王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶 作:dwwyakata@2024
第七の花がかなりへこんでいるようだ。同胞達に連絡を入れた後、ずっと悲しげにしている。
ミランは掛ける言葉がなかった。
「侵略者の指導者は何がしたいのか分かりません。 奴が屑なのは親衛軍を見ていれば分かるのですが、それにしても何ら意味のないことをしているように見えます」
「……」
悲しそうに目を伏せるハコト。
別にハコトを責めている訳ではない。
今、惑星コヴァルライト軌道上にて、空母が待機。地上軍も近づかず、今は無人ドローンで徹底的な探査をしている所だ。
何か罠が仕込まれている可能性が高い。
接近していた敵艦隊は、ワープ阻害装置を多数装備していた。それが不可解極まりない。
つまり何かしらのとんでもない代物が現れて。
それから逃げ出すのを想定していたような。
しかし20万隻では、パドフ中将が率いる第四艦隊を撃破するのは不可能だ。パドフ中将の歴戦に加え、戦力は70万隻を遙かに超えている。
だとすると、何かしらの罠は、この第四艦隊を壊滅させるほどの力があるのか。いや、ブラックホールなどの破滅的な代物の兵器運用でもそれは難しいはずだ。
或いはただのブラフ。
今までのはただこちらを混乱させて動揺させるためだけの罠。
本当に何をするのかは、実は全然別だったりする。
いずれにしても、ミランには分からない。
何度か頭を振った後、訓練に出る。何時出ろと言われても大丈夫なように、腕をさび付かせる訳にはいかない。
無言でシミュレーションマシンを使っていると。
程なく連絡が来た。
「ミラン少佐、良いでしょうか」
「どなたですか」
ボイスオンリーの通信は、聞いたことがない声だ。シミュレーションマシンを降りると、立体映像端末に出して、自室で話を聞くことにする。
歩きながら軽く話を聞くと、パデラクスと名乗る。支援者のかなり高官になる科学者らしい。
この間第六惑星から回収したDBを解析していると言うことだった。
特務とは言えたかが少佐のミランに、そんな高官が何用だろう。
「自分はただの戦闘屋に過ぎませんが」
「なかなか慎み深い。 史上初の親衛軍ウォーリアに対する戦果をいくつもあげているのですから、もっと偉そうにしてもいいでしょうに」
「は、はあ」
「それはともかく、貴方の所にいるハコト型のロボットですが、姉の話をしていましたか?」
別にハコト型はあちこちで運用されているはずである。
ミランの専属はその中でもかなり古いタイプだという話だったが。
ミランにそれが関係するのか。
「はあ、まあ」
「ナンセンスだと感じませんでしたか?」
「ロボットに姉がいることがですか? そういう設定を持たせることに、何かしらの意味があるのでは」
ミランは侵略者のことが分からない。
侵略者がそういうAIを作ったことは知っているが。それでだからなんなのだろうとしか言えない。
パデラクスは、思わせぶりに言う。
「ハコト型のロボットで、姉の存在を語ったものは数体しかいません。 その中で生き残っているのは、貴方の所にいる個体だけです」
「……そう言われましても」
「ハコト型は侵略者製のAIが使われていますからね。 その発言のデータなんかはみんな集められて調べられているんです。 興味深いと思いませんか?」
「それだけが用事ですか?」
いい加減苛立ちが募ってきた。
流石にそれを悟ったか、パデラクスは言う。
「ああ、いえいえ、英雄を怒らせる気はないんですよ。 その姉を、貴方の側のハコトに用意できるかも知れないので」
「……」
「貴方はそもそもハイエンドモデルのウォーリアに乗っている。 そしてそのハイエンドモデルにふさわしい活躍も見せている。 だから整備チームも充実させられる。 そういうことです」
なんだか様子がおかしいな。
ミランで実験でもするつもりか。
警戒が明らかに声にこもる。
「それで目的は」
「DBから発掘したデータに、その姉のデータがあるかも知れません。 いや、かなりの確率であります。 貴方の側に、整備用ロボットとして、その姉を提供しましょう」
「自分は何をしろと?」
「そのままハコト型と仲睦まじく過ごしてください。 データはこっちで勝手にとることが出来ますんで」
そうか、のぞき野郎が。
そう言いたいのをこらえて、通話を切る。
なんだか嫌な奴だな。
頭が良いのは分かるけれど、他人を実験材料くらいにしか思っていないのも、話していて分かってしまう。
それではあの侵略者の指導者と同じだ。
さっさと惑星コヴァルライトに仕込まれた罠は見つからないだろうか。
それは当然、巧妙に隠されているだろう事は分かる。
最悪の場合、コヴァルライトは母星を失うかも知れない。
例えば反物質兵器などが仕込まれていた場合は、その話が現実味を帯びる。
人工惑星を作ることは出来る。
今のテクノロジーであればそれほど難しくはないらしい。
だが、それでもだ。
人の命。人の居場所。人の心。
それをこうも簡単に奪っていいものなのだろうか。
侵略者の指導者は、エゴや悪意でやっているのだろうなというのは想像がつく。
パデラクスは恐らくは知的好奇心から、それを踏みにじろうとしている。
ハコトは姉と会えると言われたら、それは喜ぶと思う。
だが、それが作られた再会だったとしたら。
ミランはぐっと歯を噛む。
誰も彼もが。
好き勝手に他人をもてあそんでいる。
そう感じる。
ロボットの偽物の知能であろうと、それは良いことにはならないはずだ。
ただミランは、強い憤りと苛立ちを感じるのだった。
(続)
惑星コヴァルライトを巡る戦闘が佳境に入ります。
惑星コヴァルライトに仕込まれた邪悪な罠。侵略者の指導者の著しく倫理に欠けた行動。
負けるわけにはいきません。
侵略者をのさばらせれば、また別の星が襲われることになるのですから。
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