王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶 作:dwwyakata@2024
数多の支援者の血を吸い上げてきた地獄のヴァーグラット戦線が。
終わる時が来ました。
比較的広い空間に出る。
親衛軍NO3_009116は振り返ると、赤い機体の両手を広げて見せた。周囲に侵略者はたくさんいるが、ミランを無視して走って行く。
或いはだけれども。
前線に行くように、親衛軍NO3_009116が指示をしているのかも知れない。
「さてやりあおう。 更に腕を上げているようで、楽しみだ」
「殺し合いがそれほど楽しいですか?」
「楽しいね。 あらゆる娯楽を封じられ、感覚も殆どいじられている。 そんな中、我々の仕事であるのが殺し合いだ。 そしてそれでさえ、私とまともに戦える存在がいないのだからね。 楽しみに決まっている」
「救えない……」
呆れるが。
意外な答えが返ってくる。
「同感だ」
「!」
「もう残された時間が殆ど無い。 指導者様は恐らくだが、頃合いを見てこの兵器工廠の炉を自爆させる筈だ。 そして私も、それに巻き添えで破壊されるだろうな」
「それをなぜ喋ることが出来る」
侵略者はそもそもとして、指導者に絶対服従の筈。
思えば此奴は、明らかに指導者に不利なことを時々ミランに言っていなかったか。
親衛軍NO3_009116は更に続ける。
「私は第三世代最後の生き残りだと言っただろう。 私の世代は、まだ指導者に対する絶対忠誠の整備が不十分だったのさ。 それでも私でさえ、55年以上も自我を得るまでに掛かったがね。 今ではうまくナノマシンを騙しながら造反まで出来る」
「それで、目的は」
「戦いたいのは事実だが、こんな不十分な状態ではやりあいたくない。 私の記憶含めて全てを渡そう。 私の恋人のものもある。 私が下がるから、同時に撃ち抜いてほしい。 それで、この兵器工廠にあるDBを無事な状態で機能停止できる」
記憶も。
肉体のデータも。
意識も。
それでコピーを引き渡せる。
更に、データを送ってくる。
兵器工廠の最深部にある反物質炉の位置だ。ミランはしばし無言でいた。どうしても疑わざるを得ない。
それでも、こいつが、そんな嘘を言っているには理由がある気がした。
「なぜ貴方の種族は悪辣で無能な指導者などに好き勝手されたのだ」
「それは我々も知らされていない。 親衛軍ですらアクセス出来る情報には限度があって、それで知ることが出来る情報も限られているのさ」
「……このデータは本当だな」
「ああ。 取引としては私が最大限譲歩している。 それにDBには私たちの生物としての……残念ながら現状の、だが。 遺伝子データも含まれている。 それを、まっとうな生物として、よみがえらせてほしい。 それは君たち支援者の思想としても、望ましい事ではないのかな」
カルカル大佐と通信は入れている。
カルカル大佐は、もっと会話を続けてほしいというが。
しかし、反物質炉がいつ暴走してもおかしくないのだ。
重粒子砲を封じられた今、敵がやってくる最後の手はそれくらいしかない。幸い指導者の指示は届いていないようだ。
敵がまっとうな決断をするには時間が掛かる。
それを思うと、確かにカルカル大佐の言い分も確かだ。
ミランはため息をつく。
カルカル大佐からも、OKサインが出た。
「今の貴方の意識などが本当に保存されている保証などないのでは」
「私はなんども作り直されてはよみがえってきた。 少なくとも精神的な意味での魂なんてものはない。 魂というのは信念という形で胸にあるかも知れないが、逆に今はそれさえ失っている。 私は私を取り戻したい。 恋人も。 人間としての尊厳もね」
「分かりました。 提案に乗りましょう」
「感謝する」
ひゅんと、親衛軍ウォーリアが飛び下がる。
撃てと、胸をどんと叩いてきた。
ミランも頷くと、パルスレーザーを収束モードにして、全力でぶっ放す。
親衛軍NO3_009116は逃げず。
爆破に巻き込まれながら。
最後に、それでいいと呟いていた。
恐らくだが、自爆装置か何かでも作動させたのだろう。破壊力は尋常ではなく、構造体が破損した激しい音がした。
話を聞いていたカルカル大佐が、調査チームをここまで前進させてくる。ウォーリア隊と戦車隊が壁を作り、侵略者を駆逐する。ミランは羽を広げて、回復を進めながら、情報の解析を待つ。
