王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶   作:dwwyakata@2024

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このままではまともに戦えない。

それを嫌と言うほどミランは思い知らされます。

モラルが極限まで落ちた戦場が当たり前の民達。

しかも罪悪感などもはや彼らには存在しない概念なのです。





3、困難の中で糸口を探す

二自転ほど待つ。

 

ミランはハコトとアネカが仲良くやれているのを見て、目を細める。整備チームも皆関係は良好で、アネカはすっとぼけた言動ですぐに皆に愛された。見た目と違って技術も優れていて、ロボットだけに教えたことは忘れることもない。

 

最初戦士には警戒する者もいた。

 

侵略者製ロボットで、昔の侵略者をそのまま美化したような容姿をしている、という話だからだ。

 

その警戒は最もなので、ミランが警戒している戦士には説明をして回り。

 

それで実際にハコトとアネカと接する機会も作る。

 

ガワは侵略者製でも、中身は大半が支援者製。

 

一部AIは侵略者が古くに破棄したものを実験的に使っているが。

 

それも徹底的な調査の結果、バックドアも悪辣なプログラムも存在していない。

 

ともかく、すぐにアネカはなじめたので、ミランとしてはそれでいい。

 

姉妹機が以降量産される予定らしいので。

 

あちこちでいずれはハコトとアネカが見られるのかも知れない。ハコトの方は試験的に生産された者がたまに見られるようだが。

 

まだガルヴァード准将は地上攻撃を続けている。

 

特に航空戦力での爆撃も含めて工場ユニットに攻撃を加えているが、惑星環境が歪みに歪んでいるため、データの取得が難しいようだ。

 

連日100を超えるアルカラルドの民の国家から訳の分からない抗議も飛んでくるため、さっさと終わらせて関わるのを止めたい。

 

そういう話も聞かされる。

 

ミランも同感なので。

 

それについては、同感ですと話をあわせる。

 

ただ、相手の悪口を言い合うつもりはない。もはや、相手のことは考えたくもない、というのが実情だ。

 

大規模攻撃の結果、突出していた工場ユニット等は破壊に成功。

 

新たに基地ユニットを投下して、其処を最前線にする。

 

そして最前線には、アルカラルドの民は立ち入らせない。

 

それで兵士の精神安定を保つことに決めた。

 

勿論ギャンギャンとアルカラルドの国家群は反発しているようだが、はっきりいってどうでもいい。

 

核攻撃をすると威圧してきている国家もあるそうだが。

 

これだけ文明差がある。

 

例えばウォーリアなどが核爆弾を食らえば死ぬが。

 

大陸間弾道ミサイルなんて、それこそ瞬く間にたたき落とせる。

 

別に彼らの威嚇など、脅威にはならなかった。

 

地上に降りる。

 

映像で見せられたが、大規模な「デモ」とやらが行われているらしい。

 

支援者はこの星から出て行け。

 

そう色々な罵声とともに描かれた板やらを掲げて、この星の民草が騒ぎまくっている。そう、とだけミランは呟く。

 

言われなくても、侵略者を潰したら出て行ってやる。

 

後は勝手にしろ。

 

そう思いながら、最前線に到着。

 

既に駆逐艦数隻が来ていて。

 

ウォーリアや戦闘機、攻撃機、爆撃機、ドローン。それに戦車隊や自走砲部隊などが。攻撃開始の合図を待っていた。

 

此処にはアルカラルドの民は入れていない、という話の筈だったのだが。

 

戦士達が、嫌悪の視線を向けている。

 

ミランも理由に気付いた。

 

こっちに歩いてくるのは、ハーネイ少尉だった。

 

無言で敬礼はする。

 

ロボットが事情を説明してくれた。

 

「実は亡命を受けまして」

 

「亡命?」

 

「ええ。 彼女は「アトラカル連邦」というアルカラルドの民の国家に所属していたそうなのですが、祖国に嫌気がさして亡命してきたそうです。 貴方の麾下で戦いたいと」

 

「……」

 

全力で警戒するミランに。

 

ハーネイ少尉は、いきなり頭を下げていた。

 

