王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶 作:dwwyakata@2024
基本的に特務、それも六名しかいない特務大佐が派遣される戦場なんて、ろくなものではありません。
ミランが派遣された新しい戦場も、本来は楽勝だった筈の戦場でした。
過去形です。
そうではなくなったのです。
序、新しい戦線に
ミランは戦艦ガルバーリアムの艦長であるキッホク少佐と面会する。相手はゲラルラの民だ。
信頼出来る戦士である。かなり気性が激しい人物のようだが、ミランの事は知っていて、例の最敬礼をしてきた。ミランも最敬礼で返す。
「貴方の戦いは見せて貰った! 幼体の頃に聞いた英雄譚のような興奮を感じさせていただいた! これから貴方の支援をするためのこの戦艦を、私の技量の及ぶ最大限で運用させていただく!」
「よろしくお願いします」
信頼は出来そうだ。
それから戦闘機隊、攻撃機隊、ウォーリア隊のそれぞれのメンバーと顔合わせをする。
ウォーリアに乗りたいとハーネイ准尉は思っていたようだが、適性試験を受けてみた結果、やはり戦闘機が一番優れているようだ。
加速力と打撃力に優れていて、制空権を握る重要兵種。
この戦艦ガルバーリアムの戦闘機隊は、むしろミランの支援をするための部隊であり、艦隊戦が中距離になった時点で、制空権を握りに行くための部隊ではないのだが。それでも、規模が違うだけで、やることは同じだ。
顔合わせを済ませた後、現在の状況の図が出る。
いくつかの最前線には戦線が構築されている。それらの戦線では、要塞艦が持ち込まれて。侵略者の艦隊を相当数引きつけているようだ。引きつけることで、後方の負担を減らす意図がある。
その後、戦略的価値が低い後方の雑多な星系を、二線級の艦隊で落としていく。
4期ほどかけて、80億ほどの星系を制圧することが目的となるそうだ。
途方もない数だが、その中には恒星しかない星系なども多く。
敵が要塞などを構築している星系は、先発隊の精鋭。特に第四艦隊などが叩き潰して侵攻したので、負担は小さい、筈だった。
だが、今ミランが向かっている地点で、不可解な存在が出現している。
既に第四艦隊をはじめとする先発隊が前線で戦闘しているが、まだ正体はつかめていないらしい。
ミーティングでその存在の姿形を確認する。
淡い光の紡錘形という所か。
全長6㎞ほどと、平均的な支援者戦艦と同サイズくらいである。戦闘を見ると、中距離戦から接近戦で無類の強さを発揮するそうだ。
なんでも粒子の一種で構成されているらしく。
その粒子を活用して、攻撃を受けても即座に回復するし。
凄まじい火力の粒子砲を連発しても来るらしい。
映像を見る限り、第四艦隊が大きな被害を出している。戦艦主砲なみの火力を連発出来る上に、周囲全体を同時攻撃もしてくる。
厄介極まりない存在だ。
ミーティングが終わった後、連絡がある。
アリカ中佐だ。
久々である。こちらも、あまり良い印象はない。
階級は追い抜いたが、別に横柄に対応するつもりもないが。
「お久しぶりですね、ミラン大佐」
「お久しぶりです。 それで如何しましたか」
「現在貴方が向かっている最中のα443-33星系にて、問題の新兵器らしきものが出現しています」
「ええ、今ミーティングで性能を確認しました」
今回の課題は。
可能な限りの少人数、小戦力での撃破実績。
それがミランに求められる事らしい。
簡単に言ってくれる。
今ミーティングで見たが、倒せない相手ではない。だが、戦艦などがひっきりなしに攻撃をたたき込んで、やっとどうなるかというレベルの相手だ。
粒子の塊と言っても、それを使い切ればどうにか出来る。
ただ、星間物質やデブリを取り込んで、それを粒子化して体を補充もしているようなのだ。
簡単には倒せないし。
安易に出来るなどとは言えなかった。
「今調査中なんですが、これ生物の可能性があるんですよねえ」
「生物」
「粒子で出来た生物は流石に我々も始めて確認します。 しかしこの性能、どうも機械と言うよりも生物っぽい。 それに技術的に遅れが目立ち始めた侵略者が、今更これほど技術体系から外れた兵器を開発できるとも思えない。 どこかで捕まえてきた生物を、兵器として活用している……その可能性が高いです」
