王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶 作:dwwyakata@2024
アルカラルド星系の敵宇宙軍を粉砕した事で、戦闘は佳境に入りました。
後は敵地上軍を残すのみ。
この忌まわしい星からさっさと離れられると言うことで、兵士達の士気も上がっていました。
決着をつける時が近づいています。
序、決着をつけるべく
惑星アルカラルドⅠでの戦闘は佳境に入っていた。
アルカラルド星系は既に侵略者が侵入できる状態にない。既に前線は遙か遠くにまで移動しており、多数のワープ阻害装置もあって侵略者はどのようなテクノロジーを用いても此処には来られないのだ。
そしてゲリラ戦を続けていた侵略者の宇宙艦隊がアルカラルド星系から消え失せた今。
孤立した惑星アルカラルドⅠの侵略者は、叩くだけの相手に成り果てていた。
宇宙からの砲撃と同時に、地上部隊が一斉攻撃を続けている。
ガルヴァード准将の部隊が、全面攻撃を実施。
敵は親衛軍ウォーリアを失ったばかり。
しばらく再生する事も無理だ。
全軍が全面攻撃で平押しを続ける。
膨大な物量による圧倒的な力の差。
普段ミランが見ているのとは、真逆の光景だ。惑星アラタでは、いつも敵が多くて、ずっと苦労し続けた。それが惑星アルカラルドⅠでは、侵略者が今物量に押しつぶされている。
侵略者の工場ユニットが次々に陥落していく。
宇宙からの支援攻撃も的確で、侵略者が反撃に兵をまとめようとしても、そこを大規模砲撃で吹き飛ばされてしまう。
ミランは本来この状況であれば出なくても問題ない。
だが、出る。
これなら、ほぼ負けることはないだろうが。
それでも勝率は少しでも上げておきたいのである。
不利な状態の味方を助け。
少しでも損害を減らす。
ミランのウォーリア三型が出ると、味方が歓声を上げる。既に親衛軍殺しの名は、とどろき渡っているようだ。
気恥ずかしいが。
それで味方の士気が上がり。
被害が減るならそれでいい。
とにかく徹底的に敵をたたいて回る。こいつらがもし勝つ事があったら、惑星アラタが脅かされる。
それだけは、絶対にあってはならないことだ。
それは個人的な理由ではあるかも知れない。
だが、そのために侵略者と戦う事は。
決して無駄ではない。
まだ本音では、ファーガの世話をしながら穏やかに暮らしたいというのはある。
発情期を逃してしまったからもう子供も産めないが、それについても未練がないとはいわない。
それでも戦う意思の方が強い。
だからミランは戦えるのだ。
全力で戦い、そして戻る。
相手の数は減り続けており、危ない場面は極めて少ない。それでも、たまにイーターに狙撃されようとしたりする事はある。
油断だけはするな。
そう言い聞かせながら、ミランは戦場を飛び回る。
いくつもの侵略者の工場ユニットが陥落していく中。
特定された親衛軍ウォーリアを生産できる工場ユニットへの攻撃作戦が開始されることとなる。
ガルヴァード准将の直属精鋭に、ミランが乗っている駆逐艦が合流。
整備チームとハーネイ少尉も一緒だ。
敬礼して、まずはミーティングに加わる。
ガルヴァード准将の部下達も、既にミランに一目置いてくれていた。
「それでは、この惑星での戦闘の大詰めに入る」
「おお……!」
「宇宙では大きな損害を出しました。 それに見合う決定的な勝利を得たいものですね!」
「うむ。 そのためには、慢心せず最後まで気を抜かないことが必須だ」
肉を相変わらず食べながら、翻訳装置で皆に言うガルヴァード准将。
ゲラルラの民らしい荒々しさだが。
ガルヴァード准将は理論派というゲラルラの民では珍しい存在だ。
話に聞いたところ、惑星ゲラルラに支援者が来た頃に、すぐに志願して戦列に加わったらしく。
支援者に所属するゲラルラの民としては最古参の一人であるらしい。
元々変わり者の学者としてゲラルラの民では知られていたそうで。
戦士としては価値無しだったが。
代わりに学者として様々な局面で的確な指示を出すため、ゲラルラの社会では一目おかれていたそうだ。
今はアンチエイジングを駆使してまで、最前線に常に身を置いている。
ズヴァールラ提督も、知り合いの一人だった、らしい。
マルラ大佐が言う。
「作戦については、以下のように行います」
まあ、事前の打ち合わせ通りだ。
今行われている全面攻撃自体が陽動。
本命は敵の中枢。
親衛軍ウォーリアを生産できる工場ユニットの制圧。
今回もハッキングで潰せるならそうしたいそうだが。状況を見ながら対応は変えるのだとか。
