王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶   作:dwwyakata@2024

84 / 85



いさながいる。

それだけで艦隊の行動が著しく制限されることになります。

敵艦隊、それも極めて脆弱な存在相手に、おかげで賭に出なければならなくなります。

特務であるミランが、です。





3、混迷の戦場へ

好機だ。

 

白い紡錘と距離は充分。

 

敵艦隊の一部を追い詰めた。

 

ミランの乗っているガルバーリアムに指示が来る。高速艦隊とともに、敵を追い詰めよと。

 

白い……光の紡錘は、ずっと恒星の一つに張り付いて、プロミネンスを味わっているようだ。

 

あんな超高熱で死なないのだ。

 

今まで倒した戦績も、実は嘘ではないのか。

 

そうミランには思えてきていた。

 

ともかく、高速艦隊140隻余が、飛び出す。

 

そして敵が逃げようとする進路に立ち塞がると、猛射を浴びせる。敵艦隊も当然反撃してくる。

 

数は三倍。

 

少しずつ下がりながらも、接近戦に持ち込む。

 

すぐに味方が追いついてくる。

 

それまで、敵に食いついて離さない。

 

それがこの艦隊の仕事だ。

 

ガルバーリアムは猛射を受けながらも、接近戦に。

 

先にハーネイ准尉の戦闘機が出る。

 

他の戦闘機隊も次々に出撃。制空権を取りに行く。それから遅れて、ミランもウォーリア四型で、発進した。

 

高速機動戦艦ガルバーリアムのカタパルトは、空母に比べると洗練されていない。これはそもそも、ガルバーリアムが単独で戦う事を想定している艦だから、である。

 

元々パーミルトン大将直下の第三艦隊に配備される予定だったものを、パーミルトン大将がわざわざ手を回して、ミランの支援用の艦艇としてくれたのだ。

 

特務大佐というのは、それだけ無理な仕事をしなければならない地位であり。

 

ミランは無理の中で戦果を挙げる事を求められている。

 

宇宙空間に飛び出すと、一瞬の差で、斬りかかってきた敵ウォーリアを両断する。

 

ブースターを噴かす。

 

更に強化された反物質炉の推力は凄まじく、ぐんと一気に機体が加速する。早い。そして何より、エネルギーの残量について殆ど気にしなくて良さそうだ。

 

まだウォーリア四型を貰ってから、全力での戦闘はしていない。

 

今日がその時だ。

 

ガルバーリアムに直撃弾。

 

流石に三倍の敵と総力戦をしているのだ。当然あるだろう。

 

ミランにも、次々に敵が襲いかかってくる。

 

イーターの射撃を、敵ウォーリアの残骸を蹴飛ばして相殺しつつ。パルスレーザーで撃ち抜く。

 

イーターが一撃で粉砕される。

 

炉の火力が上がって。

 

パルスレーザーの火力もまた向上していた。

 

そのまま突撃。

 

味方の士気が、それで上がる。

 

「凄い奴がいるぞ!」

 

「親衛軍殺しのミラン大佐だ! 続け!」

 

「おおっ!」

 

所詮戦場でウォーリアは消耗品。

 

乗り手もそれは同じだ。

 

だが、それでも士気が上がれば、多少はそれも抑えられる。ミランが可能な限り敵を屠り続ければ、それもまた同じだ。

 

立て続けに四機のウォーリアを仕留めたミランの前に、いきなり壁が出来る。戦闘で破壊された敵駆逐艦のデブリだ。ブースターを噴かして、直撃を回避。

 

流石にこれだけの攻撃密度だとどうしてもカス当たりはするが。

 

それでも、あんなのの直撃を受けたらひとたまりもない。

 

ぐんとブースターを噴かして、駆逐艦の残骸を回避しつつ、敵の斜線を切り。

 

敵がこちらを見失った瞬間に、別の敵ウォーリア部隊に背後から襲いかかる。

 

一機を真後ろから縦に真っ二つにすると。

 

そのまま、もう二機を斬り伏せつつ、敵集団を抜ける。

 

味方の方が被害が大きい。

 

