王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶 作:dwwyakata@2024
文字通りの総力戦。疲れも恐れも知らない侵略者は、それぞれが死ぬまで戦い続けます。
これに対して、支援者はどうにか秘策を成功させるべく耐え抜く構えです。
突破させれば終わりです。
侵略者が仕掛けてきたこの激しい戦闘は、長時間続いた。その間、支援者が少しずつ有利に傾いていったが、それでも限界がある。
何しろ侵略者は恐れも疲れも知らない。
或いは疲れるのかも知れないが、侵略者は人員を使い捨てにしてくる。
このため、支援者の艦隊は、徐々に追い込まれ始めて来た。
「第十八艦隊後退! 補給と修理に入ります!」
「おい、今抜けられると前衛が!」
「もうミサイルもないんだ! 敵は補給艦を狙い撃ちしてくる! 後方に下がらないと戦えない!」
「少しだけ待て。 予備を回す」
大将閣下が言うと、すぐに後方にいる予備部隊が動き始めたようだった。
要塞艦はずっと最前線で交戦を続け。
工廠はずっと修理と新しい艦艇を吐き出し続けている。
それでもあまりにも戦いが激しい。
しかも侵略者は、どれだけ被害を出そうが、知ったことかといわんばかりに突っ込んでくる。
それに特に新兵達は恐怖しているようだった。
更に兵士達を恐怖させる出来事が起きる。
敵の損傷艦が、文字通り全力で突進を開始したのである。攻撃なんか食らおうとどうでもいい。
途中で撃墜できればそれでいい。
だが、一部は体当たりを敢行してきて。
それでいくつもの艦艇が爆発四散する。
それを見て、兵士達が明確に怯む。
「くそっ! 命なんてどうでもいいってのかよ!」
「怯むな! 引いたらお前の家族とかが皆殺しにされるんだぞ!」
「分かってる! 分かってる!」
半泣きの声が聞こえた。
ミランは無言で、戦い続ける。もう情なんて挟んでいられない。
敵は艦艇だけじゃない。
戦闘機やウォーリアも、無体な突貫を仕掛けてくる。それらを片っ端から斬るが、どうしても全ては無理だ。
要塞艦の位相変換シールドがどんどん弱体化する。
味方の被害が増え始め。
ついに並び。
敵より増え始めた。
「キルレシオ逆転しました。 敵艦隊、確実に進んできます」
「化け物どもがああああっ!」
自棄を起こしたどこかの艦隊司令官が吠える。
大将閣下は何も言わない。
冷静に指揮を続けている。
思ったより出来るが、ミランから言わせるとパドフ中将の方が安心感があった。勿論これが作戦であり、本命は後方の敵要塞艦であることは理解できている。それでも、これは厳しい状況だ。
斬りかかってきた貴婦人。
この主力決戦が開始されて三機目だ。
切り結んでみて分かる。
ミランが最初に倒した奴じゃない。
ただ、力量は侮れない。
激しくぶつかり合いながら、エネルギーの残量を確認。かなり厳しいが、それでもやるしかない。
不意に長槍を引く。
相手の熱剣が、ウォーリア三型に突き刺さる。
だが、体勢を不意にひねることで。装甲にささった熱剣が折れて、バキンと音を立てるようにして。
宇宙に漂う。
それを見て、動きを止めた貴婦人だが。
ミランはその瞬間、貴婦人のコアを貫いていた。
爆発。
そのまま帰投する。
要塞艦のドッグは地獄絵図だ。傷ついた兵士が、破損したウォーリアから引っ張り出され。消火器からの煙が、ウォーリアを包んでいる。
戦闘機は良く戻れたなと言う機体を、整備班が片付けている。あれではパイロットは当面戦えないだろう。
ミランはすぐにウォーリア三型の修理を頼む。
動悸が激しくなっていた。
トイレに入ると、大きなため息が出る。斬っても斬ってもきりが無い。それどころか、敵の物量は無限にさえ思える。
それでも、敵の耳目を第三艦隊に引きつけなければならない。
そうしないと、作戦が失敗する。
親衛軍はミランに目をつけている。
恐らくは、侵略者の指導者もだ。
だったら、もっと前線で暴れ回って、更に相手の頭に血を上らせなければならないだろう。
ぱんと頬を叩く。
そしてミランは、とっておきだったファーガの栄養液を固めたものを口に突っ込む。
何より愛している故郷の味だが。
今は喜びよりも、疲れをわずかに緩和する役割ぐらいしか果たしてくれなかった。
ウォーリア三型の様子を見に行くが、険しい表情のハコトが立ち塞がってくる。