なるほどな。
確かに第四艦隊との交戦例でも、むしろ侵略者を攻撃するような場面が目立つことがあったようだ。
それを考えると。
生物として連れてこられて、何らかの形で制御されている。
その可能性があるかも知れない。
だとすれば。
そのくびきから解放すれば、むしろ侵略者に打撃になるのではないか。
「ただ、貴方が行く先のα443-33星系にいるのは、まだよく分かりません。 襲ってきた場合は、倒す覚悟を決めてくださいね」
「……分かりました」
通信終わり。
アリカ中佐は相変わらずだな。
平然と残酷なことを言う。
嘆息すると、ミランは自室に戻る。それほど贅沢な自室はいらないと言ってある。艦長であり、体が大きいキッホク少佐の部屋の方が大きいくらいらしいが、それでどうでもいい。
アネカとハコトも同じ部屋で寝て貰う。
ハーネイ准尉は六人部屋だ。
ただ六人部屋と言っても、それぞれのプライバシーは保護されるように工夫がされている。
それもあって、テントで戦場にずっといて。ろくに眠ることも出来ず、前線にいる間は風呂にも入れなかった(風呂はミランも入りたくはないが)アルカラルドⅠの頃より一億倍マシだと力説されたので。
そうかとしか、ミランは思えなかった。
ともかく、現地までそれほど時間は掛からない。
現地に展開しているのは二万隻の第108小艦隊だ。
艦隊とは別に、10万隻に達しない規模の小艦隊が、かなりの数運用されている。こういう大規模な面制圧任務では、これらの艦隊が出張る。小艦隊のナンバリングは通常艦隊とは別口で、規模は8000~25000隻というところだ。
ただしこれらの艦隊は旗艦が戦艦だったりと、どうしても火力などで劣る点が多く、単独での戦闘力はどうしても劣る。
其処に第四艦隊でも手を焼いている謎の存在が現れたのなら、対応は必須だろう。
今前線後方の各地の星系を面制圧するので、どこの部隊も手一杯だ。
それもあって、第108小艦隊にはあまり援軍を出せない。
道中で編成を見るが、以前ヴァーグラット戦線で大きな被害を受けたいくつかの艦隊の敗残兵の集まりだ。
艦隊を再編するまでは、小規模な任務をこなして新兵の訓練をしつつ。戦力がそろったら、艦隊としてまとめる。そういうことをしているらしい。
その前に、とんでもないのと出くわしてしまったというわけだ。
ちなみに、α443-33星系は惑星も存在しない、12連星の星系で。しかもそのうちの一つがクエーサーであるらしい。
敵艦隊の規模は二千隻程度と、はっきり言って問題外だが。
それはそれとして、粒子兵器?がいる。
これもあって、第108小艦隊は、及び腰になってしまっているようだった。
途中で100隻ほどの艦艇が合流してくる。
現在及び腰になっている第108小艦隊の司令官が交代するのだ。
元々後方任務をしていた人物で、前線任務についても経験を積ませようと後方で人事を決済したらしいが。
今回の件で成果を出せなかった。
それでまた後方に戻すらしい。
代わりに負傷していた前線で戦い続けた将官が、司令官として赴任する。
戦艦に乗ってきている。
多少は戦力を補填できるだろう。
当然、挨拶に出向く。
その将官は、ミザラット准将。
この人もヴァーグラット戦線で右半身を吹き飛ばされて、治療に当たっていたらしい。
直に会いに行くと、全身が複雑な肉が絡み合った不思議な種族で、常にうねうねと動いていた。
体中に目と口があって、ただそれ以上に不安定な様子である。体中から蔓のように生えている触手が蠢き、それらの触手には鋭い爪が生えていた。
一緒に来たハーネイ准尉が真っ青になって硬直している。
ミランが敬礼すると、ミザラット准将は、翻訳機ごしに話しかけてきた。
「武名名高いミラン大佐とともに戦えるとは光栄だ。 拙者はミザラット。 准将の地位についてござる。 今回は第108小艦隊の指揮を執らせていただく。 よろしくお願いいたしますぞ」
「ミランです。 よろしくお願いします」
「うむ、良い返事だ。 そちらが、あの悪名高いアルカラルドⅠから助け出した戦士の一人かな」
「ハーネイ准尉」
促す。
色々な種族がいるのだ。
やっていけなければならない。
ハーネイ准尉は失神寸前の様子だったが、ミザラット准将に敬礼する。
「ハーネイ准尉です。 よ、よろしく、おねが、「いま」します」
