王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶   作:dwwyakata@2024

59 / 60



仕切り直しての決戦です。

パドフ中将率いる第四艦隊が加わったことで、一気に支援者は体勢を立て直しました。

そして敵艦メタトロンの撃沈作戦が開始されます。

釣り餌はミランです。ミランにとって、今までで一番過酷な任務が始まります。






3、敵艦メタトロンを撃沈せよ

兵員を再編成したヴァーグラット戦線に参加している支援者艦隊、およそ800万隻が進み始める。

 

それだけ前回での消耗が激しかったのだ。

 

これに対して、侵略者の艦隊500万隻弱がN176星系より現れる。

 

この時点でも、双方合計して1000万隻を超える規模での会戦だ。

 

敵は典型的な方陣を敷いている。分厚い四角い陣形で、恐らくは小細工を正面からねじ伏せるつもりなのだろう。

 

これに対して、支援者の艦隊はいわゆる鶴翼だ。

 

V字に敵を包む陣形であり、本来ならこれでいい。ただ侵略者の超巨大戦艦メタトロンが動く場合、どうするべきかが問題だ。

 

陣列が長くなると対応が難しくなる。

 

だが、ミランは知っている。

 

これは敢えて、この陣形を執っているのだと。

 

ミランは中央の第三艦隊の要塞艦で出番を待つ。距離が近づいていく。中央少し後方に第四艦隊が控えていて、それが大きな味方への支えになっていた。

 

まずは、メタトロンを落とす。

 

その作戦は、既に頭に入っている。

 

「敵艦隊、攻撃開始!」

 

「間合いよりだいぶ遠いが……?」

 

「亜光速ミサイル及び、対艦レールキャノンによる質量攻撃です!」

 

「たたき落とせ」

 

淡々と迎撃指示が出る。

 

間合いの外からの攻撃など、今の時代は問題ではない。あらゆる攻撃に対応手段が存在している。

 

ともかく迎撃が開始され、片っ端から飛来する飛翔体をたたき落とす。兵力が足りないはずが、なぜこのような。

 

敵は接近しつつ、ずっと攻撃を続けてきている。

 

そして、その意図が分かり始めてきた。

 

「こ、これは……ジャミングです!」

 

「破壊される弾頭にジャミング用の阻害物質を混ぜてきていたか!」

 

「恐らくは!」

 

「……分かった。 予定通り各艦隊は行動を」

 

命令が下る。

 

さて、ミランが出るのはまだか。しばらく座って待つ。水を口に含んでいると、不意に警告音がなった。

 

敵が至近まできている。

 

今の阻害物質を撒いた瞬間、短距離ワープをしたのだ。そしてデブリと化した阻害物質を蹴散らしつつ、いきなり戦闘の間合いに乱入してきた。

 

ワープ阻害装置もこれでは意味をなさない。

 

いきなり支援者と侵略者の艦隊は、至近で顔を合わせることになった。

 

全艦隊が、即時で攻撃を開始する。

 

敵も全砲門を開き、凄まじい殴り合いが開始された。

 

敵の戦闘機隊が、大量に攻め寄せてくる。数も知れないほどだ。即座に味方も出る。激しい制空権の取り合いが開始される。

 

要塞艦に直撃弾が次々入る。無言でミランはトイレを済ませて、コックピットに。

 

出番だな。

 

そう思ったからだ。

 

「敵ウォーリア接近! 想像を絶する数です!」

 

「恐らく全部まとめて出してきたな……」

 

「総力戦だ! 敵をたたき伏せろ!」

 

「第一、第二、第三中隊出ます!」

 

味方の通信が飛び交う中、ミランも出ることを告げる。

 

そして、宇宙港から、一気に要塞艦を飛び立っていた。

 

凄まじい乱戦の中、味方の超大型盾艦に、メタトロンのものと思われる主砲の一撃が突き刺さる。

 

耐え抜いた超大型艦だが、ダメージが明らかに大きい。

 

阻害物質が邪魔して敵の様子が見えない。だが、偵察艦が、メタトロンの姿を捉えたようだ。

 