「ミラン中佐、少しだけでもいいので、仮眠を」
「今、少しでも敵を落とさないと」
「仮眠を。 ハイエンド機でも、ウォーリアに出来る事は知れていますし。それにこの戦いで既に親衛軍ウォーリアを三機、通常ウォーリアを66機落としています。 ミラン中佐が出来る戦果は存分に挙げています。 今、宇宙に出てはいけません」
「ハコト……」
両手を広げて、きっとこっちを見るハコト。
ミランは分かったと言うと、仮眠を取る。
アラームをつけて。ベッドで転がると、すぐに落ちてしまった。それだけ限界が近かったと言うことだ。
少しだけ仮眠を取って起き出す。
それだけで随分楽になった。
また水分を取ると、出る。
味方は更に不利になりつつあるようだった。
「第四十艦隊、集中攻撃を受けています! このままでは突破されます!」
「予備をおくれ」
「予備、そろそろ枯渇します!」
「……っ」
厳しい戦況だ。
しかし、敵は無茶な大攻勢を続けている分、物資も派手に消耗している筈。此処を耐えきれば、勝利はある。
ミランは即座に出る。
宇宙に出ると、見えた。
あの40㎞の超巨大艦だ。また調子に乗って最前線に出てきている。集中砲火を受けても小揺るぎさえしていない。
特に前面部の装甲は極めて厚いらしい。
だが、あいつが艦載機の類を積んでいないことは知っている。
それにあの巨大艦。
何度も集中砲火を食らって、そのたびに直衛を盾にしてしのいでいる。その結果周囲には小型艦しかいない。
ならば。
「敵超大型戦艦に圧をかけます」
「正気か! 艦載機はいないが、それでもあの巨体だ!」
「あいつは主砲に全振りしていて、対空砲火もたいしたことがありません! あいつをおちょくれば、それだけ敵を乱せます!」
「……分かった! ただし、必ず生きて帰れ!」
カルカル大佐からそう指示が来る。
そして、ミランがウォーリア三型を繰って突進すると、乱戦の中から戦闘機隊と爆撃機隊、更にはウォーリア隊も割いてくれた。
敵の雑魚がわんさか来る。
それを斬り伏せながら進む。敵駆逐艦。こちらに向けて、対空砲火を放ってくる。整然とした陣列。
回避だけでやっとだ。
其処に、要塞艦からの対艦ミサイルが来る。
亜光速ミサイルが敵駆逐艦に直撃。
位相変換シールドでどうにか防ぐ敵駆逐艦だが、味方の艦隊も攻撃を集中。耐えきれず、敵駆逐艦が、次々に轟沈していく。
敵戦闘機隊。
赤く塗装した精鋭だ。
それでも、味方の戦闘機隊が踏ん張ってくれる。
必死にその中を飛ぶ。
爆撃機を狙ってくる敵機を、パルスレーザーでたたき落とす。それでも、被弾して引き返す爆撃機の方が多い。
攻撃機隊が動く。
別方向から無理矢理突破した数機が、敵超大型戦艦に、猛烈な攻撃を仕掛けて、離脱。半数ほどが落とされたが、それでも多数の直撃弾を入れる。
うっとうしそうに巨体を揺らす超大型戦艦だが。
其処へ、超大型盾艦が、突貫を仕掛ける。
無人艦だ。
だが、その突貫は鬼気迫っていた。
ミラン機に主砲を放とうとしていた超大型戦艦が、側面から超大型盾艦の体当たりをまともに食らう。
それで強烈極まりない位相変換シールドが、大きなダメージを受けたようだった。
ミランはその機に、懐まで突貫。
上から逆落としをかけてくるウォーリア隊に向けて、いきなり急上昇し、乱戦に持ち込む。
爆撃機を通すためだ。
激しい戦いで、四方八方から撃たれて機体に大きなダメージを負わされるが。
それでも、ついに爆撃機が通る。
大型の宙間爆雷が多数はなたれ、その三割ほどが敵超大型戦艦に炸裂。40㎞はある巨体が、明らかにたじろぐようにして揺れた。
其処に味方から集中攻撃が入り。
閉口したように、敵超大型戦艦が引いていく。
同時に味方艦隊が逆に突進。
今までの鬱憤を返すようにして、敵艦隊に傷を入れ。更に傷口を広げていった。
どうにかして敵ウォーリア部隊を振り払い、味方部隊と連携して全滅させる。とはいっても十機かそこらだ。
敵にとっては大したダメージじゃない。
それにたいして、ミランはもうボロボロだ。
「ミラン機、一度帰投します」
「良くやってくれた!」
「しかし、今の攻撃で味方も被害が……」
「その分は取り返す! 命を落とした勇者達の分、敵を破壊し尽くしてやる!」
カルカル大佐は居丈高だな。