だが、明らかにこの小規模な敵艦隊は。

 

今やミランに殺意を向け、全力で屠ろうとしてきていた。

 

それでいい。

 

後わずかな時間を稼げば、それで終わりだ。

 

真上。

 

連続で三機のウォーリアが仕掛けてくる。炉を噴かして、一気に退避に掛かるが。その先で、巡洋艦が主砲をチャージ。

 

追い込んで連携して撃破、というわけか。

 

不意にミランは方向を変えて、飛んできた荷電粒子砲をキャッチ。

 

ハコトに指示し、射出して貰って受け取ったものだ。

 

そのまま、荷電粒子砲をぶっ放す。

 

所詮はウォーリアの兵装だ。

 

巡洋艦にダメージを与えることは不可能。

 

だが、そもそもとして、ダメージを与えることが目的じゃない。

 

巡洋艦の周囲に多数展開していたイーターが、今のでまとめて消し飛んだ。其処へ、突貫する。

 

巡洋艦が主砲を発射。

 

だが、ミランはある程度余裕を持って回避。

 

イーターからの弾幕に穴が開いたから、其処に逃げ込んだのである。そのまま加速加速、更に加速。

 

ウォーリアを二機、その過程で斬り伏せ。

 

そして、ついに来る。

 

味方艦隊が、敵を後ろから押し包む。今度は圧倒的な数による蹂躙が開始された。敵艦隊は、ほんのわずかな時間ももたなかった。

 

これで、一つ。

 

残りの敵艦隊は合計して1000隻ちょっと。

 

ミランもガルバーリアムに帰投する。

 

それなりの損害をガルバーリアムの直衛は出していた。仕方がない話だ。ハーネイ准尉は、四機を撃墜して戻っていた。

 

やはり戦闘機乗りの適性があるな。

 

そうミランは判断していた。

 

一度本隊と合流する。

 

その話が出た瞬間だった。

 

「!」

 

誰もが絶句する。

 

あいつだ。

 

光の紡錘。

 

いつのまにか、ガルバーリアムの至近にいた。

 

ひょっとしてワープか。

 

確かワープくらいは出来るという話だが、短距離ワープというのは却って難しい技術だと聞いている。

 

ワープを利用して、敵を攻撃する兵器が存在しない理由だ。

 

まだそれが出来るほど、支援者も侵略者もテクノロジーが爛熟していない、ということである。

 

「指示が出ている! 攻撃はするな!」

 

「し、しかし!」

 

「攻撃するな!」

 

激しめに、ミザラット准将が指示を飛ばしてくる。

 

しばらく無言でにらみ合う。

 

光の紡錘は、じっとガルバーリアムを見ていた。ミランが無言で再度出撃。装甲などはかなり傷ついているが。

 

それでも、継戦力はある。

 

出たのは、最悪の事態に備えてのことだ。

 

もしもあの光の紡錘が襲ってきたら、文字通りひとたまりもない。だから、少しでも気をそらす必要がある。

 

出撃して、至近から見る。

 

爆撃機がまとめてたたき落とされた事例があると聞いている。ミランは側で見るが、なるほどとんでもなく大きい。

 

全長6㎞と聞いているが、戦艦並みのサイズ。

 

ウォーリアから見れば、まさに巨人だ。

 

向こうもこちらに気付いているようで、しばらく周囲を回遊していたが。

 

デブリをいくらか取り込むと、それで不意に消えた。

 

また、恒星の近くに飛び、プロミネンスをかじっているようだ。艦隊が、ほっとする。

 

「い、生きた心地がしなかった……!」

 

「第二十九艦隊が蹂躙されたって話だ。 こんな規模の艦隊じゃ、勝ち目はないぞ」

 

「あれなんなんだよ!」

 

「今偉い学者が研究中だそうだ。 とにかく絶対に手を出すな」

 

ミランもため息をつくと、ガルバーリアムに戻る。

 

そして、本隊と合流。

 

残りの二つの艦隊をどうにかしなければならない。

 

今の戦闘で、十二隻が撃沈された。

 

