王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶 作:dwwyakata@2024
地獄の始まりです。
惑星コヴァルライトに埋伏されている超兵器が牙をむこうとしています。
それと同時に侵略者が大規模艦隊を動かし始めました。
迎え撃つは名将パドフ中将とその麾下第四艦隊。
そして怒りに燃えるミランです。
序、埋め火
調査用のドローンに加え、多数の科学者が乗った調査船が展開している。ミランは惑星コヴァルライトの軌道上で、その様子を見ているしかなかった。
キキキルルルキル准将は今の時点で待機を命じられているようで、退屈らしくミランにメールを送ってくる。
メールの文面が意外とかわいいのでミランは困惑したが。
まあ、それはそれぞれの自由である。
パドフ中将は最善を尽くしてくれている。
ドローンは相当数が惑星コヴァルライトに展開しており、隅々まで調査をしてくれている状況だ。
惑星コヴァルライトの内側にあるのも外側にあるのも加えて、既に制圧済みの無人惑星も全て再調査が入っている。
惑星コヴァルライトで出現したナノマシン融合生物兵器の危険性もあるが。あれで終わるとはとても思えないからというのが一番大きい。
ともかく、今はパドフ中将の指揮で動く味方の調査結果を待つしかない。
ミランが訓練をして過ごしていると、連絡が来る。
どうやら整備班を強化する辞令が下りたらしい。
実際に親衛軍を多数倒している実績もある。ウォーリア三型にはそれだけの整備班がつくだけの価値があると判断されたのだろう。
今まではハコトと他のロボットが主体だったが。
今度は支援者の知的生命体が来るようだ。
それと同時に。
ハコトもガワを変えると言うことで。今日、立ち会ってほしいと言われた。
ガワを変えると言っても、それで何かしらの電子的な罠が仕掛けられているかもしれない。
故に気をつける必要がある。
徹底的な調査をした上でのガワの変更だ。
3Dプリンタの工房に出向く。
元々空母の中だ。
大規模工房もあり、ロボットも連日生産されている。ハコトは侵略者製のガワのロボットだが。
同型機は他にもたまに見かける。
それもあって、別に驚くことはない。
体を分解して、内部を取り出す。
そして、見ている前で、ガワを再構築する。
生体部品を多数使っているロボットだ。元々侵略者は服を着ることを前提の身体構造をしていたらしく。
それもあって毛は非常に少ないらしい。
作業をぼんやり見つめる。
今まで体を構成していた生体パーツは一旦溶かして、また生体パーツに再利用するらしい。
それらの仕組みはミランには分からない。
しばしして。
3Dプリンタが作動を終え。
ハコトが姿を見せる。
随分と背が伸びている。ミランとほとんど変わらないくらいまで背丈があるかも知れない。
アリカ中佐より少し背が高いか。
侵略者の基準で、侵略者の雌……存在していた頃は、だが。ともかく侵略者の雌を相当に美化した姿であるらしい。もっとも、ミランからすれば何が美化しているのか、まるで分からないが。
3Dプリンタから出てくると、ハコトは少し恥ずかしそうにしながら、用意されていたつなぎを着込む。
かなり長くなっていた頭から生えている髪の毛も、作業帽に押し込む。
美化した姿か。
性欲発散用の用途も兼ねていた。
侵略者に雄がいた頃の話だが。
そういう話だから、当然なのだろう。今の恥ずかしがる所作なども、それを意識してのものなのかも知れない。
「手足がだいぶ伸びて、作業をしやすくなりましたか」
「はい。 ありがとうございます、ミラン少佐」
「良かった。 これからもお願いします」
とりあえず、関係性はあまり変わらないか。
ただ、前は隣を歩いていると、見下ろしながらだったのだが。視線が殆ど同じ位置に変わった。
それくらいだろうか。
ともかく、ウォーリア三型を整備して貰う。
いつ、何か問題が起きても、おかしくないからである。
ミラン自身も、シミュレーションマシンに潜る。
しばらく無心にシミュレーションマシンで訓練をしていると。
連絡が入った。
クラフ中佐からだ。
「ミラン少佐。 どうやら動きがあったようです」
「分かりました。 会議ですか」
「はい。 シミュレーションマシンを切り上げて、自室で参加してください」
「了解です」
即座に自室に戻る。
