王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶 作:dwwyakata@2024
侵略者の指導者が、研究室にすぐに連絡を入れた。
先の戦闘で、2000体のいさなが、敵の艦隊一つを壊滅に追い込んだ。素晴らしい成果ではあった。
だが、指導者にとっては成果は出て当たり前。
問題はその先だ。
2000体のいさなは、敵艦隊を壊滅させると、そのままどこかに消えた。
一部はワープした挙げ句、侵略者の領内の恒星に張り付いて、言うことを一切聞かなくなった。
一部は肉どもの領内に逃げ込んで通信途絶。
残りは行く先も知れない。
これは明確な欠陥兵器だ。
それを作るように指示したのが指導者である事や。早々に戦線に投入したことなど、指導者は自分の落ち度だとは思っていない。
研究を任せている者達の落ち度である。
成果を出して当たり前。
出せなければ価値なし。
指導者はそう考えていた。
ずっとそう。
古くには、自分が侵略者のあらゆる科学技術を、十世代分は引き上げたからかもしれない。
既に指導者には衰えが出始めている。
どれだけ何を工夫しても、あまりにも指導者という個体単独でどうにかするには無理がありすぎた。
そもそも侵略者と言う種族を、指導者が選定し、弄くり回した結果かも知れない。
既に侵略者は。
肉に対して、技術力の進歩すら、劣り始めている。
それをどうしても認められない指導者は、研究室に向けて吠え猛った。
「この使えない無能どもが!」
使えない。
この言葉は、指導者が何度も聞いた言葉だ。
指導者が言われたことは一度も無い。
まだ指導者が、指導者ではなかった頃。
とにかく気にくわない相手に対して、侵略者は使えないという言葉を使っていた。
その理由について、指導者は分析が出来なかった。
ある者は、単に気にくわない相手に対して、使えないと罵った。
ある者は、適切な指示を与えていないにもかかわらず。自分が脳内でだけ考えている成果を出せない相手に対して、使えないと罵った。
指導者は侵略者の心理を読み通すことが出来たが。
その原因までは理解できなかった。
どう侵略者が考えるか。
それはその存在を見れば理解できた。
誰であっても、手のひらの上だった。
だが、その思考の源泉がどこにあるのかだけは、どうしても理解できなかったのである。
これは指導者という存在が。
生まれながらにして、あまりにも完成されていたのが原因だったのかも知れない。
指導者から見れば。
あらゆる侵略者が無能で使えない存在だった。
学問なんて必要なかった。
全て本を通し見するだけで理解できた。
運動など無意味だった。
あらゆる運動分野で、それまでの世界記録をゆうゆうと乗り越えて見せたからだ。
そんな存在だったからこそ。
指導者は、周りの侵略者などゴミにしか見えなかったし。
全てにおいて使えない存在だった。
唯一好きだった娯楽作品でも。
登場する侵略者の生き方やドラマなどどうでも良かった。それもまた、それが理由だったのかも知れない。
「屑はいらん。 お前達には、永遠に拷問を与えてやる」
そう吐き捨てると、すぐにそれを実行する。
そして代わりを即座に生産する。
あまりにも指導者の前には命が軽い。そして、指導者自身も、命に価値など見いだしていなかった。
怪物。
そう言われたことがあったことを、指導者は覚えているが。
どうでも良かった。
逆らう存在は殺すか全て実験材料にした。
歴史上の支配者が皆やってきた事だ。
指導者が今更何をためらうことがあっただろう。
「すぐに制御できるように調整して再生産しろ」
「分かりました」
新しい研究チームが作業を開始する。
そして、作業中の、口答えを例外的に許している研究者に回線をつなぐ。
そいつは、ずっと考え込んでいた。
「成果が出ていない。 さっさと成果を出せ」
「指導者様。 これ無理です」
「なんだと……」
「そもそもいさなは、どうやら三次元生命体ではないですね。 高位次元から体の一部が三次元世界に粒子として出ているだけです。 三次元でダメージを受けても、実際にノーダメージなのも、好き勝手にあちこちに出現できるのも、それが理由ですわ」
「ではどうして再現できた!」
苛立ちながら指導者が聞くと。
簡単だと親衛軍の研究者は応える。
「媒体です」
「媒体だと?」
「恐らくアンドロメダ銀河のどこかにいさなの本体が……それも四次元か、或いは五次元に……もっと上の次元かも知れませんが、存在しているんでしょう。 我々で擬似的に作り上げた粒子体は、単なる媒体。 それを通じて、いさなの本体が三次元世界をのぞき見しているんです。 我々が漫画でも読むように」
これ以上はまずいと、研究者は言う。
いさなは本来は温厚な存在だが、本気で怒らせると天の川銀河程度なら簡単に滅ぼしかねない。
アンドロメダ銀河で見かけた更に巨大で強大な個体。
アンドロメダ銀河で振るった次元違いの力。
侵略者の総力を挙げても、あれらには勝てない。
そう研究者は言い切った。
「一旦この研究は打ち切るべきです。 これ以上上位存在に手を出すと、何が起きるか……」
「黙れ黙れ! この世界で一番尊いのは私だ! この世界の全てが私のものだ!」
「三次元世界の我々の領土内ではそうかも知れませんが、流石に高位次元となると……」
「貴様ァ!」
キレた指導者は、親衛軍の研究者を焼却。
それから再生したが、此奴は一度すねるとパフォーマンスを出すまで時間が掛かる。
案の定すねた。
舌打ちして、研究を進めておけとだけ言って。指導者は通信を切った。
何が高位次元の存在か。
高位次元にいようがいまいが関係ない。
全て指導者のものだ。
全て指導者に従わなければならない。
そう指導者は考えていた。
その考えに揺らぎはない。生まれて数年で、あらゆる侵略者が無能極まりないことを理解し。
それらが一切合切使えないと判断した。
そんな指導者だからこそ。既に衰え始めている今。今更考えを変えることは出来なかった。
(続)
いさなの恐るべき正体がどんどん明らかになっていきます。
侵略者の指導者は、文字通り火薬庫の隣で火遊びをしていたことになるのです。
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