王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶   作:dwwyakata@2024

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アポカラプスの民の態度は、アルカラルドの民と真逆でありながら、ある意味全く同じです。

業を煮やす皆の中で、唯一全うに反応できた者がいました。

ハーネイ准尉です。





3、罪の末裔

やはりというかなんというか。

 

様々な書物のコピーを取らせてほしいと言うと、ガイマー長老の恐怖は頂点に達したようだった。

 

どうかそれだけはお許しをと、地面に土下座までする。

 

ハコトが困惑する中、アネカが穏やかならぬ顔で立ち上がったので。ミランが流石に見かねてウォーリア四型から声を掛けた。

 

「アネカ」

 

「ミラン大佐! でも、ハコトがこんなに説明しても、このおじいさん話まったくきかへん! こんな分からず屋、ちょっと言ってやらな気が済まへん!」

 

「気持ちは分かるが、抑えてほしい」

 

ちなみにミランはというと、巨大な体躯の四足獣と向き合っていた。重心が低く、見かけよりもずっと大きな生物だ。

 

こちらには敵意を向けてきていない。

 

「とにかく、丁寧に話をしてください」

 

「分かったわ。 ほら、長老さん、立ちいや。 うちのハコトがずっと困っとる。 その方が、みんな怒るで」

 

「と、とにかく、書物についてはお許しを……!」

 

「それについても理由をお聞かせください」

 

いい加減ハコトも頭に来始めているらしい。

 

アルカラルドの民とは別の意味で厄介な民族だ。平身低頭に見せて、結局こっちの話なんて微塵も聞いていない。

 

ため息をつくと、ミランはこちらに来るなと、四足獣に促す。

 

意思は伝わるようだが。

 

しかし、妙な音波が帰ってきた。

 

翻訳装置が反応している。

 

「あれら、に、われら、は、つれて、こられた」

 

「!」

 

しゃべれるのか。

 

サリューラースが、興味を持ったようだ。

 

会話を続けるように言われる。

 

原始的な言語だ。

 

翻訳装置が、即座に解読に成功していた。

 

「彼らに恨みが」

 

「ある。 われらは、穏やかな土地で、それぞれの生き方を静かにしていた。 それをあれらは、食料として皆殺しにした。 我らはそのわずかな生き残りで、土地から連れてこられたのだ」

 

「別の星の出身者なのですか」

 

「そうだ」

 

なんと。

 

即座にデータを照合して貰う。

 

該当データ無し。

 

コロニー船は、或いは前にも更に別の星にも寄っていたのか。

 

それともだ。

 

或いは、侵略者とアポカラプスの民やアルカラルドの民が同祖だとすると、この種族は三者の祖がいた星の出身者か。

 

ともかく、分かるだけの話をする。

 

彼らは個体名を持つほど知能は高くないが、口伝で言い伝えているという。

 

アポカラプスの民は此処に彼らを連れてきた。

 

そしてこの土地に無理矢理適応させた。

 

その過程で多くが死んだし、争いにもなった。

 

そしてアポカラプスの民は分裂したと。

 

「其処までは我々も想像がついています」

 

「我々は、やつらの船が飛んでいくのを見た。 残った奴らは、なぜか怯えきっていて、それで増えることも止めた。 ずっと同じ数を維持して、あの壁の内側に閉じこもっている。 我らが復讐して殺そうが知った顔ではない」

 

「何か心当たりはありませんか」

 

「分からない」

 

まあ、それほど高度な知能は無いようだ。

 

だが、それでもこれだけ覚えてくれていれば充分である。

 

「故郷に戻りたいですか」

 

「もう故郷には何もない」

 

「……」

 

そうか。むごい話だ。

 

ひょっとしたら。

 

そういった所業を長老は知っているのではないか。やはりサリューラースの言葉は正しい可能性が高い。

 

ともかく、今は話を進めているので、戦いはしたくないというと。

 

大型の四足獣は、分かったと言った。

 

