指揮を執っている支援者もクローン出身者がたくさんいる。
普通に子供を産んで育ててもとても間に合わないらしい。
そのうち新たの民もクローンを導入する。
実際ミランも、求められるままに血液と毛を提供した。
これから子供が出来るというのだから不思議だ。
発情期に数ヶ月、雌雄で必要なだけまぐわって。それでやっと子供が出来る。多くても二人。
それが新たの民の普通だった。
クローンは二種類あって。
個人をそのまま作り出すもの。
別の人との情報を組み合わせて作り出す擬似的な子供。
それに別れるらしい。
ともかくとして、ミランの子供が今どこかで作り出されている可能性が高い。そう思うと、不思議だった。
パルスレーザーで、敵を散らしながら、下がる。
ワーカーはともかくやられてもやられてもまるで意に介さず詰めてくる。
上空に展開しているデコイドローンが、敵の情報を神経質に探っていて。データリンクを続けている。
被害を出来るだけ抑えるように。
そういう意図があるらしい。
今までは、そんなことしなかったのに。
大佐は、この戦場がそれだけ重要になったのだと、つらそうな顔で言っていた。
大佐達の上にいる「将軍」達の判断であるらしい。
現場では支援を要求し。
実戦を指揮するしか出来ない。
そうしないと軍隊は動かない。
そういうものらしかった。
ちなみに、新たの民からも、希望者を募って。大佐と同じような立場になる者を募集しているようだが。
今のところ、応募者はほとんどいないそうだ。
新たの民は上下関係とか、他人に指示をするとか、あまり興味がない。
そういうことをしない種族だからだ。
適性がないのでやらない。やらせても混乱するだけ。
それは支援者も理解しているらしく。
他にも同じような種族と出会って支援したことがあるそうで。
そのため。何も文句を言ってくることはなかった。
戦ってくれるだけマシ。
そう大佐はぼやいていた。
ワーカーの圧が強くなってくる。
支援者のウォーリアが突出しかけたので、警告をしつつ。狙っているワーカーをパルスレーザーで撃ち抜く。
翼を広げて回復を開始。
頭に血が上っていた支援者のウォーリア乗りは、下がってきていた。
「ワーカーの後端を確認」
「今日のワーカーは少ないな」
「何かの罠かも知れない。 気をつけろ。 油断せず殲滅する」
「了解」
大佐が冷静に指示を出し、下がりながら敵を始末する。
ぞくりとした。
即座に、近くに転がっていたワーカーの残骸を盾にする。散開。ミランが叫ぶ。同時に、ワーカーの死体と、周囲が爆散していた。
今の気配。
やはりだ。
上空にいる。
ウォーリアの装備しているブースターは、地面から若干浮いて移動するくらいに使う事が多いのだが。
あれはかなりの高空を、余裕を持って浮いている。
手にしているのはレールキャノンだと思う。
それも連発式の奴だ。
デコイドローンが、立て続けに撃ち抜かれる。
「親衛軍確認!」
「気をつけろ、手強いぞ!」
「……いや、引いていくようです」
ミランが冷静に分析。
そして、今の攻撃の余波で倒れたウォーリアを庇いながら、退避するように指示。
勇敢に小型のキャリアで乗り付けた数名の新たの民が、半壊して倒れているウォーリアから、ウォーリア乗りを助け出す。
その間、ミランは彼らを支援。
群がってくるワーカーを仕留める。
空中戦をしている敵ウォーリア。
ドローンはどんな鳥よりも早く、俊敏に動くのに。それをものともせず、余裕で撃墜している。
そして、ミランが言ったとおり下がっていった。
悠々という感じだ。
今の攻撃で味方が乱れ、何機かウォーリアがやられたようだ。
親衛軍と聞くだけで、恐れに動きが鈍った支援者のウォーリアが、瞬く間にワーカーに喰われた。
恐ろしい相手だ。
親衛軍というのは言葉の意味すら分からないが、とにかく危険だと言うことだけは分かる。
危険察知は新たの民の得意な事だ。