短時間の戦闘だったが、それだけ三倍の敵との正面からの戦闘は厳しいのだ。ガルバーリアムにも直撃弾が多数ある。一部は位相変換シールドを抜いて、船体にダメージが通っていた。

 

修理を進める間に。

 

ミランはミザラット准将の所に出向く。

 

軽く見た感じを説明する。

 

攻撃はするな。

 

その判断は正しかったと、ミランは正直に述べていた。

 

「もし攻撃をしていたら、反撃で下手をすると全滅させられていた可能性もあったかと思います」

 

「あのパドフ中将が手こずっているとも聞く。 確かにそれは可能性としてはあっただろうと拙者も思う。 それで如何するか」

 

「攻撃をするべきではないと自分は考えます」

 

何というか。

 

パデラクスに、色々仮説を聞かされたのだ。

 

あれは生物で、面白がって見に来ているだけ。

 

攻撃を受ければ反撃する。

 

そして倒せたように見えても、実際は倒せていない可能性があると。

 

それを、皮肉にも直前で第二十九艦隊が証明してしまった。四十万隻の艦隊が猛攻撃を浴びせ。

 

それで一体も倒せなかったのだ。

 

遊び飽きて、どこかにワープして消えた。

 

それが倒せたように見えたあの光の紡錘の真実だったのではないか、とミランは感じた。

 

「そうだな。 拙者も同意見だ。 それで、あれが居座るのをこれからどうする」

 

「まずは侵略者の艦隊を一掃して、それからは護衛をつけた調査チームに任せるべきではないかと」

 

「そうだな。 ただ拙者としては懸念がある」

 

「お聞かせください」

 

ミザラット准将は、もっともな懸念を言葉にしていた。

 

つまり、戦闘中に割り込んできたらどうするか、である。

 

実際光の紡錘は、至近にワープらしき挙動で飛んできた。

 

あれはひょっとすると、何か面白そうなことをしていると思って、見に来ただけかもしれない。

 

しかし其処で攻撃すれば、頭に来て反撃もするだろう。

 

一度引き金が引かれれば、当然猛烈な反撃が入り、それぞれが収拾がつかなくなると見ていい。

 

「艦船レベルでは、あれは攻撃しないように戦術支援コンピュータを設定できるのではありませんか」

 

「うむ、そうだな。 それで属人的な兵器はどうする。 戦闘機やウォーリアだ」

 

「それらに関しては、もはや言い聞かせるしかありません。 或いはですが、爆撃機がまとめて破壊された例ですが、あれは攻撃のための質量兵器と見なされたのかもしれないので、接近自体を禁止すべきかも知れません」

 

「やれやれ、窮屈な事だな」

 

ミザラット准将がぼやく。

 

敬礼して、ガルバーリアムに戻る。修理までしばらく掛かる。

 

その間は、訓練をするのと同時に。

 

各部隊に、アレに対する攻撃は厳禁と、ミランから言って聞かせるしかなかった。

 

 

 

高速機動艦隊の補充と修理が終わったので、敵の艦隊を始末に出向く。

 

敵の残りの艦隊のうち、少ない方。490隻がいる艦隊を狙う。

 

今まで何度か追い回して、そのたびに逃げられている。だが、逃げる所を硬X線ビーム砲などで射撃して、数はそれなりに減らせている。

 

ただしあくまで減らせているだけだ。

 

今回も三倍の敵と正面からやり合わなければならない。

 

まあ、それも。

 

あの光の紡錘と充分に距離を取った上で、敵を追い込める。

 

その機会を狙うしかないのだが。

 

敵艦隊を包囲に掛かるが、さっとまた逃げ出す。あの光の紡錘が近くにいるので、今回は追い払うだけの挙動だ。

 

逃げる敵艦隊に、多少の射撃を後方から浴びせて、数を削るが。20隻程度を撃沈しただけ。

 

まだまだとてもではないが、倒しきれない。

 

逃げに徹する相手は厄介だ。

 

今まで侵略者がこういう挙動をしたのは、ミランも見たことがない。

 

それもあって、非常に厄介だなと感じた。

 