それほど好戦的な種族ではないようだ。

 

するすると地面を這って去って行く。

 

見ると卵を抱えているようである。だとすれば、余計に気性が荒くなるのも道理なのかも知れない。

 

「あの種族も知的生命体では」

 

「調査対象にします。 追加で調査チームを呼びます。 此処の手数だと足りませんから」

 

「……」

 

この星、調査が進んでいなかっただけで、伏魔殿なのではないか。

 

ミランはそう思う。

 

下手をすると、侵略者に襲われて更地にされていた可能性もある。そう考えると、色々とギリギリだったのかも知れない。

 

ともかく戻る。

 

ガイマー長老は、相変わらず卑屈に見えて、勝手なことばかりほざいている。ハーネイ准尉がまた休憩を入れようと提案。

 

休憩を入れると、ガイマー長老は疲れ切った様子で、恨めしそうにこちらを見ていた。

 

マルラ大佐と話をする。

 

「他のアポカラプスの民を連れてきて、話をしてみるのはどうでしょうか」

 

「これ以上に成果があるとは思えない。 いっそ、都市国家にある情報集積媒体を根こそぎスキャンしてコピーし、持ち帰って解析するのも良いかもしれないが」

 

「支援者法に抵触しませんか」

 

「する。 だから、議会の承認がいる」

 

レポートを書いて、提出してくれるそうだ。

 

それは任せる。

 

ミランは少し周囲を警戒して回り、先の四足獣と同種の者と何回か遭遇した。

 

彼らは既に話が行き渡っているのか、ミランに対して敵対的ではなかった。話もしてくれるが。

 

この川の魚はおいしいとか。

 

アポカラプスの民はまずいとか。

 

そんな内容ばかりだった。

 

言葉を有していても、まだ文明を作るには至らない種族だ。体の構造的にも、道具を作るのは難しいだろう。

 

ウォーリア四型を飛ばしてみて、星を回る。

 

この種族の同種はかなり広がっているようで、あちこちで姿を見ることが出来た。

 

会話をしてみると、殆どの四足種族はアポカラプスの民と関わらないことを喜んでいて。一部の者が、アポカラプスの民を監視するために残っているという。

 

ただでさえ川を汚すろくでもない連中だと、一部の者達は毛嫌いしていた。

 

別の大陸にまで四足獣はいて。

 

同じ言葉が通じた。

 

別の大陸の四足獣達は、ごく性格が穏やかだ。本来は草食らしく、肉を積極的に食べることもないという。

 

アポカラプスの民については、駆除していると言う。

 

とにかく間引かないと、この地も危ない。

 

あの城壁がなければ、皆殺しにしてやるのにと、四足獣は残念がっていた。

 

これは、アポカラプスの民にこの星での居場所はない。

 

ミランとしても、そう結論するほか無かった。

 

これではそれこそ、下手に四足獣達と接触しようとした瞬間に殺されるだろう。それだけ恨みを買っていることになる。

 

他に会話が出来る在来生物はいない。

 

だとすると。

 

いずれこの星で文明を担うのは、この四足獣になるのかも知れなかった。

 

サリューラースから連絡。

 

「追加の調査チームが来ます。 こちらはこの星に拠点を作り、しばらくは調査のために逗留します。 文明を与えたりはしませんが、貴重な知的生命体です。 絶滅などしないように、データが必要です」

 

「了解。 戻ります。 ガイマー長老は何か言いましたか」

 

「やはり拒否をずっと続けていますね」

 

「この星に、アポカラプスの民の居場所はありませんよ」

 

ずばりミランが言うと。

 

サリューラースも、それに同意していた。

 

「今遺伝子データを調べましたが、近親交配が続いて弱体化が極めて深刻になっているようです」

 

「あの数で閉じこもっていれば当然だと思いますが」

 

「はい。 その上同じ数でずっと暮らしている。 何らかの形で、この星から彼らは離れるべきかも知れないです」

 

だがそれには法的な問題が多いという。

 

