王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶   作:dwwyakata@2024

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圧倒的な性能を持つ粒子生命体いさなに完全包囲されたミランのいる第108小艦隊。

しかもいさなの数は増える一方。

逃げられる可能性は皆無。戦っても100勝てない。

試練の時が来ました。





別銀河の住人
序、包囲


既に第108小艦隊を囲むいさなの数は100体を超えていた。

 

少し前に、四十万隻の第二十九艦隊が全力の攻撃を仕掛けたにもかかわらず、二千のいさなに一蹴されたのである。

 

二万隻の艦隊が勝てるわけがない。しかも第108小艦隊は、主力級の敵部隊と戦う事を想定した重武装をしていない。

 

調査どころじゃない。

 

他の星系からいさながどんどん姿を消していることもある。

 

それもあって、総司令部からは、このままいさなを引きつけろという命令が出ているようだが。

 

ミザラット准将に、混乱した艦隊の各位が詰め寄っている状態だった。

 

「幸いワープは出来ます! 別の星系に逃げ込むか、主力部隊のいる位置まで逃げるべきです!」

 

「あのような数ではとても……!」

 

「少し黙られよ」

 

ミザラット准将が言うと。

 

流石に皆黙り込む。

 

しばしの沈黙が流れたが。

 

あまり良い流れではないとミランは思った。

 

「この間の戦闘で、いさな一体のためにどれだけ作戦行動が遅延したかは、皆も分かっていると思う。 幸いいさなに攻撃をしてくるつもりはないようだ。 今のうちに、出来るだけデータを集める。 それしかないと拙者は考える」

 

「し、しかし」

 

「攻撃を受けたら、一網打尽です!」

 

「私はミザラット提督に賛成です」

 

そう言ったのは、ヴァッハー少佐だった。

 

まだ幼い参謀は続ける。

 

「私はいさなを攻撃して交戦データを取るべきだと考えていました。 しかし、交戦そのもののデータが本当なのか著しく疑わしいと今は思っています」

 

「どういうことだ」

 

「は、はい。 短距離ワープに、倒したと思っても消えているので本当かどうかも分からない。 第二十九艦隊との交戦では、四十万隻の艦隊からの総力攻撃を受けて、一体もロストしていない。 それに、侵略者の艦隊に攻撃している所も確認されています。 いさなは侵略者の兵器ですらないのかも知れません。 本気を出すどころか、遊んでいるだけの可能性すらあります」

 

「同感です」

 

ミランが言うと、皆が黙る。

 

ヴァッハー少佐とミランも同意見だ。いさなの動きは、あらゆる意味で不可解が過ぎるのである。

 

すぐ近くでいさなを見た時。

 

粒子の塊であり。

 

光の紡錘であるいさなも、こちらを観察しているように見えた。

 

それはただ観察し合っただけの事であって。

 

意思疎通などではなかったとも思う。

 

だが、それにしてもだ。

 

いさなの行動に、敵意はなかったように思う。

 

こちらが敵意を向けたり。

 

うっとうしい無人ドローンを差し向けたりすると攻撃してくるようだが。

 

「しかし攻撃を受けたらどうする。 この艦隊では、一瞬で壊滅させられてしまう」

 

「こちらから攻撃すれば、いずれにしても一瞬で壊滅に追いやられると私は思います」

 

苦言を口にする参謀に、ヴァッハー少佐が言うと。

 

誰もが黙り込む。

 

その通りだからだ。

 

前線を張っていた重武装の第二十九艦隊が一瞬で壊滅に追い込まれたのである。この艦隊では、先制攻撃を掛けたところでどうにもならない。

 

ワープ阻害装置はまだ穴も多い。

 

それどころか、支援者のワープ阻害装置では、いさなのワープを阻害できない可能性さえある。

 

ワープのテクノロジーが進んでいるのなら。

 

ワープで逃げても、追いつかれる可能性も高いのだ。

 

それらを丁寧に説明するが。

 

大佐の一人が、ヒステリックに叫ぶ。

 

「し、しかし怖いのだ!」

 

「私はウォーリア四型に乗ってすぐ近くにいるいさなを目撃しています。 戦艦に乗っている貴方に比べて、もっと危険な場所で遭遇しましたが」

 

