王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶 作:dwwyakata@2024
※支援者の惑星命名方
これは簡単で、惑星に知的生命体がいた場合は、即座にその知的生命体が自分をなんと称しているか、或いは惑星に暮らしている事を自覚している場合はそれをどう称しているかで決めます。
つまり原住民に配慮して命名します。今まで二種類以上の知的生命体が同一星で発見されたことはありませんが、二種類以上いる場合は、その全ての名前をつなげた惑星名になります。
星系も同じで、この場合コヴァルライト星系の惑星コヴァルライトになるわけですね。コヴァルライトが住んでいたからです。
ちなみに惑星コヴァルライトは、コヴァルライト星系の第四惑星です。
第五惑星を離れて、惑星コヴァルライトに接近する。敵艦隊は遅滞戦術の構えを見せている。
それにだ。
第五惑星に配置されていた重粒子砲のような大火力戦略兵器が、惑星コヴァルライトに配置されている可能性も捨て切れない。
それもあって、まずは部隊をいくつかに分けて、とてつもなく丁寧な攻勢が開始されていた。
パドフ中将らしいなと、ミランは見ていて思う。
堅実でとにかく全く隙がない。
兵士達も、堅実すぎてつまらないと時々言っているようだが。
冒険的な戦術ばかり採る指揮官の下だったら、とんでもない無意味な特攻を強いられる可能性もある。
それを考えると、パドフ中将のやり方は正しいのだ。
ミランは出動指示が出ない。
今の時点で、どの戦線も押している。
恐らく親衛軍砲艦がいるのだが、それも今の時点では動きを見せていない。敵艦隊は、容赦なく浴びせられる砲撃と亜光速ミサイルで、次々に火球に変わっていて。抵抗能力を減らしている状態だ。
さて、何かまだ仕掛けてくるのか。
「敵旗艦捕捉!」
「あのでかい奴だな!」
「全長14㎞! 間違いありません! コヴァルライト星系の敵艦隊旗艦です!」
「火力を集中。 逃がさずに仕留めます」
パドフ中将の指示で、艦船がリンクを開始する。
相互リンクでタイミングを合わせて、集中砲火で一気に仕留めるのだ。
ミランは見ているだけである。
そもそも、ウォーリア隊に出番がない。ここまで砲撃火力が優勢だと、接近戦にならないのだ。
敵旗艦が下がり始めるが、遅い。
既に第四艦隊の主力は、敵を捕らえていた。
硬X線ビーム砲がまとめて投射され、凄まじい大火力の前に、敵旗艦の位相変換シールドが一撃で粉砕される。
第二射。
それで、旗艦の半ばまでダメージが行く。
旗艦が何度も爆発しているのが見える。あれはダメコンどころではないだろう。今は、見ているだけだ。
ミランに出来る事はない。
とどめの三度目の斉射で、完全に敵旗艦は粉砕され。
粉々に打ち砕かれ、爆発していた。
残骸の一部が惑星コヴァルライトに向かうが、集中砲火でそれも砕かれ。大気圏内に突入しても惑星環境に影響を与えない程度のサイズにまで質量を撃ち減らされる。
いずれにしても、これで艦隊戦は概ねけりがついた。
問題は此処からだ。
指導者のあの性格の悪さからいい、敵がこのまま惑星コヴァルライトを諦めてくれるとは。ミランにはどうにも思えなかった。
地上部隊が惑星コヴァルライトの制圧に入ったのは、軌道上からの攻撃が開始されて、二日後だった。
それまでにコヴァルライト星系に散っていた敵の残党の掃討作戦が実施された。
ただ、親衛軍砲艦が見つかっていない。
既に逃げた可能性もある。
だが、油断できない状況だ。
ミランはパドフ中将に呼ばれて、第四艦隊の旗艦に出向く。
内部には培養槽がいくつかあって、パドフ中将の食事らしい、変わった形の生物がいた。
生きた状態でないと食べられない。
そういう理由であるらしく、専門の食事の生成装置がこうやって艦内に作られているのである。
支援者は多数の種族の連合体だ。
それもあって、様々な種族にあわせた、不思議な設備がある。
ミランの腰くらいまでしかない小柄な種族が来る。
体が緑主体で、植物の種族だろうか。
敬礼をする。