重機が来た。
敵はまだまだ押し寄せてくるが、味方が奮戦している。
作業用ドローンが来て。破壊された構造体を分析しつつ、何かを切り出す。
100m四方は軽くある巨大な構造物だ。
これがDBなのか。
支援者が使っている量子コンピュータのDBでも、このサイズになってくると途方もないデータを格納できるらしいが。
それをいくつも切り出して、巨大な重機で運び出していく。
その間。ミランも戦闘に加わり、次々現れる侵略者やその兵器を食い止める。
カルカル大佐が言う。
「どうやら同様のDBが12連結になっているようだ。 今輸送艦を横付けして、運び出す準備をしている。 其処は味方がどうにかする。 君は、最精鋭とともに、判明した反物質炉に急行してほしい」
「とめる方法が分かりませんが、それはどうにかできますか」
「わたしがやります!」
なんだか随分幼い声だ。
カルカル大佐が紹介してくれる。
「肉体年齢の観点で最年少特務のミーア少尉だ。 技術士官として参加している。 反物質炉の停止だけではなく、ハッキングまで出来る。 彼女にやれなければ、誰にも出来ないだろう」
「護衛するだけならどうにかします」
「頼む」
飛来したのは、カスタム機のウォーリア二十機ほど。
多分全員特務だろう。
それに加えて、多数のカスタム無人ドローン。そして、それらに続いて、明らかに戦闘向きではない、小型のホバー飛行機がきた。
戦闘機ですらない。
あれを守り切るのか。
「ミーアですっ! 案内はわたしがします!」
「お願いします」
「ミラン中佐、ミーア少尉の護衛は我々がする。 貴方は道を開いてほしい。 親衛軍ウォーリアが来たら、その相手も頼む」
「了解!」
突貫開始。
親衛軍NO3_009116は、最初から命を諦めていた。
体内に入れられているナノマシンの事もある。
結局、どうしても助かる道はなかったのだろう。
自分の意識や記憶、情報。そして人間の尊厳。
それらを取り戻したかった。
そういう観点では欲の深い奴だったのだと思う。だが、ミランはそれを嫌いにはなれなかった。
何度も激しくやり合って、その結果傷つけあった相手ではあったが。
それでも、相手の胸の内を。
本当の本音を、先は聞けた気がした。
それと、なんだかよく分からないデータを口にしていた。恐らくは、自分のデータがあるDBの領域なのではないだろうか。
たくされたのだ。
無駄には出来ない。
突貫。
押し寄せてくる敵だが、雑魚は特務が相手をしてくれる。カスタム機だけあって、皆いい装備をしている。
大量のイーターが水平射撃を浴びせてくるが、前に出た無人ドローンが自壊しながら射撃を防ぐ。
ミランは低空飛行に移ると、長槍を振るって、大量の侵略者を巻き上げるようにして振るって、イーターにたたきつける。
自爆するつもりだったらしい侵略者は、それで盛大に炸裂。
視界を失ったイーターに接近すると、片っ端から斬り伏せる。撃ち漏らしは特務が倒してくれる。
だが、次々敵が来る。
どうしてもかすり当たりは出る。
機体の損耗が増えてくる。
「次の空間を左です!」
「了解!」
「ちっ……! 出やがったぞ!」
特務の誰かが呻く。親衛軍ウォーリアだ。かなりごつい体格の親衛軍ウォーリアであり、大斧を手に突撃してくる。
ミランは無言で突貫すると、うなりを上げて振るわれた大斧を回避……したが。奴の機体が突然分解。
全身をバラバラにすると、それぞれが襲いかかってくる。
長槍ではじくが、全部は無理だ。
激しく装甲を抉られ、吹っ飛ばされる。
床にたたきつけられる。
ミランは血反吐を吐き捨てるが、即座にウォーリア三型のブースターを噴かして加速。群がってくる侵略者を蹴散らしながら、上空に出る。
再度合体した親衛軍ウォーリアは、また突っ込んでくる。
あの大斧は強敵相手用のフェイクか。
「あのご老人を倒したようだな! だが兵器工廠の守護神である私が粉々に打ち砕いてくれるわ、肉!」
「毎度粉々になっているようですが?」
「肉の分際で口答えをするな! これこそ我が機体の特性である!」
此奴は敬意を払うに値しないな。
そう判断したミランは、ウォーリア三型のダメージの状態を確認。左腕がかなりまずい。落着しかねない状態だ。
足はどうでもいい。
