王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶 作:dwwyakata@2024
勝利はしたものの、化け物との交戦、更に敵艦隊との連戦で大きな被害を出した第四艦隊。
後始末はそれなりに大変です。
それに惑星コヴァルライトは失われてしまいました。
その補填もしなければなりません。
第九艦隊と第四艦隊が合流する。
侵略者の艦隊はまだ抵抗を一部で続けているようだが、それも既に圧倒的な数の暴力でねじ伏せられている状況だ。
ミランはため息をつく。
またアリカ中佐に小言を言われるなと、片腕を落とされたウォーリア三型を見ながら、である。
激戦の中、パドフ中将の旗艦が狙われていることに気付いたミランは、作戦をすぐに提案。
承認を受けて、速攻で飛んだ。
その先には、大型で重厚だが。しかしながら、既にかなりてひどく傷ついている親衛軍ウォーリアがいたのだ。
恐らく重装甲重火力の親衛軍ウォーリアだったのだろう。
いずれにしても、挑んで倒したが。
ウォーリア三型もボロボロで、片腕を持って行かれ。
継戦能力を失って、空母に戻ったのである。
今は休むように。
そうキキキルルルキル准将に言われて、ミランも休憩を入れる。どのみち今更慌てて出撃する理由もないだろう。
トイレと水分補給を済ませ。
軽く仮眠を取ることにする。
食事はと聞かれたが、いらないと返事。
今は食事の気分じゃない。
横になって、しばらくぼんやりする。それでもだいぶ回復はするのだが。やはり根本的な疲れはとれないのが実情だ。
無言でしばし横になっていると。
ハコトが来た。
「敵の最後の大型艦艇が落ちたそうです。 親衛軍も既に姿が確認できないとか」
「味方の被害はどれほどですか」
「第四艦隊は一連の戦闘で41万隻まですり減らされました。 人的損害は6000万人を超えるとか」
「……」
6000万人か。
爆沈した艦などに乗っていた人員は助からなかった。
駆逐艦や巡洋艦に乗っていた人員は、艦が破壊された時、逃げられるかはかなり運が絡むという話である。
敵艦隊は50万隻余が全滅。
それに加えて、惑星コヴァルライトを破壊しながら出現したあの化け物も失ったことになる。
あれは脅威だ。
ミランのウォーリア三型でどうにか出来る相手じゃない。
今後も侵略者が繰り出してくるとなると、対策が必須だろう。あの重粒子砲の直撃で、十万隻くらい消し飛んだのをミランも見たのだから。
「敵がまだ何かもくろんでいる可能性は」
「大いにあると思います。 今、無事だった戦力を再編しつつ、工作艦を展開して、何かしらの星系規模での攻撃に備えているようです」
「だとすると自分に出来る事はないですね」
「食事を取って休んでください。 それが仕事です」
背丈が同じくらいになってからハコトは随分と厳しくなったな。
頷くと、食欲はないが、それでも食事にする。
今回はレーションだ。
ミランら新たの民の味覚を研究して作ったもののようだが、はっきりいって美味しくはない。
無言でもくもくと食べていると。
レーションは食べ過ぎないように、敢えて美味しくは作らないというあまり嬉しくない話をハコトにされた。
まあ、ミランとしてもだったら仕方がないなとしか言えない。
食事を終えると、言われたとおり本格的に休む。
まだコヴァルライト星系の各地で散発的な戦闘が行われているようだが。
それもいずれも掃討戦で。
ミランの出番は、既に終わっているのだから。
じっくり眠る。
睡眠導入剤も使った上でだ。
その後で起き出して、状況の変化を確認。
今の時点で、問題は起きていないようである。
また、雑魚の掃討戦も片がついたようだった。
「無人惑星の状況は」
「現在ドローンを下ろして確認している。 守備隊は全滅しているが、どうせ無人機だ。 気にしなくていい」
「それはそうなんだがな……」
