王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶 作:dwwyakata@2024
白鳥星系の駐留艦隊は正直手強い相手ではありません。
問題は連なっている要塞群と、要塞化されている各惑星です。
しかも兵力を増やしすぎると、敵が即時で自爆を選びかねません。
ギリギリの勝負が始まります。
パドフ中将の指揮で、第四艦隊を中心とする艦隊が、集中攻撃を浴びせる。敵は大軍ではなく、強力な要塞を主軸にした部隊だ。工作艦を守りつつ、敵艦隊を排除。要塞も排除する必要がある。
この作戦のために、多数の最新鋭の盾艦が用意されてきている。
既に敵の岩石惑星が要塞化され、恐らく今まで一定の戦果を挙げている重粒子砲が装備されているだろう事は分かっている。
作戦もそれを前提に立てられていた。
星を砕くのは好ましい行動ではない。
だが、場合によっては決断しなければならない。
また、敵の要塞の応射も苛烈だ。
星系に突入した時に八つ要塞を破壊したが、どれも退路の邪魔になる小さなものばかりだった。
第一から第四までの惑星はどれも重粒子砲を使ってくる可能性がある上、まだまだ星系には強力な敵要塞が控えている。
少なくとも工作艦で第三惑星の移動を開始するのは、第三惑星の無力化を果たしてからになる。
工作艦には基本的に戦闘力は無い。
重粒子砲なんて食らった日には、作戦が全て台無しになるのだ。それに、である。
今、駐留艦隊は蹴散らしているが、これで終わりの筈がない。指導者がこの星系にいるならなおさらだ。
「現在健在な要塞は6! いずれもが直径五十㎞規模のものです!」
「鹵獲は必要ありません。 破壊してください」
「反物質砲用意!」
大火力の破壊兵器と言えばこれだ。
勿論たたき込む前に相手の位相変換シールドを抜く必要がある。各艦が猛烈な射撃を、要塞1とされたものにたたき込む。百五十万隻が第三惑星を中心に群がっている状態だが、それでも統制はとれている。
今ここにいる艦隊の提督達が、皆歴戦だからだ。
そのまま、敵の要塞主砲が一斉に放たれるが。
こちらの大型盾艦が受け止める。一隻が撃沈されるが、まだまだ。大型盾艦は、かなりの数を用意してきているのだ。
「パーミルトン大将から通信!」
「どうしました」
「この星系に向かう敵艦隊と会敵! 規模、百万隻超!」
「好都合ですね。 そのまま食い止めていてくださいと通信を返しておいてください」
どうせ総力戦になるのは目に見えていた。中軍にいるパーミルトン大将は、恐らく予備戦力も集めるはずだ。
だが、ここまで来ている。敵も流石に狙いに気付くはずである。
前線に出向いている敵艦隊を呼び戻しはさせない。
そのため、前線では敵艦隊に猛攻を加えているのだ。
支援者の艦隊およそ2億の内、四割に達する艦艇が、何らかの形で今回の戦闘に関わっている。
それだけ、長きにわたった戦いを終わらせたい。
その願いが強いのである。
要塞1の位相変換シールドが崩れた。各旗艦級戦艦が、それと同時に反物質砲をたたき込む。
惑星ですら崩壊させる火力のものだ。
直径五十キロ程度の要塞では、この規模の艦隊に配備されている最新鋭旗艦級戦艦の、反物質砲の一斉射には耐えられない。
要塞1が崩壊し、火球となって消えていく。
それは周囲の敵艦隊を多数巻き込み、兵士達が歓声を上げていた。
「やったぞ!」
「ざまあみやがれ!」
「敵第四惑星に高エネルギー反応! 惑星が展開していきます!」
一瞬で歓喜がかき消される。
表面を焼き払われた第四惑星が、文字通り割られた果実のように開いていく。惑星そのものが、兵器となるのか。
惑星大の構造物は支援者にもある。
だがこれは、流石に前例がない代物だ。
「展開しきる前に叩け!」
「既にエネルギー充填完了している模様!」
「超大型盾艦!」
「向かわせています!」
艦隊からも、亜光速ミサイルがたたき込まれるが、大気というバリアがとにかく大きい。
それでもダメージを与えることには成功するが、形を変えていく第四惑星は、それ自体が巨大な砲台になる。
そして、パドフ中将は理解する。
これはあの、惑星をまるごと食らった化け物ナノマシン兵器が放ったのと同じ。惑星規模の重粒子砲だ。
やはり使えると判断して、使ってきたわけだ。
しかも今回は、恐らく事前に準備していたのだろう。
それとも、惑星の表面がやられた時点で、一般侵略者は即座に溶かされて、材料にされたのかも知れない。