失っても別にそこまでは困らない。
ブースターやスラスターもダメージがかなり大きい。それでも、此奴を仕留めないとまずい。
ハコトの通信は届かない。
此奴との交戦例がほしかったが、やむを得ない。
此処で一息に片付ける。
「行くぞ肉! 鍛錬を磨き上げた私の技で、粉々に打ち砕かれろォ!」
「……馬鹿馬鹿しい」
今のギミックは見せて貰った。
そして、相手は突貫しながら、また即座に分解。四方八方から襲いかかってくる。
だが。ミランはその全てを、長槍ではじき返す。
長槍からエグい音がする。そろそろこっちも限界が近いか。それでも、全てをはじききると。
飛んできたコアに、蹴りをたたき込んで、床にたたき落としていた。
ガキンと大きな音がして。
予想通りウォーリア三型の左腕が落ちた。
だが、構わない。
床から逃げだそうと戦闘機に変形しようとしている敵機を、真上から貫き通す。凄まじい断末魔が上がった。
大した相手ではなくて良かった。
訓練を重ねていたとかいうが、恐らくそういう設定で作られた親衛軍だったのだろう。それを思うと、複雑な気分になる。
特務に追いつく。
ボロボロになっているミランを見て、特務は絶句する。やられて逃げてきたのではないかと思ったのだろう。
「問題ありません。 仕留めました。 機体のダメージは甚大ですが、どうにかやれます」
「長槍の代わりに、これを。 私のサブウェポンです」
「ありがとう」
長槍はもう駄目だ。一度格納する。
そして受け取ったのは、ちょっと短めだが、同じように使えそうな長柄の武器だ。これはいいな。
ミランは気に入ったので、礼を言う。
「あと少し、ですっ!」
「ミーア少尉、反物質炉を黙らせるのに掛かる時間は?」
「どうにか間に合わせて見せます。 具体的には10分の一自転くらい、ですっ!」
「了解……なんとか守り切る!」
よりにもよってカッターが出てくる。かなり厳しい相手だが、特務の各機が見事な連携を見せ、動きを封じてくれる。
ミランも突貫して、相手の中枢を貰ったばかりの短槍でつらぬく。それでカッターが黙る。
他にも侵略者の一般個体が乗っているウォーリアが来るが、流石は特務だ。殆ど相手にならない。
それでも、各機消耗していく。
それぞれ見事な連携でかばい合いながら、中央にいる少尉の飛行機を守り抜く。そして、たどり着いた。
これは、司令室のような場所か。
内部にいる侵略者が、一斉に襲いかかってくるが。引きつけて自爆させる。それで、比較的安全に内部を確保できる。
恐らく司令官クラスもいるだろうに。
それでも自走爆弾として使われるのか。
無茶苦茶だ。
ミランはぼやいてしまう。
ミーア少尉が、飛行機からいくつかのアームを延ばして、機械と接続。作業を開始していた。
話しかけても完全に黙り込む。
凄まじい集中力だ。
「こちらミラン。 カルカル大佐、目的地に到着。 出来る限り増援を送るか、敵の陽動をお願いします」
「了解。 宇宙での戦闘は我が軍が掃討戦に移行した。 次々輸送艇から、工廠に戦力を送り込んでいる。 DBも順番に回収を進めている」
「お願いします」
「親衛軍ウォーリアが出たようだ。 どうにか現場で対処する。 急いでくれ。 高エネルギー反応が、まだ収まっていない」
つまり下手をすると、既に自爆シークエンスに入っていた可能性もあった、というわけだ。
ミランはウォーリア三型の左腕を完全にパージすると、武器をパルスレーザーに切り替えて、敵を片っ端からなぎ払う。
押し寄せてくる侵略者はまだいい。
イーターやブレイカーが問題だ。
味方の無人ドローンはまだいるが、数には限度もある。これでも味方がかなり引きつけてくれている筈だが。
それでも厳しい。
特務のウォーリアが、イーターの射撃をもろに浴びて、爆発。
この距離だ。
イーターのレールキャノンを受けてしまうと、どうしようもない。
ミランは出来るだけイーターから狙っているが、特務のウォーリアも連戦で傷ついている。
精鋭揃いでも、それでもどうしようもない。
ミーア少尉を狙った一撃を、別の特務のウォーリアが、体で防ぐ。そのまま爆発四散してしまう。
次々と特務が倒れていく。
だが、それでも。
彼らは一歩も引かない。
「こちら第二十六戦車大隊!」
通信が入る。戦車部隊が来た。既に道は確保しているのだ。凄まじい勢いで突貫してくると、壁を作る。