「貴方の戦いを拝見したわ。 あの親衛軍ウォーリアを手玉にとって、その後背後から撃たれたのに生還。 凄い戦士だと感心した。 貴方には、素直に尊敬の感情を持てる。 だから、身柄を預けさせてほしい」

 

「アルカラルドの民が、自分たち以外の種族に頭を下げるなんて、例外中の例外です。 我らの特使が最初に赴いた時ですら、隷属をいきなり要求してきて、拒否したら攻撃してきたほどでして」

 

「……罠の可能性は」

 

「調べましたが、彼らのテクノロジーによる盗聴器などの類は一切なし。 また、彼女の周辺のロボットに常時監視もさせています。 悪さは出来ません」

 

そうか。

 

だとしても、即座に信頼するのは無理だ。

 

しばし考えた後、ミランは言う。

 

「ハーネイ少尉。 顔を上げてください」

 

「……はい」

 

「まずは戦場で戦ってみてください。 それで様子を見ます」

 

「分かりました」

 

ウォーリアは止めた方が良いだろう。

 

駆逐艦の射撃手として採用してくれと、ガルヴァード准将に頼む。

 

味方への攻撃が出来ないようにされているポジションであるのと。

 

何より他の戦士と接しなくてもいい兵種だ。

 

他の種族を全部下と見下しているような種族の出身者だ。それで少しずつ様子を見ていくしかない。

 

まずは様子を見たい。

 

全てはそれから。

 

その話をすると、納得したらしく、ハーネイ少尉は行く。

 

行った後、ロボットと軽く話をした。

 

「一体どういうことですか?」

 

「ハーネイ少尉の故国では、隣国三つとずっと戦争をしておりまして、戦争によって生じた孤児を国有の施設で育成しているそうです。 ほとんどは体ができあがると、即座に軽火器を持たされて最前線に送られるそうで、初陣で九割方が死ぬとか」

 

「無茶苦茶にもほどがある」

 

「そんな中ハーネイ少尉は運良く生き残れたそうで。 それでその運を見込まれて、義勇兵兼諜報役として送り込まれたそうなのですが」

 

そもそもとして、それまでに散々口にも出来ないようなおぞましい仕打ちを受けてきたらしい。

 

ハーネイ少尉は比較的アルカラルドの基準では容姿が優れているらしくて、その分仕打ちも酷かったらしく。

 

更には作戦を成功させたら、高官の愛人に「していただける」約束をありがたくもされていたそうだ。しかも口約束で、だ。

 

「既に精神的に限界だったハーネイ少尉は、ミラン中佐の活躍を見て、此処でならと最後の勇気を振り絞ったのだとか」

 

「そうですか。 こちらとしては全てをいきなり信じるわけにはいきません」

 

「分かっています。 全て狂言の可能性もあります。 ただ……経歴に出てきた悪質な国立孤児院は実在しているようです」

 

「……っ」

 

この星の連中。

 

侵略者と同レベルではないのか。

 

荒々しい種族、粗暴な種族はミランも見た。

 

喧嘩ばかりしていたり、罵詈雑言ばかりいう者だっていた。

 

だが。それでもここまで酷くはない。

 

確かに侵略者と祖が同じと言われるのも、ある程度納得がいく。

 

ともかくだ。いきなり信じるわけにはいかない。

 

この前線基地には、ハコトとアリカも来ている。場合によっては、整備班に加わって貰うのも手だし。

 

経験を積んだのなら、ウォーリアに乗って貰うのも良いかもしれない。

 

「ミラン中佐」

 

「はい」

 

声が掛かる。

 

ガルヴァード准将の麾下の参謀の一人、マルラ大佐だ。

 

全身が48の節で構成された長細い種族で、体の脇には多数の足がある。地下で暮らしていた種族で、光が苦手なため、常に六つある複眼を覆えるスコープをつけているのが特徴だ。

 

マルラ大佐の種族であるバ・ド・ラルラはそこそこ数が見られる。

 

戦士としても適性が高く、それなりに参謀も出来るためだ。ただ体の構造が細長い事もあって、ウォーリア乗りには向いていない。

 