あの指導者ならやりかねないことだ。
「全艦、反物質砲用意。 第四惑星を砕きます」
「し、しかし」
「前回、あの規模の重粒子砲と戦闘した時、十数万隻の艦艇が撃沈されました。 同じ轍を踏むわけにはいきません」
「敵第四惑星、重粒子砲発射! 超大型盾艦、最大出力で展開します!」
凄まじい衝撃。
超大型盾艦の位相変換シールドでも防ぎきれない。
三隻が撃沈され、代わりに後方の艦隊を守った。仕返しとばかりに、一斉攻撃が開始される。
星を砕くなど、本来はあってはならないことだ。
だがこの星系は元々無人星系で、知的生命体も他の生命体も存在しなかった。侵略者が運んできた人工惑星が、恐らく指導者の美学に沿って改装されたのだ。
破壊するしかない。
見る間に第四惑星が砕けていく。
だが、総力を挙げての攻撃の間に、他の敵要塞から攻撃が殺到する。味方の艦隊の被害が大きくなっていく。
第四惑星に、反物質砲の一斉射が突き刺さると。惑星がコアから破壊され、凄まじい爆発を引き起こした。
すぐに他の要塞を潰しに掛かる。
地上部隊は。
パドフ中将はまずいなと思いながら、確認する。
「ミラン大佐はどうしていますか」
「立て続けに四機の親衛軍ウォーリアを倒しました! 前線で奮戦を続けています!」
「……流石ですね」
すげえと、声が上がる。
特務が部隊がかりで仕掛けて、ようやくどうにか出来るのが親衛軍ウォーリアだった。恐らくだが、ミラン大佐が何らかの形で軍からいなくなれば、それはまたしばらく同じ事になるだろう。
ウォーリアのテクノロジーは支援者の方が進み始めているが、それはそれとして特化型ハイエンド機の破壊力は、一般の量産機ではどうしても及ばないのだ。
ただし、戦況が優位というわけでもない。
「敵地上部隊の規模は想像以上で、苦戦が続いています!」
「分かりました。 少しでも戦況を改善するために、こちらも奮戦しましょう。 要塞艦を前に」
「要塞艦前進!」
激しい殴り合いが続く戦況で、要塞艦が前に出る。
重武装の戦艦も前に出ているが、相手が要塞では分が悪い。高出力の主砲がまだ五つも残っている要塞から、連続して放たれている。盾艦もあまり長くはもたない。
更に状況が悪化する。
「パーミルトン大将から連絡! 予備部隊も会敵! 規模はまだ不明ですが、各地で戦闘が続いています!」
「想定通りです」
「パドフ中将……」
「何のためにこれだけの艦隊が出たと思いますか。 この戦いで、侵略者の指導者に迫る事が出来る可能性が高い。 各員、奮励してください。 援軍は敵も味方もこない。 そういう想定で戦います」
「了解!」
火力を集中して、一つずつ要塞を潰す。更にもう一つ、要塞が爆散した。だが味方艦隊は損傷しているものも多く、要塞艦による補給、修理はあまりうまくいっていない。更には敵は工作艦を狙ってきている。
ある程度、狙いは分かっているのかも知れない。
更にだ。
「敵第三惑星に高エネルギー反応!」
「来ましたね……」
侵略者の指導者としても、使わない理由がない。
周囲を守る人員をすりつぶしてでも、宇宙艦隊を撃退する。そういう気になったのだろう。
パドフ中将も編成を切り替える。
被害が大きい超大型盾艦を展開。まだ、働いて貰う。
要塞からの攻撃も苛烈さを増す。小型の工作艦から隕石をマスドライバで飛ばさせているのだが。
それによる質量攻撃も、相手からの亜光速ミサイルで相殺されている。
結局、一つずつ飽和攻撃で破壊していくしかない。
要塞、更に一つを沈黙させる。沈黙させた後、反物質砲で黙らせる。
だが、敵第三惑星は、更にエネルギーを充填しているようだ。
「地上部隊は」
「工作班、苦戦中! まだ拠点制圧も十分ではなく、その中でのハッキング、しかも敵の本丸となると……」
「敵第二惑星にも高エネルギー反応!」
やはりか。
人工惑星である以上、要塞化していてもおかしくない。
既に敵の宇宙艦隊は潰したが、要塞複数に加えて。更には重粒子砲を装備している要塞化した惑星があるとなると。
簡単に対応できる相手ではない。
パドフ中将は、冷静に指示を出す。
「艦隊のフォーメーションを変更。 第三惑星を盾にする形で布陣し直します」
「しかし、それだと第三惑星からの重粒子砲をまともに受けることに……」
「超大型盾艦がもっている間に、重粒子砲を黙らせるしかありません」
それにだ。
そもそもとして、第三惑星の要所制圧は、タイムリミットが近い。