ともかく敵を追い立てて、何度か恒星の影から追い出す。

 

その間に、他戦線からの通信が入ってくる。

 

勝報が殆どだが。

 

光の紡錘はかなり広範囲で姿を見せていて。

 

それには攻撃するなと言う指示が飛んでから、どこの艦隊も小艦隊も、対応に苦労しているようだった。

 

それはまあ、そうだろう。

 

粒子で構成された何か。

 

それが生物かもまだはっきりは分かっていないのだ。

 

油断させておいて、一気に背後を襲ってくるという可能性もあるし。

 

第二十九艦隊が一蹴されたという事件も至近で起きている。

 

それもあって、どの艦隊も戦々恐々としているようである。

 

ミランが座って精神を集中していると、ハーネイ准尉が来る。

 

温かい飲み物を差し出されたので、いただく。

 

並んで座って、いくつか話をした。

 

「実戦で使わせて貰いましたが、とんでもない性能の戦闘機ですね」

 

「そうですね。 自分としても、ウォーリアより戦闘機の方が活躍できたかも知れないとたまに思います」

 

「いずれにしても、私が露払いをします。 ウォーリア四型で、あばれるだけ暴れ回ってください」

 

「分かりました」

 

ファーガの栄養液を溶かして、温めたような味だ。

 

実際その通りなのかも知れない。

 

アネカが入れてくれたのだろう。

 

とにかく体が温まるし、落ち着く。

 

ありがたく貰った後、軽く話をする。

 

「既に通達は出ていますが、あれには絶対に近づかないようにしてください」

 

「はい。 戦艦を正面から撃沈する火力、粒子の塊だというのに、なんて凄まじい強さなのか……」

 

それも実際には怪しいと、パデラクスは言っていたか。

 

なんでも三次元空間には粒子の集合体として現れているだけで、本体は四次元などにあるのではないのか。

 

そういう話がされている。

 

ミランとしては確かめる方法もないから、話半分にしか聞くことが出来ないのだが。

 

それにしても異質すぎる存在だ。

 

宇宙は広く、小惑星ほどもある生物が発見された例が過去に存在しているらしいのだけれども。

 

基本的に非常にゆっくりと動く生命体で、危険も何もないような存在であったらしい。

 

だから、四次元生命体がいても不思議ではないだろう。

 

ただ、それもまだ仮説だ。

 

敵の追撃はまだ続いているが、どうにも。

 

戦闘をしていると、光の紡錘が、面白がって近づいてくる。

 

それも本当かは定かではない。

 

敵艦隊を削るのと、追うのは別にするべきかも知れない。そういう声も上がり始めていた。

 

いずれにしても、無人の野を行くように進んでいる艦隊もある中。

 

光の紡錘と出くわしてしまった艦隊は、例外なく足止めを食らってしまっている。

 

最前線で光の紡錘の群れを相手に大きな被害を出してしまった事もある。

 

とにかく、今は慎重にならざるを得ない。

 

もどかしい話だった。

 

敵艦隊を削りながら、更に追い回す。

 

敵の数は400隻を割り込んだ。

 

そこで、ミザラット准将から指示が来た。

 

主力から、主砲を敵艦隊の進路を想定した地点に放つ。その間に、高速艦隊が敵に追いついて、乱戦に持ち込む。

 

三倍を割り込んだとはいえ、まだ大分多い。

 

其処に肉弾戦を挑めば、それは苦労する事になる。

 

だが、いつまでももたついている訳にもいかない。

 

とにかくやるしかないだろう。

 

今までと同様に追うようにして、艦隊が動き出す。敵艦隊は逃げ出す。その鼻先に、第108小艦隊の主力から、主砲斉射が見舞われた。

 

算を乱す艦隊に追いつく。

 

だが。その時だ。

 

なんと光の紡錘が、主力艦隊の放った主砲に、自ら当たりに行ったのである。

 

「全艦停止!」

 

これは、まずい。

 

即座に距離を取る。

 

ワープしていきなり敵艦隊の至近に現れた光の紡錘が、それを足止めしようとした主砲を自ら受け。

 