ともかく、傷ついたウォーリア三型とともに要塞艦に戻り、補給を受ける。
しばし静かにして休んでいると、通信が入る。
敵艦隊の要塞艦が、最前線に出てきたという。
本当に全力で突破を図っているんだと分かる。
要塞艦のスペック自体は、侵略者も支援者も、かなりそれぞればらつきがある。
ブラックホール展開機から得られた資源で最初から作っているものから、遊星だったり小惑星だったりしたものを改装したものまで様々だからだ。
ともかくミランも自身の回復を待つ。
その間にも、味方の被害が増えていく。
「大破撃沈艦艇、100万隻を超えました! 更に増えています!」
「敵の損害は」
「85から87万隻の間程度かと」
「損害比率から言えばこちらが少ない。 それなのに、どうしてこうも押されているのか……!」
どこかの艦隊司令官が憤激しているが。
それはそうだろう。
敵は被害なんか度外視。
こっちは人命を優先しての戦闘を続けているのだ。それはどうしても押される。
こっちは人間が戦っているのにたいして。
相手はあの侵略者の様子を見ても、指導者の指示だけで動く生体ロボットに近い存在である。
それは苦戦するのも仕方がない。
ミランはため息をつくと、出るかと考える。
さっきの戦闘で、ウォーリア三型は装甲を散々やられたが、機体部分へのダメージは決して大きくない。
勝てない戦いではない。
出る。
敵はまだまだ散々いるが、だからこそたたき落とせばたたき落とすほど有利になる。数機のウォーリアを斬り倒したところで、即座に回避。
稲妻のような速度で。
いや稲妻よりも恐らく速く。
敵機が突っ込んできていた。
長槍で初撃を受け止める。激しく弾き飛ばされるが、即座に態勢を整えた。コンディションは良くないが、やれる。
相手は。
もういない。
いや、背後だ。
振り返りながら、即座に相手の一撃をはじき返す。
何度か剣撃をかわして悟る。
「この間の金色のウォーリアに乗っていた奴だな」
「ご名答。 あの機体では力不足だと判断したのでね。 多少マシな機体に乗り換えてきたよ」
「そう……」
「短時間で更に出来るようになったな! 楽しませてくれたまえ!」
相手の赤い親衛軍ウォーリア。
珍しい単眼の親衛軍ウォーリアで、全体的に丸みを帯びたデザインをしている。傾斜装甲、とは思えない。
何かギミックがあると見て良いだろう。
残像を作ってかき消えると、また背後に回ってくる。無心で攻撃を捌きながら、隙をうかがう。
見た感じ、これは解体屋のようなハイエンド機ではないな。
親衛軍ウォーリアという時点ではハイエンド機だが、解体屋は更にその数倍のコストが掛かっていることが分かっている。
だとすると、金色のウォーリアと違うのは。
速度だ。
「即時で見抜くか。 これは皆が倒されたのも納得だ。 悪いがその首貰ったぞ。 私としても、勲にしたくなったのでな!」
「されてたまるか」
斜め後ろからの一撃を、長槍をまわして防ぎつつ、上に。
連射されるレーザー。
機体から放ったものじゃない。
ドラゴンキラーに似た子機をこいつも装備している。だが、此奴の場合は、二機だけしかつけていないようだ。しかもレーザーを射撃する機能だけのようである。
子機はあくまで牽制のため。
本体での戦闘が主体で、あくまで奇襲用なのだろう。
味方機に近づかないように通信。
此奴の相手は荷が重すぎる。
連続して、四方八方から仕掛けてくる。高笑い。
「どうした。 そんなものではないはずだが?」
「そうだな。 それよりも貴方は、心の底から戦闘を楽しんでいるように見えるが?」
「それが悪いか」
「そうか」
違和感が大きくなる。
こいつ、自我が他の親衛軍より強くないか。だとすると、戦闘を長引かせると、面白い話が聞けるかも知れない。
再び、死角からの一撃。
熱剣をはじき返すが、装甲を一合ごとにやられる。
死角から飛んでくる子機からのレーザーも、確実にこちらを削ってくる。まずい。だが、焦るな。
鋭い一撃で、ウォーリア三型の左腕を肘から飛ばされる。
だがミランは、その瞬間に身を引いて、敵機に膝蹴りをたたき込んでいた。
敵機が大げさなくらいに吹っ飛ぶ。
なるほど、そうか。
コストは他の親衛軍ウォーリアと良い勝負。
だとすると、この機体は装甲を削って、速度に変えているんだ。
連続でパルスレーザーをたたき込む。