「……っ」

 

恐怖を口実に混乱を煽りかねない大佐に。

 

ミランがそう言うと、相手も流石に黙り込んだ。

 

戦艦だって貫かれるいさなの攻撃だが、それでも位相変換シールドを装備している戦艦である。

 

ミランのウォーリア四型よりはずっとマシだ。

 

ミランのウォーリア四型も超重カスタム機とは言え、所詮はウォーリア。どれだけ背伸びしても、いさななんかに勝てるわけがないのだ。

 

ミザラット准将が結論を出す。

 

「というわけで、ジタバタしても仕方がない。 各自待機して、情報を出来るだけ探れ。 無人ドローンは飛ばさず、各艦艇からあらゆる手段でいさなを観察してくれ」

 

「了解……」

 

「ミラン大佐」

 

「はい」

 

ミザラット准将がいう。

 

ウォーリア四型で、出来るだけ接近して調べてほしいと。

 

そうだろうなと思った。

 

ミランとしても、提案がある。

 

「それであれば、非武装の調査用飛行機で、自分の助手を同行させたいと考えています」

 

「君のスタッフのロボットか」

 

「はい」

 

「分かった、良いだろう。 だが、くれぐれも気をつけるようにな」

 

敬礼すると、すぐに戦艦ガルバーリアムのドッグへ。

 

ウォーリア四型はいつでも出られる。

 

スタッフが来る。

 

戦闘機隊、ウォーリア隊、攻撃機隊、いずれも出られるそうだが。

 

ミランは首を横に振った。

 

「戦闘をするつもりはありません。 皆は一旦待機。 自分が出て、近くからデータを取ってきます」

 

「そんな、死にに行くようなものです!」

 

ハーネイ准尉が言う。

 

他の戦士達も同意のようだが。

 

これは誰かがやらなければならないのだ。

 

すぐにわかり合えるほど簡単な相手ではないだろう。そもそも言葉が通じるのに、侵略者とは1000期以上戦争が続いているのだ。

 

言葉が通じるならわかり合えるなんてのは、バカの思想だが。

 

いさなは少なくとも、攻撃しなければ攻撃はしてこない。

 

それだけでどれだけありがたい相手か、分からないほどだ。

 

「最悪の場合も、なんとか自分だけなら生き延びて見せます。 逆に言うと、誰も守り切る自信はありません」

 

勿論生き延びる自信もない。

 

だが、ミランがこう言わないと、決死隊が絶対に出る。

 

死なせるわけには行かない。

 

皆、それを聞いて黙り込む。

 

アネカを呼ぶ。

 

「調査用飛行機は、宇宙でも出られますね」

 

「当然や。 ミラン大佐に同行すればええんやね」

 

「そうです。 お願いできますか」

 

「ミラン大佐にはハコトを大事にして貰った恩があるさかいな。 うちとしてはその恩はかえしきれへん。 どこまでだっていくで」

 

頷く。

 

それで、すぐに出る。

 

決死隊が名乗り出る隙を与えないためだ。

 

調査用の飛行機とともに、速度を抑えめに向かう。

 

艦隊は球形陣をとって、いつでもいさなが仕掛けてきても対応できるようにはしているが。

 

陣形なんて組んだって、意味は無いだろう。

 

無言でいさなに近づいていく。

 

近づきすぎると攻撃される可能性がある。特に無人ドローンは近づくだけ即座に撃墜されていた。

 

怖くないと言えば嘘になる。

 

だが、誰かがやらなければならないのだ。

 

いさながこちらに気付いた。

 

数体が寄ってくる。それだけでも凄まじい威圧感である。一体が全長6㎞はあるのだから。

 

スラスターを噴かして、停止する。

 

調査用飛行機に乗ってきているアネカも、一旦機体を停止させた。

 

「アネカ、あらゆるデータを取ってください」

 

「了解や。 とはいっても、艦船レベルでの調査を全力でしている現状を考えると、この小さな飛行機で出来る事なんて、限られていると思うけどなあ」

 

「構いません」

 

ミランはそれから、色々な方法で呼びかけてみる。

 