今、マルラ大佐のレポートが議会に届いて、諸々調整をしてくれているそうだが。

 

それにしても本当に厄介だ。

 

戦闘するよりも疲れるのは、ミランとしても初めてである。

 

アルカラルドの民は本当に酷かったが。

 

方向性が違うだけで、アポカラプスの民も大して変わらない。

 

同祖なのは確定しているが。

 

それにしても、どうしてこうも性格が真逆に別れたのか。

 

とりあえず、フリゲートに戻る。

 

ガイマー長老が恐怖でまた取り乱している。鎮静剤でも入れた方が良いのではないかと、醜態を見ながらミランは思った。

 

アネカはとっくに堪忍袋の緒を切っていて。

 

席を蹴って、怒鳴りかねない有様だ。

 

ハーネイ准尉がとめているくらいである。

 

いつも温厚なアネカが、ここまで激昂するのは珍しいことだった。

 

「アネカ、一度戻ってください。 貴方はガイマー長老と相性が最悪に思えますので」

 

「ミラン大佐……分かりました。 ハコト、いつでもおねいちゃんを呼びいな」

 

「うん、ありがとう」

 

ハコトも疲れ果てている様子だ。

 

それに対して、意外とハーネイ准尉は平気そうである。

 

「ハーネイ准尉は怒りが湧かないのですか」

 

「いや、故国の高官や上層民と比べたら、ずっとマシですから」

 

「……それもまた不愉快な話ですね」

 

「いっそ、私に任せてもらえますか」

 

それも手か。

 

少しマルラ大佐と相談した後、対応を任せる。

 

許可が出た。

 

マルラ大佐も、これでは埒があかないと思っていたのだろう。まあ、妥当な判断だとミランも思う。

 

ハーネイ准尉が、怯えきっている老人と話す。

 

「ハコトさんが何度も言ったとおり、危害を加えるつもりはありません」

 

「し、しかし……」

 

「私はこの星からさった民の子孫です」

 

「!」

 

老人が目を見開いていた。

 

それで今まで以上に恐怖したようだが。ハーネイ准尉は、冷静に話を続ける。

 

「この星を去った後、その民達はアルカラルドⅠという惑星に降り立ちました。 其処で100を超える国家に分裂して争い始めました。 散々殺し合って星を荒らした挙げ句、侵略者に襲われました。 文字通り蹂躙だったようです」

 

「ひ、ひっ……」

 

「それから支援者が来てくれましたが、私のいた国も、他の国も、自分の基準で美しくないだとか、「多様性に合致していない」だとか言って、ずっと唾を吐き続けました。 挙げ句に核攻撃までしました。 通用しませんでしたが」

 

「……」

 

ガイマー長老は、これは明らかに知っているな。

 

ハーネイ准尉は、知った上で色々と観察していたのだ。

 

運良く生き延びただけの凡人。

 

ハーネイ准尉はそう自称していた。

 

だが、本当にそうか。

 

勿論運はあっただろう。だが、機転や観察力、対応力。それらが備わっていたから、運が味方してくれたのではないのか。

 

今、話をしているのを見て、ミランはそう思う。

 

「この星に、一度コロニー船が着地して、劣化したコロニー船で出て行って。 そしてアルカラルドⅠに到着したのは知っています。 この星で何があったんですか。 話してください。 私はあの腐りきった故郷を捨てました。 支援者は亡命を受け入れてくれました! それどころか、ずっと酷い扱いを受けていた私の友達まで助けてくれました! 支援者は、私たちみたいな血に飢えたけだものの種族とは違う! 少なくとも今の支援者はそうです! 私たちの、それと同じ貴方の薄汚い基準で、支援者を測るのをやめてください!」

 

凄まじい怒りを、ハーネイ准尉がぶつけて。

 

むしろ側で、ハコトが驚いていた。

 

ガイマー長老は、うつむいて、ずっとぶつぶつつぶやいていたが。

 

やがて肩を落としていた。

 