「何か訳が分からん兵器が仕込まれた可能性だろ。 分かってる。 念入りに調べるさ」
会話をしているのは、恐らくだが技術士官だ。
どちらもまったく違う姿をしていて、ヒューマノイドですらないが。息はしっかりあっている。
ミランはウォーリア三型を見に行く。
問題はなさそうである。
既に修理は終わっていた。
同時にお小言メールが届く。アリカ中佐からだった。
ウォーリア三型が、親衛軍ウォーリアなみのコストが掛かっている機体だというのは分かっているから。
お小言は素直に受け入れることとする。
ミランはそのまましばらくぼんやりとウォーリア三型を見上げていたが。
今度はキキキルルルキル准将から、連絡が入った。
「ハッハッハ! ミラン少佐! 一連の戦闘で、また大量の親衛軍ウォーリアを倒したそうだな!」
「大げさな。 数機です」
「歴代の特務の人員でも、一対一で親衛軍ウォーリアを倒した者はいないし、連携戦でも既に君のスコアは歴代最高だそうだ! 英雄は褒めるのが我々の流儀でな!」
「ありがとうございます」
何というか豪放というか元気な人だな。
座乗艦が亜光速ミサイルの直撃を受けたとかで、かなりの手傷を受けているそうなのに。全くそれを感じさせない。
勝ちはしたが、第四艦隊は四割近い兵員と艦艇を失っているのである。
本来なら全滅判定だ。
それでも、敢えて明るく振る舞って。
将兵を萎縮させないようにしているのかも知れなかった。
「それですまないが、仕事がある」
「分かりました。 ウォーリア三型は修理が終わっています。 いつでも出られます」
「コンディションもばっちりかな?」
「万全ではありませんが、ある程度回復はしています」
ミランの言葉に、キキキルルルキル准将はそうかと頷いて。
そして、指定する。
第二惑星。
コヴァルライト星系の第二惑星は、恒星に近い事もあり、侵略者の無人基地が点在するだけだった。
それを惑星コヴァルライトを落としたタイミングで陥落させたのだが。
その後のゴタゴタで敵に再度奪回された。
今、敵の無人機を片付けているのだが。
妙な反応があるという。
「例のナノマシンだ。 星の規模から言って、あの化け物のような超級の兵器が出てくる事はないだろうが、それでも万全を期したい。 私も向かう。 君もすぐに向かってほしい。 足として、今巡洋艦を向かわせている」
「分かりました」
巡洋艦が程なく来る。
駆逐艦に比べて二回り大きい巡洋艦は、宇宙戦闘での主力となる艦艇だ。攻守走のバランスがもっともとれていて、火力も戦艦には届かないがそれに迫る。豊富な武装を用意しており、艦隊の総合火力にもっとも貢献する兵種だ。
ただしそれはあくまで支援者の艦隊の話。
侵略者の艦隊では大型艦の比率が大きく、巡洋艦もそれは同じ。
今回の会戦でも、敵の巡洋艦はかなり数が多く、味方は苦戦させられたようである。
ちなみに大きすぎるので、基本的に惑星には降下する運用をしない。
それをやるのは駆逐艦まで。
まれに物資の回収などで、空母並みのサイズがある輸送艦が動くこともあるのだが。それはあくまでキャリアとしての運用だ。
巡洋艦に移る途中で、見る。
敵味方のデブリが、途方もない数浮かんでいる。
死者も浮かんでいるようだ。
敵の死者はない。
例のナノマシンの作用もある。
死んだら爆発してしまうのだ。死体さえ残らない。むごい話である。
巡洋艦の内部は、地上戦用の駆逐艦に比べて手狭だ。殆どの巡洋艦は艦載機を乗せないらしい。
艦艇としての戦闘力を追求しているので。
戦闘機や攻撃機、ウォーリアを乗せることは殆どないそうだ。
戦艦のうち、砲撃型などもこれに準ずる運用をするらしい。
ミランも催眠学習で教わったが、実際に目にしておくのは良いだろう。
そのまま巡洋艦が移動する。途中でデブリと衝突しそうになったりもしていたが。出来るだけ保存して、回避して動く。