これがあるから、戦闘をしなくても生きてこられたのかも知れないと、支援者に言われた。
ともかく、味方を支援しつつ、ワーカーを捌く。
程なく味方の救援が完了。キャリアが負傷者を乗せて戻っていく。
ミランも下がりながら、回復。
残りのワーカーを掃射砲の範囲に引きずり込んで、そのまま撃破していく様子を見守っていた。
ワーカーが全滅すると、降りる。
今回のワーカーは、北基地からかなり離れた工場から来たらしい。
わざわざ長距離を攻めてきたのは、この間西基地近くの工場を破壊したからだ。ただ、それには不可解な点も多いらしい。
なぜわざわざ北基地を狙ってきたのか。
それが問題であるそうだ。
休んでいると、大佐が来る。
そして、今回親衛軍に誰よりも早く気付いたことを褒めてくれた。喜ぶに喜べない。今回も三機ウォーリアがやられ、二人の支援者と一人の新たの民が殺されたのだから。
ウォーリアも残骸をどうにか組み立てて、修理をしている。
次の襲撃までに修理を間に合わせなければならないので、皆必死だ。
ミランがぼんやりしていられるのは、ウォーリアに乗って奮戦したから。それでも忸怩たるものがある。
「親衛軍の目撃例は、デコイドローンからのを含めてこれで四度目だ。 活動している親衛軍はあの白い奴だけのようだが」
「親衛軍もたくさんいるんですか」
「ああ。 特徴がそれぞれあるんだが、あの白い奴はウォーリアの操縦に特化した奴でな。 各地であれが出てくると、大きな被害を出す。 ウォーリアでの格闘戦で倒した例もあるにはあるが、ほとんどは戦艦からの砲撃などで対処しているような、危険な相手だ」
どうも親衛軍はクローンで増やされているらしい。
クローンで肉体を作った後、戦闘経験などを強引に埋め込んであの強さにしているのだとか。
「この近くの宇宙での戦闘は激しさを増していて、宇宙からの砲撃で工場を潰すのは難しくなっている。 近々また何かしらの作戦を行うそうだが、その時はまた頼むぞミランくん」
「分かりました」
敬礼をかわすと、大佐は行く。
丸まって休んで、とにかく疲れを取る。
ワーカーはひっきりなしには攻めては来ないが、親衛軍が姿を見せてから、明らかに空気が変わった。
支援者の部隊が、各地から引き抜かれてこちらに集められているらしい。
ワーカーの撃退は楽にはなったが。
それでもワーカーの群れを撃破するたびに被害は出る。
それを喜ぶことなど出来ようがなかった。
二日後。
キャリアにウォーリア二型を乗せて、東基地へ。
東基地はどちらかというと補給拠点の要素が強くて、今までワーカーとほとんど戦っていない。
内部には多数のファーガが守られていて。繁殖と栄養を得るための設備までも作られている。
設備を作ることにいい顔をしない新たの民も多かったのだが。
支援者に説得されたのだ。
このままでは大事なファーガを守れない。
だから、ファーガを守る仕組みを受け入れてほしいと。
事実、なすすべなくワーカーにファーガを殺される様子は、今戦っている新たの民はほとんど誰もが見てきている。
それを聞くと、流石に誰もが仕方がないと諦めるしかないのが現実だ。
東基地には、支援者の部隊が来ていると聞く。
山の中を進んでいく。
この辺りはまだ緑が多く。
木々を傷つけないように、キャリアは気をつけて進む。場合によっては森の上を飛ぶこともある。
狙われやすくなるが、新たの民との友好をそれだけ優先したい。
そう、東基地の司令をしている支援者、バダダ中佐はいうのだ。
ミランとしても、それだけこちらを尊重してくれるなら、言うことはない。
ともかく、山深い東基地に着く。
周囲は懐かしい緑の臭いがあって。
戦闘用のウォーリア操縦服なんか脱いで、衣だけ着て昔のように過ごしたいなと思う。ウォーリアを操縦するための服は、思考やちょっとした動作を読み取って、ウォーリアを動かすのに必要だし。
不快感を抑えるための高度な技術が使われている非常に高性能なものだ。
着ていて不快感はないが。