「こ、これは……!」

 

「如何したか!」

 

「敵超巨大戦艦メタトロン、四機の戦艦を連結! ブースターとして、更には火力支援用として利用しているようです!」

 

「これ以上火力を上げるというのか!」

 

驚愕の声が上がっているが。

 

ミランはむしろバカじゃないのかと思った。

 

40㎞もある巨大宇宙戦艦に、更に宇宙戦艦を四つも連結。馬鹿げた威力の主砲を、更にそれで強化もする。

 

確かにものすごい兵器ではあるが。

 

そいつが破壊された時のダメージもまた、計り知れない。

 

確かにあいつには何かが乗っているとみて良さそうだ。倒せばこれ以上もない被害が相手に出る。

 

突撃。

 

ウォーリアを次々斬り伏せながら突貫。敵部隊を貫いて、更にパルスレーザーで数機をたたき落とす。

 

敵はミランを認識しているはずだ。すぐに複数のウォーリアが向かってくるが、敢えて相手にせず追いかけさせる。

 

追いすがってくるウォーリアを、味方戦闘機からのミサイルが直撃。爆発四散させていた。

 

そろそろ来るな。

 

来た。

 

がっと、攻撃を受け止める。本当に接近が一瞬前まで分からなかった。例の赤い奴。親衛軍NO3_009116と名乗った奴の親衛軍ウォーリアだ。

 

「更に出来るようになったな。 この短時間で反応速度がまた上がっている」

 

「それはどうも。 さっさと倒れてくれるとこちらとしては面倒がなくて助かるのだが」

 

「そうはいかないさ。 私には私でやることがあるのでね!」

 

熱剣を振るってくる。

 

熱剣は前のと違っていて、ウォーリアの全高ほどもある。凄まじい勢いで右左から切り込んできて、防ぐのでやっとだ。

 

早い。

 

更にギアを上げてきたか。

 

余計な事を考えずに、そのまま無心で応じる。確実に攻撃を受け止めつつ、違和感に気付いた。

 

だが、それについては考えず、蹴りをたたき込んで押し返す。

 

離れると、ぐんと速度を上げて、上に回り込んでくる親衛軍NO3_009116。

 

「足癖が悪いな」

 

「おあいにくだ」

 

「ではこういうのはどうかな?」

 

支援子機二機からのレーザー。回避。ぐんと回り込むようにして回避するが、更に相手が回り込んでくる。

 

伸びるような加速だ。

 

これは、強いな。

 

奥歯を噛みながら、突貫。

 

正面からぶつかり合う。やはりおかしい。変な違和感がある。

 

離れる。

 

大火力の主砲……恐らく駆逐艦の主砲が狙ってきていた。親衛軍NO3_009116とやらも巻き込まれかねない射撃だ。

 

親衛軍を思い切り巻き込む攻撃。

 

様子がおかしいな。

 

「ふっ、相当に味方も焦っているようだ。 君を相手に記録的な被害を出しているからだろうな、ミラン」

 

「それはお互い様の筈だが」

 

「はっはっは、そうだな!」

 

ハコトに調べて貰った。

 

そうすると、ヴァーグラット戦線の60期に達する対陣で、複数の親衛軍ウォーリアによる被害が確認された。

 

何機も何機も出てきているが、いつの間にか出てこなくなる。

 

敵の正体がつかめないが、恐ろしく強い。それでいながら、要領よく立ち回って、ある程度キルカウントを稼ぐと逃げていく。

 

この複数の親衛軍ウォーリアが、同じ親衛軍が乗ったものだったとしたら。

 

合計した被害は、記録的なものとなる。

 

あの解体屋を上回るかも知れない。

 

そうハコトは言っていた。

 

後ろをとられる。即座に振り返りつつ、熱剣を受け止める。レーザーを放ってくる。スラスターを噴かして回避。装甲を抉られるが、致命傷じゃない。連続してレーザーを放ちながら、それでいて熱剣で斬りかかってくる。一撃が重い。これは味方には相手を任せられない。

 

また反射的に離れる。

 

