王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶 作:dwwyakata@2024
侵略者がヴァーグラット戦線にて大攻勢を開始する予兆。
この戦線が破られれば、ここ最近の勝利が全て帳消しになりかねません。
しかも今侵略者はメタトロンを戦線に投入して勢いに乗っています。
極めて危険な事態が到来しようとしていました。
序、予兆
数度の小競り合いの末に、ミランは情報を得る。
敵が動き出した。
明らかに戦線を縮小していると言う。
逃げるつもりだとはとても思えない。
だとすると、可能性は。
大攻勢だ。
現在、敵は700万隻ほどがこの戦線にいる。それに対して味方は1000万隻を超えている。
だが、敵は大型艦船が多く、同数を同戦力とは見なせない。
それに敵の動きが露骨に良くなったのも事実だ。これはあまり良い状況であるとは言えないだろう。
味方もそれにあわせて、戦線を縮小し始める。
二光年弱に渡って展開していた戦線が、まとまりつつある。
明らかに敵に主導権を握られているが、相手はあの40㎞もある超巨大戦艦を出してきてから、明確に動きが変わっている。
この間の会戦で超巨大戦艦にダメージを与えることには成功したが。
それでも、敵の背後には大規模な工廠も存在している。修復はそれほど難しくはないだろう。
決戦が始まる。
それが分かって、ミランも流石に身が引き締まる。
連絡が来る。
クルアッハ少将だった。
何度か話して、口調が上官のものとなった。外様ではなく、第三艦隊の所属者と判断してくれたから、らしい。
「ミラン中佐。 話がある」
「はい」
「これから君は、第三艦隊の最前衛で、敵を可能な限り引きつけてほしい。 今度の戦闘で、第三艦隊は敵を正面から受け止める。 第三艦隊だけではなく、一緒に来ているいくつかの精鋭艦隊とだ」
「真正面から敵の猛攻を受け止めるつもりですか」
懸念を示すミランに、クルアッハ少将は作戦があると告げてくる。
なるほど。
内容を聞かされて、確かに手ではあると思った。ただし、それを成功させるには、相当な長時間、敵を食い止めなければならないが。
味方は敵の五割増し。
だが大型艦が多い敵を考えると、戦力はほぼ互角とみなければならないだろう。
まだ増援を味方は集めているらしいが。
支援者は各地で攻勢に出ており、この戦線だけ戦力を回す訳にもいかない。今、侵略者の戦力を削り取る好機なのだ。
此処で負ければ、更に戦いが長引くだろう事も事実だが。
この戦線に敵が全力を投入してきている以上、敵に勝てると思わせつつ、可能な限り引きつけ。
そして反転し、決定的な勝利を得なければならないのである。
「親衛軍ウォーリアをなぎ倒している君を、侵略者は明らかに意識している。 君が最前線に出れば、必ずムキになって倒しに来るはずだ。 勿論最大限の支援はする。 出来るだけ、踏ん張ってほしい」
「分かりました。 可能な限り」
「頼んだぞ」
通信が切れる。
簡単に言ってくれる。
今まで側面攻撃ですら、あれほど苦戦した相手だ。真正面からぶつかり合うなんて、正気じゃない。
勿論対策はいくつも練っているそうだが。
それにしても、厳しい状況だとしか言えなかった。
味方の艦隊と敵の艦隊が、布陣を開始する。
例の敵超大型戦艦は、ど真ん中の最前衛にいるようだ。自意識過剰というかなんというか。絶対的な自信があるのだろう。
陣形はどちらも横列陣で、正面からの力押しを双方考えているのが分かる。
敵は或いは、戦闘が進んだら陣形を変えてくるかも知れない。
いずれにしても、いくつか作戦案は練られているらしい。
「敵は補給用のものを除き、拠点型などの要塞艦も全て集めてきています! これは、全力で正面突破を狙ってくる模様です!」
「今までの交戦でこちらの実力を見極めたということか。 正面突破で確実に勝ちに来る、というわけだな……」
「作戦としては理にかなっているが」
「上等だ。 今度こそ勝つ……!」
ざわざわと話しているのが聞こえる。
ミランはウォーリア三型を見上げる