「分かりました。 話しましょう。 資料も持っていってください。 このままでは、いずれ朽ちさせてしまうだけですから」

 

「……」

 

どうやら、この方が効果があったらしい。

 

ともかくとして、マルラ大佐が即座に連絡を入れる。

 

後は、議会の承認を受けるだけだ。

 

それに、である。

 

「マルラ大佐。 この星から、アポカラプスの民は移動させるべきです」

 

「それについては私も理解している。 まずは順番にやるべきだろうな。 確かに私も、この星に彼らの居場所はないと判断している」

 

順番に話し始めるガイマー長老。

 

全ては分からないが、という。

 

「我々は聖地という星から来たのです」

 

「聖地……」

 

「聖なる力の庇護者と名乗っていました。 それは、我々こそが聖地の正当な支配者だという自負があったからです」

 

「……アルカラルドの民と同じですね」

 

聞いていたサリューラースが言う。

 

同祖なのは確定していたが、このようなところでその単語が出てくるとは。それも、聖なる力の庇護者の意味も、そういうことだったのか。

 

アルカラルドⅠで収拾した資料には、そういった情報は無かったらしい。

 

今AIとパデラクスが総出で調査しているようだが。

 

それでも、殆どは「如何に国家元首が優れているか」の情報ばかりで、問題外であるらしい。

 

こちらの方が、遙かに意味がある情報だ。

 

「我らの先祖が脱出した頃、既に聖地は荒れ果てていました。 元々聖地は宇宙に出る程度の技術しかないのに、皆で資源を奪い合って、殺し合いをずっと続けていました。 それで星が荒れ果てて、人が減り続けて。 それでも自分達は宇宙で一番えらくて、宇宙は全て自分達のもので、自分達の可能性は無限大だと考えていたようです」

 

「アルカラルドの民とよく似ていますね……」

 

「はい。 そして、我々は古くは議会で政府を回していました。 其処で途轍もない怪物を、上に戴いてしまったのです」

 

「怪物とは」

 

ハーネイ准尉が聞くが。

 

ガイマー長老は分からないと言う。

 

これについては、殆ど口伝が残されていないそうだった。

 

選挙と議会で、圧倒的な支持を集めたその怪物は、あらゆる全てが圧倒的だった。崩壊していた聖地をまとめ上げ、技術力を跳ね上げ、そして。

 

宇宙への進出を本格的に成功させた。

 

その存在は政治家であり科学者であり、そして邪悪な独裁者でもあった。

 

具体的に何が行われたのかは、ガイマー長老も分からないそうだが。

 

気付くとどうにもならない状態になっていたそうだ。

 

そこで、まだ未熟なコロニー船を奪って、一部の者達が聖地を逃げ出した。

 

あれは怪物だ。

 

自分達こそが聖なる力の庇護者なんだ。

 

そういう自負が脱出した者達にはあったのだろうとガイマー長老は言う。

 

だが。

 

それすらも、邪悪な怪物の手のひらの上だったそうである。

 

「我々は実験台にされたのです。 ワープ航法を試すための。 我々が成功しても失敗しても、邪悪な何者かにはどうでも良かった。 危険度が大きいコロニー船のワープ航法の試験として、丁度良い実験台として活用されただけだったのです」

 

「続けてください」

 

ガイマー長老は言う。

 

その後、コロニー船は何度も苦難を味わいながら、逃げ続けた。

 

そして、船がボロボロになるほど逃げていくうちに。

 

コロニー船の内部から、理想は失われていった。

 

我々こそが選ばれたものだ。

 

そう考える存在が、独裁を敷き始めたのである。

 

それどころか、そのもの達は、優れた存在が劣った存在を支配するべきだと言い出した。戦争がコロニー船の内部で始まった。

 

そんな中、聖地に似た惑星が見つかった。

 

ずっと旅をし続けた果てだった。

 

それが、この星だったのだ。

 