敵のものにしても味方のものにしても、資源として再活用できるし。
何より、味方の生き残りが、宇宙服を着込んでデブリに潜んでいる可能性もあるのだから。
程なく第二惑星に到着。
第二惑星には大気もない。
それもあって、地上戦ではないから、だろう。
キキキルルルキル准将も、戦艦に乗っているようだった。
戦艦に移って、キキキルルルキル准将の幕僚達と合流。彼らも、ミランを歓迎する空気であったのは嬉しい。
猛将の麾下に弱卒無しとかいうらしいが、それなのだろう。
キキキルルルキル准将は負傷の結果だろう。大きな医療用のプロテクタをつけていた。致命傷ではないらしいので、全く問題はないと准将は言っていたが。ミランからすれば、休んでいていいと思う。
勿論、それを強制は出来ない。
医師もあまり長い会議はやめろと視線で告げているようだが。
逆に言うと、絶対安静レベルではないということだ。
だったら会議も作戦も早々に終わらせるべきだろう。
そのまま、作戦の説明を受ける。
「現在調査用のドローンが、第二惑星の不審なナノマシン反応を調査している。 最悪の場合は、この位置から第二惑星を爆破することになるが……惑星コヴァルライトの悲劇は、出来るだけ繰り返したくはないというのが、パドフ中将のご意向でな」
「分かります。 惑星コヴァルライトは再建するんですよね」
「そのつもりだ。 既に上層部から許可は下りていて、ブラックホール展開機から資源を集め始めているらしい。 侵略者に襲われる前の地形を、完全再現したものになるそうだ」
それを聞いて安心した。
コヴァルライトの第七の花は、気弱だが、それでも全てを見届けるために最前線まで来た。
そして逃げずに、パドフ中将とともに最後まで戦闘を見届けたという話だ。
戦闘向きの種族ではないらしいし、さぞや恐ろしかっただろう。
ましてや目の前で母星を穢され尽くして破壊されるなんて。
いずれにしても、無人惑星とはいえ、第二惑星で同じ事はさせられない。
「入電。 ナノマシン反応を確認。 映像出ます」
「うむ」
映像が出る。
これは、侵略者の艦艇か。
それほど大きくはないが、巡洋艦だろうか。大きく破損していて、生存者がいるとは思えない。
ナノマシンがあるとしたら、侵略者の個体に入っていたものが、あふれでもしたのだろうか。
「中和剤を用意。 各艦、いつでも破壊するべく準備をしてほしい」
「了解!」
「推定されるナノマシンの量は」
「微量です。 反応からしても、せいぜい侵略者数百体分ですね。 惑星コヴァルライトで現れた、ウォーリアサイズの生物兵器化ナノマシンすら作れないかと思います」
それでもキキキルルルキル准将は油断するなと言って。
念には念を入れて調べさせる。
程なく、艦艇の残骸から、カプセルが発見される。
それには大量のナノマシンが詰め込まれていたようだった。
ただし、発見と同時にそれが爆発四散。更には、艦艇の残骸も爆発して、調査用のドローンが巻き込まれていた。
「目標自爆。 消滅しました」
「……何だったんだ一体」
「分かりませんが、再占領した後に用いるつもりだったナノマシンが、此処にただ滑落しただけかも知れません」
「ともかく油断するな。 第二惑星の再制圧と、調査を徹底してほしい」
キキキルルルキル准将が、大量の葉っぱをわしづかみにする。
大きさがとんでもなくて、ミランもその葉っぱの上に余裕で乗れそうだ。
その葉っぱを、縦に裂けている口でむっしゃむっしゃと豪快に食べるキキキルルルキル准将。
まあ、そういう生態なのだ。
草食なのはミランから見ると少し不思議だが、そういう生態である以上、受け入れるべきだろう。
幕僚が咳払い。
「キキキルルルキル准将。 とりあえず撤退いたしますか」
「いや、調査が終わるまで残留する。 第九艦隊の連中も、今は負傷者の手当と、生存者の救出で手一杯だ。 我々が足を引っ張るわけにはいかない」