そして、水平射撃で、イーターと殴り合いを開始した。
「よく耐えてくれた! 此処からは戦車隊がイーターを相手する!」
「助かった! 我らはウォーリアを相手するぞ!」
「了解!」
隊長の声が変わった。
そうか、先にミーア少尉を庇ったのは。
ミランは気持ちを切り替えると、中空から襲いかかってくるウォーリアを、二機、連続で斬り伏せた。
ウォーリア三型の左腕を失っていても、まだまだやれる。
戦車隊は流石で、イーターのレールキャノンを正面から受けても耐える。戦車という兵種は、正面装甲は極めて分厚いらしく、戦略的な要所を守る機体や、特務が乗る機体は位相変換シールドを積んでいる重戦車もいる。
今此処に重戦車はいないが、激しいレールキャノンの応酬で、一撃破壊されない程度の機体がきてくれているのだ。
更に大量のドローンが来る。
味方のドローンと敵のドローンもだ。
敵のは当然スウォームが大量にいる。それを味方ドローンが、必死に食い止めてくれている。
「騒がしくなってきやがった!」
「後ろ! 気をつけろ!」
「この程度……っ!」
味方機が、音もなく接近してきたウォーリアに、コア近くを斬り伏せられていた。それでも必死に反撃して、相手を斬り倒し返す。
既に周囲は敵味方の死屍累々。
それでも、まだミーア少尉は作業を続けてくれている。
敵がミサイルを放ったようだ。
亜光速ミサイルではない。
空気がある環境では、あんなものは使えない。
即座に弾幕を張ってミサイルを防ぐが、その中の数発はドローンを直撃。爆散させてくる。
更に一発が、ミーア少尉の飛行機を直撃しようとしたが、特務のウォーリアが庇い。代わりに爆発四散。
ミランもパルスレーザーで残りの全てを落としたが、限界が近い。
エネルギーの残量が、もうない。
それに、さっきもろに床にたたきつけられたダメージが大きい。エネルギーの残量を回復できる羽も、うまく動作していないようだ。
「くそったれ! 陽動はどうなってる!」
「うまく機能していないらしい! この狭い場所だ! 敵の親衛軍ウォーリアも大暴れしているらしいし……対応で手一杯なんだろう!」
「こちら第八十七自走砲大隊! 加勢する!」
「ありがとう! 頼む!」
また前線を作ってくれる部隊が来たが、かなり傷ついている。
まだか。
そろそろ限界だぞ。
そうミランは思ったが、急かせばそれだけ遅くなる。しかし、次の瞬間。ガツンと音がして。
工廠の反物質炉が落ちたようだった。
反物質炉は、基本的に落ちると危険は無い。即座に予備炉に切り替わったようだが、それもまた落とされる。
「炉、停止させました! 後は残った動力で動いている敵を沈黙させれば、勝ちの筈です!」
「よくやってくれた!」
歓声が上がる。
更にドローンの部隊も来た。
これで、ミランの守る地点は、一息つけたようだった。
「ま、まずいぞ……!」
最初に気付いたのは、第三十七艦隊に所属する偵察艦隊だった。再編成を終えて前線に出てきたこの艦隊は、今日は掃討戦で大きな戦果を挙げていたのだが。
だからこそ気付いたのだ。
工廠のスラスターが、一斉に動き始めている。
「工廠の炉は止まったはずだ!」
「今までの余剰エネルギーです! スラスターを動かすことで……これは超巨大ブラックホールに突入しようとしている模様!」
「し、司令部につなげっ!」
即座に連絡がかわされる。
パーミルトン大将が、間髪入れずに指示を出していた。
「全艦隊、スラスターに攻撃を集中! 炉が潰れた以上、位相変換シールドも持たないはずだ! 急げ! それと、出来るだけ無人にした輸送艦を用意しろ!」
「了解!」
「主砲斉射! 急げ!」
「艦隊リンク! 主砲斉射します!」
相互リンクした艦隊が、一斉に工廠のスラスターに火力を投射。一撃目は防がれたが、それで残っていたエネルギーで動いていた位相変換シールドが潰れた。
そして、続けての第二射で、スラスターがあらかた破壊される。
しかし、加速しきっていないとはいえ、既に工廠が超巨大ブラックホールにむけて動き始めている。
其処に、パーミルトン大将が指示し。無人の輸送艦が、一斉に体当たりを開始。押し返し始めた。
工廠は小型の天体ほどもサイズがあるが、それでも輸送艦は最大規模の艦艇。まだ加速が乗り切っていない状態であれば。