硬X線ビームやレーザーを、あらかた吸収してしまった。

 

しかし、それで反撃をする事はない。

 

敵艦隊も困惑して右往左往しているようだが。

 

ミザラット准将が、冷静に指示を出す。

 

「距離を取ったまま様子を見るように。 このまま乱戦に持ち込むと、あのでかい奴に当たる可能性が高い。 とにかく今はリスクを避けよ」

 

「了解!」

 

「絶好の機会だったのに……」

 

「いえ、時間は掛かってしまいますが、被害を減らす事が最優先です。 支援者は前線構築を苦戦しつつも果たせていますから、恐らくは此処でもたついても、他でどうにかしてくれます」

 

侵略者の艦隊も停止して、逃げられずにいる。

 

光の紡錘は、しばらく身をくねらせていたが。

 

唐突にワープした。

 

やはり、今までのは倒せて何ていなかったのではないか。

 

そうとすら感じる。

 

とにかく、固唾を飲んで様子を見守るが。

 

α443-33星系に、あの光の紡錘は、もういないようだった。

 

「一度全艦隊合流。 1自転ほど待った後、全く動きがないようであれば、全面攻勢に出て敵艦隊を粉砕する!」

 

ミザラット准将の指示に、皆が粛々と従う。

 

ともかく、あれを相手にまっとうな戦いは無意味だ。

 

そして今いなくなっても、ワープを自在にするようでは、何が起きるか分かったものではない。

 

とにかく慎重に動くのは当然で。

 

どれだけ慎重であっても、悪くはないのだった。

 

 

 

時間をおいてから、全面攻勢が開始される。

 

α443-33星系にいる敵艦隊は千隻程度。それに対して、第108小艦隊は二万隻をいまだ割り込んでいない。

 

六つの艦隊に別れての総攻撃は容赦がないものとなり、後はミランは見ているだけで良かった。

 

ついに敵艦隊の片方が火力の網に掛かり。

 

そのまま一瞬で溶かされる。

 

もう一つの艦隊も、それほど長くは持たなかった。

 

ワープをするのにはチャージがいるし、制圧済みの星系にはワープ阻害装置も配置されている。

 

今更逃げられる道理はない。

 

510隻ほどの最後の敵艦隊が追い詰められ、そしてほぼ一瞬で全滅する。

 

やれやれ、やっとか。

 

そういう声も上がっていた。

 

ミザラット准将が、総司令部に指示を出す。

 

総司令部から、即座に次の星系に向かうように指示が出ていた。

 

ちなみにミランも同行する。

 

それでいいのかと一瞬不審に思ったが、理由については納得である。

 

「例の光の紡錘が確認されています。 敵艦隊は1500隻ほど。 正面から力負けする相手ではないと思いますが」

 

「了解した。 それでは早速向かう。 防衛艦隊の派遣を頼む」

 

「心得ました」

 

総司令部とミザラット准将のやりとりを聞いた後。

 

ミランは移動の間は休むことにする。

 

防衛艦隊が派遣されてきて、ワープ阻害装置などを配置した後、第108小艦隊は動く。

 

今度の星系は941115星系。

 

巨大な赤色巨星がある星系で。

 

10万期ほどで超新星爆発を起こすのではないかと言われているようだ。

 

殆どの惑星は寿命を迎えようとしている巨星に焼き尽くされてしまっている。ただ、支援者が制圧した場合は、恒星のエネルギーを抽出して、超新星爆発を抑える。これは資源を回収しつつ、周辺星系への被害を抑えるためらしい。確かに超新星爆発が起きると、周辺の相当な広範囲にガンマ線バーストがまき散らされ、生物がいる惑星にでも直撃したら大惨事になる。

 

それは防がなければならない。

 

「他の艦隊とは合流しないのか?」

 

「基本的には俺たちだけでやるらしい。 とにかく前線後方の星系を抑えていくのが当面の仕事だとよ」

 

「そっか。 敵のよく分からん兵器が出てこなければ、こんなに遅れることはなかったのかな」

 