とにかく新たの民の基準からすると、小柄でひ弱そうな種族だなと思った。とはいっても、新たの民よりもっと屈強な種族をいくつも見ているから。そんなことを比べても意味はないが。
「初めまして。 コヴァルライトの代表を務めている「第七の花」です」
「ミランです。 よろしくお願いします」
この人が、コヴァルライトの代表か。
軽く歩きながら、話をする。
元々植物であった種族らしく、根が変化した多数の足をちょこちょこと動かしながら歩く。
体が小さいので、歩く速度も速くはない。
確か100期くらい前の戦いでは、コヴァルライトを守り切れず、支援者は撤退したのだった。
その際に可能な限り救出したコヴァルライトの子孫が彼ららしい。
コヴァルライトは現在150億ほどがいるらしく。
平均寿命が140期ほどあるらしくて、侵略者に星を奪われた日を覚えている者も多いそうだ。
惑星コヴァルライトをどうするかは、既に他のコヴァルライトが支援者の首脳と話をしているらしく。
第五、第六惑星については、コヴァルライトの生育環境に近い状況に再テラフォーミングをし。
コヴァルライトは、可能な限り元に戻すのを要求しているとか。
まあ、妥当な要求だろう。
コヴァルライトは戦闘に向いた種族ではなく、後方でインフラ整備や維持に努めているそうだ。
母星を取り戻した後も、支援者に協力するそうで。
だが、だからこそに。
よりどころになる母星は、過ごしやすい環境であってほしいのだとか。
そう熱弁されて、ミランはそうだろうなと思いながら、言われるたびに頷く。
ほどなく、第七の花と一緒に、パドフ中将の前に出る。
前と体色が違うなと思ったが。
どうも腹が減り始めているらしい。
腹が減り始めると、体が赤みを帯びていくそうだ。
「第七の花大使、わざわざ前線までありがとうございます」
「いえ。 恐ろしい戦争を見て、それでも来なくてはならないとおもいました。 我が母星が落ちた時、同胞230億が侵略者に殺されました。 今同胞はだいぶ数を回復したとは言え、昔日に及ばない程度の数しかいません。 母星を取り戻してくれるのであれば、私も戦えなくても、最前線に来なくてはならないと思ったのです」
「立派な覚悟ですね。 旗艦で戦況を見守りください。 必ずや、とまでは言いませんが。 それでも私に出来る最善を尽くさせていただきます」
「感謝を」
ばっと、第七の花が両手を挙げる。
それが最敬礼であるそうだ。
パドフ中将も、触手で円を描いてみせる。
互いの種族の最敬礼をかわしたあと、第七の花は、自室に戻っていった。
ミランは敬礼して、その背中を見送る。
「それで、私はどのような任務でしょうか」
「現時点では、惑星コヴァルライトは防空戦力を順調に削いでいます。 しかし、不可解な構造が宇宙から発見できましてね」
「不可解な構造」
「巨大な地下空間です」
巨大地下空間。
確かに妙だ。
惑星コヴァルライトはかなり平坦な惑星で、火山なども殆ど存在しないらしい。
本来はコヴァルライトが発展した理由の、濃い二酸化炭素による強烈な温室効果によって、ミラン達毛皮を持つ者には耐えがたいほどの暑さの地であったらしい。コヴァルライトはそういう暑さと灼熱の日差しに適応した種族なのだそうだ。
彼らからデータを得ているが。
巨大な地下空間は、ほぼ確実に人為的に作られたもの。
100期程度で、自然現象で出来るものではないという。
「何かしらの罠や兵器が格納されている可能性がある、ということでしょうか」
「その可能性が高いと判断しています。 最悪なのは、例えば反物質を大量に蓄えていたりする場合ですね。 侵略者の指導者は、何をしでかしてもおかしくないことは貴方も骨身にしみていると思います。 現在、惑星地表の工場は宇宙からの攻撃でほぼ全てを陥落させています。 貴方は特務とともに調査チームを護衛し、更には地下空間に何かしら良くないものがあれば……破壊してください。 破壊の手段は、最悪の想定をして、既に準備をしています」
ちなみに惑星コヴァルライトをこれ以上傷つけないでとコヴァルライトに懇願される可能性はないという。