やはり四六時中着ていると、どうしても脱ぎたくはなる。
無言で東基地の新たの民達と挨拶する。
基地の近くに、大きな球体が着ている。
挨拶を終えると、バダダ中佐が着た。
残念だけれど、支援者は見分けがつかない。大佐と同じにしか見えなかった。
だから、着いている階級章と、名札で見分けるしかない。
勿論それは支援者にとってこちらも同じ事なので。
互いに受け入れるしかないことだった。
「君が二度も親衛軍の攻撃から逃げのびたミランくんだね。 今度君を下士官として迎えたいと上層部は言っているらしい。 宇宙での戦闘に参加してほしいそうだよ」
「よく分かりませんが、目の前のワーカーと侵略者を倒すだけです」
「頼もしい。 静かな君たちの闘志は、僕たちは得られなかったものだ。 どうしても僕たちは、怒りで熱くなる。 それが味方の被害を増やしてしまうことが分かっていてもね……」
新たの民のウォーリア乗り達と、巨大な球体を見に行き。
それで説明を受けた。
これは前線での戦闘用に準備されているユニットで、親衛軍撃破の実績もあるらしい。今回新しく生産されたもので、此処に回されてきたそうだ。
「広域で現在ドローンが展開していて、親衛軍……今まで確認されている中では一機だけだが、それの動きを探っている。 親衛軍は既に聞いているかもしれないが、何種類もいる。 いずれもが恐ろしく手強く、与えられているウォーリアも相当にカスタマイズされている強力なものだ」
「……」
そうかとしか思えない。
バダダ中佐は、それから淡々と説明する。
この巨大な球体は一種の前線基地として機能すると同時に、親衛軍の攻撃に耐え、更には倒すための武装を有しているらしい。
親衛軍の中身というか、操縦している侵略者は非常に強いようだが。
それでも光の速度の攻撃はよけられない。
装備しているのは超高出力のレーザー兵器で。
弾幕で動きを拘束して。
そしてレーザーで仕留める仕組みだそうだ。
今回、東地区にまとまった数のワーカーが攻めてきているが、これもまた遠くから来た群れだ。
工場が新しく作られないのは既に支援者も分析して知っているらしいのだが。
これは工場が現地で自己増殖をして。
制御不能になる事を侵略者が恐れているから、らしい。
「ここ最近の戦闘を見る限り、ワーカーとの戦闘に、親衛軍は出てきている。 この親衛軍撃破用ユニットは、この基地にこのまま待機する。 君たちは基地から少し離れた地点で、ワーカーの軍団を迎え撃ってほしい。 基地には遠距離用の砲を配備した。 それで可能な限り支援する」
「待ってください。 麓の森は……」
「それも餌だ。 とにかく、親衛軍はあらゆる手段で倒さなければならない」
「餌ですって?」
熱く怒ることはない。
だが、それでも静かに怒る。
それが新たの民だ。
新たの民が皆怒っているのに気付いて、バダダ中佐は慌てて謝罪した。
「すまない。 君たちが自然とともにある種族で、誰よりもファーガやテフ、それに森や草原とともにあることは分かっている。 だが、侵略者もそれを知っているんだ。 恐らく必死に死守に出てきたところを、親衛軍が出てくると見て良い。 親衛軍は見ていて分かったと思うが、単騎でワーカーの群れに匹敵する強さを持っている危険な相手だ。 倒せる時に倒さなければならないんだ」
「それで囮として森を使うと」
「侵略者は君たちの性質を知っている。 森を襲えば、絶対に守りに出てくる事を理解しているんだ。 それで攻めてくる。 そして、君たちが出てきたところを、親衛軍で……という狙いだろう」
ミランが名前を呼ばれた。
頷くと、前に出る。
先に、あの白い奴と同種……同一人物?であるらしい親衛軍ウォーリアの格闘戦の画像を見せられる。
まずい。
狙撃なんか、あいつにとっては余技に過ぎなかったのだと一目で分かる。
あいつの本領は格闘戦だ。
真っ黒な空間での戦闘……多分宇宙とやらなのだけれども。
