王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶 作:dwwyakata@2024
メタトロンのデブリを調査する艦艇が見つける。どうやらこれがそうらしい。
ミランが持ち帰った、親衛軍NO3_009116から渡された何か。それは小型のDBだった。慎重に調査した結果、メタトロンには大型のDBが搭載されている、ということが判明したのである。
侵略者の情報はとにかく少ない。
なぜ親衛軍がそんなものを渡してきたのかは分からない。
ただ、ミランは思うのだ。
あの親衛軍NO3_009116は、明確に意思を持っていた。侵略者の指導者が植え込んだものじゃない。
綺麗な意思じゃない。
老獪でぎらついた思惑だが。
それでも知的生命体らしい意思を持っていた、と何度か交戦する過程で感じた。
それをカルカル大佐に説明して。
調査の必要性をミランが訴えたのだ。
結果、デブリ調査は慎重に為されて。破壊された船体から、DBの一部が発見された。それは即座に隔離された研究施設に送られる。下手に中身を見て、とんでもないコンピュータウィルスでも拡散したら大変な事になるからだ。
勿論全部は回収できなかったが。
ミランはその調査部隊を護衛する。
今の時点では、それくらいしかやることがない。
回収作業は他にも行われる。
搭載されていた超巨大レーザー砲についても、ある程度残骸を回収できたようだ。そして、最も頑強に守られていた区画には。
それが残されていた。
侵略者の脳らしいもの。
異常に肥大化していて、何よりナノマシンが入っていない。
メタトロンが撃沈された瞬間、細胞レベルで完全に自壊したようで、データはとれなかったが。
今まで部分的に確認された侵略者の脳に酷似していて。
そして100倍も巨大だった。
それがどうも、防護装置に入れられていたらしいのである。
念入りな防御だが。
それでもあれだけの猛攻には耐えられなかったのだ。所詮は巨大といっても一艦船なのだし、当然とも言えるが。
これも回収され、調査される。
防護用の設備も破壊されていたが、それも回収された。
「回収された物資は輸送船に。 研究施設に即座に送ります」
「くれぐれも傷つけず、同時に油断もしないで。 輸送船内はそれぞれ位相変換シールドでガチガチに守りを固めて、回収した物資は分別して分けて配置してください」
「了解」
研究班の人達は、皆口調が丁寧だ。
ミランは何も言わず、周囲の警戒を続ける。もっと外側では戦闘機が飛び回って、警戒を続けてくれている。ドローンも出ている。
今回、敵のメタトロンだったか。この敵の切り札とも言える超大型戦艦を、ここまで綺麗に回収できた初めての例だという。
今までの戦闘でも交戦例はあったが、もっと徹底的に破壊したり、デブリを敵に回収されたりで、構造の解析は出来なかったらしい。
今回は破壊した上に敵を敗走に追い込んだことで、デブリを解析できる。
既に技術的には支援者が優位だが。
それでも相手がどんなテクノロジーを使っているか。
その構想はどうか。
それらを知ることで、優位を得られる。
ミランもそれは理解できるので、警戒任務にも気合いが入る。
「今の時点では敵影は無し。 敵は兵器工廠のあるブラックホール星系に閉じこもり、籠城の構えを解いていません」
「仕掛けるにしても要塞化されているんだよな。 厄介だな……」
「どうせ侵略者だろ。 ブラックホールでもたたき込んでやる訳にはいかないのか」
「奴らがこの間それをよりにもよってある星系でやってな。 甚大な被害が出たんだよ。 奴らと同じになりたくなかったら、冗談でもそんなことは言うんじゃねえ」
会話が聞こえる。
良い気分はしない。
ミランが当事者だからだ。
しばらく警戒を続けていると、気付く。
膨大なデブリの中に、それが浮かんでいた。
「研究班。 よろしいですか」
「はい、どうしましたか」
調査艇で近寄ってくる。
高度なロボットアームや精密なトラクタービームを備えているが、戦闘力は高くない。故に護衛が必要なのだ。
「これ、ウォーリアじゃないですか」
「残骸としては似ていますが、ウォーリアぐらいは搭載していたのでは」
「いえ、あのメタトロンから艦載機が出てくる所は確認されていません。 それにこのサイズ、玩具か何かでは」
「……そうですね。 調べてみましょう」
回収される。
そう、それは小型のウォーリアのようなものだった。多分娯楽品だと思われる。ミラン達にとって娯楽品とは、木彫りの人形とか、そういうものだった。侵略者が攻めてきて、支援者が助けに入るまでは。
だが、侵略者に、そんなものが必要だとは思えない。
親衛軍ですら、この間交戦した親衛軍NO3_009116を除くと、どいつもこいつも人格を恐らく植え込まれていたのだ。
それが娯楽品。
だとすると。
メタトロンに乗っていたのは、やはり。
カルカル大佐に連絡を入れる。
「カルカル大佐。 先に、娯楽品らしいものをメタトロンのデブリの中に発見しました。 そうなると、メタトロンに乗っていたのは……」
「侵略者の指導者の可能性が高い」
「気付いていたんですね」
「パドフ中将はそう言っていました。 恐らくそれを補強する物証となるでしょう。 しかし娯楽品……それに通常の侵略者の百倍の容積の脳、しかもそれだけ。 侵略者の指導者は、一体どういう状態なのか。 それに、侵略者の指導者からの指示が、同時に複数箇所から出ているのを過去に確認されています。 今回仮に倒せたとしても、それは端末の一つにすぎないでしょう、とも」
そうか。
やはり聡明だなパドフ中将は。
ミランはしばらく考えた後、言う。
「親衛軍NO3_009116といい、今回の戦闘では色々と侵略者について不可解な事が起きているのではないでしょうか」
「確かに」
「調査が必要かと思います。 ひょっとすると……」
ミランはしばし黙る。
そして、言葉を選びながら言った。
「あの屑の指導者に支配される前の侵略者を、或いは復元したり……情報を聞き出せるかも知れません」
(続)
※メタトロンの残骸
今回発見されたものは侵略者の正体に迫る重要なものです。
指導者だけがなぜ嗜好品を持ち込んでいたのか。
その伏線が含まれています。
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