「はっはっは。 恐れずともいい。 我々カトランタの民は、支援者の中でも特に変わった姿をしているからな!」
びびりまくったハーネイ准尉が噛むが、別にミザラット准将は気にしないでくれた。
なんでもカトランタの民は一種の集合生命体らしく、ミザラット准将は六体の合成体であるらしい。
元々惑星カトランタが極めて過酷な惑星であったそうで。
生き残るために複数個体が合体して、常に生体情報を交換し合って、いつでも繁殖活動できるようにしたというのが、この異形の理由であるそうだ。
様々な種族がいる支援者の中でもかなり独特な姿なので、恐れる者もいるらしいが。
ミザラット准将の「頭脳」を務めている個体は、とても気さくな人物であるので、交友関係は広いらしい。
ちなみにあの超巨大戦艦メタトロンに粉砕された第五十一艦隊の将校をしていたらしく。生き残るだけでやっとだったと、ずっと病院で嘆いていたとか。
今回は、後方任務主体で困り果てていた人物との交代人事。
更に敵も厄介な新型。
それもあって、張り切っているそうだ。
「数々の親衛軍ウォーリアを倒してきたミラン大佐との連携なら、必ずや大敵を討ち取れるであろう! 我らの武勇で、難局を打開するぞ!」
「はい。 お願いいたします」
「うむ、うむ!」
触手がうねうねと動いて、嬉しそうである。
一度母船に戻る。
ハーネイ准尉は真っ青だったので、途中でフォローを入れておく。
「カトランタの民は、別に凶暴な食性を持っているわけでもなく、極めて小食な種族だそうですよ」
「そ、そうなんですね。 すみません。 怖くて、慣れるまで時間が掛かりそうです」
「マルラ大佐の時も時間が掛かりましたね」
「すみません」
口を押さえている。
これは生理的に駄目なパターンか。
支援者にも生理的にあわない種族がどうしてもいるケースがある。その場合は、翻訳装置がフィルターをかけるなどして対応する。
「どうしても合わない場合は、翻訳装置を用いてください」
「はい、でも慣れるべく努力します」
「……」
戦艦ガルバーリアムに到達。
更に400隻ほどの艦隊が途中で合流してくる。それで、現地に到着していた。
α443-33星系は、恒星だけ12個。しかも中心にあるクエーサー以外はどれも小さなものばかりという。色々複雑な星系だ。
重力の乱れも酷く、そのためカイパーベルトのような構造体も存在していない。
逆に言うとむき出しの状態での殴り合いが強要される戦場であり、現時点で支援者は、小型の要塞艦を中心にして攻めあぐねている。
それと合流。
司令官が交代するのを見届ける。
後方に戻る准将は安心しきっていたようだ。
代わりにミザラット准将が司令官になると、兵士達の士気は上がったようだった。
「流石にデスクワーク屋を前線に出すのは無理があったんだよ」
「まあ、デスクワーク屋が軍人として化ける例もあるらしいからな。 色々と上としてはやってほしいんだろ」
「それよりもミラン大佐だよ! 短時間で大佐にまでなったいける伝説だ! さっさとこんな星系での戦闘終わらせて、故郷の家族に自慢するんだ!」
「確かそれ、死亡フラグとか言うんだろ。 やめとけやめとけ」
兵士達の話を聞いていて、苦笑してしまう。
いずれにしても、戦闘でこのウォーリア四型が出るのは今回が初だ。相手がちょっとばかり大物過ぎるが。
敵艦隊はこちらの十分の一。
本来だったら瞬殺だが、相手には此処からでも確認できる光紡錘形がいる。あれの戦力を知っている先代司令官どのは、敢えて仕掛けなかったようだ。
すぐに幹部を集めてのミーティングが行われる。
ただ、それぞれが自室からリモートで参加だが。
「まず敵艦隊を先に殲滅する」
最初に方針が告げられた。
敵の艦隊規模からして、親衛軍もいない。
遅滞戦術をとっている侵略者だが、流石にこれだけの規模での面制圧を受けると、物量でも劣ってきている状況だ。
このような戦略的価値皆無の星系に、それだけの戦力は出せなかったのだろう。
逆に言えば。
前線を荒らしている謎の新兵器が、なぜここにいるのかが分からない。
参謀が挙手。
小艦隊だけあって、参謀は皆佐官である。
「今までの戦闘記録を見る限り、あの敵新兵器らしきものは、中から近距離で真価を発揮するようです。 先に遠距離から硬X線ビーム砲で一気に仕留めてしまうべきなのではありませんか」