あまり長引くと、侵略者の指導者は、身の回りのものを破壊した挙げ句に自爆する可能性が高い。
今ですらDBを物理的に初期化していてもおかしくないのだ。
乱戦の中で、少しでもそれらの阻害をしなければならない。
第三惑星を盾にし、敵の攻撃を防ぐ。その瞬間、第三惑星から、重粒子砲が放たれた。
超大型盾艦がまた数隻粉砕される。
十万隻を消し飛ばす火力の重粒子砲だ。そう何度も耐えられない。そして今ので、超大型盾艦の部隊が、既に限界近い。
「つ、次に至近から重粒子砲を受けたら耐えられません!」
「敵要塞接近! こちらに近接戦闘を挑んでくるつもりのようです!」
「要塞を各個に撃破」
動揺する艦隊の幕僚に、パドフ中将は冷静に指示を出し続ける。
これは今まで経験した中でも、最大の苦闘になるかも知れない。
そう思いながら。
ハーネイ少尉は、支援者の戦闘機であるファイター(用途は様々あれど、基本的にファイターに様々な型番を振ることで差別化している。 今乗っているのは空戦専門の機体である)を駆りながら、凄まじい戦闘だと思った。
四方八方全部が敵で。
展開している艦隊が、片っ端からそれをなぎ払ってもなおも足りない。強襲揚陸艦まで戦闘に参加しているが、猛攻を受けて被弾が酷い。
戦闘機も次々飛んでくる。
僚機が落ちるのを何度も間近で見た。
それでも、怖いとは思わない。
ミラン大佐は、さっきから次々にウォーリアを倒し。親衛軍ウォーリアまで連続で打ち倒している。
それで兵士達が噴き上がり。
凄まじい戦況にもかかわらず、戦意を滾らせて敵に向かっていっているのだ。
ハーネイ少尉だって負けてはいられない。
来た。
三時方向に三機。
連絡して、ドッグファイトに移行する。
大気圏内では基本的にレールキャノンとレーザーが用いられる。ミサイルは速度が出ないこともあって。使われないことが多い。
苛烈な射撃をかいくぐり、戦術コンピュータの支援も受けながら、敵機にレールキャノンをたたき込む。
爆発。
一機撃墜し、すれ違う。残りの二機は、僚機と戦闘をし始める。前から更に三機。連続して射撃を浴びせてくる。
機体をぐんと浮かせて回避しつつ、回り込みに掛かるが。三機が綺麗に連携して、ハーネイ少尉の機体を潰しに来る。
そのうち一機が、地上の対空車両の網に掛かり、撃墜される。
その穴に突貫して、挟み撃ちを回避。
凄まじいGが掛かるような機動だが、すこぶる調子が良い。対Gのテクノロジーが、アルカラルドⅠのものとは次元違いなのだ。
戦闘機に乗っているのが。
意思もなく命もなんとも思わない。この世の最果てみたいな存在で。自分達の祖でもある可能性が高い。
それはハーネイ少尉も知っている。
周りから色々言われたのだ。
それについては、受け止めるしかないとも思っている。
ミラン大佐はそれを一切責めなかった。
ハーネイ少尉の事情を知っているから、というのもあるだろう。
ぐんと回り込みながら、相手機の背後をとる。そのまま、猛射を浴びせ、撃墜。だが、後方に一機。
猛射を受けて、被弾。
だが、撃墜に至るほどのダメージではない。
煙を噴きながらも、ガルバーリアムに一度帰投。ガルバーリアムの対空砲火が、その機体を追い払ってくれた。
すぐにドッグに滑り込む。
ドッグは修羅場だ。
ウォーリアがボロボロになって戻ってきている。パイロットもボロボロで、担架で運ばれていた。
内部でも怒号が飛び交っている。
戦闘中だ。
みなかっかしているのは仕方がない。
「ハーネイ少尉、帰還! 撃墜2!」
「よし、休憩を入れてくれ。 修理はやっておく」
「了解!」
走り回っている周りに突き飛ばされないように気をつけながら、給水所に。
吐いている奴がいるが、構っている暇はない。
ミラン大佐ですら、苛烈な戦闘の後にはぐったりしていることがある。あの英雄の中の英雄がだ。
一般の兵士なんてこんなものだ。
それはハーネイ少尉だって同じである。
栄養を食事の形でかっ込む。
一瞥するが、ハコトは忙しく動き回って、ウォーリアの修理をしている。アネカは確か工作班と一緒にハッキングの最中の筈だ。此処にはいられない。
横になって、指定の時間休む。
目が覚める。
出撃する。
起き出すと、ファイターの応急処置は終わっていた。すぐに出る。戦況は改善などしていないのだから。
カタパルトから射出されて、空に。
それにしても、惑星アルカラルドⅠよりも更にくすんだ空だ。
あの星も、美しい故郷とか言いながら、空はどんより、川は汚水まみれだった。