「では、せめて休憩を」
医師である顔が長い種族がいうと、キキキルルルキル准将はしばらく黙った後に。専用らしい巨大な椅子に座る。
それが寝台代わりであるらしい。
それぞれ休憩するようにと言われたので、ミランも寝台を借りて休む。
ハコトもついてきていたのだが。
寝台が汚いとブーブー文句をいうので、苦笑。
惑星アラタの北基地にいた頃は、もっと酷い環境だった。だから、別にこれくらいはと思ってしまう。
横になって休んでいると、通信が聞こえてくる。
第一惑星でも似たようなナノマシンが発見されて、そして爆発したそうだ。
何かの嫌がらせだとしか思えない。
第四艦隊のメンバーは、あの「化け物」との戦闘で、恐怖を覚えているものも多い。侵略者のナノマシンと聞いて、腰が引けてしまう者もいるようだ。
しばらく横になって、丸まって休んでいると。
連絡が入る。
第二惑星の掃討完了。
現在地下を徹底的に調べている、ということだ。
また、調査用ドローンは、さっき自爆した侵略者の艦艇を調査しているようだが。色々とろくでもないものが見つかっているようである。
育ちかけの侵略者の残骸だ。
侵略者は成体の状態でクローン生産されることが分かっているのだが、そもそも生物的な設計図……遺伝子と言って良いのかは分からないが。ともかくそれが既に成体を基準としているらしい。
成長過程の状態はカプセル内で、ごく短時間だけしか経験しないそうで。
成体として生まれ。
動きが鈍くなったら廃棄される。
要するに、あの艦艇は侵略者の一般個体を急速培養しながら、第二惑星の近くで撃沈された事になる。
或いは第五惑星や第六惑星を奪還したら、侵略者を即座に大量に生産して、またゴミ捨て場として活用するべきだったのかも知れない。
反吐が出る話だ。
死体の残骸といっても、細胞すら残っていない。
破壊され、物質単位にまでなってしまっているようだ。
死んだら欠片も残らない。
尊厳なんて欠片もない。
おぞましい話だった。勿論おぞましいのはそんなことを続けている侵略者の指導者であるが。
「爆発した艦艇になにか有意義なものは見つかりそうか」
「いえ、無人兵器も積んでいなかったようです。 これは或いはですが、敵はあの化け物と戦った第四艦隊を、瞬殺して即座にこの星系を奪還できるつもりだったのかも知れません」
「そうだな。 あの化け物を相手に、パドフ中将でなければ危なかっただろうな。 だが、パドフ中将がいた」
キキキルルルキル准将がそういうと、部下達も納得しているようである。
ミランもそれは否定しない。
あの粘り強い指揮。
あれがなければ、第九艦隊の来援まで、持ちこたえられなかっただろう。
いくつか話をしているうちに、第二惑星の状態は問題ないと結論が出た。
更に増援の味方艦隊が来る。
正式な艦隊ではなく、医療、救助を専門としたレスキュー艦隊という特別な存在であるらしい。
規模は二千隻程度だが、空母なみのサイズを持つ専用の病院船や、大型の工作艦を多数擁しているようで。
こういう場所で、生存者の救出や、負傷者の手当などに特化している艦艇であるらしかった。
ミランはこの後、第一惑星も様子を見に行き。
問題がないと墨付きが出てから、空母に戻った。
まだ、コヴァルライト星系での戦いは、厳密には終わっていない。
敵の爪痕が、至る所に残っているからだった。
戦闘が終わって数度寝起きして。
パドフ中将が、正式にコヴァルライト星系奪還戦が終了したことを告げた。
味方の損害も大きかったが、敵の損害はそれ以上。
更に、敵艦隊は全体的な規模も生産力も支援者を下回っている。この会戦での勝利の意義は大きい。
そう、パドフ中将は告げた後。
同時に、この会戦で命を落とした将兵に敬礼と全員で告げて。
ミランもそれに従っていた。
奪還戦開始から通算で7000万の人員が死んだ。
そういう意味でも、苦しい戦いだった。