ハコトは動作も変わっていて、何というか動きが若干ゆっくりになったような気がする。
ファーガの栄養液を調理して、待っていてくれた。
先に動いてくれたのは立派だ。
ミランは礼を言うと、そのまま立体映像端末を使って、会議に参加する。
パドフ中将はじめとする何名かの提督。
それに、佐官はあらかた参加する、大きな会議のようである。
会議で最初にパドフ中将が開始を宣言すると。
まず発言したのは、アリカ中佐だった。
「非常に巧妙に隠されていましたが、どうやら罠を発見したかと思います」
「本当か!」
「はい。 惑星コヴァルライトのマントル層ぎりぎりに、不自然な質量体がかなりの広範囲に広がっています。 恐らくは、侵略者をすりつぶして抽出したナノマシンです。 前回暴れた「生物兵器」もどきの、十倍以上の規模。 それも、楽観的に見た上で、です」
「即座に破壊すべきだ。 砲撃の許可を」
少将の勲章をつけている提督が立ち上がるが、パドフ中将はまだ話を聞くようにと冷静に諭す。
確かに、今首脳部が浮き足立っていたら。
解決できる問題も解決できなくなる。
「他の惑星では、ナノマシンによる不審な行動は見られませんでした。 惑星コヴァルライトにいるこのナノマシン集合体が本丸だと思われます」
「他に分かったことはありますか」
「はい。 マントル層からこのナノマシン、熱を吸い上げていますね。 それで判明しました。 活動を更に活性化させるためだと思われますが……」
「マントル層ごと砲撃して破壊した場合のリスクはどうなりますか」
アリカ中佐が、何かレポートを提出してくる。
それによると、どうやらパデラクスとかいう学者が割り出したものであるらしい。あいつか。
ミランとしても、あまり良い印象はないが。
ル・ルという知能に特化した支援者の種族であるらしい。
であれば、今は信じるしかないか。
「まず巨大なナノマシン集合体ですが、動きを見る限り、まるで単一の生物のように振る舞っています。 本来は侵略者の個体それぞれを縛り、管理するためのナノマシンですが、こういった動きも出来ると言うことなのでしょう」
「それでどうしたというのか」
「侵略者の指導者が、直にやっている可能性が高いと見て良いでしょう。 今、侵略者の指導者が、超光速通信で、ナノマシン集合体を好き勝手に動かしている。 目的がなんにしても、いくつか対処策はあります」
まず一つ目。
超光速通信を遮断する。
この間、惑星コヴァルライトに敵援軍が接近しているのが確認されたが、あれはひょっとすると通信を確保するための中継器だったのかも知れない。
だが、中継器が必要なくらい、超光速通信が阻害されている可能性もある。
ちなみに現在のテクノロジーであれば、超光速通信は干渉が可能であるらしい。
ただし波長を読み取るまで、時間が掛かるが。
もう一つ。
ナノマシンそのものを汚染する。
「前々からある対抗ナノマシンを用います」
「ああ、古くに侵略者に投与することで、体内の侵略者製ナノマシンを排除する目的で作られたものですね」
「はい。 残念ながら、侵略者ナノマシンの自壊作用の方が早く、最近では侵略者の体がナノマシン無しでは生きていられないように改造されている事も判明して、利用されなくなりましたが。 確実にバージョンは上がっています」
淡々というものだなアリカ中佐は。
倫理観がないというのか。
そういう冷酷さを感じて、ミランは好きになれない。
頭が良いのも分かるのだが。
「三つ目の手段は、一番荒っぽい方法です。 反物質砲で、マントル層に広がっている侵略者製ナノマシンを吹き飛ばします」
「惑星コヴァルライトへのダメージは」
「星の40%が失われると試算が出ています」
「……分かりました。 順番に作戦を実施します」
パドフ中将がいう。
第一段階。
超光速通信の遮断。星系規模で工作艦を展開して、超光速通信を遮断。侵略者の指導者の意思が、ナノマシンに届かないようにする。
これはそれほど難しくはないはず。
現状、工作艦はそれなりの数がいる。
それらが展開すれば。
数時間で可能だという。
第二段階は、第一段階が失敗した場合の策。
対抗ナノマシンを大量生産して、マントル層近くにいる侵略者製ナノマシンを中和して、破壊する。
「必要量の対抗ナノマシンを生産するのに必要な時間は」
「既に発注を掛けていますが、7自転というところでしょうね」
1自転は、支援者の本拠地である星の自転一回分に掛かる時間だ。