二型は惑星アラタの最後の戦いで、殆ど壊れてしまった。二型での戦闘経験をベースに作り上げられたのがこの三型だ。
だから、決して無から作られたわけではないし。
二型が廃棄されたわけではない。
だが、どこか寂しいのだ。
毎回戦闘で激しく傷つく。
それでいながら、ミランを守ってくれている。
ここ最近では、敵親衛軍ウォーリアと互角にやり合えるようにもなった。もしもこれ以上特務として出世することがあれば。
解体屋のような、超ハイエンドのフラッグシップ機としての改造もあるかも知れない。
ただ、それをミランが使いこなせるだろうか。
まだ力量が不安である。
通信が入る。
思わず背が伸びた。
パドフ中将だった。
「久しぶりですねミラン少佐。 今は中佐になりましたか」
「パドフ中将。 危険な任務だと聞いています」
「はい。 しかしながら、成し遂げなければ勝てないでしょう。 別働隊としてそれなりの戦力を率います。 貴方も頑張ってください」
「分かりました」
パドフ中将は尊敬する指揮官だ。
敬意を払っている指揮官は他にもいるが、ズヴァールラ提督は既にこの世にいない。今は、パドフ中将が一番知っている中ではすごい。
パドフ中将に出来なければ、他の誰にも出来ないだろう。
今は、ミランは。
自分の仕事をするしかない。
味方艦隊も、戦闘に使える要塞艦を全て展開し、更に新兵器が出てくる。
新兵器というほどのものではない。
超巨大盾艦。
何隻か建造された、最大級の無人兵器だ。
盾艦は基本的に戦闘では使い捨てで、いつも艦隊戦の最前線に配置され、数で相手のあらゆる攻撃を防ぐ。
だから無人兵器で、ドローンの一種だ。
今回の戦闘では、馬鹿げた破壊力の敵超巨大戦艦主砲の大火力レーザーが問題になっている事もある。
既に出力は確認済み。
それを一発であれば耐えられる盾艦を、複数用意。
第三艦隊に配備されており、敵の超巨大戦艦を黙らせるまで、どうにかこれで防ぐつもりのようだった。
十時間ほど、にらみ合いが続くが。
それはどちらも、戦力を徹底的にかき集めている状態だからだ。
兵力配置の再編が終わった後。
それぞれが、ゆっくりと動き出した。
第三艦隊の上下左右には、それぞれ第二十一、第二十七、第三十一、第三十五艦隊が配置されている。
距離が徐々に縮まっていき。
ほどなくして、交戦距離に達した瞬間。
パーミルトン大将が、攻撃指示を出していた。
「攻撃開始!」
「全艦攻撃開始!」
「侵略者どもを生かして帰すな!」
「主砲斉射!」
奇しくも、敵艦隊も同時に攻撃を開始。
凄まじい砲火がかわされる。
この戦線における、60期の長い対陣で。
もっとも激しい戦闘が、今始まろうとしていた。
激しい戦闘の中、ミランは接近戦になるまで待つ。
案の定敵の超巨大戦艦は最前列で主砲をいきなり放ってきたが、味方超大型盾艦がそれを防ぎ抜く。
なんと耐えた。
超大型盾艦は無人兵器だが。
搭載している反物質炉が試作型の大型のものであるらしい。ミランはあまり詳しい話を聞いていないが、反物質だけではなくて、もう一段階先のエネルギーを試験的に利用している炉なのだそうだ。
ただ安全性でまだ実証がとれていないので、まずは無人兵器に搭載。
そして、今回丁度良いと言うことで、超大型盾艦に搭載した、という経緯であるらしかった。
まあミランとしてはどうでもいい。
激しい砲火をかわしながら、敵味方が接近する。
流石に大火力の反撃が集中し始めたからか、敵の最精鋭艦隊は少し下がり、他の艦隊が仕掛けてくる。
味方の艦隊は良くやっている。
横列陣がそれぞれがっつりかみ合った頃、ミランに出撃依頼が出ていた。
ウォーリアの間合いだ。
ミランはカタパルトから射出されて、出る。
既に周りは激しい光が飛び交う地獄だ。
宇宙戦闘は既に何度も経験したが、とんでもない規模の戦闘である。無言で、突っかかってきたウォーリアを、連続で三機、斬り伏せる。それぞれが連携しての攻撃だったが、残念だが掛かってくる順番に斬り伏せるだけだ。
前後左右上下、どこから攻撃が来てもおかしくない。
全周モニタを常に確認しながら、敵を斬り、パルスレーザーで撃ち抜く。イーターの大群が狙ってくるが、ジグザグに飛びながら加速。