というのも、大気組成からして滅茶苦茶にされているので、もう一から全て作り直すような状態であるらしいからだ。
惑星に唯一存在した高山地帯に至っては、根こそぎ削り取られて、平坦な土地にされてしまっているそうで。
海にあった水も、ことごとく持ち去られてしまったのを確認しているとか。
当然生息していた生物は、全て「肉」にされてしまったわけだ。
穏やかそうな種族に見えたが。
それはそれとして、悲しくない筈がない。
ミランとしては、思わずむっと呻いてしまう。
「分かりました。 すぐに向かいます」
「可能な限りの援軍をすぐに出せる体制を整えておきます。 支援については、ご心配なく」
「感謝します」
すぐに現地に向かう。
地上戦用にカスタムした駆逐艦の前に、基地ユニットが落着していた。それも複数である。
これは現場調査の際に、不測の事態が起きた際の備えと。
調査に出向いた科学者のラボ。
更には軍部隊の駐屯地を兼ねるそうである。
それなりの規模の基地ユニットが複数連結しているが、これは最悪の事態が起きた場合、位相変換シールドを用いて被害を軽減するためらしい。
ただ、もしも惑星を崩壊させるような量の反物質を生成して、それを隠していたとすると。
この程度の基地ごときでは、どうにもできないだろうが。
今回はアリカ中佐も出向いてきている。
また何か食べている。
今度は練り物らしい。炭水化物を焼いたものだそうだ。アリカ中佐にはとても美味しい臭いがしているらしいのだが。ミランにはあまりピンとこない。
「アリカ中佐も調査に?」
「いえ、私は前線指揮ですよ。 今回はあの方が指揮をとります」
駆逐艦の中で威圧的に歩いているのは、巨大な胴体から六本の腕が生え、四本ある足を動かしている種族だ。
胴体部分の上部には複数の眼球と、縦に裂けた巨大な口があり。
口からは長い舌が、ちろちろと蠢いている。
全身がものすごく頑強な筋肉の塊のようで。
生身での格闘戦だと100勝てないなとミランは見て思った。
そのでっかい種族が、ミランに気付いたようで来る。背丈は、ミランの四倍もある。その人の副官らしい人が、ミランをでっかい人に紹介していた。
「キキキルルルキル准将。 こちらがくだんの英雄、ミラン少佐ですよ」
「おお、それはそれは! あの忌々しい親衛軍ウォーリアを何百機も倒したという!」
「大げさすぎます。 そんなに倒していません」
「はっはっは! 失礼した! 我らラルーガガルの民は、英雄を褒める時はとにかく徹底的に褒めることにしているのだ!」
ばんばんと一対の腕を打ち合わせるが、これが敬礼らしい。
ミランもちょっと音が凄いなと思いながら、敬礼を受けていた。
これでいながら、ラルルーガルの民は、なんと草食だそうである。ただ、ミランが知っている大型獣も、殆どは草食だった。筋肉質でもあった。むしろこの屈強すぎる肉体を保つには、肉なんか食べるのではなく、草食主体の方が好ましいのかも知れない。
「今回はこのキキキルルルキルが指揮をとる! 貴殿は最前線で、戦闘を担当されたし!」
「分かりました。 最善を尽くします」
「うむ、うむ! 英雄と敢えて心地よいな! とっておいたヴァルラルの葉をたくさんたべよう!」
のしのしと威圧的に歩いて行くキキキルルルキル准将。
准将が確か地上に出てくる士官としては最高位らしいから、パドフ中将も総力を挙げて調査をするつもり、ということだ。
地上に降りて、展開している部隊を見る。
ウォーリア隊も相当数が出ているが、輸送艦が最初からいる。
最悪の場合、トラクタービームで基地ごと収容して、星を脱出するためだそうだ。パドフ中将も、準備をしてくれていると言うことである。
大型の掘削機が動いていて、巨大空洞がある辺りを調べている。
学者らしい者達が数名、話し合いをしていて。
それを兵士が護衛していた。
辺りの地面は相変わらず荒野で、水気は全くない。
これが元々は、緑が溢れすぎるほどに溢れ。
知的生命体が植物から出た星だとは、とても思えない。
ミランは今の状態がある程度過ごしやすく、宇宙服無しでもやっていけるのだけれども。