代わりに爆撃機乗りは適性が最高だそうで。

 

爆撃機を一人で操作する強者も時々いるそうだ。

 

「アルカラルドの民を預けてしまってすまないな。 一応形式的には貴官の部下として扱う事になる」

 

「部下の面倒を戦場で見る余裕はありませんが……」

 

「分かっている。 貴官が一戦士としての適性しかないといつも言っているのは見ている。 今回試運転を済ませたら、整備班にでも入れて様子を見て、それからで良いだろう」

 

マルラ大佐は、心理洞察が得意だ。

 

ミランが考えていたことをズバリ当ててきた。

 

まあそれはそれでいいか。

 

ともかく、作戦だ。

 

「現在、12まで親衛軍ウォーリアを生産できる工場ユニットを絞り込めた。 これからその一つを陥落させる作戦に着手する」

 

「分かりました。 それで自分の任務は」

 

「まずこの立体映像を見てほしい」

 

多数ある足のいくつかを器用に操作して、機械を動かすマルラ大佐。

 

立体映像が出る。

 

四つの工場ユニットに、今宇宙、地上、両面から猛烈な攻撃が行われている。ワーカーの部隊はほぼ始末できたようだ。だが、まだ頑強に抵抗している。

 

その一つを破壊するように見せて、一気に目標の工場ユニットへ進出。

 

強力な陸戦部隊で、敵の護衛を撃破する。

 

「この星には親衛軍ウォーリアは一機しか確認されていないが、念の為もある。 そしてこの作戦では、工場ユニットの出来るだけ無事な奪取が目的となる」

 

「自爆される可能性も高いですが」

 

「分かっている。 そのため、特殊なロボット部隊を投入して、彼らがハッキングを行う。 その護衛をしてもらう事になる」

 

厄介だな。

 

自爆の恐れがある工場ユニットの内部で、作業チームの護衛か。

 

だが、もたついているとまた親衛軍ウォーリアが生産される可能性が高い。やれるなら、やるしかない。

 

「この作戦がとれるようになったのは、貴官のおかげでもある」

 

「自分の?」

 

「ヴァーグラット戦線で、貴官の活躍で回収できたDBの中に、奴らの工場ユニットのデータが存在していた。 まだ敵はその奪取に気付いていない可能性が極めて高い。 恐らく、システムを根本的に改修する余裕もない。 ハッキングに特化した部隊であれば、全機能を停止させることも可能だという結論が出た」

 

「なるほど、わかりました。 意義のある作戦ですね」

 

マルラ大佐が頷く。

 

後は細かいうちあわせをした後、作戦開始だ。

 

時計を合わせると、駆逐艦に乗り込む。

 

地上戦用の駆逐艦。

 

ドッグにてコンディションのチェックをしていると、ハーネイ少尉が来る。

 

「ものすごい宇宙戦艦ですね」

 

「これは駆逐艦です」

 

「え……」

 

「戦艦は、これが小舟にしか見えない規模です。 戦艦より更に強力な艦艇もあります。 核兵器なんて、宇宙での戦闘では小銃くらいにしかならないんですよ」

 

別に自慢している訳でもないので、事実を淡々と言う。

 

それに対して、絶句するハーネイ少尉。

 

しばし考え込んでいたが、正直に話してくれる。

 

この規模の艦艇は、アルカラルドの民の各国にある最大規模のものとサイズがあまり変わらないらしい。

 

それもあって、アルカラルドの民はこちらを侮る要因の一つにしていたとか。

 

「上層部の連中は言っていたようです。 この程度の代物であれば、すぐにでも再現できると。 核兵器が通じなかったのも、何かしらの対抗兵器が原因で、それさえ貫通できれば後はどうにでも出来るし、技術を手に入れたら簡単に追い払えると」

 

「其処まで自分を盲信して相手を侮れる理由がわかりません。 どうして貴方達は其処まで自分を偉いと思い込めるんですか?」

 