パルスレーザーで、片っ端から撃ち抜く。
イーターはかなり正確な弾幕を張ってくる。地上でも最初はかなり苦戦した。
宇宙では地上とだいぶ運用が違っているが、逆に立体的に動ける強みがある。片っ端から叩いて、味方を有利にしていく。
背後。
斜め上から斬りかかってきたウォーリアを受け流して、返す一撃で上下両断にしてやる。
これまででかなり装甲に傷を受けている。
要塞艦が、主砲を発射。
暴れていた敵戦艦に直撃。
位相変換シールドを抜いた。かなりのダメージだが、仕留め切れていない。
「荷電粒子砲を!」
「ファイター4、ボマー3、英雄に続け!」
「任せろ! 露払いはしてやるぜ!」
「ボマー3、敵にとどめをくれてやる!」
ミランが突貫。途中で荷電粒子砲は受け取れば良い。
飛んでくるブレイカーを、激しい火花を散らしながら、斬り倒す。
爆発。
粉々に砕けたブレイカーを見向きもせず。更に先に。エネルギーの残量が半分を切った。
エネルギーの残量にほとんど不安を覚えていなかったのだが。最近はどうも減りが早い気がする。
いや、違う。
苛烈に動かしているからだ。
ならば、あの戦艦をさっさと潰す。まだ生きている以上、危険極まりないからである。
戦艦がミランに気付いて、猛烈な対空放火で歓迎してくれる。ファイター4の戦闘機隊8機が散開。
敵の気を引きながら、敵戦闘機部隊を引きつけてくれる。
ミランは突貫。
何機かウォーリアが来るが、雑魚ばかりだ。全部右左に斬り伏せる。その過程で装甲をかなり抉られるが、どうでもいい。
戦艦が無理矢理大口径砲で狙ってくるが、ミランは荷電粒子砲を受け取る。そのまま、戦艦の至近に向かう。
いきなりスラスターで加速した戦艦が、船体でミランのウォーリア三型を押し潰そうとしてくる。
質量兵器として戦艦を使うか。
まあいい。全力で回避しつつ、相手のダメージを受けている箇所に荷電粒子砲を発射。これで更に後方へ加速。
ぐおんと加速して迫ってくる戦艦の船体。まともに当たったらその瞬間即死。擦るだけで爆沈だ。
だが、どうにか全力で船体は回避。
しかし船体についている砲がわずかに擦って、それで吹っ飛ばされる。
凄まじい衝撃だが、必死に機体を建て直す。
そして、見る。
本命の爆撃機が、戦艦に対艦ミサイルを投射するのを。
全てが炸裂。
敵戦艦は爆沈していた。
「敵戦艦撃沈!」
「いやっほう!」
「ミラン機戻ります。 修理が必要です」
「任せろ! この辺りは随分楽になった!」
味方が敵を押し始める。
だが、敵は規模が規模だ。この程度で満足していたら、一瞬で逆転されるだろう。火力投射も凄まじい。
ミランはどうにか要塞艦に帰還すると、すぐに修理を頼む。
要塞艦の位相変換シールドも、相当な攻撃を受け続けている。敵の猛攻が、想像以上と言うことだ。
「これはまた、随分傷つきましたね」
「戦艦にかすめたので」
「直します。 ミラン中佐も、休憩を」
ハコトが即座にウォーリア三型に飛びつく。整備スタッフも、全員がそれぞれの仕事をしてくれている。
水を飲んで、トイレに。
それでしばらくぼんやりして、頭を冷やす。
轟音。
どこかに被弾したのかも知れない。
だがこの要塞艦は、簡単に落ちるような作りじゃない。
それに、ウォーリア三型の修理も、かなり手間が掛かるはずだ。
食事まで済ませておく。
そして、ウォーリア三型を見に行き。修理がだいたい終わったのを確認して、再度出撃する。
そろそろ、ミランの予想では出てくるはずだ。
来た。
レーザーが立て続けに放たれる。それを回避すると、こちらに迫ってきているのは、貴婦人……いや違うな。
同じ機体だが、動きが違う。
恐らくは中身が違うと見て良いだろう。
子機から大量のレーザーを放ってくるが、雑だ。
「お前だな仲間をたくさん殺してる肉は! やっつけてやる!」
「随分幼い声だな」
「子供で悪いか!」
「子供だろうが斬る。 ろくでもない子供が親衛軍ウォーリアに乗って出てきたのを何度か見たのでな。 手加減をするつもりはない」
ぐんと間合いを詰める。