主砲が近くを通り過ぎていった。二回か。恐らく意図的にやっていると見て良いだろう。

 

「貴方ごと撃ち抜くつもりのようだな」

 

「そのようだ。 旧型の私はどうでもいいというのだろう」

 

「旧型?」

 

「今の親衛軍は基本的に第四世代。 現役にいる第三世代は私だけなのでね」

 

いいのかそんなこと喋って。

 

今度は連続してレールキャノンが飛んでくる。水を差されまくるが、それよりももっと問題がある。

 

不意に親衛軍NO3_009116が何かを投げつけてきた。

 

これは、手投げ弾か。

 

いや、違うな。兵器じゃない。側にあるデブリを投げつけてきたように見えたが、そんなものが当たるはずもないし、効くはずもない。

 

掴み取る。

 

そうすると、満足したのか親衛軍NO3_009116が下がっていく。一体何だったんだ今のは。

 

エネルギーの残量が厳しい。

 

一度ミランも戻る事にした。

 

帰還して、ウォーリア三型の補給と修理を受ける。さっきつかんだものは、すぐに研究チームが密閉して、解析に移ってくれた。

 

何かのデブリを苦し紛れに投げつけてきたとは考えにくい。動きとしてはそう見えたが、気になる。

 

コアから出てウォーリア三型を見上げると、かなりやられている。レーザーの出力がかなり高いと言うことだ。

 

これは、危険な相手だ。

 

簡単に勝てるとはとても思えない。

 

二度目の戦闘でも、まだ相手の手の内が見えない。

 

というよりも、あの親衛軍NO3_009116、単純に非常に強いのだ。老獪さも兼ね備えている。

 

小細工が通じる相手ではないし、弱点らしきものも思い当たらない。

 

バランスの良い機体に乗ってきていて。

 

それが故に、長所もなく、致命的な弱点もない。

 

そういう印象を受けた。

 

それを老獪極まりない強敵が操作しているのだ。

 

簡単に勝てるわけもなかった。

 

まずは落ち着く。

 

水を飲んで、トイレを済ませる。少しウォーリア三型の修理に時間が掛かる。テキパキと働いているハコトの背中が見える。

 

他の整備士も頑張ってくれている。

 

側を担架で負傷兵が運ばれていった。ヒューマノイドだが、左腕と左足を根こそぎ持って行かれて大出血しているようだ。

 

支援者のテクノロジーなら助かる。

 

そう信じたい。

 

まだあれでも、戻ってこれたのなら幸運だ。

 

宇宙空間での戦闘では、何も残らず木っ端微塵という例の方が多いのだから。

 

「装甲の応急処置完了!」

 

「エネルギーの残量は」

 

「現在89%!」

 

ドッグではエネルギーの充填も出来る。ただウォーリア三型は、他のウォーリアよりもエネルギー量が多い。

 

ましてやさっきの親衛軍NO3_009116のような難敵が相手だったり、大群を相手にしている場合は、エネルギーの残量がゴリゴリ減る。

 

ドラゴンキラーのような兵装を装備した場合は、更にエネルギーの残量が減る速度が増すだろうし。

 

あまりその時のことは考えたくない。

 

解体屋のような超ハイエンドのフラッグシップ機を要求する手もあるかも知れないけれども。

 

今の時点では、それはまだ考えるべきではなかった。

 

無言で待ち、修理が終わった時点で腰を上げる。

 

軽く横になって休憩もした。すぐに出る。

 

休んでいる間も、敵との激しい戦いが続いていて、次々に戦死や部隊壊滅の報告が聞こえてきている。

 

敵の猛攻が凄まじいということだ。

 

まだ敵を引きつけなければならない。

 

「ハコト。 どうもウォーリア三型のエネルギーの減りが早いように思うのですが」

 

「ああ、それはそうです。 機体性能の限界まで動いていますので。 ミラン中佐の能力が、ウォーリア三型を凌駕しつつあるんです」

 

「困りましたね……」

 

「特務大佐になったら、改良を頼むべきだと思います」

 

大佐、か。

 

