王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶 作:dwwyakata@2024
戦っているのはミランばかりではありません。
ハッキングチームや工作班が、必死に第三惑星の無力化に努めます。
此処を無力化しない限り、制圧は不可能だからです。
修羅場の中、アネカは必死にハッキングを続ける。工作チームの方にも攻撃が飛んでくる。
シールド発生装置が展開されているが、それだって無敵じゃない。敵の数が多すぎる。完全に囲まれている。
それに、もたついていると、自爆される可能性もある。
パドフ中将は言っていた。
圧倒的な戦力を送り込んで、一気に制圧することは出来ないと。
それをすると、指導者は恐らく、即座に自爆を選択する。それでは、星をまるごと持ち帰る意味が無い。
だから、ギリギリの戦力を準備しなければならない。
むしろ相手に押していると錯覚させる程度の。
今はそれで時間が稼げている。
アネカは必死に手を動かす。
幸い環境は侵略者に極めて都合が良い窒素主体、酸素15%の環境だ。アネカにとっても動きやすい。
ガワは侵略者製なのだから。
「ファイヤウォール、突破成功!」
「まだある! どれだけあるんだ!」
「良いから手を動かせ!」
「今までとはレベルが違うぞ!」
支援者から集められた精鋭ハッカーが苦戦している。アネカは、直接コンソールにつないで調べているが。
かなりまずい。
多機能なサーバというのは、むしろ攻略しやすいのだ。
これはパデラクスに色々弄られている時に仕込まれた知識なのだが。複雑になるほど、穴が出来やすくなる。
むしろ簡単な仕組みになっているサーバの方が、攻略は困難。
穴を作れないし。見つけられないからだ。
しかもこのファイヤウォール、徹底的に頑強に連ねられている。ハッカー達が、美学に反するとぼやいているようだが。
それもそうだろう。
高度なテクニックによって組まれたものじゃない。
とにかく単純極まりないシステムで、相手を通さないことに徹底的に特化しているシステムだ。
それを恐らくは、衰える前の指導者が組んだのである。
手強いのは当然の話、ということになるのだろう。
舌なめずりすると。アネカは解析を工作班に回す。至近で爆発。侵略者側の迫撃砲弾だ。
シールドで防がれたが、それでも至近である。
「おい、こんな戦場のど真ん中だなんて聞いてないぞ!」
「死ぬ! 死ぬ!」
「喚くな! 此処はあの腐れ外道の侵略者の指導者の膝元なんだぞ! 危険手当、山ほど貰ってるんだろ! 覚悟してきたんだろ!」
「それは分かってるけどよ!」
お上品にしている暇なんかないか。
アネカは覚悟を決めると、ケーブルをこめかみに突き刺す。
システムと直接接続。
人工体液が出るが、我慢我慢。後でガワなんていくらでも直せる。ただこれだと、中身に負担が掛かる。
人格データが破損したら、ハコトが悲しむだろうな。
そう思いながら、アネカは一気に計算速度を上げる。体が過熱する。
「データ送るで! ハッカー班のみんな、お願いや!」
「!」
「なるほど、此処からいけるか! しかしこれは……」
「大丈夫、うちは所詮はロボットやで。 とにかく、突破頼む!」
また直撃弾。味方が確実に押されてる。そういう戦力で来ているとはいえ。
ミラン大佐は、最前線で大暴れしているが。これだけ戦場が広いと、アネカのいる地点でその暴れぶりは実感できない。
確かに圧倒的に強い人だけれど。
乗っているのはいくら重カスタム機でも所詮ウォーリアなのだ。
フルパワーで計算を行う。
工作班の乗ってきている飛行機にもPCがある。
それと連動して、一気にファイヤウォールを食い破る。
見つけた。
ハッカーがシステムを掌握に掛かる。そのシステムは、重粒子砲だ。他のシステムは、担当してハッカー達が解析。
「とんでもねえコードだ。 これ、指導者の奴が組んだのか……?」
「あらゆる分野で侵略者の中で史上最高の天才だったとか言う話があるらしいが、これを見てると納得できるな……」
「相手に飲まれるな。 それも既に過去の話だ」
「そうだな。 確かにあんな力業のファイヤウォールを見た後だと、これは過去の遺産だって分かる!」
まず第一に。
この第三惑星の攻撃システムを落とす。
続いて炉を制圧し。
更には、同時並行で、侵略者の指導者を確保する。
相手側も必死に反撃をしてきているが、工作班が乗ってきている飛行機は、強襲揚陸艦に積んできている超大型量子コンピュータにもバックアップを受けている。しかも支援者のシステムは、既に侵略者のシステムを精度で上回っている。
負ける要素はない。
少なくとも、ここにいるハッカー達を、アネカが支援する限りはだ。
全てのシステムを動員して、支援に回す。
既に体は崩れ付している。
アネカに注意を払うハッカーもいない。
それでいい。
ハコトにかっこいいお姉ちゃんであるところを見せたい。
その感情ですら、作られたものであることはアネカも分かっている。人格だけは侵略者製だ。
ただしこの人格。