侵略者は似たような単位で1日というのを使っている。これも同じく自転一回分らしいのだが。
1自転は、0.7日くらいだそうである。
「それは掘削弾を用いて撃ち込みましょう。 それが通じなかった場合、第三段階へと移行します」
「お聞かせください」
「荒っぽいですが、砲撃作戦を開始します。 まずマントル層を引きはがし、ナノマシンを露出させます。 それから相手のダメージを見ながら、宇宙空間から砲撃を実施します」
それに加えて、だ。
超大型戦艦が、現時点では六隻、第四艦隊にいる。
これらの全てが惑星破壊可能な反物質砲を備えている。
最悪の場合は。
やらなければならない。
コヴァルライトの第七の花も会議に参加している。パドフ中将が、本当に申し訳なさそうに頭を下げる。頭を下げるというか、体をぐっと曲げた。恐らくは、最大の謝意を示す動作だ。
「最善は尽くします。 しかし最悪の事態になった場合は、一度惑星コヴァルライトを破壊しなければならないかも知れません」
「分かりました。 あれだけ破壊された母星です。 出来ればこれ以上は破壊したくありませんが、宇宙艦隊にも打撃を、それも致命的な打撃を与えうる兵器なのであれば、その場合は仕方がありません。 お願いします。 新しい母星をその代わり必ず構築してください」
「はい。 それは必ず」
作戦は決まった。
大まかな作戦は以上だが、これで片付いてくれると思うほど、ミランも甘くない。
会議を一旦終える。
ハコトが温かい飲み物を用意してくれた。
ありがたく戴くが、ちょっと甘すぎるかも知れない。
「次はもう少し糖分を落としてほしいです」
「分かりました。 うーん、ミラン少佐の味の好み、まだ分析が足りていません。 もっと色々食べてほしいです」
「そ、そうですね」
「色々手作りします! 背が伸びたので、色々作れますよ!」
嬉しそうだなハコト。
元の設定に近いガワを得て、それで気分が弾んでいるのかも知れない。
メールだ。
パドフ中将からだった。
「今回の作戦ですが、増援を呼んでいます」
「!」
「惑星コヴァルライトに潜ませた怪物と同時に、宇宙艦隊をコヴァルライト星系に突入させるのが、侵略者にとって最善の策でしょう。 怪物の戦闘力にもよりますが、相当に効率的なハラスメント攻撃が出来ます。 怪物の実力次第では、それこそこの星系を再奪還出来るかも知れません」
その場合。
現状役割がないミランにも、出番があると言うことだ。
「敵艦隊の動きには細心の注意を払っていますが、いざという時はお願いします。 恐らく親衛軍が動いてくるでしょうから」
「分かりました。 最善を尽くします」
「了解」
やりとり終わり。
さて、此処からだ。
一つずつ準備が行われる。
ミランも宇宙戦闘を想定して、訓練をしておく。まだ宇宙戦闘は、経験が足りていないように思うからだ。
これから、また厳しい戦いになる。
そう、ミランは察していた。
侵略者の指導者はほくそ笑む。
首都星で動かしていた研究者チームが、久々に満足いく結果を出したからだ。
役立たずどもの最大活用方法。
それは、指導者の最高の発明の一つである、「完全ナノマシン」の最高活用方法だった。今、惑星コヴァルライトとか肉どもが呼んでいるゴミ捨て場で、それを試験中である。あの忌々しい、親衛軍を散々殺した肉もそこにいる。
最高の実験環境である。
「準備は整いました。 いつでも稼働できます」
「この活用方法をなぜ今まで思いつかなかった」
「そ、それは自分が無能だからにございます」
深々と頭を下げる研究者。
研究者などといっても、指導者から見れば雑魚も雑魚だ。指導者は生まれながら歴史上のどの侵略者よりも高い知能を持っていた。
指導者から見れば、他の侵略者なんて、何もかもがゴミ屑に過ぎなかった。
研究者どもは、ただ指示した雑用をやらせるだけの存在として活用している。ラボなんていうが、実際はただの雑用処理場だ。
「今までこんな良い方法を眠らせていたのは惜しい。 ともかく、今日は機嫌が良い。 これからもお前達は使ってやる。 感謝しろ無能」
「ははーっ! 指導者様のために!」
「黙れ。 この世界全てが我が物だ。 当たり前のことをいうな」
指導者は若干不快感を刺激されたが。
まあいい。
今日は機嫌が良いので許してやるとする。