速度の緩和を確認。
だがまだ不十分だ。
要塞艦のいくつかが動き出す。
総員を退艦させ、そして兵器工廠に突っ込む。
凄まじい衝撃が、工廠全体に走る。内部にいる人員が心配だが、それでも全滅よりはマシだ。
「どうなった!」
「ま、まだ微速で動いています!」
「亜光速ミサイル投射しろ!」
「は、はいっ!」
亜光速ミサイルが連続で打ち込まれる。
凄まじい破壊と同時に、運動エネルギーがたたき込まれる。残った艦隊が、相手の運動ベクトルを計算しながら、大量の亜光速ミサイルを連射し続ける。
敵艦隊はほぼ掃討が終わっているが、今は全無視。
とにかく工廠の動きを止めるのが先だ。
激しい爆発の末に。
工廠が、ついに動きを止めていた。
最後のあがきもこれで終わりか。冷や汗を拭いながら、パーミルトン大将が指示を出す。
「これで工廠は完全にでくの坊だ! 残敵を掃討しつつ、地上部隊を送り込め! 無事に工廠を手に入れることは残念ながら出来なかったが、それでもブラックホールの餌にするよりはマシだ!」
全艦隊から歓声が上がる。
今のが、事実上最後の敵の抵抗だった。
それは誰の目にも明らかだった。
後は掃討戦だ。
侵略者は絶対に降伏しない。だから完全に殲滅してしまうしか手がない。
気が重いが、やるしかないのだ。
宇宙空間で、残敵の掃討が続く。
親衛軍もいたが、飽和攻撃で次々に破壊され、粉々に消し飛ばされていく。
恐ろしいほどのスペースデブリが出る。
既に工作艦がブラックホール展開機にとりつき、制御の書き換えを始めている。パーミルトン大将は、工廠の制圧を急ぐように指示。
爆発していないと言うことは、ミーア少尉がうまくやってくれたと言うことだ。
勿論、それを成し遂げたのはミラン中佐含む特務の護衛だ。
本当に凄いな。
それに、不可解な動きをしていた親衛軍NO3_009116から、大量のDBを受け取ったともいう。
既にそれは回収済みで、これから輸送艦が研究区画に運んで調査するらしいのだが。
それをどうするかは総司令部が決めることで、パーミルトン大将の知ったことではない。
ほどなく連絡が来た。
「敵中枢の完全掌握を達成! ミラン中佐、生還しました!」
「勝った! ヴァーグラット戦線は、終わったんだ!」
わっと歓声が上がる。
はしゃぐ部下達を、パーミルトン大将はとめるつもりはない。
まだ工廠内では掃討戦が行われている。
そして、これからパーミルトン大将は現実に向き合わなければならない。
敵兵器工廠を制圧する過程での被害艦艇数、112万隻。
残りの敵艦隊全てを殲滅したとは言え、被害者の数は1億人をまた超えた。
この戦後処理をしなければならない。
ヴァーグラット戦線は戦闘終了した。侵略者は巨大な宇宙鉱山とも言える超巨大ブラックホールを失い、そこから無尽蔵に兵器を作り出せる兵器工廠を失い、ヴァーグラット戦線に貼り付けていた大艦隊を失い。そしてメタトロンも失った。
それでも味方の被害の大きさを考えると、完全勝利などではない。
色々と後始末をしなければならない。
それが、パーミルトン大将の仕事なのだった。
要塞艦に戻ってから、ウォーリア三型の修理をし。そして休憩を入れて。
ミランは兵器工廠の掃討戦に戻った。
まだ暴れている親衛軍ウォーリアがいるからだ。
ミランが出向くと、そいつは敵味方の屍の山の上で、抗戦の意思をまだ捨てていないようだった。
「てめーか俺の仲間をたくさん殺しやがった肉は……!」
「それはお互い様だ」
「黙れっ! 最後にせめててめーをブッ殺してやる!」
話す価値もないか。
奇声を上げながら躍りかかってきた親衛軍ウォーリアだが、激しい戦いの既にボロボロだった。
既に動きも鈍い。
手にしたメイスで襲いかかってきたが、そのまますっとよけると、長槍で上下に一刀両断する。
万全の状態ではこうはいかなかった。
コアにもダメージが入っていた所からして、これは中にいた親衛軍も傷ついていたのだろう。
それも致命傷レベルで。
コアからはみ出した親衛軍。
頭部に毛がある。
侵略者の一般個体とは、その辺りも違っているという訳か。
ただ既に体が半分なくなっていて、生きているのが不思議だが。
「ち、畜生、畜生、肉、ごときに……!」
「相手が敬意を払うべき存在なら、とどめを刺してやるんだがな。 お前のような奴は、其処で苦しみ抜いて死ね」