ばったばったとウォーリアが斬られている。
手にしているのは、長細い武器。両手に一本ずつ。
剣と言われるものだ。
「今回、親衛軍をどうにか地上戦に持ち込むべく、高空攻撃用のドローンを用意している。 そして君を二回狙ってきたことから、侵略者は……親衛軍を出して君を観察していたと判断する」
「どうにも分かりません。 どうしてそう色々判断できるんですか」
「前もあったのだ。 僕の種族にもエースが何人かいたが、親衛軍は同じような動きをして探りを入れてきて。 そして三度目で格闘戦で殺しに来た。 それにみんなやられた。 あの白い親衛軍はエース殺しだ。 今度の戦いでは、恐らく狙撃の後、格闘戦でミランくん。 君を斬りに来る」
そうか。
激突は避けられないらしい。
ともかく、ウォーリアも支援者のものを含めて40機が準備される。
そして今回、随伴としては、支援者のウォーリアが着いてくれるらしい。
敬礼をした後、説明をされる。
「恐らく相手は俺を最初に潰しに来る。 其処で、俺はこれを用意した」
「それは」
「位相シールドだ。 詳しい説明は省くが、基本的にどんな攻撃でも確実に一回は防げる。 勿論手足をだるまにされる可能性も高いから、命だけは守る仕組みだ」
「分かりました」
支援者もそれだけ命を賭けてくれていると言う訳だ。
ともかく後は細かい作戦をいくつか打ち合わせた後、前線に出る。
ワーカーを森のだいぶ前で迎え撃つのは、暗黙の了解になっていた。
布陣すると、もうワーカーが来る。
戦闘準備。
そう声が掛かり。
皆がパルスレーザーを構える。
そして、ワーカーが森に近づけないように、一斉射を開始した。
基地からも遠距離射撃が始まる。
立て続けに着弾する。ワーカーが吹っ飛ぶ。だが、ワーカーは気にせず詰めてきている。ドローンの部隊が、相手を観測。
もっと早くからこれをやってほしかったなとミランは思う。
「ワーカーの総数、およそ2000!」
「いつもより若干多い程度だが、油断するな。 支援攻撃は分厚く行う! くれぐれも突出したり、スタンドプレイは避けろ!」
「了解!」
やはり最前列に突っ込んでいくのは支援者のウォーリアだ。
皆熱い心の持ち主であるらしい。
斧という巨大な武器を振り回している機体が、暴れ狂っている。かなり腕が良いウォーリア乗りのようだ。
通信が入る。
中佐からだ。
「前衛にいるキスラム中尉は歴戦の勇士だ。 彼を親衛軍が狙ってくる可能性もある。 ともかく、油断だけはしないようにしてくれ」
「分かりました」
少しずつ下がりながら、パルスレーザーを乱射。
いつでも長槍を抜けるようにする。
戦闘スタイルは見た。
ものすごく手数が多くて、そしてとんでもなく早い。
ウォーリアの基礎性能も遙かに相手が上。
何より問題なのは。
乗っている奴が、とてつもなく強いと言うことだ。
しばらくは、回復と射撃を繰り返す。
キスラム中尉の暴れぶりで、多少はワーカーの勢いも鈍っている。基地からの猛撃も、気合いが入っている。
西基地は、いいファーガを多数預けていて。
交配などもしている生命線だ。
更には、周囲にはファーガやテフにとって大事な森もあるし。それらには、新たの民と共存はしていなくても。森を支えている生物たちがたくさんいる。
肉食の動物もいるが。それはいて当然の存在だ。
ミランは肉食の動物を嫌ったことはない。
仲良くなることは出来ないだろうが。
それはそれとして、殺すことは別問題なのである。
まだ嫌な予感はしない。
味方ウォーリアに飛びかかったワーカーを援護射撃で仕留める。パルスレーザーの使い方がどんどん馴染んできている。
回復しながら下がろうとした、その瞬間だった。
「散開!」
「!」
直衛についていたウォーリアが、消し飛んでいた。
位相シールドでコア部分だけは守ったが、それだけ。コア部分から飛び出してきた支援者が、走って逃げ出す。
森に待機していたキャリアが来て、彼を回収していく中。