宇宙でも一応音波は伝わる。方法としては、酸素などを放出して、それを用いて音を伝えるのだ。

 

光通信なども試みて見る。

 

これらは技術的に出来る事を催眠学習で知っているだけで、原理を全部理解できるわけではない。

 

コンソールをいじって、そこからやる。

 

流石に思考制御型のウォーリアでも、普段使わない機能はこうやってコンソールからやるしかない。

 

いさなは周囲で身をくねらせているが。

 

反応しているかさえ分からなかった。

 

攻撃と取られる行動は、徹底的に避けなければならない。

 

色々とコミュニケーションを試してみるが。

 

ちょっとこれは駄目だな。

 

全くというほど、相手と意思疎通が出来ない。仮に出来ているとしても、こちらでは分からない。

 

ただ、諦めずにしばらくは続けてみる。

 

ウォーリアのコアの中は別に窮屈ではないが、これほどの時間連続で宇宙に出ているのは初めてかも知れない。

 

無言で淡々と意思疎通を試してみるが。

 

相手はやはり身をくねらせているだけだ。

 

そして包囲を解くつもりもないらしい。

 

だが、それは包囲なのだろうか。

 

それすらも分からない。

 

遊んでいるだけではないか。そういう意見もある。だとすると、遊びに来ているだけの可能性も否定できない。

 

「ミラン大佐、なんら反応なしや。 音波、電波、光、重力、粒子、素粒子、色々調査しとるけど、特段変わった反応はないわ」

 

「……分かりました。 もう少し色々試してみます」

 

「了解や」

 

ミラン自身から、直接呼びかけてみる。

 

自分が支援者の特務のミラン大佐であること。

 

惑星アラタが侵略者に襲われて、それから助けてくれた支援者に加わったこと。

 

各地で侵略者の凶行を見てきたこと。

 

今は、侵略者を打倒するために戦っていること。

 

それらを音波をはじめとする色々な手段で、相手に伝えようと試みて見る。ミラン自身も、出来るかは分からないが。

 

それでもやって見る価値はある。

 

しばらく通信を試みたが、やはり反応はない。ずっといさなはみをくねらせているだけ。それが反応なのかも知れないので、データを取らせるが。

 

ともかく。霧でもつかむような感覚だとミランは思った。

 

一度引き上げることにする。

 

ウォーリア四型が遠ざかっても、いさなは追ってこない。

 

こちらを認識さえしていない可能性も極めて高い。だが、一度や二度では無意味だとも思う。

 

だから一度戦艦ガルバーリアムに着艦すると。

 

アネカにデータをまとめてレポートを出すように頼み。

 

ミランは、休憩することにした。

 

アネカがレシピを作ったからか、ハコトも同じように料理が出来る。少し宇宙に長く出過ぎていて、疲れた。

 

温かいものを口にするが、別に冷えていてもいい。

 

軽く仮眠を取って、風呂にも入っておく。

 

体を乾かしていると、ハコトから通信が入る。

 

「お姉ちゃんがレポートを出しました。 総司令部にも、今同時に提出したそうです」

 

「ありがとう。 体を乾かしたら、また出ます」

 

「もう、ですか」

 

「もう、です」

 

状況が良くない。

 

第108小艦隊はいさなに攻撃を受けたらひとたまりもないほどの規模でしかない。

 

しかもまだまだいさなは増えているようで、ついに120体を越えたようだ。

 

この状況だと、誰がいつ恐怖から暴発してもおかしくない。

 

出来るだけ急ぐ必要がある。

 

アネカが飛行機に乗り込むと、ハーネイ准尉が挙手。

 

「操縦だけでも小官に任せていただけませんか」

 

「あ、ずる……」

 

戦闘機乗りの一人が言う。

 

ミランは少し考えてから、ハーネイ准尉の好意に対して、謝絶していた。

 

「とてもありがたい申し出ですが、今回は待機していてください」

 

「分かりました」

 

ハーネイ准尉は残念そうだが。

 

此処で特例を認めると、我も我もとなる。

 

あまり自覚はなかったが、歴戦の猛者である戦士達が、ガルバーリアムのドッグで見かけたミランにサインをねだってくる事が何度かあって。

 

