王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶 作:dwwyakata@2024
※ヴァーグラット戦線
侵略者と支援者が激突する戦線の一つです。こういった戦線は天の川銀河にいくつか存在しており、双方あわせて一千万隻以上の艦隊がぶつかり合う戦線もいくつかあります。
ヴァーグラット戦線はそれらの中では特に大規模で、支援者の暦で60期、侵略者の暦でもおおよそ60年ほど続いている戦線です(実は期と年は1.02倍くらいしか離れていません)。
支援者が押している戦線が多い中、此処は膠着状態が続いていて、長らく支援者は困り果てていました。
此処の指揮をしているのは方面軍司令官であるパーミルトン大将。
指揮能力は確かですが、少し意固地なところが目立つ人物です。
序、大軍対大軍
ミランがヴァーグラット戦線に到着すると、ほぼ同時期に支援者の艦隊も大規模な増援を受けて。一千万隻に近い規模になったようだった。
まずはこの方面軍の司令官に挨拶にでもと思ったが。
流石に大将閣下は、特務とは言え中佐程度には理由もなく直に会わないらしい。スケジュールは既に決まっていて、ミランはそれに沿って、まずは要塞艦に向かうこととなった。
要塞艦。
殆どの場合小惑星を改造しているもので、それに機動力を持たせた兵器である。
兵器工廠まで内部に持っており、大きなものは惑星級のサイズがあるものまでいるのだとか。
これが現在、十近くこの戦線には浮かんでいて。
それぞれ一万隻以上の艦艇を同時に修復し、兵器なども現地で生産することが出来るし、強大な火力と防御力も有している。
敵も勿論同様のものを多数この星もない戦線に浮かべており。
連日戦線の各所で交戦が行われ。
それは六十期以上も続いている。
この戦線の先には、敵の大規模兵器工廠が存在していて。
ブラックホール展開機と連動して、連日艦艇を吐き出している。
この兵器工廠は侵略者の拠点で確認されているものの中では特に大きく、これを破壊できれば敵に打撃を与えることが出来る。
ただし六十期突破できなかったほどの戦線だ。
簡単に突破できる筈もない。
味方の大規模増援に対して、敵も増援を出してくるのは目に見えている。
要塞艦に降り立つ。
高速機動戦艦から下りた其処は、なんら通常の軍用港と変わりがない。
空気もある。
ミランも生活できる気温と空気だ。
ただ、これで生活できない種族も来ていて。彼らは宇宙服を着ていた。
大きな建物が多数存在していて。
傷ついた艦艇を修理していたり。
補給を済ませた艦艇が宇宙に飛び立ったりしている。
建物の中には、何に使っているか分からないものも多くて、都市のようである。
ミランも映像でしか見たことがない。
惑星アラタには、都市なんてものは存在しなかったのだ。
強いて言うなら、この間までのコヴァルライト星系の戦いで、侵略者の居住区を見たが。あれは都市と呼んでいいのかなんとも言えない。
司令部に案内される。
案内してくれるのは、新たの民を更に小柄にしたような種族だ。
戦闘には向いていないが、とにかく器用な種族であるらしく。とても真面目なため、支援役やメカニックで重宝されているらしい。
フィラーラと呼ばれる彼らは、母星を奪われて久しいそうだが。
少なくともミランを案内してくれるフィラーラの下士官は、腐っているようには見えず。この環境で必死に生きているし、何なら不満もないのがよく分かった。
ハコトは控え室に残してきた。
ウォーリア三型の微調整を任せるためだ。
それに、此処では侵略者の昔の姿に似ているハコトはあまりいない方が良いだろう。中佐になった事で、専門の整備スペースなどをもらえるらしいから。其処にいてもらう事になる。
大きな建物を、エレベーターで上がる。
大型の戦艦などに入った時に使ったが、なかなか慣れないな。
そう思う。
ともかく落ち着かない時間を過ごして。
司令部に到着。
出迎えてくれたのは、この要塞艦を拠点としている第三十七艦隊の司令官、ミディルラ中将。
プラパルダの老境に入った男性だ。
プラパルダは褐色の毛並みの事が多いらしいが、老境になると色が抜けて白くなっていくらしい。
ミディルラ中将は引退が近いらしく。
頭にある二本の角も、かなり痛んでいるように見えた。
幕僚には色々な種族がいる。
ミランは敬礼して、着任を告げる。
ミディルラ提督は、うん、うんと頷いて。
温厚そうに、説明を部下に促した。