それはそれで、酷い有様だと思って、忸怩たるものを感じてしまう。
「侵略者の駆逐、99%完了!」
「残存戦力も今日中には片付くと思われます!」
「それは構わん。 とにかく得体が知れない空洞を一刻も早く調査してくれ。 調査チームを全力でバックアップしろ」
「了解!」
キキキルルルキル准将が丁寧に指示を出し、皆それに従っている。
パドフ中将の麾下で着実に実績を上げてきた人物であるらしく、皆の評価は高いそうだ。
見た目が怖いといって恐れる者もいるらしいが。
そんなのはお互い様だ。
ミランとしては、話してみてちょっとやかましいけれど、好感を持てる存在だと思ったし。
あのパドフ中将が今回の作戦に抜擢しているのなら、恐らく実直な提督なのだと思う。
ミランもウォーリア三型で出ると、辺りのパトロールをまずは行う。
今の時点では平和そのものだ。
無人ドローンが既に完全に敵を駆逐しており。
ミランが戦う必要さえない。
だが、嫌な予感はする。
この惑星を、あれだけ敵は念入りに守っていた。第五惑星の重粒子砲ですら、時間稼ぎのために配置されたように思えた。
だとすると、こんな妙な空洞を作って。
其処で何をしていたというのか。
「宇宙軍より入電! コヴァルライト星系に接近する侵略者の兵器あり! 艦隊です! 規模は20万隻前後!」
「この状況で20万隻を出して何か役に立つとでもいうのか?」
「そうだな。 パドフ中将なら問題なく対応できるはずだ。 俺たちは、自分の仕事をすれば良い」
兵士達が緊張するが。
今の時点で、勝てるわけもないのに20万隻を使い捨てに来る方が気になる。むしろ、この星へ割いている力を減らすため。
この星に何かあって、それを奪還するためとはとても思えない。
だとすると、狙いは何か。
「続報! 敵はワープ阻害装置を多数配備している模様!」
「ワープ阻害装置? まだコヴァルライト星系に入ってもいないのに? ……嫌な予感がしますね」
パドフ中将の声が通信に入り。
それで皆が一斉に警戒度を挙げる。
歴戦で堅実の権化であるパドフ中将の言葉だ。
それも、嫌な予感と来たか。
「キキキルルルキル准将」
「はっ!」
「調査を急いでください。 我が艦隊は、敵を迎え撃つ準備を開始します」
「了解!」
更に地上軍が投入される。
掘削機も増やされて、地下空間へのアクセスが急がれた。
ほどなくして、地下の巨大空間へのトンネルが出来る。まずは無人ドローンが、大挙してそこから入り込む。
続けて二本目のトンネル。
やはり、無人ドローンが一斉に入り込んでいった。
映像が出た。
「こ、これは……!」
「なんだこれ。 海……?」
ミランも映像を共有する。
其処にあるのは、膨大な赤い液体の海だ。血か何かのようである。
すぐに分析が開始されるが。
無人ドローンが、その海から湧いて出てきた何かに、一瞬で大量に破壊される。次々に海から、何かが湧いて出てくる。
交戦開始。
即座に声が掛かる、
科学者達は分析を開始。海のような場所から出てきている存在は、恐らくは生物兵器だと連絡がある。
だとすれば、まずは性質を調べる必要がある。
「サンプルを確保し、隔離空間で調査しろ。 無人ドローンで一匹くらい捕まえられないか」
「こ、これは……!」
「なんだ」
「生物でありながら、レーザーを、それも高出力のレーザーを放っています! 逆にこちらの攻撃は、殆ど通っていません!」
質量弾効果無し。
レーザー効果無し。
硬X線効果無し。
トンネルに生物兵器がなだれ込んでくる。退避、退避。即座に声が掛かった。トンネルには人がいなかったはずだが。
それでも、これはまずい。
「気体爆薬を流し込んで起爆しろ!」
「起爆します!」
「無人ドローンを紙くずのように切り裂いています! 一体これはなんだ!」
「無人ドローンで壁を作り、それで爆破しろ! 埋め直しの準備! とにかく徹底的に封じ込めろ!」
阿鼻叫喚だな。
そう思いながら、ミランはトンネルの一つの出口に向かう。
既に大量の気体爆薬の注入が開始されていて。