「それは……私にも分かりません。 私はずっと戦場にいて、ずっと殺し合いばかりしていたので、祖国の歴史も適当にしかわかりません。 ただ気がついたら、我々は宇宙で一番偉い種族で、最も優れている種族だから、弱肉強食論に従って、全てを自分のものにして良いと」

 

理屈が侵略者の指導者のそれに似ているな。

 

確かに共通点が多すぎる

 

見かけもハコトやアネカに似ている。アリカ中佐とも似ていると言えば似ているだろう。体のメリハリが、アリカ中佐の方がいいようだが。

 

ともかく、銃座に案内する。

 

レールキャノンだ。

 

掃射砲と違ってオートキャノンではなく、駆逐艦から地上のワーカーを狙い撃てる。もっとも、このレールキャノンはイーターを狙って貰う事が主任務になるが。

 

今回の作戦では、駆逐艦八隻が参加。

 

機能停止に追い込んだ工場ユニットにとどめを刺すフリをして、一気に加速。

 

目標としている工場ユニットに向かい、ハッキングして鹵獲を目指す。

 

作戦はハーネイ少尉には告げない。

 

まだ信頼しきってはいないからだ。

 

ただ口調を改めたのは評価できる。

 

まずは見極めだ。

 

「全艦発進!」

 

「さっさと片付けようぜ! こんな星、さっさと離れるに限る!」

 

「毎日毎日ピーチクパーチク訳が分からん抗議活動だかしやがって! やりたければ勝手にやってろってんだよ!」

 

「いきなり当たりを引けばいいんだが、8%ちょっとだもんな……」

 

兵士達が、発進した艦隊の中で色々ぼやいている。

 

艦隊は進み始めると、戦闘機隊が先行。

 

まだいるスウォームの部隊を蹴散らして、制空権を抑えに掛かる。

 

カッターがいる。

 

ただし、既に味方の攻撃機隊になぶりものにされて、破壊寸前。駆逐艦から攻撃機が出ると、とどめを刺してきた。

 

戦力差があるとある程度余裕がある。

 

それはともかくとして、一気に艦隊が加速。敵が、明確に増えてきた。

 

掃射砲が咆哮し、地上にいるワーカーを駆逐し始める。戦闘機隊も、敵のスウォームを駆逐に掛かり、大量のドローンがばらまかれた。

 

親衛軍ウォーリアが本当に一機だけなら楽だろうが、そううまくいくかはちょっとなんとも言えない。

 

ともかく、敵の前線を一気に抜き去り、

 

工場ユニットに迫る。

 

「地上部隊展開!」

 

「よし、面倒ごとを一気に片付けるぞ!」

 

「戦闘機隊、空中は任せる!」

 

「任された! ワーカーどもを今日は逆にバラバラにしてやれ!」

 

軽口を叩きながら、ウォーリア隊が出る。駆逐艦も高度を落としながら、たくさんいるイーターから優先して始末。

 

攻撃機隊はまだスォームが多くて出づらいか。

 

ミランもウォーリア三型で出る。

 

ワーカーの大軍。

 

自動兵器だから、まだ侵略者の一般個体よりも気分的に相手が楽だ。それにこいつらはとにかく皆殺しにすることしかしない。

 

倒すことに、なんら躊躇がいらない。

 

長槍を振るって、片っ端から斬り倒す。まずは橋頭堡を作ると、戦車隊、自走砲隊が降りてきて。射撃開始。

 

火力を投射して、敵の大群を内側から食い破る。

 

今回は特務の任務と言うよりも、支援だ。

 

エースが出るまでもない任務だというが、恐らくはそれでもなお。この負債としか言えない戦線は、さっさと手切りしたいのが総司令部の意向で。それでミランが送られたのだろう。

 

だったら一秒でも早くこの星から侵略者をたたき出す。

 

それが終わったら、さっさとこの星を封じ込んで最低限しか関わらない。

 

資源などは供出してもいいが、ハーネイ少尉の言うことが全部真実だとすると、この星の連中は少なくとも宇宙に出る資格はない。

 

出てこられても迷惑だ。

 

今の時点は問題ないな。

 

そう判断する。

 

敵の工場ユニットも、妙な動きはしていない。

 