「既に様々な角度から偵察は済まされていますが、非常に攻めづらい場所に、堅固な要塞として作られています。 位相変換シールドの強度も高い。 シールドの中和をするにも時間が掛かる。 かなりの良質なデータを、アルカラルドⅠの戦闘では得られていて、これ以上人命と天秤に掛けた贅沢は出来ないと上層部も判断しているようです」
「分かった。 それでも、何かしらが得られるかも知れない、だろう」
「はい」
「調査チームと作業チームを編成。 シールド中和してから、基地を制圧する。 内部のデータを可能な限り吸い上げる」
ガルヴァード准将は欲張りなんだな。
そうミランは思った。
だが、此処で焦って戦闘を急いで終わらせて。それで貴重な情報を得られないのも問題だ。
ましてやアルカラルドⅠは、侵略者と関係が深い可能性が極めて高いのである。
アルカラルドの民は侵略者と同祖の可能性がますます高まっているし。
此処で決定的な情報が得られれば、侵略者に対する何かしらの決定的優位を得られるかも知れない。
それを考えると、被害はある程度許容するしかないだろう。
「作戦の細かいスケジュールは任せる」
「はっ!」
「それでは準備と人員、装備の選抜ができ次第声を掛けるように。 それまで私は前線の指揮を続ける」
ガルヴァード准将の言葉で、解散となる。
ミランは駆逐艦に戻ると、ハコトとアネカに声を掛ける。特にアネカは、此処から調査チームに加わって貰う可能性がある。
なんでもパデラクスが性能をガン上げしているらしく、ハッキングなどの技量が高いのもそれが故らしい。
今まで大きな成果を上げている事もある。
今回も役に立てるだろう。
その場合、ミランが守り切るのが必須だが。
マルラ大佐から連絡。
やはりアネカを貸してほしいらしい。
ミランとしても了承する。アネカも乗り気なので、とめる理由がない。守るのは、ミランがやればいいのだ。
ハーネイ少尉が挙手。
「私も連れて行ってください」
「……今回も敵基地に潜入しての時間勝負になります。 マルラ大佐に相談して、ポジションを決めることになります。 マルラ大佐には、私から言っておきます」
「ありがとうございます!」
ハーネイ少尉もやる気だな。
クーリアという友人が無事救助されて。それでこの間、超光速通信で話をしていた。ハーネイは泣きながら無事を喜んでいて。
クーリアに、ミランが色々恥ずかしくなるくらい、大げさな話をしていた。
伝説の英雄でも神でもないので、そんな風に言われても困る。とにかく苦笑いしか出なかった。
クーリアは養殖の天才だという話だったが。
支援ロボットから話を聞く限り、今まで才覚が眠っていただけ。
催眠学習で本来の力が引き出されているそうであり。
手足が伸びきる頃には学者になれる可能性があるそうだ。
ただ、ル・ル達に混じって研究が出来るかというと、それは本人次第。頭脳を発達させるために、生身を捨てて殆ど機械に置き換えたらしい種族とは。流石に渡り合うのは難しいかも知れない。
それらについて聞いて、ハーネイ少尉も再訓練を受けたいと言っていた。
出来ればミランと肩を並べて戦いたいそうだ。
それについてはとめない。
ただ、ミランとしては、ウォーリアなんかよりも戦闘機に乗ってくれた方が支援要員になれるし、才覚も引き出せると思うのだが。
まあ、それはミランが決めることじゃない。
ハーネイ少尉は既に大人だ。
だったら、ハーネイ少尉が決めれば良いことである。
勿論、軍属を退き。
治療を受けた後、子供を産んで育てる道だってある。
それらは、本人が決めることだった。
ハコトには、ウォーリア三型の整備を徹底的に進めて貰う。性能の向上は、やはり難しいそうだ。
極限まで手を入れているが。
ミランの力に機体が追いついてきていないし。何よりも、現状許されるコストで、これ以上の強化は厳しいらしい。
ミランとしては、手札でどうにかするだけだ。
ミラン自身は、アネカが入れてくれたドリンクを口にして待つ。このファーガの栄養液を分析して作られたドリンクは、飲んでいてほっとする。
しばしして、声が掛かる。
マルラ大佐からだ。
「作戦が決まった。 ミラン中佐、突破部隊に加わってくれ」
「はい」
作戦はこうだ。
崖の中に配置され、非常に攻めづらい地形にいる工場ユニットは、正面に強力な火砲を多数配置している。
このため、調査チームが接近するのも。ついでに戦闘部隊が片手間に正面から位相変換シールドを破るのは非常に難しい、と言える。
其処で今回は、正面からの攻略は狙わない。