「コロニー船が不時着した時、既に勝負はついていました。 傲慢に驕り高ぶった自称「優れた者達」は、他の全てを奴隷にして、強権で支配を進めていました。 その姿は、まるで聖地を支配した邪悪の、小さなコピーのようでした」

 

「それでこの星では何が」

 

「彼らはこの星の資源をあさり、そして「いらない」ものを捨てました。 品種改良に失敗した生物、それに我々。 更には、「優れている」彼らがいらないと判断したもの全て。 聖地から文化を残すためにと持ち出した書物、様々な文化。 政治制度の知恵、信仰なども。 彼らだけをあがめ奉る存在だけが必要で、彼らを疑問視させる全てが無駄だったからです。 殺し尽くさなかったのは、コロニー船が限界で、積載が難しかったこと。 これ以上破壊を続けると、コロニー船が持たなかったから、でしょうね」

 

それで取り残されたそうだ。

 

コロニー船は、無理矢理に修復されたが。

 

長い旅の間に技術は劣化を続けていて、出発時の状態を再現などとても出来なかったそうである。

 

それもあって、惑星アルカラルドⅠに更に不時着した時には、ボロボロになっていたというわけか。

 

ミランは呆れた。

 

どこまで愚かしい種族なんだか。

 

聖地というのがどういう場所か知らないが、そっちもどうせろくでもないだろう。

 

その後にも問題があった。

 

とっくに「怪物」は追いついてきていたのである。

 

「我々も天文観察はしています。 わずかな残った超光速観測装置で、恐ろしい宇宙戦争が行われているのは観察していました。 そして恐らくですが、怪物か、その子孫かは分かりませんが、それが銀河系を荒らし回っているのも理解したのです」

 

「つまり、その被害者にも、怪物にも、恨まれることを自覚していたからあれほど卑屈であったと」

 

「本当に申し訳がありません。 それに……我々はあの怪物と同じになってはいけないと決めて聖地を脱出したのに、結局あの怪物と同じ精神性を持つに至ってしまった……! それが、ただただ恥ずかしかったのです……!」

 

ガイマー長老が、全てを吐き出した。

 

ミランはもう何も言えない。

 

こいつらも放っておくべきなのではと内心でちょっと思ったが。

 

それもよろしくはないだろう。

 

サリューラースが、大興奮していた。

 

「素晴らしい。 後は資料を回収したら、解析に回しましょう。 その聖地というのは、十中八九侵略者の母星です」

 

「それは同意しますが、結局貴方もパデラクスの同類ですか」

 

「い、いえ……すみません。 ただ知的好奇心を満たされると、どうしても興奮してしまって」

 

ミランが窘めると、サリューラースは素直に謝る。

 

この辺りはパデラクスよりマシなのかも知れない。

 

ハーネイ准尉が、マルラ大佐にフリゲートから出てきてほしいと頼む。

 

少し悩んだ末に、マルラ大佐が姿を見せると、ガイマー長老は腰を抜かしそうになった。そういえば、ハーネイ准尉も最初はそうだったな。

 

ハーネイ准尉は、お願いしますと頼んで、マルラ大佐に乗せて貰う。

 

そして、マルラ大佐がいつも苦労しているスコープを調整していた。

 

「ありがとうハーネイ准尉。 こればかりはいつもどうしてもずれてしまってな」

 

「いえ。 最初は失礼な反応をしてしまってすみませんでした」

 

「構わないさ」

 

マルラ大佐から降りると、ハーネイ准尉は言う。

 

皆、姿も考え方も違うと。

 

それでもうまくやれていると。

 

「私たちは、同種でさえうまくやるどころか、馬鹿馬鹿しい戦争を延々と続けてきました。 肌の色だの目の色だので相手を差別して、身内でしか通じない作法だのを作って他を見下して、既得権益を作り上げてその利益を吸い上げて、自分より上か下かだけで他者を判断してきました。 そのつけが、宇宙まで来た今、来ているのではないですか」

 

「……そ、そうかも知れません」

 