強襲作戦くらいは想定しているからだろう。周囲から援軍をかき集めているようだが。それだけ。

 

羽を広げて、エネルギーの残量を回復させながら。

 

味方の支援を続ける。

 

制空権は問題ないか。

 

後問題があるとすると、親衛軍ウォーリアだが。今の時点では、来るという予感はない。嫌な予感もしない。

 

「第二段階に移行」

 

「よし、調査チーム出る!」

 

調査チームが出ると同時に駆逐艦が射撃を開始。一気に工場ユニットの位相変換シールドを破りに掛かる。

 

同時に宇宙からの連係攻撃で、工場ユニットの位相変換シールドを飽和させにかかる。

 

前線にブレイカーが出てきた。

 

だが、既に制空権はほぼ抑えている。攻撃機が出ると、滅多打ちにしてすぐにしとめてしまう。

 

凶悪な兵器だが、制空権をしっかり抑えられているならこんなものだ。

 

更に攻撃機が、位相変換シールドに空対地レールキャノンを撃ち込んで、飽和させる。爆撃機が出てきて、その巨体から大型爆弾を投下。

 

凄まじい破壊力に、ついに位相変換シールドを沈黙させた。

 

調査チーム突入。

 

ミランもそれを護衛。

 

ウォーリア隊が続く。敵はそれを防ごうとするが、先頭に立ったミランが、全てを斬り伏せ、なぎ払う。

 

敵はまだまだ来るが、今回は戦力に余裕がある作戦だ。無駄にもたつかなければ大丈夫な筈。

 

問題は、時間が足りるか分からない事。

 

工場内部は、作りかけのワーカーがびっしり並べられていた。念の為に、片っ端から破壊しておく。

 

ウォーリア隊が展開する中、調査チームの作業車両が出来るだけ急いで進んでくる。

 

「ミラン中佐、そこの大きな柱のようなものです!」

 

「了解。 これが制御装置ですね」

 

「既に自爆シークエンスが入っているはずです! 最悪の場合は退避してください!」

 

「了解!」

 

周囲から、わらわらと現れるのは。

 

侵略者の一般個体だ。

 

しかも服すら着ていない。慌てて生産したものを繰り出してきた、という雰囲気だ。当然ナノマシンが入れられているから、自走爆弾である。

 

それに、ワーカーが動き出す。

 

イーターがいないのが幸いだ。ワーカーも数は致命的ではなく、片っ端から壊しておいて良かったと感じた。問題はとても狭い空間での戦闘と言うことだ。

 

これは厳しいな。

 

ミランはそう思いながら、ウォーリア部隊を叱咤して、撃退に掛かる。

 

パルスレーザーで調査チームに近づく侵略者の一般個体を爆ぜ割れさせ。そして未完成のまま襲いかかってくるワーカーを、大上段からの一撃で斬り伏せる。

 

「ワーカーが近すぎる!」

 

「この狭い中でワーカーを相手にするのは無理だ!」

 

「泣き言を言うな! 自爆シークエンスに入ってるんだ! やられたら自爆に最悪巻き込まれるぞ! こんな星のために死んでたまるかよ!」

 

「畜生、その通りだっ!」

 

やっとやる気が出てきた兵士達。

 

その中でミランは、立ち位置を工夫しながら、ワーカーを倒していく。エネルギーの残量がちょっとまずいか。

 

ワーカーを相手にするだけなら大丈夫だが、親衛軍ウォーリアが出てきた場合は非常にまずい。

 

ワーカー二体同時。飛びかかってくる。

 

立ち位置を工夫して、まずは右、次は左。更にパルスレーザーを収束モードにして、味方機に飛びついて押し倒していたワーカーを貫く。

 

「た、助かりましたミラン中佐!」

 

「すぐに立ち上がって戦闘を!」

 

「は、はいっ!」

 

味方の奮戦が続く。

 

調査チームは大丈夫か。

 

大丈夫。ロボットが主軸だ。みんなやれている。少し生身の者もいるようだが、決して遅れはとっていない。

 

またワーカーに飛びつかれた味方機を、パルスレーザーの一撃で助ける。

 