「良い案だが、敵がその戦闘記録を収拾している可能性がある。 拙者としては、まずは随伴している敵艦隊の殲滅を優先するべきと考えるのだが」
「なるほど、一理あるかと思います」
一番若い……というか、子供にしか見えない参謀の一人。少佐が挙手。
毛皮持ちのヒューマノイドだが、新たの民よりも更に小さい。
「ボクの……す、すみません。 私の意見を言わせていただいてもよろしいでしょうか」
「うむ、聞かせてくれ」
経歴を見る。
やはりまだ幼体だ。どこかの軍学校で参謀として異例の成績をたたき出した天才児らしい。
今回は「勝てる戦い」で実戦のコツをつかむべく出てきたらしいのだが、それでこんな難敵とかち合ってしまった。
その天才児、ヴァッハー少佐は言う。
「私は、むしろ敵の新兵器を先に叩くべきかと思います」
「ふむ、理由は」
「あれは情報を見る限り、スペースデブリなどを餌にしています。 明らかに生物兵器であると判断します」
アリカ中佐もその可能性については口にしていたな。
ヴァッハー少佐は続ける。
「第四艦隊がいるサリナス戦線の状況を見る限り、戦艦多数で滅多打ちにしてやっと対応できる相手……ですが、粒子で構成されているのであれば、粒子の量でその強さが決まるように思えます。 もしも大量のスペースデブリを捕食して、手に負えないほど巨大化されたら……」
「確かに厄介な話だな。 しかし、第四艦隊が構築しているサリナス戦線では、合計100万隻の戦闘が行われていて、デブリは食い放題であろう。 それでありながら、拙者はそのような相手の出現は聞いてはおらぬ。 たかが二千隻程度の敵を全部食らったとしても、第四艦隊にいるアンノウンほどの強さにはなるまいて」
「楽観は危険だと思います……」
「分かっておる。 だが、今回はまずは敵艦隊の処理を優先する。 その後で、じっくりアンノウンの相手をする。 周囲の被害を減らすためにも、今はアンノウンの情報が必要であるからな!」
なるほど。
これはミザラット准将の言い分に一理も二理もあるな。
確かに楽観は危険だが。
それはそれとして、あれは以前コヴァルライト星系で見た、星そのものを食らった化け物ほどの戦力はない。
問題があるとすれば。
いや、それはいい。ともかく、今は戦闘に集中するべきだ。
この星系では、戦線らしいものはない。
ただ最前線に出てきているアンノウンがいる。
それ故に攻撃をためらっている状況だ。
軽い気持ちで仕掛けて、大きな被害を受けたという理由もある。
それで兵士達が尻込みしてしまっているのだ。
そういう観点では、ミザラット准将の到来はありがたいところだろう。熟練の指揮官が来たことに対する安心感は、兵士達には大きい。
それにミランが来たと言うのも、また兵士達には安心感を与えるはずである。気恥ずかしい話ではあるが。
ともかく、やることは決まった。
「それではまず作戦として、侵略者の艦隊を追い払う。 相手の規模はこちらの十分の一で、大型艦の比率も少ない。 次の戦闘で一蹴する」
「了解!」
「その後で、アンノウンを始末する。 一度に両方倒すことは考えなくていい。 参謀本部は作戦を立案。 それが終わり次第、仕掛けるとする」
とりあえず、これで大筋の流れは決まったか。
問題は、それで片付くとは。
とても思えないことだったが。
※アンノウン
今回から問題になる存在です。全長6㎞ほどと通常戦艦と同一程度のサイズながら、恐ろしい性能を持っている存在です。
全身は粒子で構成されていて、白く輝く紡錘形をしています。亜光速で移動し、ワープを行い、粒子を加速させて攻撃にも転用します。
この存在が何者なのか、どう対処するかが、今後の課題となります。
本作にどういった要素がほしいですか。要望があれば遠慮なくどうぞ。
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圧倒的な武力による蹂躙
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種族や文明の描写
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近接した力量のライバルとの死闘