キキキルルルキル准将の指示で、爆破が行われた。
ドゴンと、辺りが地震のように揺れる。爆発の威力を逃がさないように、位相変換シールドを用いての爆縮まで行われた。
しばし、無音が続いて。
それで、絶望の声が上がった。
「敵健在! トンネルから出てきます!」
「退避。 急げ。 基地ごとトラクタービームで回収。 地上班は、各自駆逐艦に逃げ込め」
「う、うわあああっ!」
トンネルから飛び出してきたそれに、護衛のウォーリアが飛びかかられていた。
それは巨大な崩れかけの侵略者に見えた。サイズはウォーリアと同等くらいもある。とてつもない巨体である。
それが、ウォーリアを押しつけると、見る間に引き裂き、コアを砕いてしまった。
一斉に攻撃が浴びせられるが、効いていない。
ミランもパルスレーザーを撃ち込むが、効いているようには見えなかった。
「なんだあれは。 データを収集しつつ下がれ」
「は、はいっ!」
「基地ユニット回収開始!」
「科学班! 分析をしろ! 戦闘データは嫌になるほどある!」
キキキルルルキル准将が叫び、科学チームが衝撃から立ち直って、調査を始めたようである。
ミランは下がりながら、味方の撤退を支援すべく、パルスレーザーをたたき込む。それで気付く。
効いていないのではない。通ってはいる。
だが、これ、ひょっとして。
「これ、ひょっとして再生しているのではありませんか。 攻撃そのものは通っているように見えます」
「……よし、試してみよう。 主砲、発射用意!」
旗艦に乗っているキキキルルルキル准将が、駆逐艦の主砲をたたき込む準備に入る。
その間からも、既にトンネルからは数百体の生物兵器?が出てきて、護衛をしていたウォーリア隊を引き裂いていた。
一方的な戦いに見えるが、しかしだ。
次の瞬間、駆逐艦の主砲である硬X線ビーム砲が、敵にたたき込まれていた。
凄まじい火力の前に、流石に直撃を受けた敵が蒸発する。流石にこれは耐えられないようである。
それを見て、来ている他の駆逐艦も、一斉射撃を開始。
駆逐艦の主砲クラスなら倒せる。
だが、トンネルからはまだまだ生物兵器?が出てくるし。更にその数は増えるばかりである。
立て続けに駆逐艦の主砲がうなる。
生物兵器をまともに相手にしないようにと言われ、地上部隊が下がる。大きな被害を出しながら、だが。
ミランは最後尾で敵を翻弄しながら、味方の支援を続ける。
何度も鼻先を駆逐艦の主砲が貫くので、流石に肝が冷えるが。
ただ敵の動きは其処まで速くないので、なんとか翻弄する事だけは出来る。ただし攻撃が通りにくいにもほどがあるし、味方を守りながらだと色々厳しいが。
「これは拡散させるとまずいな。 宇宙空間からの砲撃要請」
「し、しかし……」
「今は肉弾戦やレーザーでの攻撃だけを挑んできているが、これがもし対宙兵器でも持ちだしてきたら洒落にならん。 駆逐艦の主砲クラスで蒸発させられるのなら、戦艦や巡洋艦であれば容易に行ける」
「星の地形が変わってしまいます!」
科学者が言うが、それに対して。
冷静な声を掛けてきたのは、コヴァルライトの第七の花だった。
「やってください」
「し、しかし良いのですか!?」
「我らの故郷が穢され尽くしたのは既に確認しました。 今はもう、構っている場合ではありません。 お願いします」
「……決断感謝します。 地上部隊、即時で退避を。 第四艦隊、惑星コヴァルライト攻略部隊全軍、主砲準備!」
パドフ中将の声が掛かり。
総攻撃が開始される。
ミランも即座に離れる。謎の地下空間から出てきた生物兵器らしいのは、更に増えて広がっているが。
しかし、それも此処までだった。
「撃て」
戦艦の主砲をはじめとした、圧倒的な火力が、大気を貫いて生物兵器らしいものに直撃。
文字通り消し飛ぶ。
立て続けに砲撃がそれらを消し飛ばす。
地上に這い出てきた怪物の群れは、ことごとくが消し飛んでいった。
それだけではない。
巨大地下空間を守っていた岩盤もろとも、主砲が撃ち抜く。岩盤が蒸発し、真っ白な光だけが其処に満ち。
凄まじい轟音が響き続け。