「第一段階で、崖上を制圧。 そこから曲射砲で、ビーコンを撃ち込みます。 第二段階で、ビーコンに対して、宇宙からの精密射撃で敵の位相変換シールドを食い破ります。 第三段階で、ミラン中佐達ウォーリア部隊が、火砲を沈黙させます。 その後、調査チームが突入。 ミラン中佐達と合流して、内部の自爆装置を黙らせ、動力を停止させます」
なるほど、良い作戦案だ。
そしてその狙いに敵が気付いても対応できないように、ガルヴァード准将の駆逐艦隊が、正面から敵工場ユニットへ猛攻を加え、敵の雑兵を削り続ける。
駆逐艦隊を囮にする大胆な作戦である。
既にガルヴァード准将からも許可は下りているそうだ。
ハーネイ少尉には、正面で敵と殴り合う地上部隊で、重戦車に搭乗して貰うそうである。
砲撃手としての力量がこの間の小惑星拠点での戦闘で認められたこともある。
位相変換シールドを装備している陸上移動要塞である重戦車の砲撃手としては申し分ない……そういう評価であり。
今までの戦闘で、造反の可能性もない。
そういう結論に至ったそうだ。
信頼されたと言うことである。
アルカラルドの民の凶行の数々を見て、まだ信用してくれている。それはとても大きな事だ。
ハーネイ少尉も気合いを入れている。
それが表情から見て取ることが出来た。
既に目標の工場ユニットは指呼の距離だ。
駆逐艦隊八隻は、強引に敵の防衛線を突破。敵は当然包囲しようとしてきているが、他の戦線での猛攻もあって、ろくな援軍も出せずにいる。
それでも、敵の本陣に強引に乗り込んだこともまた事実である。
油断はしてはいけなかった。
まずは戦闘機隊とドローンが出る。敵も必死に戦力をかき集めてきているが、特務が本来出るまでもない。
正面から力押しで勝てる戦力だ。
今回ミランが出るのは、DBの回収など。
さらなる情報収集が出来る可能性が高いため。
それに、可能性は低いが。
武士がまた出るかも知れない。恐らく出ないだろうとミランは判断しているが、それでも。
親衛軍ウォーリアの被害を減らすために。
でなければならなかった。
空軍が制空権を抑える。
同時にウォーリア隊、戦車隊、ともに出る。ウォーリア隊は敵の正面火力をかいくぐりながら、崖上に躍り上がり。
其処にわんさか群れているワーカーの排除に入る。
曲射砲を装備しているウォーリアを守る。
それが役割の一つだ。
ワーカーが次々飛びかかってくるが、制空権も無い状態だ。それに足場も悪い。
片っ端から斬り伏せる。味方ウォーリアがやられそうになっていたら、即座に救援する。エネルギーの残量を気にしながら、立ち回る。
空軍が連続して強襲を仕掛け、面倒な動きをしているワーカーを仕留めていく。イーターは既に、全てが残骸を曝していた。
攻撃機隊が来る。
対地レールキャノンが咆哮して、ワーカーをまとめてゴミ屑のように引き裂いていく。崖上の制圧は順調だ。
正面部隊は。
「!」
どうやら予想以上に火砲の火力が高いらしい。
駆逐艦が直撃弾を受けて、火災を起こしている。位相変換シールドを破るほどの火力と言うことだ。
まずいな。
ワーカーの駆逐を急ぐ。
正面に展開している部隊も奮戦しているが、急がないと無駄に被害が増える。
被弾した駆逐艦は下がり、ガルヴァード准将の艦が前に出る。この辺りは、流石は勇敢なるゲラルラの民だなと思う。
学者だったとしても、である。
短いが、激しい火力の応酬が終わったところで、曲射砲の準備完了。
ドンと、鈍い音とともにビーコンが射出された。
ほとんど間をおかず、宇宙から猛烈な砲撃が降り注ぐ。
その対応を、侵略者は出来ず。
硬X線ビーム砲……恐らく戦艦主砲だろう。それをまともに食らった工場ユニットの位相変換シールドは、砕け散った。
突入。
ミランが声を掛けて、ウォーリア隊が続く。
対空砲が火を噴いているが、其処に攻撃機が果敢に向かって、火力投射の気を引く。
ミランは長槍を振るうと、正面に猛射している火砲を貫き、黙らせる。続けて、連続して火砲を斬り伏せる。
ウォーリア隊が持ち込んでいる大型砲が、ミランがダメージを与えた火砲にとどめを刺していく。
ミランの長槍だけでは、大規模火砲を黙らせるのは無理だ。
そして狭い地形上、攻撃機も中に火力を届かせることが出来ない。
DB等の回収を狙うのでなければ、谷ごと宇宙からの砲撃で消し飛ばしてしまえばいいだけのことなのだが。
今回は情報が狙いだ。
それで敵の弱点などを知ることが出来たら、更に戦況有利に弾みをつけることが出来る可能性が出てくる。