現在カルカル大佐も含めて、六人しかいない特務の大佐になれば、その要求が通るのだろうか。

 

だが、ウォーリアに乗って戦っている身でこういうことをいうのは何だが、ウォーリアは大局を決定できる兵器ではない。

 

どれだけ強くても戦艦には勝てない。

 

駆逐艦だって、味方の大火力兵器と連携しなければ、倒すのは極めて難しい。

 

あの解体屋の超ハイエンド機ですら、長い戦いの中で駆逐艦を十数隻しか落とせていないのだ。しかも味方との連携で。

 

それを考えると、ウォーリアには限界がある。

 

兵器として大きな欠陥があると言うよりも、戦場の雑兵だ。

 

それに高コストを掛けるのはと、どうしても考えてしまうし。

 

ミランが下手に成功すると、以降成功体験が悪い方向に作用して、ハイエンド機を量産するとか言う馬鹿なことを始めかねない。

 

困った話だった。

 

いずれ誰かに相談するべきかな。

 

そう思いながら、また出撃する。

 

出撃すると、今ちょっと考えていたカルカル大佐から連絡がある。

 

「ミラン中佐」

 

「はい」

 

「即座に指定の座標へ向かってくれ。 敵のメタトロンとかいう戦艦が、前進してきている」

 

「……分かりました」

 

ぞっとしない話だが。

 

作戦の第一段階を成功させるためには必須だ。味方部隊も、可能な限り支援してくれる。それでも、全長40㎞の戦艦を相手にするのは、あまり何度もやりたいことではなかった。

 

ぐんと宇宙空間に出てから、加速。

 

敵ウォーリア部隊との死闘が続いている。要塞艦の対空砲火で落としても落としても次が来る。

 

苦戦している味方部隊に協力して、横殴りの射撃で三機を立て続けに破壊。

 

ぐんと旋回して、反撃の射撃を回避。回避しつつ、射撃射撃射撃。二発が命中。それでまた一機を落とす。

 

火力が集中され、どんどん飛んでくる。

 

それでいい。

 

加速して、前に。向かってくるのは、あれは貴婦人か。だが、動きは最初に戦った奴じゃないな。

 

「あたいの仲間をよくも散々ころ……」

 

「うるさい」

 

技量が低い。

 

ウォーリアが属人的兵器である以上。悪いが一蹴させて貰う。

 

間合いを加速して詰めると、蹴りを貴婦人の顔面にたたき込み、怯んだ所を横一閃。

 

コアをそれでも外してきたのは立派だが、コアから上……胸当たりから上が完全に切り離され。

 

貴婦人の子機を操作する装置が機能停止。

 

宇宙空間に無力なパーツだけで放り出された親衛軍ウォーリアを、放置。そのまま先に進む。

 

見えてきた。

 

前進してきたメタトロン。凄まじい威圧感だ。

 

奴がこちらを認識する。

 

同時に、四つ接続している戦艦が、一斉に対空砲火を仕掛けてきた。とんでもない弾幕だ。

 

かすりでもしたら即死である。

 

一気に加速して横に回り込む。

 

メタトロン自体が真横に旋回しつつある。ミランを追ってきていると言うことだ。これは、相当に頭に来ていると見て良いだろう。

 

このまま引きつける。

 

カルカル大佐がうまくパドフ中将と渡りをつけてくれている筈だ。味方艦隊が乱入してきて、激しい乱戦状態になる。

 

敵艦隊もそれに乗じて大量に押し寄せてきて、凄まじい殴り合いが始まるが。

 

よりにも寄って、その状態で。

 

メタトロンに高エネルギー反応。

 

まずい。

 

全推力を使って、奴の正面から逃れる。それを追尾してくるメタトロンの砲口。一瞬でも遅れれば、蒸発だ。

 

主砲、発射。

 

要塞艦を貫く超高出力レーザーが、宇宙空間に放たれる。

 

それはむしろ侵略者の艦艇を多数貫きながら、虚空を抜けていた。支援者の艦艇や戦闘機、ウォーリアも相当数巻き込まれた。

 

奥歯を噛む。

 