駆逐艦に退避したミランは、それを呆然と眺めやるしかなかった。
調査どころじゃない。
「念入りにお願いします。 空洞そのものを蒸発させてください」
「惑星気温上昇……」
「構いません」
徹底的にやると決めたら、パドフ中将はどうやら本当に徹底的にやるらしい。
地下空洞ごと消し飛んでいく。
生物兵器らしいのが、この星中にでも拡散したら、とんでもないことになった。科学者がぼやいている。
「生体サンプルほしかったなあ」
「バカ、駆逐艦の主砲でやっと倒せる相手だぞ! 捕獲しておくなんて無理だ!」
その通りだとミランは思う。
しばらく続いた砲撃が止むと。
其処には巨大なクレーターが出来。
生物兵器が出てきたらしい赤い海は消滅。地下空間も消滅。ただ、焼け焦げた土地と、静寂が取り戻されていた。
ただし、辺りに暴風が吹き荒れ始める。
それはそうだろう。
これだけの超火力を惑星の大気圏内にたたき込んだのだから。
「今ので、惑星コヴァルライトの質量が1%減少。 地軸が4度ずれました」
「分かりました。 テラフォーミングの過程で調整してください」
「は……」
戦闘データから、今の奴の正体を分析するしかない。
間近で戦ってみてミランが感じたことも、説明を入れる。
しばらくはこれは、地上部隊は展開できないだろう。基地も収納して、一度引き上げるしかない。
「接近していた敵艦隊は」
「引き上げたようです」
「……何か狙っていたようですね。 近くにいる味方艦隊に連絡を。 警戒するよう伝えてください」
パドフ中将の指揮は的確だな。
それにしても、恐ろしい相手だった。
一度旗艦に戻って、ウォーリア三型を降りる。調整は任せて、隅っこで座って休むことにする。
相性が悪すぎて、文字通り何も出来なかった。
ウォーリアは万能機でも無敵でもない。それは分かっているとしても、ここまで手も足も出ないのは流石にしんどかった。
とはいっても、戦闘機や爆撃機、攻撃機の操縦者も同じ印象を受けたようだが。
「一度宇宙に引き上げてください。 これは惑星コヴァルライトの制圧は、慎重を期した方がよいようです」
「了解……」
キキキルルルキル准将が悔しそうに言うが。
部下を少なくない数今の化け物相手に失ったのだ。これ以上踏ん張っても意味がないのも、また事実だった。
科学者が集まって、いくつかの説を出してくる。
そして、その中の一つが、パドフ中将の目にとまっていた。
「つまりあれは、侵略者が使っているナノマシンであると」
「はい。 本来はあのようなことは出来ません。 しかしあそこには、あまりにも膨大な量のナノマシンがありました。 侵略者のナノマシンは、侵略者の指導者と直接データのやりとりをしています。 あれほどの量があれば、或いはああいった活用も出来るのかも知れません」
「し、しかしあれほどのナノマシンを、短期間でどうやって」
「侵略者から抽出したのでは」
あっけらかんとアリカ中佐が言う。
にへらと笑っている彼女に、科学者達がみんなぞっとしたようだ。パドフ中将が、詳しくと言うと。アリカ中佐は淡々と応える。
「侵略者は、侵略者の指導者の私物です。 コヴァルライトの陥落が免れないと悟った指導者は、侵略者を自走爆弾として抵抗させるよりも、一カ所に集めてナノマシンを絞り尽くして、化け物にして反撃させたのでは」
「な……!」
「それが本当だとしたら、狂ってる!」
「やだなあ。 あいつが狂ってるのは周知の事実じゃないですか。 要するに使えない私物と判断した侵略者を、何らかの装置でまとめてすりつぶして、ナノマシンを絞り出してあの空間にためたのか。 或いは、ナノマシンがそもそも、あの空間を地面にしみこみながら作ったのかも」
強烈な嫌悪感を周囲から受けながらも。
アリカ中佐は、全く気にしている様子もなく、いつものペースで言う。
パドフ中将は呆れた。
ロボットの強みであり弱みでもあるか。
そしてそんなロボットと同レベルの事をやらかす侵略者の指導者を、これから相手していかなければならないとは。
「アリカ中佐」
「はい」
「その仮説を裏付けるデータを集めて、論文にしてください。 皆も、その方向で調査を進めてください」