超光速通信の遮断から、まずは敵は動くだろう。だが残念だが、対策はしてある。コヴァルライト星系などというゴミ捨て場を、生意気な肉どもの墓場にしてやる。
既に50万隻からなる奪回艦隊を動かし始めている。事前に動かした20万隻は先遣隊。それに更に30万隻を合流させたものがこれだ。
これはワープ阻害装置を装備していて、コヴァルライト星系から誰も逃さない。敵より数は少ないが、完全ナノマシンにより誕生する最強の兵器に全てをひれ伏させてやるだけの事だ。
さて、奴らの悲鳴を楽しむとするか。
試験運用の段階でも、最小単位のものが駆逐艦の主砲でないと倒れないことも分かっている。
それだけの強度があるのだ。
問題が一つだけあるが、それについてはまだどうでもいい。それが問題になって肉どもが好き勝手出来るような欠点ではないからだ。
さて、潰すぞ。
全ては順調に動いている。
肉どもが犠牲を出しながら、あの星系をほぼ制圧したのも、全て計算通り。あの星系に配置していた侵略者を全部有効活用したのも、全て計画通り。
全ては侵略者の思惑通りに進んでいる。
そして、この作戦がうまくいったら。
大反攻作戦の開始だ。
ここしばらく、無能な手下のせいで領土から後退し続けていた。そう少なくとも指導者は認識していた。
全ては無能な手下の尻拭い。
それを疑っていなかった。
だからわざわざ手を出して、新しいアイディアをくれてやったのである。
ついでに無能な私物には相応のペナルティも必要だ。だから今回の作戦では、侵略者を意図的に苦しめた。
侵略者は指導者の私物だ。
だから無能を曝したら、罰を与えて苦しめる権利がある。
そう指導者は考えていた。
だから実施した。
それ以上でも以下でもない。
研究者の一人が恐る恐る挙手。
「指導者様、実は……」
「なんだ」
「奪われたゴミの中に、過去のデータが存在していたことが分かりました」
「そうか。 だからどうした」
どうでもいい。
過去のデータなど、何一つ必要ではない。
過去の時代の創作だの芸術だの文化だの。指導者に興味がないものなど、何一つ必要がない。
指導者が作った芸術ならともかく、それ以外の芸術など等しく価値などない。
まだ指導者が皇帝だった頃は、データを残しもしたが。
それも今となっては必要などない。
宇宙に必要なのは、指導者にとって有益なもの。
そして指導者の不快感を刺激しないものだ。
「は、ただお耳に入れておこうと思いまして」
「指示していない思考をするな」
即座に研究者は爆ぜた。
無能は思考などする必要はない。ただ言うことを、言うように実施していればそれでいい。
指導者の意向を理解できていれば、死ぬこともなかったし。
これから苦しむこともないのに。
せせら笑いながら爆ぜさせた研究者を痛めつける。他の研究者は、即座に作業に戻らせた。
これから、娯楽が始まる。
その前菜くらいには良いだろう。そう思いながら、指導者は「不興を買った」研究者を、痛めつけ続けた。
※キキキルルルキル准将
ラルルーガルといわれる種族の出身者です。10m近い背丈に加え、多腕に多足に縦に裂けた口、筋肉質の肉体と、異形という言葉の体現者です。巨大な口にはびっしり臼歯が生えています。
しかしながらこのラルルーガルは草食の種族で、肉は一切口にしません。
肉弾戦の戦闘能力では支援者に所属する種族の中でもトップクラスですが、素朴な性格の人々で、特に英雄を滅茶苦茶褒める傾向があるため、キキキルルルキル准将はミランをとても気に入っています。
我々の主観で相手を決めつけることが如何に愚かか。
そういう種族がラルルーガルなのです。
本作にどういった要素がほしいですか。要望があれば遠慮なくどうぞ。
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詳細なマシンデザイン
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圧倒的な武力による蹂躙
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緻密な人間ドラマ
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種族や文明の描写
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近接した力量のライバルとの死闘