王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶 作:dwwyakata@2024
侵略者の指導者は、メタトロンが傷つけられたことに苛立ちを感じてはいたが。ここ最近の戦果には概ね満足していた。
愛艦であるメタトロンの修理が終わったら、この戦線で大攻勢に出る。
肉どもの力量は理解した。
まとめて蹴散らすだけだ。
そしてこの戦線で決定的な勝利を収めれば、ここ最近の不愉快な敗戦を一気にひっくり返すことが出来る。
本当に無能な部下どもの尻拭いは大変だ。
そう、指導者は本気で考えていた。
指導者に、自分のミスという発想は存在しない。なぜなら、彼が宇宙の中心で、全ての基準だからだ。
今まで侵略者が作り出したあらゆる神よりもあらゆる点で優れている存在。それが指導者だ。
そう指導者は本気で考えていた。
だから宇宙の理も全て指導者の考えで決まらなければならない。
最終的には時間や空間も全て思い通りにするつもりだ。
ましてや肉ごときが逆らうなど。
片腹痛いとはこのことだった。
指導者は、侵略者の前には出ない。基本的に通信だけを行う。今も、部下どもの報告を、通信ごしで受けていた。
「いくつかの星系で猛攻を受けています。 兵力が足りず、陥落は免れません」
「このままだと近いうちに更に50以上の星系が失われるかとおもわれます」
「そうか。 全て現場の責任だ。 陥落するような巫山戯た指揮をしているのが悪い」
「ははー。 その通りにございます!」
逆らえば殺されるから、ひれ伏す。
そう部下に強いている指導者は。
自分の考え通りに部下が動いてそれは良かったとは思うが。余計な報告をしてきた事は許さない。
数名が瞬時に爆発四散。
代わりを作るように指示を出すと、次に入る。
「近々全艦隊を集めて、この戦線の敵を全て駆逐する。 現時点での艦艇数は」
「711万隻強にございまする」
「敵は」
「増強が続き、1090万隻はおりまする」
その程度か。
では問題がないな。多少の数的不利など、指導者が指揮しているのだ。ひっくり返す。否。ひっくり返されなければならない。
指導者はそう考えていた。
「兵器工廠をフルパワーで動かせ。 メタトロンの修理の他、部隊の装備を万全に調えよ」
「は……」
「準備が整い次第仕掛ける。 この戦線の肉を全滅させ、全て食料として収穫してやるとしようか」
からからと指導者が笑うと。
笑う機能を残していない部下どもはひれ伏すのだった。
古き存在が言っていたことがある。
笑うことも泣くことも許すな。
笑うことも泣くことも、指導者だけが出来れば良い。
散々部下どもの無能ぶりと尻拭いで泣かされてきたのである。その程度の事は当然であると、指導者は考えるのだった。
考えるか。
これも、屑どもから取り去っておいて正解だった。
知能など、優れた存在が独占していれば良い。
もしも知能を分け与えておけば、世界はくだらん混沌に落ちる。
絶対の正義である指導者の言葉だけがあればいい。
それ以外の言葉など必要に値しない。
さて、ここしばらく巫山戯た真似をしてくれた肉どもへ仕置きの時間。そして収穫の時間だ。
全てを狩り尽くしてやろう。
それこそが。
ゴミに対するせめてもの慈悲だ。
親衛軍NO3_009116。現在稼働中の親衛軍ウォーリアの乗り手の中で、唯一の第三世代の者である。
第三世代でありながら、戦果を挙げ続けている事を評価されて、この戦線にいる。
様々な親衛軍ウォーリアを使いこなしているから、敵にも対策されていない。
そして、彼にはもう一つ秘密があった。彼と言っても性別は取り払われているが。
指導者からの指示を見やりながら、親衛軍NO3_009116は呟く。
「ふん……指導者どのは相変わらず傲慢なことだ」
それは、あり得ない、指導者に対する批判の言葉だ。
親衛軍は基本的に必要に応じて生産される。
親衛軍NO3_009116もそれは同じなのだが、この戦線で彼は一度も戦死していない。
第三世代でまだ調整が不十分、という理由もある。
その結果。
彼は体内のナノマシンをごまかすやり方を習得したのだ。
今では如何にして指導者の手から逃れるかを考えている状態である。敵に下るのも良いだろう。
問題は、体内のナノマシンをどうにか中和しなければならないこと。
如何に殺意や敵意、疑念をごまかすことが出来ても。
超光速通信ネットワークから切り離されたナノマシンが炸裂するのをとめることは出来ないのだから。
中和剤をどのようにしてか入手するしかないか。
しかし、体内の全細胞にまでしみこんでいるナノマシンの中和だ。
更にはこの体自体が、ナノマシン無しでは生きていけないようにも調整されている。厄介な話だ。
だが、それでも。
一度芽生えた自由への渇望は消えない。
なんとかして、傲慢なる指導者を引きずり下ろしてやりたい。
それが、親衛軍NO3_009116の願いだった。
(続)
※親衛軍NO3_009116
前話に登場した黄金色のウォーリアの乗り手です。現在親衛軍はほぼ全てが第四世代なのですが、彼は例外的な第三世代ですね。
第四世の者は精神への締め付けがより強化(指導者にとってはそれが改良になっている)されているのですが、第三世代の彼はそれが甘く、60期に渡るヴァーグラット戦線での死闘を生き抜く間になんと自我を獲得。
更にはナノマシンをある程度騙して思考する技術も手に入れた特級の例外個体です。
彼は明確な造反の意思を指導者に抱いている、今や唯一になってしまった侵略者の個体と言えます。
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