王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶 作:dwwyakata@2024
パデラクスが結論を示す。
議会での発表案件である。立体映像で出ている支援者の最高幹部達に、パデラクスはまったく恐れずに意見を述べていた。
胆力が凄まじいというのではなく。
単に頭のねじが飛んでいるだけである。
それは支援者の最高幹部全員が知っていて。
全員がうんざりしていた。
「まず第一にですが、いさなが用いていたワープ阻害装置を無視したワープですが、再現は現時点では不可能です」
「具体的に説明してくれたまえよ」
議員の一人が言う。
彼も各地で実績を上げ、国力の強化に貢献してきた、この議会に出るにふさわしい議員である。
頭脳のできは劣悪ではないが。
パデラクスはとにかく、飛び飛びに話す傾向があるので。
此処に出てくるような人物でも、話が聞き取りづらいのだ。
頭が良すぎて、そうでない相手と合わせづらいのだ。
「簡単に説明いたしますと、あれは上位次元……最低でも六次元以上の次元を通って、意思だけを移動させていますね。 粒子に関しては、その辺りの星間物質を適当にかき集めて、それを媒体にしたようですねえ」
「そんなことが可能なのか!」
「まず第一に、我々にも侵略者にも、そもそも意思だけ、それも六次元なんて高次元を通って、遠隔地に運ぶことは不可能です。 文字通り漫画の登場人物と読み手の差です! これはまさに、我々が神と呼ぶ存在とのファーストコンタクトですよ! 素晴らしすぎて……」
「いや、それは分かった。 それで、第二は」
クアーラ議長が窘めると、パデラクスは続ける。
今までの興奮が嘘のように、である。
「続いて無理な理由は、そもそもこの空間転移は、粒子を遠隔で操作しただけ、ということです。 物質が存在する確率を操作して、遠隔地に移動するワープ技術は、そもそもワープ阻害装置を突破できません。 物質が介在する以上は不可能です。 そういう観点では! いさながやっていたのはワープではなくて、遠隔地に通話していたようなものですね!」
「な、なるほど……」
「そうなると、全域におけるワープ阻害装置の見直しと、改良の必要は現時点ではないと見て良いか」
「必ずしもそうはいえないですが」
パデラクスは挙げて落としてくる。
簡単にといいながら、いくつか技術的な説明をした。
まず今回のいさなの件は、艦隊を運んだりするテクノロジーとしてはとても利用は出来ない。
だが熱や粒子などを特定の手段で兵器化して。
特定の座標で特定の反応を起こさせる。
そういった事なら可能かも知れない、というのだ。
「クリアするには最低でも六次元以上の高次元へのアクセス手段の確保と、それを通じて安定した通信を行うテクノロジー。 出来たとしても粒子や物質を多少操作するだけ。 いさなのような大技は無理ですよ。 そうですねえ、私があと1000期研究を全力で続けても、再現は難しいと言っておきます」
「でも不可能ではないと」
「未来には出来る可能性がありますね。 ただ、短距離ワープを兵器化も出来ていない我々には、まだ遠い未来の話でしょう」
相手の船内にミサイルや熱量を直にワープさせる。
いわゆるワープ兵器だが。
これについては、一応実験では成功はしているが、再現性が低い上にコストが掛かり過ぎる事もあって、現時点では再現は不可能。戦場に小型のワープ阻害装置を持ち込めるようになる方が早いだろうと言われている。
いずれにしても、侵略者に再現は出来ない。今の時点では。
そう結論して問題ないと、パデラクスは言い切った。
それで皆が安心するが。
もう一つ、パデラクスが爆弾を投下する。
「それよりも、天の川銀河中を観測していた超光速通信網に、面白いものが引っかかりました」
「何の話だ」
「これが素晴らしい結果です! 侵略者の奥まった領域で、一度に大量の通信異常が発生しました! ミラン大佐といさなの会話の内容からして、多分これ、いさなによる侵略者への制裁かと」
「!」
それを聞いて、議員が一気に興味を示す。
それはそうだ。
侵略者の指導者が何者で、どこにいて、どういう存在なのかは全く分かっていない。
一般的な侵略者とはまるで違う存在であるらしいことは分かってきている。
この間のメタトロンの残骸から発見された脳の一部は、通常の侵略者の百倍にも達するサイズだった。
恐らくは、原形をとどめないほどに体を改造したのだろう事は分かる。
だとすると。
どこの星に潜んでいても、発見できない可能性があるのだ。
「このときの通信を確認して、こちらで解析します。 うまくいけば! 侵略者の指導者が潜んでいる星を確認できるかも知れません! 長期間は同じ場所にいない可能性もありますがね!」
「……分かりました。 その場合は、強襲作戦を考えましょう」
「議長?」
「侵略者の指導者がどのような状態でいるか、それを確認するのは極めて大事です。 メタトロンの残骸から回収された死骸を見る限り、己を並列化して多数の同一存在がいると見て良いでしょうが、その一つでも、稼働設備ごと抑えれば。 或いはまとめて、全ての指導者を沈黙させられる可能性もあります」
議会がにわかに色めきだつ。
もしそうなれば。
天の川銀河を襲う災厄。
侵略者と言う存在を。
黙らせる事が可能になるかも知れない。
1000期以上続く侵略者との戦いは、支援者を疲弊させてきた。クローンやロボットの投入で、戦線を支えている側面はある。
今は優勢だが、それでも休戦出来ればしたいというのが誰もの本音なのだ。
あの明らかに狂っている指導者を、どうにか黙らせる事が出来れば。
「調査を続行してください。 もしも居場所を特定できそうなら、強襲作戦は軍で考えて貰います」
「了解しましたぁっ!」
パデラクスが嬉しそうに通信を切る。
一つ。
この永遠に続くかも知れないと思われていた戦いに、希望が見えた。
その瞬間だった。
(続)
いさな騒動の結果、なんと侵略者の指導者の(端末の一つの)居場所が明らかになるという、大きな成果が出ました。今までは探るすべすらありませんでしたので。
これは大きな成果です。
そして、この成果により、史上最大規模の作戦が開始されます。
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