まずはここしばらくの戦況について、説明を受ける。
説明をしてくれたのは、フィラーラの女性士官だ。さっき案内してくれたフィラーラよりかなり年上だが。
小柄なこともあって、アラタの民からすると、子供にしか見えない。
種族の容姿が似ていると言うこともある。
どうにもやりづらいなと、ミランは思ったが。流石に口に出すわけにもいかなかった。
「現時点で味方艦隊は989万隻、敵は655万隻。 敵の大型艦の比率からしても、ほぼ戦況は互角……から味方若干有利という所です。 三光年にわたって戦線が広がっており、最前線では基本的に敵味方ともに無人艦艇が戦っています。 それらが突破されそうになった場合は、有人艦艇で相手をしている状況です」
「凄まじい規模ですね」
「この戦線はいくつかある戦線でもっとも大きく、ここしばらくでの戦闘で味方有利が続く中、一番侵略者が粘り強い抵抗を見せている戦線です。 ミラン中佐には、これから行ういくつかの作戦で、要所の攻撃作戦を実施して戴きます」
「出来る範囲で全力を尽くします」
現時点で、敵に何か動きがある事は分かっているのだが。
まだそれが何かはよく分かっていないそうである。
いずれにしても、これから味方は更に増援を入れて、敵の突破に掛かる。
この戦線にいる敵艦隊の撃滅、後方にある敵工廠の破壊。
これが達成できれば、侵略者の勢力の5%を削ることが可能だという試算が出ているらしい。
侵略者が抑えている資源供出源である大型ブラックホールの一つが兵器工廠の側にあるものであるらしく。
他のブラックホールはまだ敵が未開発という事もあって。
此処を落とせば、敵はしばらくは戦線を下げ続けなければならなくなるという事であるらしい。
ただ六十期以上戦線が膠着している戦場だ。
前線近くはデブリが大量に滞留しており。
今までの何度も行われてきた敵味方ともの攻勢はどれも失敗している。
一番危なかったのが30期前に行われた敵の大攻勢で、これを防げなかったら戦線は瓦解していたらしい。
危ない場面を何度も乗り越えながら。
戦線は危ういバランスで保たれている。
「作戦が決まったら連絡します。 それまでは長旅の疲れを取ってください」
「分かりました。 いつでも連絡をください」
敬礼をかわす。
それから、ドッグに戻った。
ウォーリア三型に、新しい装備をという話があるようだが。今の時点でミランは別にいらない。
通常時は長槍とパルスレーザーだけで充分だ。
解体屋のような難敵を相手にする場合は、専用装備がいる。
あと、まだまだ機動力が足りないが。
それはミラン自身の問題だと考えている。
ウォーリアは属人的な兵器だ。
親衛軍ウォーリアも、中に乗っている親衛軍が極めて強力に強化されているから、というのが大きい。
精神性がゴミでも、操縦技術は生半可なウォーリア乗りでは歯が立たないのも事実なのである。
その辺りは、ミランが皆の負担を減らさなければならない。
ドッグの側に宿舎がある。
広さはそこそこだが、風呂が用意されていて、げんなりした。
分かっている。
だが、毛皮持ちには風呂は苦痛なのだ。だが我慢する。他の種族と、無駄な軋轢を起こすわけにはいかない。
向こうだって譲歩しているのだ。
新たの民の姿が、生理的に受け付けない種族は当然いる。
ミランから見ても同じ種族はいる。
それでも、見かけが受け付けないから、相手を拒絶するなんて事をしていたら、共存もなにもない。
侵略者とともに戦う存在だ。
互いに譲歩し合って、やっていかなければならないのである。
風呂に入って、嫌だなあと思いながら体を洗う。
水に濡れると毛皮の処理が大変で、乾かすまではしおしおになるし。体も重くなるから嫌なのだ。
それでも我慢して風呂から上がると、横になって休む。
ハコトが戻ってくる。
「ウォーリア三型の整備、終わりました」
「お疲れ様でした。 疲れたので寝ます」
「戦線はやはり厳しいですか」
「やや有利くらいの様子ですが、戦果を挙げられるかというと微妙でしょうね」
宇宙での大規模艦隊戦の恐ろしさはこの間のコヴァルライト星系の戦いで、骨身にしみた。
あの解体屋でさえ、亜光速ミサイルの連続被弾にはひとたまりもなかったのである。ミランだって同じだ。
しばし、無心になって休む。
そして目が覚めると、連絡がもう来ていた。
「ミラン中佐、出撃をお願いします」
「分かりました」
すぐに着替える。
そして、移動しながら、フィラーラの下士官から立体映像で説明を受けた。