この状況で、あんな兵器をぶっ放すか。

 

いかれてる。

 

いや、今更確認するまでもないか。

 

ぐんと加速。エネルギーの残量がかなり怪しいが、それでも必死に時間を稼ぐ。

 

至近で敵戦艦が爆沈。

 

要塞艦の主砲が直撃した所に、味方が火力を集中したのだ。その爆発を盾に、羽を広げる。

 

宇宙空間でもエネルギー回復機能は健在だ。

 

もっとも、これではどれだけ回復できるかどうか。

 

宇宙戦闘を前提としている艦艇の主砲が飛び交う中、ミランは再び出る。爆発を蹴散らし、進んできたメタトロンは、交戦中の侵略者艦、つまり奴にとっての味方をそのまま突撃してへし砕いていた。ミランを潰すつもりだったのだろう。

 

侵略者の巡洋艦がへし折れて爆発する。

 

その爆発さえ蹴散らして、メタトロンが追ってくる。

 

また高エネルギー反応。

 

これでとどめを刺す気だ。

 

だがミランは、射出されてきたものを使う。

 

外付けのブースター。それも、エネルギーはその外付けのブースターに蓄積されている。

 

要塞艦から、完璧なタイミングでハコトが射出してくれたのだ。

 

そのままつかむと、一気に加速。

 

それでも、メタトロンが追ってくる。四つある外付け戦艦の推力で、巨体が意地でも追いすがってくる。

 

だが、次の瞬間。

 

メタトロンの周囲の乱戦が、ぴたりと止まっていた。

 

違う。

 

支援者の艦艇が、いきなり引いたのだ。

 

それに釣られた侵略者の艦艇が、一気に追った。

 

それで、メタトロンの周囲に、空白地帯が出来たのである。デブリは大量に浮かんでいるが。

 

メタトロンは一瞬気付くのに遅れたような動きをした。

 

クルーが、だろうか。

 

それともこの戦線を引っかき回した元凶が、だろうか。

 

いずれにしても、この瞬間、完全な隙が出来た。

 

一糸乱れぬ主砲斉射が、メタトロンを直撃する。反物質砲も含む凄まじい高密度の射撃である。

 

瞬時に、メタトロンに接続されていた戦艦二隻が爆沈して、それによってメタトロンが巨体を揺るがせる。

 

主砲斉射に続いて、亜光速ミサイルが一斉に殺到。メタトロンの巨体に、大量の爆発の花が咲く。

 

それでも耐えるのは流石だが、流石にミランを追うのを止め、退避に掛かろうとする。其処に殺到してきたのは、侵略者の艦隊。

 

空白地点を埋めようと前進してきたのだ。それも大急ぎで。

 

それが必死に止まろうとして、離れようとするメタトロンの動きをまた止める。外付けブースターのエネルギーが切れた。だが、その瞬間、外付けブースターが。殺到してきた侵略者艦の一隻から対空砲火を受け、爆発。

 

かろうじて逃れたミランだが、爆風に吹っ飛ばされて、ぐっと呻く。

 

まずい。

 

敵艦隊の中に孤立するも同然だ。

 

メタトロンはそれを見て、迷うように一瞬だけ止まる。

 

ミランは残り少ないエネルギーをフルに使って、必死に回避。ウォーリア多数、イーター多数が追ってくる。

 

対空放火も追いすがってくる。

 

死が、今までに無いほど近くで感じられる。

 

ワーカーの大群に迫られた時よりもまずい。

 

だが、恐怖をねじ伏せる。

 

あと少し。

 

あと少しだ。

 

メタトロンが、接続していた戦艦の残り二隻を切り離す。それらが、続いての主砲斉射をまともに食らって消し飛ぶ。

 

だが、その主砲斉射は、今度はメタトロンだけを狙ったものではなかった。

 

ミランを追い回している敵艦隊を横殴りに貫き、凄まじい連鎖爆発を引き起こす。その爆発に、メタトロンが逃げ込もうとする。

 

ミランは無言で離れる。

 

全部。

 