ブースターをふかして。
至近距離に、白いウォーリアが降り立っていた。
親衛軍だ。速くて接近が分からなかった。
こんな速度で動き回れるのに、更に正確な狙撃をしてきたのか。
長槍を抜く。
槍の先端が高速振動しつつ、高熱を帯びる。
ウォーリアの装甲でも、当たれば一撃だ。当たれば。
勿論それは、相手が両手に持っている武器も同じ。
対峙は秒もない。
即座に仕掛けてきた。
耐えるのは十秒。
分かっている。
ものすごい動きで、連撃をたたき込んでくる親衛軍。周りのウォーリアは、指示が飛んでいる。
「各機はワーカーとの戦闘に集中! 戦闘はミラン機に任せろ!」
「簡単に言ってくれる……」
長槍の絵が、一瞬で斬りおられた。
動きが尋常じゃない。
肉食の動物の中でも、鋭い敏捷性を生かして、何倍も体が大きい獲物を狩る種類はいるが。
それらを彷彿。
いや、それら以上の動きだ。
足を抉られ。
腕も抉られる。
ブースターでふかしながら、必死に攻撃をいなす。
ウォーリアの頭部に着いている二つの目に、感情が宿っているかのようだ。それが光を発しながら、左右に揺れて。猛攻をたたき込んでくる。
七秒。
がっと、腹を抉られる。
コアにかなり近い。更に、左手をたたき落とされた。
ブースターで、必死に下がりつつ。
敵右手の刺突を、操縦席があるコアへの致命打から防ぎ。開いている右手で、左手をつかんだ。そのまま、コアを斬りに来る親衛軍だが。
不意に高度を上げることで、相手の剣とやらを自在に動けないようにし。
コアを斬るのを防ぐ。
それを見て、相手は不意に頭突きをたたき込んできた。
「……っ!」
いつもの加速どころじゃない。
激しくたたきつけられて、意識が飛びかける。だが、手は離さない。そして今度は、当て身を撃ち込む。
剣を離して、強引に左手をこちらの拘束から外す親衛軍。
更には、その次の瞬間には、肩口を切り落としてきていた。
尋常な動きじゃない。
はっきり言ってずっと体が凍りそうだ。
だが、これで十秒。
親衛軍の周囲に、立て続けに狙撃が突き刺さる。親衛軍が動いて避けようとした瞬間。戦いが終わった。
親衛軍の白いウォーリアが、爆発四散する。
遠距離からの超高出力レーザーが直撃したのだ。
だが、ミランは見た。
操縦席の全周モニタに、確かに映っていた。
コアがそのまま鉄の鳥に変わると、一瞬の差で親衛軍はウォーリアを放棄して逃げたのだ。
既にダメージが限界であるウォーリア二型がその場に着地、どうと倒れる。
ミランも、荒く呼吸を着いていた。
「ミランくん! 無事かね!」
「ど、どうにか生きています。 それよりも親衛軍は……」
「ああ、こちらでも確認した。 新しい機構だ。 まさかコアを独立した戦闘機にして脱出するとは……」
すぐにキャリアが来る。
絶対に勝てない。
そうミランは結論するしかなかった。動きにしても何にしても、力が違いすぎる。ウォーリアの差じゃない。
あれはもう。
相手を殺すことだけに特化した化け物だ。中身の差。親衛軍の侵略者と、ミランの差である。
あれでは十機単位でやられるわけだ。
納得がいった。
バダダ中佐が言っていた、エースが片っ端からあれに倒されたというのも納得である。親衛軍を相手にして、戦いたがる者がいないというのも。
キャリアが来て、滅茶苦茶に破壊されたウォーリア二型を運び始める。悔しいが、以降は味方に任せるしかない。
中空から来た爆撃機が、ウォーリアを援護。
ワーカーの群れを、爆弾で消し飛ばす。これで、恐らくは東基地は守ることが出来る筈だ。
それだけは本当にありがたい話だが。
それ以外に、ありがたい話がただ一つとしてなかった。
東基地に戻る。
基地では、すぐに医療室に運ばれた。ウォーリアが受けたダメージのフィードバックもあるが。
それ以上に、精神的なダメージが大きい。
そう診断された。
支援者が、育成中らしい新たの民の看護師とともに、色々と手当てをしてくれる。ベッドで横になりながら、バダダ中佐が来たので、話を聞く。