「そうかもな。 どっちにしても、前線には強力なワープ阻害装置が既に展開されてる。 後方の取り残された敵に援軍はない。 例の新兵器も、ワープ阻害装置がまだ展開されていない前線から抜けてきたのか、もっと違う方法を使って現れたのかは、よく分からないらしいんだが。 ただ、敵艦隊がそれと連動して動けるわけではない、というのは事実だな」

 

兵士達の話を聞き流しながら、ミランは自室に戻って横になる。

 

風呂に入れとハコトがうるさいが、それは一眠りした後だ。

 

今の時点で、ミランに出来る事はない。

 

少なくとも戦況を個人レベルでは有利に出来るが、数百隻規模の艦隊とやりあうのでさえ、ミランは特に大きな戦績を出せない。

 

それもまた事実だ。

 

ぼんやりしているうちに眠る。

 

起き出してから、面倒だが風呂に入り。それから、訓練を積む。主にシミュレーションマシンを利用するが。

 

当然のように、光る紡錘が追加されていた。

 

データが不十分だが。

 

それでも軽く戦って見るも、絶対に勝てないと一発で分かる。

 

亜光速の粒子砲を信じられない速度で連射してくるのだ。

 

その上普段はゆっくり動いているように見えても、いざ移動しようとする時は、本体も普通に亜光速が出る。

 

こんな存在が生物だとしたら。

 

一体侵略者はどこから連れてきたのか。

 

アンドロメダの可能性があるらしいが。

 

それでもいくら何でも無理がある。

 

しばらくぼんやりした後、100光年ほどのワープを経て、問題の星系に到着。

 

確かにまがまがしい赤色巨星だ。

 

星の寿命が近づくと、温度が下がってあのような色になった上で、最終的には超新星爆発を起こすという。

 

焼け焦げた惑星がいくつか。

 

その一つの近くに、敵艦隊約1500隻が布陣している。

 

そして、赤色巨星の不安定な……こぶのように膨れ上がった表面近くに、いる。光の紡錘だ。

 

「敵アンノウン確認」

 

「ああ、それについてだが、通信を傍受したそうだ。 あのアンノウンは、いさなと呼ばれているらしい」

 

「いさな……?」

 

「意味は分からない。 ともかく、敵がそう呼んでいるのなら、別にこちらで名前をつけるまでもない。 こちらもいさなと呼んでおけばいい」

 

ミザラット准将が、皆に通達する。

 

ミランも同意見だ。

 

名前なんかそれこそどうでも良かった。

 

「またあいつの機嫌を伺いながら、敵艦隊とやり合うのか……」

 

「今度も規模は十分の一以下だ。 多分負けることは……」

 

「至近です!」

 

「!」

 

いきなり、艦隊右側面に、「いさな」が出現。二体目だ。

 

赤色巨星に張り付いている奴もいる。

 

つまり二体目のいさなが、いきなり現れたことになる。

 

「距離をとれ。 攻撃はするな」

 

「は、はい!」

 

「ち、畜生! なんなんだよっ!」

 

兵士が恐怖で混乱している。

 

こういうときこそ、ミランがしっかりしていなくてはならない。

 

ドッグに顔を見せると、ベンチに座って、無言でいる。

 

無言でいる方が、兵士達は落ち着くと聞いたことがある。勿論種族にもよるのだろうけれども。

 

「総司令部に連絡。 二体目のいさな出現」

 

「は、はい!」

 

「いさなの様子は」

 

「攻撃はしてきません。 こちらの様子をうかがうように、艦隊の周囲を移動しています!」

 

兵士達の恐怖が高まっていくのが分かる。

 

更に、である。

 

三体目が出現した。

 

これは、侵略者の艦隊に近づいていく。侵略者の艦隊は微動だにしない。いさなは早々に興味を失ったようで、赤色巨星に近づいていった。

 

「四体目です!」

 

「逃げましょう!」

 

「ならん!」

 

ミザラット准将が一喝。

 

それで兵士達が黙った。ミランも、そのままミザラット准将の言葉を聞く。

 