ガルバーリアムの水を飲んで、あまりにも美味しいので絶句したほどだ。これでも色々な汚物を浄化した末の再生水らしいが、全くそんなものは感じなかった。
支援者も、今はまともなだけかも知れない。
だけれども、アルカラルドⅠよりかは、ずっと戦う価値がある。
あの星は、まるごと戦う価値がない星だった。
今ではそう思う。
戦闘機。まだ来る。宇宙からの増援を得ている様子はない。宇宙でも味方は大苦戦しているようだが、敵はもっと苦戦しているのだ。
凄まじい殴り合いを、さっさと終わらせなければならない。
レールキャノンの応射をして、すれ違う。落とせなかった。すぐに旋回して、背後を取りに掛かる。
ドローンは確かまだ敵の方が若干上らしいが、戦闘機は既に支援者の方が上だ。この戦闘機もそう。
旋回性能も対G性能も、既に上回っている。
背後をとる。更に背後に来ているが、今は無視。そのままレールキャノンをたたき込んで撃墜。更に、左右に大きく振って、敵の猛射を回避しつつ、味方の対空砲の網に誘い込む。
それに気づき、ためらった敵機を、ガルバーリアムの対空射撃が貫いていた。火球になって爆散する敵機。
次。
味方の戦闘機が、敵三機に追い回されている。
其処に斜め上から参戦して、敵機を一機、瞬く間に葬る。味方機はボロボロだが、これで逃げる隙を作れた。
そのまま、更に残りにも射撃を浴びせるが、流石にそれで落とせるほど甘くない。
「ハーネイ少尉、感謝する」
「いえ、すぐに修理に戻ってください」
「分かった! グッドラック!」
二機、旋回して背後を取りに来る。
だが、相手の技量を見る限りどうにかなる。ハーネイ少尉は加速しつつ、一気に機体を振って、敵を引き離しに掛かった。
ハーネイ少尉は分かっている。
自分はミラン大佐ではない。
なる事も出来ないと。
だから、自分なりに出来る範囲でやる。エースになどはなれない。実際、ハーネイ少尉と同レベルのパイロットなどいくらでもいる。それは戦場に出てみて、よく分かった。だから、連携して戦うだけだ。
相手を引きつけてから、一気に味方艦の対空砲に誘い込む。敵機はそれで離れようとするが、其処を狙っていた別の味方機が頭上から強襲、どちらもたたき落としていた。
「いい誘導だ!」
「ありがとう! 撃墜は譲ります」
「こちらこそありがとう! 生きて帰ろう!」
「はい!」
姿も違う。
考え方も違う。
生理的に無理な姿をしていることだって多い。とても耐えられないような臭いをしていることだって珍しくない。
だけれども、ミラン大佐はやっていけている。
だったら、やっていくべく最大の努力をするべきだ。
その方が、選民思想を拗らせ散らかした挙げ句、今でもアルカラルドⅠで馬鹿げた殺し合いをしているだろう故国の人間達より何十倍もマシだ。
「敵戦闘機多数接近!」
「対空戦闘車両を守れ!」
「地上部隊、ワーカーが来てる!」
「分かってる! 数が多すぎて、対処で精一杯だ!」
味方機が、迎撃に向かう。
イーターが射撃してくるが、回避回避。味方地上部隊の水平射撃で、イーターは撃破されると信じる。
既に苛烈なドッグファイトが行われていて、敵味方がばたばたと落ちていく。其処に、ハーネイ少尉は乱入し。
敵を少しでも削るべく、奮闘を続けた。
ハーネイ少尉はミランのような英雄ではありませんが、それでも十分にエースになれる実力を持っています。
戦闘機乗りとしての適性が開花した結果、ミランを支援できる十分な戦力に既に成長しているのです。
アルカラルドⅠにもしも残っていたら、この才能は開花せず、腐敗した上層部の餌食になっていずれ殺されていたでしょうね。
本作にどういった要素がほしいですか。要望があれば遠慮なくどうぞ。
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詳細なマシンデザイン
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圧倒的な武力による蹂躙
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緻密な人間ドラマ
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種族や文明の描写
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近接した力量のライバルとの死闘