それで想像以上に、一種の信仰を受けていることに気付いてしまったのが大きい。

 

である以上、余計な事をすると、面倒なことになりかねない。

 

後でハコト経由で、それはハーネイ准尉に伝えておく。

 

ただでさえハーネイ准尉はあの悪名高いアルカラルドの民の出身だ。それもあって、周囲からの孤立は避けた方が良いだろう。

 

二度目の出撃だ。

 

いさなは反応はしないが、ただミランが近づいても攻撃はしてこない。先と同じように、あらゆる手段で、コミュニケーションの確立を試してみる。

 

試しては、見るが。

 

それが好意的にとられているとも。

 

いらだたしいと思われているとも分からない。

 

ただ、接近してみて分かったが。

 

やはりいさなは、生物であるように思う。

 

兵器だったら、囲んだ時点で殲滅に来ているはずだ。まだ制御などが極めて不完全な生物兵器の可能性もあるにはあるが。

 

それはそれとして、今いさなと戦う理由はない。

 

それもまた、事実だ。

 

通信を入れ続ける。

 

それが無駄に終わっているかも知れなくとも、だ。

 

やはり周囲でいさなが体をくゆらせているようにしか見えない。その動きに規則性がないかをアネカに解析させてもいるが、まだなんとも言えないようである。

 

しばらくは、まったく手応えがない調査を続ける。

 

こればかりは、他の誰にも任せられないのだ。

 

しばらくして、流石に疲労がたまってきた。

 

間近にあれだけ強大な存在がいるのだ。いざという時、即座に逃げに徹するとしても、限界がある。

 

またガルバーリアムに戻る。

 

かなり疲労がたまっている。

 

すぐ寝ると言って、自室に。手応えがないが、続けなければならない。

 

仮眠を取るが、寝苦しくてすぐには眠れなかった。

 

惑星アラタでも、ファーガを狙う獣とやり合うことはあった。それとは比較にならない威圧感を感じる。

 

ぐったりしていると、連絡。

 

よりにも寄ってパデラクスからだった。

 

「ミラン大佐! 興味深いレポート、見せて貰ったよ!」

 

「なんら成果が出ていませんが……」

 

「相手の反応がないというのが、立派な成果だとも!」

 

相変わらず楽しそうだな。

 

そう疲弊しきったまま、ミランは思う。

 

此奴にとっては。森羅万象の全てが娯楽なのかも知れないとさえ感じた。だからこそ、腹が立つのだが。

 

「これからデータを送る! これに沿って、いさなとコミュニケーションの確立をもくろんでほしい!」

 

「貴方がやられては」

 

「私もそっちに今すぐワープして行きたいくらい何だが、多数のプロジェクトを同時に抱えているんだ! 本当に心苦しい!」

 

此奴はいかれているが、それはそれとして此処で嘘をつくとは思えない。

 

実際にこっちに飛んで来かねない。

 

それを思うと、ミランは自分で言っておきながらげんなりしていた。

 

パデラクスと膝をつき合わせて話をするなんて(相手の全身は脳以外機械だが)、考えるのもおぞましかった。

 

「では頼む! 私からも君の活躍については、総司令部に推薦をしておこう!」

 

言うだけ言って通信を切る。

 

途中から話を聞いていたらしいハコトが、頭を振っているミランに温かい飲み物を出してくる。

 

「マッドサイエンティストはどこにでもいるものですね」

 

「あれで仕事が出来るというのだから困りものです。 もう少し休憩をとってから出ます」

 

「分かりました。 貰ったデータでコミュニケーションの確立を狙うべく準備をしておきます」

 

「お願いします」

 

ぐいと温かい飲み物を飲み干す。

 

ファーガの栄養液の味。

 

美味しいはずなのに。

 

疲労がたまっているからか、あまり嬉しくはなかった。







特務であるというのは、一番大変な仕事をしなければならない、ということです。

ミランの此処での任務は。

いさなとの直接交渉です。



本作にどういった要素がほしいですか。要望があれば遠慮なくどうぞ。

  • 詳細なマシンデザイン
  • 圧倒的な武力による蹂躙
  • 緻密な人間ドラマ
  • 種族や文明の描写
  • 近接した力量のライバルとの死闘
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