「周辺でもいさなが確認されていて、それらが集まってきたのかも知れない。 とにかく攻撃せず様子見だ。 いさなが脅威なのは事実だが、この星系に集まっていると言うことは、他の星系の負担が減る。 我々は早々に敵艦隊を壊滅させて、この星系を奪取。 いさなは調査チームに任せてしまうぞ」

 

「了解……」

 

兵士達の士気はだだ下がりだ。

 

今は手を出してきていないだけ。

 

暴れ出したらこの規模の艦隊では手に負えない可能性も高い。旗艦級戦艦でも落とされるのだ。

 

この艦隊には旗艦級戦艦もいないのである。

 

程なくして、五体目が出現。

 

更に六体目。

 

そうして、十体まで増えた。

 

しばらく、第108小艦隊は動かず、様子を見る。いさなの半分ほどは、こちらの艦隊に興味津々だったが。

 

それらもやがて飽きたらしくて、赤色巨星に群がり始める。

 

それもなぜかは分からない。

 

熱エネルギーを食べているのか。

 

それとも、何かしらの全く違う理由かも知れない。

 

それにだ。

 

攻撃しない限り攻撃してこないとは言え、相手が友好的な存在であるかは全く分からないのだ。

 

ただ今は様子見をしているだけで。

 

いずれ牙を剥くかも知れない。

 

もし総司令部が襲われでもしたら、洒落にならない。常時二千万隻ほどの艦艇が固めているそうだが、それでもだ。

 

相手はアンノウンであり。

 

第二十九艦隊の戦績を見る限り、本当に攻撃が効いているかさえも分からないのだから。

 

しばらく様子見をして、10体から先は増えないことを確認。

 

敵艦隊との距離を詰めるように、ミザラット准将が指示。敵艦隊は、赤色巨星を盾にするようにして逃げ始める。

 

やはり此処でも時間稼ぎが目的か。

 

確かに時間稼ぎをすることによって、支援者が安全地帯を作る速度は著しく遅れることとなる。

 

遅滞戦術は間違っていない。

 

ミザラット准将は、指示を出す。

 

「艦隊を四つに分ける。 それぞれ機動して、敵を追い詰めろ。 くれぐれも赤色巨星といさなには攻撃が当たらないように気をつけるように」

 

「了解!」

 

それで、五千隻ずつに分かれた艦隊が、一斉に動き出す。

 

増援もいない状態だ。

 

一瞬でけりをつけてしまいたい。

 

その気持ちは分かる。

 

ミランも、接近戦に備えるように、クルーに指示。自らも、ウォーリア四型に乗り込んでいた。

 

敵艦隊を、四方から追い詰めていく。

 

いさなは半数ほどが赤色巨星に群がっていて。

 

残りは何をしているのだろうと、こちらを伺っているようだった。

 

程なく、艦隊の一つが敵艦隊に追いつく。

 

そして猛烈な攻撃を浴びせ、確実に戦力を削ぎ始める。他の艦隊も程なく追いつき、敵艦隊を蒸発させていく。

 

敵艦隊が減っていく中。

 

いさながどれも赤色巨星を離れて、群がってくる。じっと様子を見ているのか、それとも。

 

支援者の技術力でも観察しているのか。

 

全く分からない中、戦闘は終わる。敵艦隊は、文字通り消滅。だが、問題が起きていた。

 

更に多数のいさなが出現。二十体以上だ。

 

三十体以上のいさなが、艦隊を取り囲んだ。いさなから攻撃はしてこないが、それでもこれでは身動きが出来ない。

 

完全につかまった。

 

ミランも流石に、冷や汗が流れるのを感じた。







ついにいさなに取り囲まれる第108小艦隊。

いさながワープを自在に出来る上に、支援者のワープ阻害装置も無視してくる可能性がある現状。

その状態は、まさに最大の危機と言えます。



本作にどういった要素がほしいですか。要望があれば遠慮なくどうぞ。

  • 詳細なマシンデザイン
  • 圧倒的な武力による蹂躙
  • 緻密な人間ドラマ
  • 種族や文明の描写
  • 近接した力量のライバルとの死闘
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。