相手は凄まじい動きで逃れるが、それも種が知れてきた。援護射撃のレーザーで足を貫かれるが、ウォーリア三型の足だ。
気にせず突撃。
凄まじい稲妻のような動きを続ける敵機が、不意に一瞬止まる。
其処に、一撃を、長槍から繰り出していた。
相手の装甲をごっそり抉り、コアにも傷をつけた。
即座に敵は戦闘機に形態を変える。
「面白い……まさかここまでやるとはな。 調べたが、貴殿はミランというそうだな」
「そうだが」
「肉呼ばわりはやめよう。 ミラン、次も戦いを楽しみにしているぞ。 私は親衛軍NO3_009116。 また刃を交えよう」
飛んで逃げていく。
追う余裕はない。
エネルギーの残量、ゼロに近い。
しかも既に、継戦能力はないに等しかった。
じりじりと味方が押されている。敵艦隊は文字通り総力を挙げて突貫してきている。それを防ぐだけで精一杯。
しかも敵は損傷艦をそのまま自走ミサイルとして使っている。
戦艦だろうが空母だろうがだ。
中には反物質炉を自爆させる艦まであり。
それで兵士達が逃げ腰になるのも、仕方がない事ではあった。
呼吸を整える。
軍医に言われる。
「一旦休憩を!」
「もう一度出ます。 敵は此処を正念場とみています。 此処で敵を引きつければ、それだけ勝ちの目が大きくなります」
「……っ」
「このままだと下手をすると戦線を突破されます!」
戦線をもし突破でもされたら記録的な被害が出る。
ここ最近の勝利は全て帳消しになり。
最悪惑星アラタがまた襲われる。
そんなこと。
許してたまるか。
軍医は大きく嘆息する。
「分かった。 しかし、無理だと思ったら、即座に帰還してくれ。 ミラン中佐は親衛軍ウォーリアを倒せる数少ないウォーリア乗りだ。 無駄に命だけは散らしてくれるな」
「他の兵士も大事な命は同じです」
「そうだったな。 すまない」
「行ってきます」
これで一旦最後だ。そう考えて、宇宙に出る。
かなりまとまった数のウォーリアが出てきている。
要塞艦の宇宙港の占拠を狙っているようだ。随分と舐めた真似をしてくれているものである。宇宙港上空で味方と交戦している。
既に戦線のほぼ全ての艦が戦闘に参加しており、補給中や修理中の艦艇が後方にいるのみである。
どこの戦線も崩されるわけにはいかないし。
ましてや司令部直下のこの第三艦隊が崩されるわけにはいかない。
ミランは出会い頭に、巫山戯た真似をしている敵ウォーリアを右左に斬り伏せ、更に一機を唐竹に斬り伏せた
そのまま蹴散らす。
掛かってくるのは雑魚ばかりだ。後ろからだろうが死角からだろうが、この程度のウォーリアだったら。
勿論、それでも絶対はない。
特に一度に多数を相手にするのは最悪の悪手だ。
幸い宇宙だと言うこともあり、立ち回りはいくらでも工夫できる。そのまま一体ずつ、順番に斬り倒していく。
そのうち、味方の対宙砲火と味方部隊の連携で、敵ウォーリア部隊は削り取られていく。かなりの規模だったが、これならミランが加勢しなくても叩き返せる筈だ。
一度戻る。
かなりエネルギーを消耗した。
前より全然マシだが、それでも最近はやはり減りが早い。分かってはいる。それだけウォーリア三型に無理をさせているということは。
もっと強力なカスタムが必要か。
だが、それを求めるなら、もっと地位と実績がいるのか。
それに、それだけ強力なカスタムをしても、ウォーリアでは駆逐艦も落とせない。
あれだけいる駆逐艦をだ。
そう考えると、敵の戦略構想がおかしいのではないかと思えてくる。
どうして侵略者は。
こんな明らかに欠陥のある兵器を、コスト度外視で開発したのだろう。
それが分からない。
軍医に睨まれて、本格的に寝る事にする。
今度は仮眠じゃない。
この要塞艦に敵が直に乗り込んできたり、位相変換シールドを破られたら起きなければならないが。
今は味方を信じて。
出来る事を出来る限りやった事を誇って。
何より仕事として。
休息を取らなければならなかった。
なにげにミランを名前で呼んだのは親衛軍NO3_009116が初めてです。
侵略者の指導者に造反をもくろみ、更には野心的な危険な男ではありますが。それはそれとして、侵略者が奪われた人間性も持ち合わせている存在であるわけですね。
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