「私の上官であるミラン大佐も私とは姿はあまり似ていません。 それでも掛け値無しに尊敬できる武人です。 我々がバカにし続けた武人です! それをきちんとやり遂げている凄い人です……!」

 

自分がそうだったから。なのかも知れない。

 

ハーネイ准尉は、ガイマー長老に、言い聞かせるようだった。

 

「後の細かい資料は、こちらで解析します。 この星で、どうして身を潜めて生きていたのかだけ教えてください」

 

「そ、それは。 あの怪物にも、怪物と戦う者にも、見つかりたくなかったから」

 

「とっくに見つかっていましたよ」

 

「……そうですよね。 我らが如何にささやかに暮らしても……そうなりますよね」

 

嘆息するガイマー長老。

 

ミランは呆れた。

 

いずれにしても、これは駄目だ。アポカラプスの民も、枷が外れればこの星を滅茶苦茶に荒し尽くすだろう。

 

調査班は、この星に持ち込まれた生物を調査。

 

問題がないようだったら残し。問題があるようなら、保護区に連れて行く。細菌やウィルスでもそうする。それが出来るテクノロジーがあるからだ。

 

アポカラプスの民は、議会の承認が出次第、保護区に移って貰う事になる。

 

そしてアルカラルドの民と同じく、再教育から開始だろう。

 

この者達に。

 

知的生命体を名乗る資格はないのではないかと、ミランは思った。

 

怒りすら感じる。

 

まだ動物の自覚を持ってくらしている四足獣達の方が、余程知的生命体のようにさえ思える。

 

少なくとも侵略者ほど酷くはないにしても、同じ穴の存在だ。

 

そうとしか、言えなかった。

 

 

 

それから、輸送船が来る。

 

都市国家から、データのコピーを取る。更には、地下に封じられていた遺物を、回収し始めていた。

 

怯えきったアポカラプスの民は、家に閉じこもって何も言わない。

 

ロボットが主に作業に当たるが。

 

本来好奇心に体が突き動かされるだろう子供達ですら、恐怖した様子で近寄ろうとはしない。

 

過去に余程おぞましい争いをしたのだ。

 

アルカラルドⅠの国家群を見ると、何があったのかはだいたい想像もつく。

 

ロボットが丁寧に遺物を回収する横から、サリューラースが解析して、大喜びしていた。

 

「ミラン大佐、これは面白い! 元々彼らは数百にも達する言語を使っていたようです!」

 

「翻訳装置もなしでですか」

 

「ええ! 殆どは記録としてだけ残されています。 それだけ「聖地」とやらに国家が本来は多数あったのでしょうね。 資料を見る限り、恐らくは核戦争で一気に衰退して、最終的に一つだけの国家に統合されたようですが」

 

その国家に。

 

アポカラプスの民がいう所の怪物が出現したわけだ。

 

議会制で怪物がトップになったという話だから、つまり選挙で選ばれた国家元首がそうだったのか。

 

それが科学者としても異次元レベルで優れていて。

 

侵略者を宇宙に挙げた。

 

そして侵略者から、生物としての尊厳も全て奪い去ったのだろうか。ちょっとそれについては。なんとも分からない。

 

キャッキャと喜んでいるサリューラースはともかく。

 

様子を見ている四足獣達と、話をしておく。

 

「アポカラプスの民は、近々この星からいなくなります」

 

「おおっ!」

 

「嬉しい! 嬉しい!」

 

四足獣達は皆例外なく喜んでいる。

 

それはそうだろう。

 

調べてみたが、やはり元々彼らは「聖地」の生物であり。コロニー船で移動中に、食用に改良されたのが失敗した種族だったそうだ。

 

高い知能を持った事を良いことに、コンピュータの補助に脳を使われていたらしく。そのほかにも様々な非道を働かれたという。

 

「奴らが我々を追い払った時、「使えないからいらない」としきりに言っていた」

 

「それは怪物が奴らを指して言っていた言葉だったと言うことだった」

 