ワーカーが未完成品ばかりということもあって、どうにかやれる。味方の損害も抑えられている。

 

だが、いつ自爆してもおかしくない関係上、あまり多くは工場ユニットには入れない。此処にある手札でやるしかない。

 

奥から何か来る。

 

ウォーリアかあれは。

 

だが、未完成品だ。

 

恐らく侵略者の一般個体が動かしている。ミランは即座に、唐竹に斬り倒す。エネルギーの残量が少し不安になってきたが。まだやる。

 

調査チームのリーダーが通信を入れてくる。

 

「ミラン中佐!」

 

「何か問題発生ですか」

 

「工場の電源ユニットは停止できそうです。 問題は自爆装置の解体で、これが出来るかは五分五分です」

 

「そんなに状況が悪いんですか」

 

技術的な説明をしてくれたが。

 

ミランにはよく分からなかった。ただ、確率を上げられる方法があると言う。

 

小型の飛行機で、誰か来る。

 

アネカだ。

 

「彼女を護衛して、工場の指定地点に! 連動して同時にシステムを落とせば、100%安全に工場の自爆装置を解体できます!」

 

「了解……!」

 

「ミラン中佐、こっちや! 護衛たのむで!」

 

「任せてください」

 

小型の飛行機に戦闘力は無い。時間ももう殆ど無い。親衛軍ウォーリアが出てきた場合はその時だ。

 

此処はウォーリア部隊に任せ、案内に従って地下に。

 

ドッグを封じ込んでいる扉を蹴り破って内部に。

 

柱は此処にもつながっていて、其処にコンソールがあるが、見たこともない兵器がいる。いや、これは。

 

兵器じゃない。

 

ウォーリアに似ているが、ただの模型だ。

 

少なくとも熱源などを確認する限り、反物質炉は積んでいないし、動作ギミックも最小限だ。

 

アネカが飛び出すと、コンソールに飛びついて、凄まじい勢いで操作を開始する。

 

「ミラン中佐、彼女の護衛を! あとわずかでどうにか出来ます!」

 

「了解!」

 

ロボットアームが動き出す。

 

ドリルがついていて、こっちに向けて伸ばしてくる。

 

即座に根元をパルスレーザーで打ち抜き、壊れたロボットアームを長槍ではじき返す。でかいので、重い。

 

だが、アネカを傷つけさせはしない。

 

狂ったように回転し、動くロボットアームを、冷静に押し返す。長槍が酷く痛むが、それはもう無視。

 

押し返しきった。

 

ガゴンと、床に落ちるロボットアーム。

 

エネルギーの残量がまずい。

 

外ではまだまだ派手に戦闘をしている。上では爆発音。侵略者の一般個体が自爆しているのだ。

 

こっちにも来る。

 

片っ端から、パルスレーザーで爆ぜ散らす。

 

ぐっと歯を噛む。

 

もはや尊厳も意思もないその姿。

 

だが、もし侵略者が古くはこの星の者達と同じような存在だったのだとしたら。

 

そう思うと、複雑な気分だ。

 

どっちがマシなのだろう。そう考えてしまうのだ。

 

「リンク! 誤差マイクロ1!」

 

「停止!」

 

アネカが叫び、タンとボタンを押す。

 

それで、工場が止まったのが分かった。

 

まだ少数のワーカーが動いている。へろへろと疲れた様子で床にへたり込むアネカ。

 

ロボットとは言え、身体能力はむしろ弱めに作られているのだ。危険である。

 

「ミラン中佐、うち疲れたわあ」

 

「まだ敵がいます。 飛行機に乗り込んでください」

 

「あいー……」

 

飛行機にずるずると入り込むアネカ。

 

そのまま護衛して、工場を出る。上でも味方はボロボロだが、どうにか護衛をやりきった。

 

周囲の敵が大混乱している。

 

工場ユニットが完全停止して、制御が効かなくなったのだろう。侵略者の一般個体すらもが、へなへなと床に倒れ、その後爆発していた。

 

「作戦成功。 データを持ち帰り精査します」

 