パドフ中将の筋書き通りに行ったな。

 

機体はボロボロ。

 

エネルギーの残量も殆ど使い果たした。

 

こっちに要塞艦が来る。乱戦中の艦隊を押しのけるようにして、である。

 

帰投する。

 

これで、恐らくメタトロンは仕留められる。

 

 

 

実のところ、それほど複雑な作戦を、パドフ中将は組んだわけではなかった。

 

ミランをメタトロンに意識させる。

 

食いついてきたら、乱戦に持ち込む。

 

このとき、乱戦に持ち込むのは無人艦艇、無人ウォーリアなどの無人兵器を用いる。理由としては、高確率でメタトロンが主砲を敵味方関係無しで使い、吹き飛ばしに来るのが目に見えていたからだ。

 

メタトロンがミラン機を追っている間に、乱戦状態の味方艦隊を下がらせる。

 

其処に出来た空白を利用して。別方向から突出した「第三」艦隊旗艦と最精鋭が、主砲斉射を撃ち込む。

 

メタトロンにダメージを与えることが出来れば最高。

 

接続している戦艦を破壊できれば充分合格。

 

そして、空白を埋めようと敵が突出してくる。その突進してきた敵をみて、メタトロンが一瞬でも止まる。単艦狙いを面制圧に切り替えて。無秩序な敵艦隊を一気に破壊する。この爆発を、敢えてメタトロンに利用させる。

 

このとき、第四艦隊は、更に第三艦隊とは別方向から、錐のように敵艦隊を抉って、進出を果たしている。

 

狙いの位置は完璧だ。

 

爆発を蹴散らして出現したメタトロンは、無傷じゃない。第三艦隊の最精鋭がたたき込んだ主砲斉射、亜光速ミサイルの一斉射を受けて、かなりのダメージを受けている。

 

メタトロンを撃沈するだけなら、いくらでも手はある。

 

巨大と言っても所詮は戦艦。

 

だが、これが出てきて戦況が一気に変わった以上、出来るだけわかりやすく、ドラマティックに破壊しなければならない。

 

第四艦隊主力が待ち構えていた所に現れたメタトロンは、主砲を斉射しようとするが、遅い。

 

既に準備が終わっている。

 

「主砲斉射。 仕留めなさい」

 

「斉射!」

 

「薄らでかい化け物を叩き潰せ!」

 

この攻撃を担ったのはキキキルルルキル少将だ。少将には、旗艦級戦艦と、対大型船兵器を搭載した艦を多めに渡している。

 

主砲斉射。

 

40㎞に達する巨体が、明確に激しく損傷する。

 

メタトロンは反撃の主砲斉射どころじゃない。反物質砲に耐えたのは流石だが、それでももう位相変換シールドが剥がれている。

 

第二射。

 

今度はパドフ中将の直衛による斉射だ。

 

コヴァルライト星系での戦闘で失った第四艦隊旗艦だが、モノなんて作り直せばいい。今の座乗艦は、あの後生産された旗艦級戦艦の最新鋭型だ。主砲の火力は、第三艦隊の旗艦級戦艦を上回る。

 

メタトロンは驚異的な機動力で逃げようとするが、それでも直撃。

 

半数ほどは外れたが、旗艦の主砲はもろに敵の機関部を抉っていた。

 

激しく爆発を繰り返しながら、それでも逃げようとするメタトロン。そこに、キキキルルルキル少将率いる艦隊が襲いかかる。

 

対空砲火をものともしない。

 

邪魔しようと殺到してくる侵略者の艦隊や兵器は、整然と並んだ第四艦隊の高密度の攻撃が、容赦なく破壊していく。勿論第四艦隊も突出している。盾艦が激しく消耗しており、あまり長くは掛けられないが。

 

終わったな。

 

キキキルルルキル少将の艦が、至近距離からメタトロンに主砲をたたき込む。流石に中破した状態で、これは耐えられない。

 

キキキルルルキル少将の艦が下がると同時に、致命的な爆発がメタトロンの内部から引き起こされた。

 

「全艦、総力で後退」

 