「奴らは怪物になりたかったのだろうか」

 

「それはわかりません。 ただ、怪物のような強さがほしかったんでしょうね。 何しろ身勝手に振る舞えるのですから」

 

あの侵略者の指導者が、その怪物なのかはまだ分からないが。

 

似ている、とミランは思うのだ。

 

「貴方方もこの星から去ることが出来ます。 理想的な環境を用意できますよ」

 

「いや、我々はこの星で暮らしたい。 この星とうまくやっていきたいのだ」

 

「……分かりました。 その意思は伝えます」

 

「大きな友よ。 私が貴方を語り継ごう。 この星から、災厄を追い払った存在として」

 

そうか。それはありがたい事だ。

 

色々複雑だが、好意を受けたので。

 

翻訳装置に沿って、相手のやり方で好意を返す。

 

彼らはまだ己の個体名どころか、種族名すら持っていない原始的な知的生命体だ。彼らが傲慢な化け物に育たないことを祈るばかり。

 

それも調査班が、これからどう接するか、次第だろう。

 

干渉は最小限にして、見守る。

 

それが必要なはずだ。

 

輸送船が飛び立つ。何度か往復して、遺物をあらかた回収するらしい。

 

修復が必要な遺物も多いのだ。

 

一つ、連絡を受ける。

 

マルラ大佐が説明してくれる。

 

「ミラン大佐、君にとっては恐らく良い知らせだ」

 

「何でしょう」

 

「あの武士という親衛軍のデータが見つかった。 現在ロボットに意識を移して話しているようだが、極めて好意的だそうだ。 君と肩を並べて戦えるなら、これ以上嬉しい事はないとも言っていた」

 

「それは光栄ですね」

 

心からの本心だ。

 

あの親衛軍NO3_009116はとにかく危険な奴だと話していて感じていたが、武士は掛け値無しに気持ちのいい相手だった。

 

もし肩を並べて戦えるのであれば、これ以上もない話だろう。

 

「そしてすまないが、すぐに次の任務だ」

 

「はい、それは特務ですので、どこになりと」

 

「……現在、侵略者に対する大攻勢は一度戦線を固定した。 一旦前線を決めて、後方の星系を後続部隊が攻略している状態だ。 遅滞戦術に切り替えてきた侵略者を、それで各個撃破する。 その攻略している星系の一つに、想定外の規模の侵略者が潜んでいて、ゲリラ戦で被害が出ている。 君は其処での戦闘に参加してほしい」

 

一連の攻勢が落ち着くと、侵略者の勢力を5%以上削ぐことが出来るそうだが。

 

最終的に80億ほどの星系を奪還できるらしい。

 

それでも5%だから、銀河系が如何に凄まじい規模なのかよく分かる。

 

マルラ大佐が、声を落とす。

 

「実はわざわざ君を派遣するのは、この星系に正体不明の新兵器が投入されている可能性があるからだ」

 

「正体不明の新兵器、ですか」

 

「ああ。 既存の兵器とは何もかもが違っていて、侵略者の兵器とはどれとも似ても似つかないそうだ。 今の段階では被害を出す、で済んでいるが。 もしも量産されるとまずいかも知れない、という話が出ている」

 

アンドロメダ銀河に、侵略者が先遣隊を派遣し。

 

情報を持ち帰っている。

 

その話はミランも聞いた。

 

アンドロメダは別の勢力が支配しているらしく、天の川銀河には興味を見せていないそうだが。

 

嫌な予感がする。

 

そしてミランの嫌な予感は当たるのだ。

 

「分かりました。 後始末が終わり次第、すぐに向かいます」

 

「頼むぞ。 現状君は最高位の特務の一人だ。 部下を連れて戦闘することはなくとも、君一人で一部隊に匹敵する安心感がある。 そのウォーリア四型とともに、必ずや戦果を挙げられると信じている」

 

マルラ大佐も、色々任せてくれて、それでありがたかったな。

 

敬礼を返すと、迎えに来た輸送船に乗る。

 