「我が艦隊の担当している戦線に敵が突出。 艦隊規模は、我が艦隊と同等というところです。 すぐに援軍が来ますが、しばらくは守勢に回ります。 敵親衛軍ウォーリアが出てくる可能性が高い。 すぐに空母に移動して、出撃準備をしてください」
「了解しました」
ウォーリア三型に乗り、スタッフとともに既に待機しているシャトルに乗り込む。
大型の空母まで、シャトルで移動。空母は足が遅いので、シャトルで移動しながら追いつく事になる。
超大型戦艦が前線に移動しているのが見えた。
それに比べると大分小さいが、多数の戦艦が傲然と進んでいる。駆逐艦、巡洋艦もいる。
大量のフリゲートとコルベット。
どれも人が一人や二人しか乗っていない。
その代わり、凄い数だ。
艦隊の大半は小型艦だ。
それは分かっていても、ものすごい光景だなとミランは思う。
ほどなくシャトルが空母に到着。
内部の構造は、コヴァルライト星系で拠点にしていた空母と殆ど変わらないな。
艦長である中佐が来たので、敬礼。
年老いた艦隊司令官と違って、こっちはかなり若々しいプラパルダだ。男性士官だが、この若さで中佐だと相当なやり手だろう。
て、もっと若いミランが言うことではないか。
「ミラン特務中佐ですな。 数々の武勲、聞き及んでいます」
「いえ。 出撃はいつでも出来ます。 いつでも声を掛けてください」
「分かりました。 頼りにしています」
敬礼をかわすと、ウォーリア三型の側で座って。腕組みして座る。
何も喋らずにじっとしていると、他のスタッフが落ち着く。
そう言われて、ミランはそうするようにした。
ウォーリア三型の整備スタッフには、何名か生身の支援者種族が加わったが。彼らを不安にさせたくないし。
空母に同乗している戦闘機乗りやウォーリア乗りも、それで安心できるなら安いものである。
「あれがエースか」
「ああ。 あの悪名高い解体屋を何度も倒したらしい」
「すげえな……」
「新たの民は最近たまに見かけるようになったが、落ち着き払っていやがる。 若いのに貫禄がありやがる」
最初は見定めからだろう。
だが、それでいい。
ミランが見たところ、艦隊の動きも練度も、パドフ中将が率いていた第四艦隊には及ばない。
あの人は名将だ。
この艦隊の司令官も、昔は歴戦の勇士として知られていたらしいのだが。今ではすっかり引退前の老将だ。
艦隊の動きもキレがない。
それはミランも、見ていて理解できた。
前衛が戦闘を開始したらしい。連絡が飛び交っている。
ミランも立体映像から戦線の様子を見る。
敵艦隊は旺盛に仕掛けてきている。これに対して、第三十七艦隊はゆっくり後退しながら、敵を引きずり込む挙動をしている。
マニュアル通りだ。
此処は味方の方が多い。
それだったら、相手を調子に乗らせて引きずり込み、味方と連携して袋だたきにするべきだ。
だが、嫌な予感がする。
敵艦隊が、陣列を変えている。無言で立ち上がったミランは、まずいなと思った。
いきなり敵艦隊が、強烈な紡錘陣形を構築。突進を開始したのである。いつもの小競り合いかと侮りつつ、相手を誘引してやろうとしていた第三十七艦隊は、もろに相手に足下をすくわれた。
結果はどうなるか。
凄まじい被害が出始める。
敵の突貫は容赦がなく、次々と味方艦が爆沈する。第三十七艦隊の司令部はどうしている。
慌てた様子で、出撃依頼が来る。
「分かりました。 ただし、こちらの判断で動きます」
「君には出撃のグリーンライトが出ている。 好きにしてくれたまえ」
「了解」
即座に出る。
既に空母も乱戦に巻き込まれていて、相当な数のスウォームがまとわりついてきているようだ。
戦闘機隊が次々に出ているが。
それにミランも続く。
カタパルトから、一気に押し出されて、宇宙空間に。
出ると同時に狙撃されるが、想定して位相変換シールドを発生させられる盾を装備して出た。
盾は破壊されてしまうが、別に構わない。出ると同時に、狙撃してきたウォーリアに斬りかかり、肩口から真っ二つに斬り捨てる。
通常のウォーリアだ。
ただ、動きが明らかにおかしい。
前に戦闘した時よりも、明確に組織化されている。
空母に攻撃が集中している。ミランは目につく相手を次々に切り伏せつつ、戦況を冷静に見る。
あいつか。
空母に攻撃をしてきている敵空母。それに護衛が数隻いる。
ジグザグに飛行しながら、連絡を入れる。大混乱の中、それでも指定地点に、指示と同時に攻撃してくれる手はずを整える。
何度も攻撃がかすめる。