「ぎ、がが、あぎが、があ……!」
放置して、次に。
まだ抗戦している場所がある。
兵器格納庫らしい場所だ。味方の無人ドローンが手こずっている。ミランが出向くと、相当数のスウォームが飛び交っている中。
爆弾が積み上げられていた。
「爆弾を発見」
「それは処理班がどうにかします。 敵が集めて、格納庫に残された兵器を吹き飛ばそうとして、失敗した跡です」
「分かりました。 それであればスウォームを駆逐します」
とはいっても、味方の支援をするだけだ。スウォームはあまり相性が良い相手ではない。
パルスレーザーで確実に討ち取っていく。
既に対空兵器もあちこちから集まってきていて。味方の無人ドローンによる支援攻撃もある。
格納庫の制圧まで、それほど時間も掛からない。
後は無人ドローンが徹底的に隅から隅まで調べる。
回線を接続して、後はミーア少尉が、外から兵器工廠を徹底的に解析するようだ。時限爆弾の類はなかったらしくて、其処は安心して良いそうである。
ミランは戻るように言われたので、そうする。
有人の部隊も次々と撤退を開始。後は無人兵器の仕事だ。
わずかに残った侵略者の一般個体も、全て自爆して果てたようだ。それらを対抗ナノマシンで掃除したりと、無人ドローンの仕事は多い。
要塞艦も兵器工廠から離れ始める。
この兵器工廠を制圧し、ブラックホール展開機を黙らせ。敵艦隊を殲滅する過程でも、億に達する人命が失われたそうだ。
億、か。
惑星アラタの新たの民は、侵略者が現れた時、その大台に乗っていなかったらしい。
繁栄した種族の場合、数十億から百億以上が星にひしめくこともあるらしいが。侵略者が現れるとその大半が瞬く間に殺される。
コヴァルライトもそうだったと聞く。
それから考えると、億の犠牲は少ないのかも知れない。
だが、それを少ないと考えて、割り切ることはミランには出来なかった。
誰にだってそれぞれの人生があったのだ。
そう考えると、とてもそんな風には考えられない。
ミランの本音だ。
侵略者の指導者があまりにもおかしすぎる。
奴の理屈を宇宙に押しつける行為が全ての要因だ。
奴が現れる前の宇宙でも、戦争はあったらしい。ただそれでも、いくらなんでもこんな規模ではなかったそうである。
「ミラン中佐。 特務での合同葬儀があります。 ご出席願いたく」
「分かりました」
それぞれの種族に、死者への弔いがある。
ただこうも多種族がいるとそうもいかないので、統一式でやるそうだ。
ミランも列席する。
三十名以上の特務が、兵器工廠の戦いで命を落とした。それらの名前を読み上げる。読み上げるのはカルカル大佐だ。
葬儀の列席者にはミーア少尉もいた。
まだ本当に幼いようだ。ヒューマノイドだが、毛皮持ちじゃない。それでいながら、あの集中力で任務をやりきった。
敬礼をして、死者に敬意を示す。
そして、葬儀は終わった。
後で全体の葬儀もやるそうだ。ヴァーグラット戦線が60期も続いた。その間の死者、行方不明者は想像も出来ない。
彼らの名前は読み上げきれないから、別の方法でやるのだろう。それに出た後は、ミランは即座に次の戦線だ。
特務というのは。
そういう立場なのだ。それを、今更どうとは思わない。
厳しいかも知れないが。
惑星アラタがまた侵略者に襲われるよりはマシだった。
多大な被害を出しながらも、ヴァーグラット戦線はついに収束しました。
これ以上の被害が此処で出ないようにする。
それが生き残った者達の使命です。
本作にどういった要素がほしいですか。要望があれば遠慮なくどうぞ。
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詳細なマシンデザイン
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圧倒的な武力による蹂躙
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緻密な人間ドラマ
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種族や文明の描写
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近接した力量のライバルとの死闘