酷い結果だった。
だが、それでも。
敵の反撃をねじ伏せ、更に敵領を削り取ったのである。
ちなみに流石にこれ以上の戦力消耗は出来ないからか。敵の艦隊は確認できていないそうだ。
これからコヴァルライト星系には、大型の宇宙要塞を輸送。
戦略上の重要拠点として運用すると同時に。
惑星コヴァルライトの再建。
再建が終わり次第の、軍の撤退。
コヴァルライトへの自治権譲渡。
更には、復興支援、再生した母星への移住の支援などを行うそうである。
再生した母星か。
一から同じものを作り出せるとは言っても、それでも同じ星ではない。完全に砕かれた惑星コヴァルライトの残骸は、この星系中に散らばっている。工作艦がデブリと一緒に集めているようだが。
そもそも星系中の惑星軌道などが今回の会戦で滅茶苦茶になったらしく。
それらも再生するのに、最低でも100期は見なければならないとか。
この星系は、これからが正念場だ。
連絡がある。
第七の花だ。
驚いた。ミランとはちょっと会っただけの存在だったのだが。
「ミラン少佐。 恐らくこれから転戦されるのだと思いまして、連絡させていただきました」
「はい。 激戦の中、何度も旗艦級戦艦を移動したそうですね」
「はい。 このような恐ろしい闘争を命を賭けてしてくれているのに、何も出来ない自分が歯がゆくてなりませんでした」
「戦闘に向いていない種族なのだから仕方がありません」
身体能力もそうなのだが、コヴァルライトは精神的にも戦争に向いていない種族であるそうだ。
臆病だとかではなくて、そもそも悪意を持って相手を傷つけるという発想がないそうだ。
植物は苛烈な生存競争にある存在だが、植物が知性を得た彼らは、むしろ複雑なネットワークを用いることで、相互扶助の思想を強く発展させた。
それが互いの尊重と、個体数の確保。
更には尊重からの様々な技術の発展など、文明の構築によい結果を招いた。
しかしだからこそ、戦争は起きなかったし。
侵略者が来た時、友好的にアクセスを試みて。そのまま踏み砕かれてしまったのである。
流石に今は、コヴァルライトも侵略者と和解できるとは思っていないようだ。
それだけ、あらゆる試みが、暴力に踏みにじられたのだろう。
ミランも他人事ではないので。
戦えないコヴァルライトを、責めるつもりはない。
支援者がこなければどうにもならなかったのは新たの民だって同じ。
支援者は、ミランのような一部の希望者以外に、戦いに参加することを強制したりはしなかった。
惑星アラタは現在急速に自治の体制が整っていて。支援者との関係も良好であると聞かされている。
今後はどうするかは分からないが。
新たの民は兵器の操縦者の適性がある程度あるようなので。傭兵業が盛んになるかも知れない。
逆にコヴァルライトは、惑星コヴァルライトを再建した後は。
恐らくは経済や技術の面から、支援者を助けることになるのだろう。
「ミラン少佐のことは、私が語り継ぎます。 あの恐ろしい親衛軍ウォーリアを倒したこと、忘れません」
「ありがとうございます。 ただし自分も無敵でも最強でもありません。 決して神格化のようなことはしないでください」
「はい。 そのことも受け継ぎます」
「……」
通話を終える。
ミランは、そのまま次の辞令が来るまで、ぼーっとする事にする。しばらくは、そうしていたい。
それくらい、一気に疲労が襲ってきたからである。
ファーガの栄養液を食べたいな。
そう思う。
だけれど、贅沢ばかりは言っていられなかった。
全ての無人惑星、準惑星の調査が終わる。惑星の衛星などの調査も終わった。
侵略者の残存戦力なし。
それまでに相応の時間が経過したが、ミランには声が掛からなかったので、シミュレーションで戦闘の訓練を続けていた。
やはり、解体屋は手強い。
今の状態でも、確実には勝てない。