1000億を軽く超える星系を抑えている侵略者だ。
どれだけ理想的な勝利を続けても、100期や200期でその脅威を天の川銀河から追い払うのは無理だろう。
ならば、その時間を少しでも縮める。
そうすれば、こいつらに食い荒らされる者は、それだけ減るのだ。
「火砲制圧!」
「調査チーム、工作チーム、突入!」
「オラオラどけやワーカーども! 学者サンたちのお通りだぜぇ!」
戦車隊が荒々しく吠えて、ワーカーの残党に容赦の無い攻撃をたたき込む。ミランはそれを基地の周辺にいる敵兵器を始末しながら支援する。
ほどなくして、調査チームと工作チームが動き出す。どちらも戦闘力が無い車両と、小型の飛行機に乗っている。
急がないと工場に自爆される。
「先行します。 残りの雑魚の始末は頼みます」
「お任せを!」
「第二、第四、第五小隊はミラン中佐に続け! 内部のカスどもを始末するぞ!」
そう言われると、先陣を務めないと行けないか。
ミランは真っ先に工場に突入する。内部からまだワーカーが出てくるが、もうイーターは繰り出す余力がないようだ。
入ってみると、やはり全裸のままの侵略者が進んでくる。
全てが自走爆弾だが、動きが非常に鈍い。急造して調整も済んでいないから、なのだろう。
悪いが、そのまま倒れて貰う。
パルスレーザーでなぎ払い、奥へ。迎撃用の火砲もあるが、全て先に潰して行く。トラップは多少はあるが、あくまで多少だ。
隔壁が降りてこようとしているが、先に突っ込んだ重機が、力尽くでねじ開ける。故障した隔壁を通って奥へ。
見えた。
メインコンソールだ。かなりの数のワーカーがいるが、片っ端から叩き潰して回る。ワーカーも殆どが未完成品だ。主力は全て出し尽くしていたのだろう。
ただ、工場の地下部分がかなり広くなっている。
やはり他の工場ユニットよりも大きい。
そして設備も特別なようだ。
コンソールに調査チームが張り付いて、操作開始。
既に触ったことがあるから、非常に無力化は早い。ただし、此処でも地下にある別のコンソールを動かした方が良いようだ。
アネカが飛び乗った飛行機を護衛して、地下へ急ぐ。
周囲から出てくるのは、装甲も未完成なワーカーばかりだ。皆蹴散らして、近寄らせない。
地下。
見つけた。あれが第二コンソールだ。構造は大きいが、通常の工場ユニットと同じと言う訳だ。
そして、気付く。
組み立て途中の親衛軍ウォーリア。あれは恐らく大剣だ。
組み立て途中の機体を鹵獲できればかなり大きい。
今回は戦力に余裕がある。他のウォーリアも護衛についてくれているので、周囲をしっかり固める。
「自爆シークエンス停止! 作業リンク!」
「停止!」
アネカがタンとコンソールのキーを押すと、工場全体が停止。予備電源も立ち上がってこない。
嘆息。
とりあえず、これでこの星での戦いの決着はついたか。
ふらふらと、全裸の侵略者が、親衛軍ウォーリアに歩いている。ミランは無言で、その前に。
槍を地面に突き刺すと。一般侵略者個体より遙かに筋肉質の体に童顔の顔を乗せているそいつは、恨めしげに睨んできた。
「お、俺の機体、だぞ、ちく……しょう」
爆発。
恐らくだが、侵略者の指導者とのリンクが切れたのだ。
親衛軍だろうと、ナノマシンが体に入っているとこうなる。哀れな末路だなとミランは思ったが。
大剣の残虐性を思い返して、嘆息したのだった。
※親衛軍の実態
今回描写しましたが、みんなこんな感じです。
作られた超越的な能力に、指導者好みの容姿を付け加えた結果。肥大化した筋肉だらけの肉体に、指導者好みの顔が乗っているという異形と成り果てています。
最も指導者の癇癪を受ける立場と言うこともあり、彼らも不幸な存在ではあるのです。
本作にどういった要素がほしいですか。要望があれば遠慮なくどうぞ。
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詳細なマシンデザイン
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圧倒的な武力による蹂躙
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緻密な人間ドラマ
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種族や文明の描写
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近接した力量のライバルとの死闘