「……了解」
肩を落として、学者達が解散。
アリカ中佐が行こうとするが、呼び止める。
「アリカ中佐、意見を聞かせてください」
「はい。 私の意見であれば」
「惑星コヴァルライトにはまだ罠が仕込まれていると思いますか?」
「ほぼ確実に仕込まれていると思いますね。 コヴァルライト守備艦隊がやたら弱かったのも、なんだか思わせぶりに出てきた援軍も、罠を隠蔽するためのデコイかと思います」
そうか。
そうだろうな。
その意見は一致する。
既に惑星コヴァルライトの守備隊は全滅させ、工場も全て打ち払った。
コヴァルライト星系の敵艦隊も、ほぼ全て駆逐。
後はコヴァルライトと、更に内側にある三つの無人惑星だ。無人惑星の制圧は、無人ドローンに行わせていて。極めて順調に進んでいる。
それなのに、罠の存在が、勝利を確信させない。
まだ行方が分からない親衛軍砲艦の存在も奇妙だ。
堅実なのがパドフ中将の取り柄。逆に言うと、それ以外に出来る事が存在しないと言って良い。
しばし考えてから、パドフ中将は、連絡を入れておく。
研究施設に対してだ。
第六惑星で回収したDBの進捗についてちょっと確認したい。この間、親衛軍から回収したデータについてもだ。
ル・ルの科学者パデラクスは、進捗は途中だと言いながら、興味深いことを告げてくる。
「思ったより今回得られたデータ、大きいかも知れません」
「というと」
「ええと、侵略者の生物としての設計図は、原型がないほど書き換えられてしまっています。 元は繁殖のために雌雄があったのがなくなり、寿命などもいじられ、ナノマシンが体内にないと短時間で自壊するようにもされています。 これらが要因で、侵略者の本来の生体設計図の復元がどうしても出来なかったのですが。 どうも親衛軍の生物としての設計図は、この書き換えの方向性が違うようなのです」
具体的には、侵略者の指導者が優れているという部分を強調しているようなのだが。
容姿や筋力などと同時に。
一部、本来の生物としてのデータが見られるというのだ。
「今回得られたデータは不完全でしたが、一気に研究が進みました。 またどこかでDBを回収するか、或いは親衛軍を死なない程度に痛めつけてデータが得られれば……或いは」
「侵略者はもともと、母星にいた頃から共食いを当たり前にしていたような種族です。 素の状態でも、極めて危険な可能性があります」
「ええ、ええ。 分かっています。 それでも、やって見る価値はあるでしょうな」
そうか。
今は、ともかく。
惑星コヴァルライトの罠を、どうにかして発見し。コヴァルライトに母星を返してやる事を、考えなければならなかった。
※生体ナノマシン兵器
これまた非道な兵器です。侵略者一般個体をそのまますりつぶして大量のナノマシンを回収、それを兵器化したものとなります。
侵略者の指導者はAIを使用することを嫌っているため、基本的にプログラムに沿って稼働しますが、今回交戦した者達でさえウォーリアを上回る身体能力とナノマシン由来の強力な再生能力を持ち、生半可な陸上兵器など引き裂いてしまいます。
攻撃耐性も高く、生半可な攻撃は通用しません。
そしてこれが本領を発揮するのはこれからです……
本作にどういった要素がほしいですか。要望があれば遠慮なくどうぞ。
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詳細なマシンデザイン
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圧倒的な武力による蹂躙
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緻密な人間ドラマ
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種族や文明の描写
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近接した力量のライバルとの死闘