更に、今まで調べた限りでは、まだまだ遭遇していない親衛軍ウォーリアがいる。それらについても調べて、戦闘の際はどうするか考えておかなければならない。
幸い戦闘データはある。
連日シミュレーションマシンで腕は磨いておく。
今までのシミュレーションマシンの最高難易度は、十体がかりで親衛軍ウォーリアを倒すものだったようだが。
今のミランのために。
単騎で親衛軍ウォーリアを倒す難易度が追加され。
それにミランは黙々と潜っていた。
デブリについても、大きいものは工作艦があらかた片付けたようだが。小さなものは、片付けはここからが本番だ。
大型の宇宙望遠鏡を用いて、星系の隅々まで探査して。それをデブリを掃除する専用の艦艇が処理する。
長い場合は数十期掛かるらしく。
デブリ掃除を専門としている種族もいるらしい。
全自動でやってもいいのだけれども、それだとどうしても異常事態に対応できない事があるらしく。
デブリを掃除する「掃海」とか「掃宙」とかいうらしいが。
そういった作業には、どうしても有人の艦艇をある程度の数使う事が、義務づけられているそうだ。
シミュレーションマシンから出ると、アリカ中佐が来る。
相変わらず苦手な相手だ。
ミランが敬礼すると、辞令を持ってきた。
「はい辞令です。 パドフ中将からの直接のものですね」
「ありがとうございます。 それで内容は」
「ミラン少佐、貴方は中佐に昇進です。 それと、これからヴァーグラット戦線に移動となります」
「!」
ヴァーグラット戦線。
支援者侵略者合計して1000万隻以上の艦艇がぶつかり合う大規模戦線はいくつかあるが、その一つ。
現在支援者の十六個艦隊合計855万隻と、侵略者の艦隊619万隻が激突している場所だ。
ちなみに星系ではない、完全にほぼ何もない空間での戦闘であり。
互いに大型の宇宙要塞を複数持ち込んで拠点としながら戦闘をしている。
60期以上停滞している戦線であり、いくつかの戦線がここ最近一気に攻勢に出て、敵を瓦解に追い込んだものもある中。
このヴァーグラット戦線は。後方に侵略者の大規模兵器工廠があるからか。侵略者も兵力が減るたびに増強し、頑強な戦闘を行っているらしい。
大規模戦線の中でも、もっとも実力伯仲の戦線だ。
此処の指揮を執っている指揮官は、代々元帥候補として知られているらしく。
現在は第十四方面軍の司令官である大将閣下が指揮を執っているそうである。
そんな重要戦線に移動か。
敵の艦隊規模からしても、多数の親衛軍がいるのは確定だろう。
これは厳しい状況だ。
それでも、ミランが特務であり。
行けというならいく。
万が一このヴァーグラット戦線が崩壊でもした場合、ここ最近の勝利が全部台無しになるほどの損害を味方が受けることになる。
それはミランでも分かることだ。
「中佐になる事で、何か変わることはありますか」
「お給金が増えます」
「興味ないですね」
「そうでしたね……」
ミランには、身を飾るとか、そういう発想が全くない。
これは新たの民がそういう素朴な種族だからと言うのもあるのだが。元々物欲が少ないらしいのだ。
支援者にも、給金を稼いで、酒だうまい飯だで騒ぐ者もいるらしいのだが。
ミランはそういうのに興味は持てなかった。
「特務として、中佐になると更に厳しい要求がされるんですが、実は中佐まで出世した特務は現役で100名ほどしかいません。 それも後方指揮官とか、指揮官で特務の人員が殆ど。 大佐になると現役で六名だけですね。 准将まで行くと現在は存在していなくて、支援者の歴史で数名出ただけです」
「それは……」
「ええ、嫉妬も受けます。 あまりうかつな発言はしない方が良いでしょう」
アリカ中佐が、によによと見てくるので困る。
ミランとしても、傲慢な発言をしているつもりはないのだが。
どうもそう見られることはある。
こればかりは、どうしてもあるし。
種族によっても、更には個人によっても違う。