「後退しろ! 巻き込まれるぞ!」

 

「下がれ! 下がれっ!」

 

パドフ中将の冷静な指揮、事前に知らされている作戦。

 

それらが、この結果を招いた。

 

メタトロンが爆発を繰り返し、そして。

 

皮肉にもとどめとなったのは、第三艦隊が先ほど吹き飛ばした敵艦隊の一隻。そのデブリの直撃だった。

 

凄まじい大爆発が引き起こされ。パドフ中将の座乗艦が激しく揺れる。

 

敵艦隊がそれで、慌てて下がり始めた。

 

第四艦隊、第三艦隊以外の全艦隊が一斉に追撃を開始。もはや、敵はメタトロン出現以前と同じ。恐れる理由など存在しなかった。

 

第四艦隊をまとめると、パドフ中将は連絡を入れる。

 

パーミルトン大将は勿論無事だった。

 

「堅実な用兵、素晴らしいものだった。 この戦線は貴方が率いる方がよかったのではないか」

 

「そう言っていただけるとありがたいのですが、残念ながら私は一艦隊を率いるまでの器です。 艦隊群を率いて方面軍司令官を出来るほどの力量ではありません」

 

「そうか……」

 

「恐らく敵は、N176ブラックホール星系で残存戦力をまとめに掛かるでしょう。 見たところ、メタトロンがいなくなった結果、却って逃げで意思が統一されているようです。 持ったよりも追撃戦で削れないかも知れません」

 

先にN176ブラックホール星系は偵察を済ませてあるが、あそこは星系自体が要塞化されている。

 

60期も戦線が維持されていたのだ。

 

それくらいはしているということだろう。

 

つまり此処からは攻城戦になる、ということだ。

 

連絡が来る。

 

敵の残存戦力は、およそ400万隻程度とみて良いそうだ。こちらも被害を出したが、メタトロンを失った上に、多くの大型艦を失っている。以前ほどの脅威ではあり得ない。それに、敵の最精鋭部隊は、撤退に失敗。殆どは撃沈に成功している。

 

問題は要塞同然のN176ブラックホール星系に立てこもられた場合の対処だ。此処からは、ブラックホール展開機を如何にして破壊するかの戦いになる。

 

この戦線を抜けば。

 

侵略者は勢力の5%を失うと試算が出ている。

 

立て直すまで相当時間が掛かるし、その間に相当な星系を奪回できるはずだ。いくつかの戦線も再構築が必要になるだろう。

 

要塞の攻略は簡単にはいかない。

 

それも分かっている。奇策の類は使えないと見て良い。むしろ戦術面では優れていても、戦略など全く考えていなかったメタトロンを操船していた輩がおかしかったのだ。

 

追撃戦を適当なところでパーミルトン大将が切り上げさせた。

 

味方艦隊は800万隻少し。

 

大きな被害を出したが、決定的な勝利を得たとは言える。

 

ただ、それでもまだ完全勝利ではない。

 

この戦線での戦いは、敵を撃滅しなければならない。降伏に応じる相手ではない以上、そうしなければならないのだ。

 

味方艦隊は一度後退すると、修理と補給を開始する。

 

更にパーミルトン大将は増援を要請しているようだ。

 

流石に地上戦での要塞突破ではないので、三倍の戦力が必要、とまではいかないが。

 

それでも前にパドフ中将が侵入した時のような、カラの状態ではない。

 

相応の準備がいるし。

 

敵に決定的な打撃を与えた今であれば。

 

増援も通るとみて良かった。







ついに敵艦メタトロン、撃沈……!

12隻しかない敵の至宝の撃沈に成功です。

しかしながら、敵にはまだ要塞とかしているN176ブラックホール星系と、その奥にある兵器工廠があります。

これを打ち砕かない限り、この戦線は決着しないのです。



本作にどういった要素がほしいですか。要望があれば遠慮なくどうぞ。

  • 詳細なマシンデザイン
  • 圧倒的な武力による蹂躙
  • 緻密な人間ドラマ
  • 種族や文明の描写
  • 近接した力量のライバルとの死闘
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。