王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶   作:dwwyakata@2024

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4、憤怒の行き先

侵略者の指導者は怒り狂っていた。完璧な作戦が無能な部下のせいで失敗したからである。

 

あれだけ膳立てをしてやったのに。

 

そう考えた指導者は、まずは作戦に関わった研究チームのメンバーを皆殺しにし。それから怒りにまかせて首から上だけ再生させ、体感時間万年単位で精神に拷問を与え。発狂してもすぐに正気に戻し。徹底的に苦痛を与えてから殺した。

 

どいつもこいつも無能ばかりが。

 

そう吠え猛る指導者。

 

彼自身の作戦がまずかったとか。

 

彼の作戦に不備があったとか。

 

ナノマシンの性能がそれほどでもなかったとか。

 

そもそもプログラム稼働では限界があったとか。

 

そういった事を指導者は考えない。

 

自分がやることは全て正しい。

 

宇宙の全ては砂の一粒まで。

 

歴史は過去から未来の全てが自分のもの。

 

その思想からすれば、指導者は「可哀想な犠牲者」であり、どれだけでも「復讐する権利がある」のだった。

 

まずは手元の「私物」に徹底的に打擲を加えた後。

 

この事態を引き起こした「不愉快な肉」どもに懲罰を加えなければならないと指導者は考えた。

 

手段についてはいくつかある。

 

天の川銀河中枢の巨大ブラックホールを暴走させるとか。

 

肉が抑えている星系に片っ端からブラックホールを撃ち込んでやるとか。

 

天の川銀河は不愉快な肉に汚染され尽くしてしまった。

 

だったらこんなもの、全部まとめて破壊し尽くして、アンドロメダ銀河にでも移る手もある。

 

色々と考えているうちに。

 

通信が入る。

 

最前線にいる侵略者の部隊からだった。

 

通信を入れてきたのは、その部隊。方面軍として、およそ619万隻を率いている侵略者の司令官である。

 

「戦線に肉の艦隊が増強されています。 要塞級移動惑星4、艦艇数およそ140万隻」

 

「だったらなんだ。 その場で対応せよ」

 

「現状の戦力で踏みとどまるのは……」

 

言おうとして出来なかった。

 

指導者に異を唱えること、発言に逆らうことはそのまま死を意味する。ナノマシンが全身を焼き尽くしたのだ。

 

指導者は苛立ちながら告げる。

 

「役立たずは更迭する。 で、次の地位のものを出せ。 方面軍を任せてやっているにもかかわらず、肉が増えた程度で怖じ気づくことはあるまいな」

 

「は、はっ! このまま踏みとどまりまする! 踏みとどまることは出来まする!」

 

「ふむ、ちょっと面白い事を思いついた」

 

確かその戦線では、相当な年数硬直していた筈。そこに肉どもが大量に押し寄せてきた。だったら、まとめて片付ける好機ではないか。

 

失敗はしたが、この間のナノマシン兵器による実験の結果自体は悪くはなかった。無能が使ったから作戦が失敗した。

 

だが。

 

「私がその艦隊を直接指揮する」

 

「指導者様が指揮されるのであれば、勝利は確定にございまする」

 

「当たり前のことをいうな。 まずは人員を要塞にて生産せよ」

 

「人員をですね。 分かりました」

 

逆らうことは許されない。

 

即座に後任の方面軍司令官が、命令を実行する。

 

作戦を指揮するに当たって、指導者は端末の一つを送り込む。

 

体が一つなんて、それに何かがあったら全て終わるような馬鹿な仕組みを指導者は組んでいない。

 

知識は並列化して蓄えているし。

 

当然体も幾らでもスペアがある。

 

そして全て同期しているし。

 

もしも問題が発生した場合は、即座に切り離して他の体で活動できる。それくらいは当然である。

 

皇帝と名乗っていた頃は、そのような体ではなかったが。

 

指導者になった頃は、そう改造していた。

 

元の体なんてどうでもいい。

 

指導者にとっては、現在の自分こそが完全型にて完成形。自分だけが全てに勝る尊き存在なのである。

 

端末を乗せて、母星系を出立するのは、指導者の持つ「最大親衛艦」と言われる、特大規模の戦艦である。

 

全長40㎞に達するその巨大艦は、単独で要塞を粉砕する戦力を有しており、侵略者の軍でも12隻しか就航していない。

 

いい加減無能な部下のせいで、被害を受けるのは嫌になってきていた指導者は。

 

この辺りで、そろそろ肉に対して格の違いを見せてやろうというつもりになっていた。

 

それに最前線に出れば、役立たずどもを直接指揮下における。

 

昔は最前線で肉を蹴散らしていたものだが。

 

近年はそれもなくなってきた。

 

まともに戦える相手もいないし、退屈極まりないからである。

 

だから遊ぶ。

 

肉を蹴散らして遊んで、奴らが優位を得ているという幻想を砕いてやる。

 

これほど面白い事があるだろうか。

 

かりそめの優位をくれてやった。

 

無能な部下がそれをしてしまった。

 

だったら、自分で全てをひっくり返してやる。

 

そう、指導者は考えていた。

 

傲然と進む12隻しか宇宙にない最大親衛艦のうちの一隻、「メタトロン」。

 

それは旗艦となり、20万隻の艦艇を従え。

 

膠着が続いている戦線へと、移動を開始したのだった。

 

 

 

(続)







※最大親衛艦

侵略者の切り札です。12隻しか存在せず、その規模はなんと全長40㎞に達します。

基本的に侵略者の指導者が出る時に座乗艦とするもので、その戦闘力は常に最新のものとして更新され。近衛として強力なカスタム艦の艦隊を従えています。

ヴァーグラット戦線にこれの一つ。

メタトロンが向かおうとしているのです。





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