荷電粒子砲で近距離から狙い撃ってくるが、それは前にもう見た。それに、その間合いもこいつは分かっていない。
機体のパワーでは負けていないのだ。
即座に敵機の肩を貫く。
そして、子機が一斉に黙ったのを見ながら、足、頭と連続でたたき落とす。
前に乗っていた操縦者だったらともかく、こいつだったらこんなものだ。
何か泣き喚いていたが、無視。
もう何も出来ない。
次。
ウォーリアの部隊が来る。後方で、今なますにした親衛軍ウォーリアが爆発四散していた。
恐らく機密保持のためだろう。
いずれにしても、とにかく敵に徹底的な損害を強いてやる。今ミランは、そうして敵を引きつけ続けなければならない。
侵略者の指導者ご自慢の親衛軍ウォーリアを、それには何体も倒す必要がある。
連続して射撃。
次々に敵ウォーリアを落とす。
エネルギーの残量が危険域に入った。撤退。支援を要塞艦がしてくれる。猛烈な対空砲火が、ミランが穴を開けた部隊の傷を更に広げて。敵が足止めを受けている間にさっさと引かせて貰う。
補給だ補給。
機体の修理もして貰うが、今は出来るだけ戦わないと。
それはそれとして、水とトイレも済ませておく。
しばらく補給を待つ。
その間も、被害報告が飛び込み続ける。
敵の鋭鋒の中心にいるのだ。
被害が出るのは避けられない。
「敵精鋭艦隊、再び前に出てきます!」
「全艦隊、リンク! 主砲斉射準備!」
「リンク完了!」
「よし、撃て!」
敵の精鋭艦隊が前に出てきた瞬間、大将閣下が今度は先手を取った。敵が陣列を変える瞬間を見事に撃ち抜くことにそれで成功。
爆発が連鎖する。
敵の旗艦級戦艦が消し飛ぶ。それで歓声が上がるが。敵の40㎞にも達する超巨大戦艦が姿を見せたことで、その歓声は一気に冷え込んでいた。
主砲を放ってくる。
何度も耐えていた超大型盾艦がそれでついに自壊する。
二隻目が出るが、いつまで耐えられるか。
主砲斉射に耐えた敵の精鋭艦隊が、火力を一斉に投射してくる。第三艦隊の精鋭でも、じりじりと押されていく。
「味方の被害状況!」
「既に6%を上回りました!」
「敵の損害は!」
「二割増しほどで与えています!」
兵力がこれほど勝っているのに、それしか損害を与えられていないのか。ミランは歯を噛む。
補給、応急処置完了。
再び出る。
要塞艦から飛び出すと同時に、乱戦の中で味方ウォーリア部隊に火力を投射していたイーターの群れに、パルスレーザーを浴びせていく。次々と破壊されていくイーターだが、敵が大量にブレイカーを射出してくる。
対空砲火が火を噴き、要塞艦を守る。だが、守り切れない。その分は、ミランが補う。
ブレイカーに突貫。
一刀両断していた。
また親衛軍ウォーリアが来る。これも貴婦人の同型機か。構わない。たたき落とす。
突撃。
相手が何であろうが、初見の相手でなければ。必ず勝ってみせる。そう、ミランは自分に言い聞かせ。
激しい激情を振り絞っていた。
※貴婦人
量産型の親衛軍ウォーリアです。全高は15.5m。ただし全体的に丸みを帯びていて、特に肩が巨大な作りとなっています。
有線式の子機を多数展開する事で子機の制御コストを減らし、近接戦もできる強力な親衛軍ウォーリアで、侵略者の指導者のお気に入りです。複数の親衛軍がこれに乗せられ、特にミランと交戦した最初の一人は歴戦中の歴戦でした。
本作にどういった要素がほしいですか。要望があれば遠慮なくどうぞ。
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詳細なマシンデザイン
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圧倒的な武力による蹂躙
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緻密な人間ドラマ
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種族や文明の描写
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近接した力量のライバルとの死闘