誰にも好かれるのは不可能である。それは割り切っていても、どうしてもこればかりは仕方がない。
「それで、特務としては方面軍の司令官から直に指揮を受けるんですか?」
「それはまだ調整中ですね。 ただ個人戦闘を行う特務で中佐となると、大将が直に仕事を頼む事も増えるかと。 中将と大将って、かなり差が大きいんですよ。 艦隊司令官と方面軍司令官ですからね。 中将をたくさん従えているのが大将です」
なるほどな。
いずれにしても、いかないと分からないと言うことだ。
程なくして、足となる艦艇が来る。
高速機動戦艦という、ちょっと変わったカスタム戦艦だ。
何でも先に話題に上がった第十四方面軍直下の戦艦であるらしく、高速機動での一撃離脱戦で敵戦線に穴をうがつことを仕事としているのだとか。
これが迎えに来たことが。
今回の作戦の厳しさを示しているとも言える。
ミランがウォーリア三型ごと、シャトルで出向くと。
内部はかなり狭苦しくて、艦としての機動戦を主軸としているものだということが分かった。
ただ乗っているクルーは、非常に精鋭揃いのようだ。
ミランを見る目も厳しいのが分かった。
艦長が来る。
一戦艦の艦長なのに大佐だ。
それだけで、この艦がどれだけの武勲艦なのか分かる。
相手はすらっと背が高い、額に第三の目がある種族だ。見覚えがある。バルバダート。支援者六種族の一角。
確か現在の、支援者の議長を出している種族の筈だ。
数が少ないが前線にも立てるし政治家も出来る器用な種族であるらしい。
ただし数が少ない上に繁殖力も弱いとかで、数を増やすのはクローン技術頼みなのだとか。
「貴殿がミラン中佐だな」
「はい。 中佐に昇進したばかりです」
「貴殿の戦歴は素晴らしい。 だからこそ、これからヴァーグラット戦線の膠着打開に貴殿の力が必要だ」
「ありがとうございます」
随分と堅苦しい人だな。
戦艦の中は手狭だが、個室を使ってほしいと言われる。狭いなら兵士達と同じで良いと言うが。
特務の中佐がそれでは示しがつかないと言われた。
ハコトも同じ部屋でいいかと聞くと。
嫌悪を込めてハコトを見る。
「侵略者製のロボットか。 姿も性別があった頃の侵略者に似ているという話を聞いている」
「ハコトはウォーリア三型の整備のスペシャリストです。 人格についても……まあ合成人格なのでしょうが、保証します」
「分かった。 ここにいる者は、皆侵略者を心の底から憎んでいる。 それだけは理解してくれ」
まあ、そうだろうな。
支援者六種族の一角ともなると、数限りなく同類も殺されているはずだ。それについてはミランも同じだし、ミランも侵略者や、特にその指導者は許せないが。ただ、それとハコトを恨むことは話が別だ。
意見が其処ではあわないが、別に論破だのするつもりはない。
ともかく、これからまた大きな戦いをする事になる。
ミランは、気合いを入れ直さなければならなかった。
ミランの戦績はずば抜けており、今回もパドフ中将が太鼓判を押す活躍をしました。
次の戦場は現在最大の戦線。
ヴァーグラット戦線です。
本作にどういった要素がほしいですか。要望があれば遠慮なくどうぞ。
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詳細なマシンデザイン
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圧倒的な武力による蹂躙
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緻密な人間ドラマ
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種族や文明の描写
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近接した力量のライバルとの死闘