イーターによる制圧射撃が凄まじく、ミランは何度もかすり当たりで機体を激しく揺らされた。
だが、致命傷じゃない。
剽悍に襲いかかってきたブレイカーを、紙一重で回避しつつ、両断。
今の長槍なら、それが負荷少なく出来る。
立て続けにイーターをパルスレーザーで爆破しながら機会を待つ。もう少し。言い聞かせながら、空母の周辺の敵を掃除する。
斬りかかってきたウォーリアの一撃で、装甲を抉られるが。
そのまま相手をつかんで、膝蹴りをコアにたたき込んでやる。
それで内部の侵略者が死んだのだろう。
爆発するウォーリアを蹴り飛ばし、その爆発を盾にして敵の視界を切りながらブースターで加速。ミランを見失ったイーターを、爆発から飛び出しつつ、立て続けに破壊する。
味方が航空優勢を取り戻しつつある。
この戦線には親衛軍ウォーリアはいないようだ。
程なく、連絡が来た。
同時に、戦艦を味方と連携して破壊するのに使った荷電粒子砲を射出して貰う。
よし、行く。突撃。
空母の守りから、敵空母へ突貫。荷電粒子砲は敵近くで拾えば良い。
猛烈な対空砲火が来るが、回避回避回避。
何度も装甲を擦る。
そのたびにエグい音がして、機体が揺れる。直撃したら、流石に現状のウォーリア三型でもひとたまりもない。
敵空母の護衛をしている敵駆逐艦が、主砲発射をしようとした瞬間。
指定通りに飛んできた亜光速ミサイルが、駆逐艦を直撃。連続で三発。位相変換シールドを撃ち抜いて、駆逐艦を火球に変える。
更に、もう一隻いた巡洋艦は爆発にもろに巻き込まれ、一瞬ミランを見失う。だが、こっちは相手の位置が分かっている。
更に二発の亜光速ミサイルが巡洋艦を直撃。
それでも沈まないのは流石だが。
既にミランが、至近に到達。荷電粒子砲も、そこで受け取っていた。
ゼロ距離からの、荷電粒子砲。
亜光速ミサイルの直撃で、位相変換シールドが剥がされている状態だ。戦艦なら耐えたかも知れないが、巡洋艦なら。
装甲を貫通、内部に抜ける。
それでも撃沈とはいかない。
ミランが退避。
巡洋艦が、対空砲火を一斉にたたき込んでくるが、ミランは敵空母へ突貫。敵空母の護衛部隊と、敵空母そのものに、巡洋艦からの攻撃が直撃する。それでも、前後左右全て敵だ。エネルギーの残量も少ない。
ブースターとスラスターをフル稼働させて、空母に巡洋艦、イーターなどからの攻撃が全て当たるように機動する。
それで空母の防御が弱まる。
敵機が空母から出る瞬間を、ミランが狙撃。
敵空母の発着口で爆発が起こり、敵空母が揺らぐ。
其処に、味方爆撃機が、宙間爆雷を放り込んでいた。
敵空母が激しい爆発に揺動する。
ミランはそれを背後に、敵の火力から逃れて、一度退避。これだけやれれば充分だろう。
一人で戦っているわけじゃない。
後は味方に任せる。
空母に戻り、補給を受ける。ウォーリア三型が受けたダメージも修理する。
その間も、外ではあまり戦況が良くない。
さっきダメージを与えた空母は、味方が火力を集中して落としたようだが、敵の動きが今までとは別物に剽悍だ。
そして支援に味方艦隊が来た時には、敵はまるで其処に最初からいなかったかのように引き上げていた。
呆然とする味方。
ミランは思う。
これは敵の司令官が替わったのではないかと。
後で司令部に話をしておきたいと、ミランは思った。意見具申くらいだったら、中佐程度でも許されるはずだった。
先とはレベル違いの規模の戦闘。
ミランのウォーリア三型が如何に重カスタム機でも、この戦況の中で出来る事は限られています。
奇しくもこの規模の戦場では、侵略者の親衛軍ウォーリアが、亜光速ミサイルや艦砲の直撃で塵になることは珍しくもありません……
本作にどういった要素がほしいですか。要望があれば遠慮なくどうぞ。
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詳細なマシンデザイン
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圧倒的な武力による蹂躙
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緻密な人間ドラマ
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種族や文明の描写
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近接した力量のライバルとの死闘