「親衛軍のウォーリアは、通常ウォーリア五十機分のコストを用いている強力な機体だ。 撃破した場合、簡単に次は来ない。 それに相手の奥の手を出させただけで凄い。 大いに意味がある戦いだった」
「あの後勝てましたか」
「ああ、損害四機。 敵は全滅だ。 悔しいが、どうしてもワーカーを相手にすると、被害は避けられない」
「……」
この戦い。
佐官級の支援者達が言う作戦に、うまく本当にあの親衛軍を引きずり込めた、という認識で良いのだろうか。
どうも何かが引っかかってならない。
ともかく、ウォーリア二型はすぐに修理してくれるらしい。
手ひどくやられたが、部品が無事だから、どうにか出来るのだとか。
「君は凄いパイロットだ。 今まであの親衛軍を相手に、単騎で十秒生き残ったパイロットはいなかった」
「ありがとうございます」
「僕の従兄弟があいつに9.7秒で殺された。 殺されながらも、どうにか相打ちには持ち込んだのだがな……。 あれがクローンだと分かっていても、未だに怒りが収まらない」
バダダ中佐がそう言うと。
後は任せてほしいと、病室を後にした。
この点滴というの、煩わしいな。
いつ外せるんだろう。
そう思いながら、ミランはぼんやりと思う。
確かに専用のウォーリアは倒せたかも知れないけれど、相手は多分普通のウォーリアに乗ってきても信じられないくらい強いはずだ。
なんならミランがあの相手のウォーリアを使い。
逆に親衛軍が通常の新たの民が乗っているウォーリアを使っても、勝つことは極めて難しいだろう。
スタンドプレイは悪だ。
それは徹底的に訓練段階で教わった。
だが、あの親衛軍は。
スタンドプレイをしても余裕で生き残れる実力があり。それで突っ込んできていると言うことだ。
しかもあれだけ正確な狙撃が、得意でもなんでもないということが分かった。どれだけ恐ろしい相手なのか。
息が何度も漏れた。
新たの民は、嘆くと長い息をする。
それが何度も。
ミランはとにかく速く傷を治して。それから、あいつの動きをどうにか分析したいと思った。
親衛軍は何種類かいるという。
だとすると、あいつは恐らくクローンでたくさん増やされていて。各地でいる。仮にさっき戦った親衛軍を倒しても、またどこかで遭遇する可能性があるということだ。
ならば次は。
どうにかして勝つしかない。
あれも侵略者。
だとすれば、負ければ喰われるだけなのだ。
それだけは嫌だ。
それが、ミランの本音だった。
※親衛軍
侵略者の精鋭部隊です。
基本的に侵略者の「指導者」が選抜した存在で、特別にチューンされた強力な兵器に搭乗しています。
必ずしも今回の話のようにウォーリアにだけ乗っているわけではなく、宇宙戦闘では単騎で操縦可能な砲撃艦に乗っていたり、戦闘機に乗っている親衛軍もいます。
ただし精鋭部隊であっても、体内にナノマシンを入れられていて、指導者に絶対に逆らうことは出来ない点では同じです。
逆らうことや指導者への疑問を考えた瞬間爆発四散し、それを防ぐ手段はありません。
本作にどういった要素がほしいですか。要望があれば遠慮なくどうぞ。
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詳細なマシンデザイン
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圧倒的な武力による蹂躙
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緻密な人間ドラマ
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種族や文明の描写
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近接した力量のライバルとの死闘