「よくやってくれた! 周囲の敵を掃討し次第、情報から親衛軍ウォーリアを生産している基地を割り出す!」

 

ガルヴァード准将の声が聞こえる。

 

とりあえず、ミランは今回も生き延びたのだった。

 

 

 

敵の駆逐が終わって、ハーネイは椅子になついていた。

 

ウォーリアに乗って出たら、万一にも生き残れなかった。

 

駆逐艦にも何度も直撃弾があって、ひやりとさせられた。

 

こんな戦いを、いつもミラン中佐はやっているのか。

 

今まであった事が無い。

 

コミックに出てくるような毛むくじゃらの獣人。周りはみんな不細工だくさいとばかにしていたが。

 

戦闘の様子は嫌でも見た。

 

あの動き、本物の英雄だ。

 

ハーネイも戦場に嫌になるほど出されたから、凄い技量の敵は嫌でも見た。それら恐ろしい敵と比較しても、まるで大人と赤子だ。

 

親衛軍ウォーリアを単騎で倒した時に考えを改めた。

 

しかし今は、更に考えを改めることになった。

 

完全に腐りきっているこの星から逃げ出したい。

 

それはずっと気持ちとしてあった。

 

だけれども、歪んでいると自分でも認識できているのに。選民思想が、ずっとハーネイの足を縛ってきていた。

 

13の時には高官に目をつけられ、玩具にされた。

 

断れば死だ。

 

孕むと面倒だからと、副作用が強い薬まで飲まされた。おかげで子を産む体の機能はもう動いていない。思春期に性欲に振り回されなくなったのだけは救いかも知れないが。

 

戦場に何度も送られ。生き残っても高官の欲望のはけ口にされる日々。

 

もっと幼くて高官の玩具にされた少年兵も少女兵もいる。

 

どんなに武勲を立てても、「下層民の出だから」という理由で、未来は閉ざされていた。一定以上の階級にはなれないようになっていた。

 

少尉になったのは、単にプロパガンダからだ。

 

顔に傷でも受ければ好き勝手にされないだろうか。

 

そう思った事もあったが。

 

同じようにした子が、用済みとして生還不可能な戦場に送り込まれた挙げ句に殺されて。英雄と祭り上げられたのを見て、怖くて出来なかった。

 

どこの国でも同じだ。100以上ある国が、侵略者に蹂躙されている今でも、どこかの国と例外なく戦争をしている。

 

わざわざ宇宙から来てまで侵略者と戦ってくれている支援者を馬鹿にしている。

 

そのいびつさから、ようやく目が覚めた。

 

親衛軍ウォーリアを倒したミラン中佐を見て、必死の勇気を振り絞って、亡命を申請して良かった。

 

どうせ失うものなんて何もない。

 

亡命が受理された後も警戒されていた。それはそうだ。今まで同族がやってきた事を考えれば当然だろう。

 

核を撃ち込まれて、それでも助けてくれるような種族ですら、ここまで態度を硬化させた。

 

全部愚かしい選民思想と、主観で全て決めつける習性が原因だったのだ。

 

ハーネイは涙を流した。

 

なんだか、やっとまともになれたような気がする。

 

ミラン中佐が戻ってきたら、敬礼して、最大限の敬意をもって接しよう。

 

肉体年齢ではおない年くらいなのに、ただ生き残れた自分とは何もかもが違いすぎる。

 

今は、生まれ変わった気持ちだった。







ミランの戦いを見て、ハーネイ少尉の意識が変わったのは、プロパガンダで持ち上げられたとはいえ、相応の手練れだから、ですね。

自分など及びもつかない存在が、それでいながら高潔な戦士である事を。つまり本物の英雄を理解できたからです。

それで変わることが出来ました。

アルカラルドⅠで、はじめて。そういう者が出た瞬間でもありました。


本作にどういった要素がほしいですか。要望があれば遠慮なくどうぞ。

  • 詳細なマシンデザイン
  • 圧倒的な武力による蹂躙
  • 緻密な人間ドラマ
  • 種族や文明の描写
  • 近接した力量のライバルとの死闘
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