以降はハーネイ准尉が加わって、すこし所帯が賑やかになるか。

 

そういえば、だ。

 

肌の色云々がまだ分かっていなかったか。

 

それについては、ハーネイ准尉が、ガイマー長老に聞いていたが。ガイマー長老も分かっていないらしい。

 

ただ聖地を出る時にはそうだった、という話だが。

 

それは、聖地とやらを出る時には、既に何らかの改造をされていたと言うことなのだろうか。

 

侵略者の一般個体は、性別すら奪われている。

 

アポカラプスの民やアルカラルドの民がコロニー船で逃げることすら「怪物」の計画だったのだとしたら。

 

或いはだが、体の構造を変化させ、肌の色を強制的に変更する程度の事も、実験としてやったのかも知れない。

 

肌の色なんてミランからすればはっきり言ってどうでもいいことだが。

 

親衛軍NO3_009116やハーネイ准尉の言葉を聞いても、緑色の掛かった肌はあまり魅力的には見えないらしいから。

 

侵略者からしてみれば、最大の屈辱を与えたつもりだったのかも知れない。

 

つくづく馬鹿馬鹿しい話だが。

 

移動用の高速機動戦艦が来た。

 

第三艦隊のものかなと思ったが、違うらしい。特務大佐のバックアップ用の母艦として、用意されたものだそうだ。

 

名前はガルバーリアム。

 

語源は分からない。

 

ともかく、これが今後はミランの支援艦として活動してくれるらしい。艦長は少佐である。

 

この艦にはウォーリア隊一部隊16機、戦闘機隊16機、攻撃機隊16機と、無人ドローン多数が支援部隊として乗っている。

 

ミランは作戦行動中、彼らの支援を受けながら戦う事になり。

 

彼らの指揮は、それぞれ大尉が執る。

 

かなりの大規模部隊だが。

 

これについては、以前パドフ中将が申請してくれていて。パーミルトン大将が推薦もしてくれたらしい。

 

第三艦隊に配備されるはずだった最新鋭艦をわざわざ回してくれたそうだ。

 

それだけ活躍を高く評価してくれたのは、ミランとしても嬉しい限りである。

 

船内を見て回りながら、一緒に来ているハコトとアネカとも話をする。ハーネイ准尉は、戦闘機隊を推薦。

 

今、訓練を受けてもらっている所だ。適性があるとミランは見ている。

 

「どうですか、二人としては」

 

「ドッグが狭いのが難点やなあ。 戦艦なのに、そんなに広いドッグがないから、この程度の部隊しか収納できへん」

 

「お姉ちゃん、贅沢だよ」

 

「わかっとる。 その分戦艦の速力と打撃力で補うわけやろ。 ミラン大佐を迅速に作戦地点にお届けするにも、この艦は最適や」

 

ああだこうだ言いながらも、二人は概ね満足しているようだ。

 

さて、問題はこの先の戦場である。

 

七名しかいない特務大佐の一人であるミランが、平押しできるはずの星系に出るのだ。生半可な相手ではないことは、確かだった。







※戦艦ガルバーリアム

ミランのために準備された高速機動戦艦です。第三艦隊で多く運用される艦艇で、戦艦のカスタム機ですね。

全長は他の戦艦と同じく6㎞程度ですが、速力と火力が向上しています。

他の戦艦の二倍程度の製造コストが掛かる強力なカスタム艦ですが、戦場に高速で乗り込んで任務を達成するという観点では、ミランの母艦にもっともふさわしい存在と言えます。

これをミランに提供した理由は、それだけの戦果を挙げていることですね。

ついに特務大佐にまで出世したミランには、これが提供されるだけの実績があるのです。


本作にどういった要素がほしいですか。要望があれば遠慮なくどうぞ。

  • 詳細なマシンデザイン
  • 圧倒的な武力による蹂躙
  • 緻密な人間ドラマ
  • 種族や文明の描写
  • 近接した力量のライバルとの死闘
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