あの指導者が作ったものじゃない。
あいつが作った人格は、管理しやすくするもの。
人が喜んだり悲しんだり苦しんだり、誰かを好きになったりする全てを、あの屑はコントロール出来なければ気が済まなかった。
だから、アネカは廃棄された。
ハコトもだ。
だからアネカはあいつを許せない。
ハコトの元にも無事で戻るためにも。今は、あらゆる全てのリソースをつぎ込まなければならない。
「よし、止まったぞ!」
「重粒子砲、対空砲、全てシステム停止! 相手のアドミニストレータからの干渉、食い止める!」
「パドフ中将に連絡! 総力での地上制圧を開始してほしいと!」
「ミラン大佐にも連絡! 速攻であの指導者の所へ!」
アネカは動けない。
ただ、全力でハッカー達を支援し続ける。
パデラクスに弄られた体が、こういうときに役に立つ。他の姉妹機よりも遙かに性能が上げられているのだ。
この性能。
大事なハコトと、ミラン大佐のために。
全てを使う。それが今のアネカの、存在する意義なのだから。
一刀両断した親衛軍ウォーリア。相手が弱くなっているのではない。一切進歩していないだけだ。
親衛軍ウォーリア、白い悪魔は、ミランに一太刀も浴びせられなかった。ウォーリア四型になったミランは、ずっと戦闘経験を積んできた。それに対して、白い悪魔は、何も変わっていなかった。
完成形を気取った存在の末路だ。
乗っていた親衛軍にそんなつもりはなかったのかも知れない。
だが此処が侵略者の指導者の膝元で。
ここに置かれている親衛軍ウォーリアは、パイロットもろとも奴のお気に入り。そして、奴がお気に入りとしているということは。
完成品、完全体だと思い込んでいると言うことだ。
その時点で進歩は止まる。
完成品なんて生物に存在しない。
それが理解できていない時点で、指導者の選民思想は無意味なのだと、ミランにさえ分かる事なのに。
これで七機目。
親衛軍ウォーリアは、ミランだけを狙ってきている。
そして、次々に倒されていた。
呼吸を整えているミランの所に、連絡。アネカからだ。
「やったでミラン大佐! 侵略者の指導者、抑えてや! 今からこっちは、この星の動力炉を完全掌握するでな!」
「了解!」
「こちら特務グラハル大佐」
六名しかいない特務大佐の一人。
ミランと一緒に来た特務の一人だ。ちなみにヒューマノイドだが、頭部に目が六つもついている。
「此処は任せろ。 貴殿は奴を!」
「お任せします」
すぐにウォーリア部隊が来る。
このときのために編成された、各地で戦歴を重ねてきた精鋭部隊だ。士気は非常に高い。
ただ、部隊の指揮は同じく特務であるベルヘルト少佐が執る。
ベルヘルト少佐は支援者でも珍しいケイ素生命体であり、その姿は形容しがたい塊だが、ウォーリアの操作の腕は本物だ。
ただ今回は、重戦車に乗っているが。
「ミラン大佐、こちらで突入路はバックアップします」
「分かりました。 難敵はこちらで排除します」
「全機、続け!」
「おおっ!」
百機ほどのウォーリアが、一斉に歓声を上げる。そしていくらでも群がってくる敵は、この場の味方に任せる。
突入開始。
ハッキングの結果、白鳥第三惑星の中枢に向かう通路が強引にこじ開けられている。この通路は本来ウォーリアどころかワーカーなども大量に地上にばらまくためのものだが、今ハッキングでその機能は麻痺状態。内部にいる敵は大混乱している。
其処に上空に来た駆逐艦隊が、掃射砲で火力の雨を浴びせ、内部にいた敵に致命的なダメージを与え。
更にミランを戦闘にウォーリア隊、更には戦車隊、ドローン部隊が突入を開始。少数だが、低空でのホバー戦闘を想定したヘリ……古くには各文明で運用されていた装甲ヘリが投入されている。
ヘリは閉所での機動力こそウォーリアに劣るが、装甲、火力、直線速度はいずれもウォーリアに勝る。
古くとは違って今は反重力で浮遊しているので、ヘリと言うよりも武装した小型飛行機が近い。
調査や工作のために派遣される飛行機を、試験的に武装させたものだ。
今回の作戦で初投入される兵器だが、別に画期的なものでもなんでもなく、状況が変わってきて再度戦闘に投入され始めた形だ。
ウォーリアにはウォーリアを、というのが今までのドクトリンだったそうなのだが。
親衛軍ウォーリアが無敵ではなくなりつつあり。
味方のウォーリアも量産機なら敵を上回るようになり始め。
テクノロジーの進歩も侵略者を上回りつつある今。
ウォーリア戦に付き合う必要はないのではないか。
そういう声が上がり始めている。
勿論、まだウォーリアがなくなるわけではない。雑兵として大量に戦場では必要になってくる。
乱戦や閉所での戦闘でも、優位性がまだまだあるのは事実だ。
深いシャフトを降りながら、支援攻撃で敵が破壊されていくのを見る。掃射砲に容赦なく滅多打ちにされて、こちらに来ようとしていた親衛軍ウォーリアが爆散するのが見えた。放っておく。
シャフトの最下層に着地。他の部隊も次々に降りてくる。まずは此処を確保だ。隔壁は開けられているが、工作車両が向かう。それを護衛し、向かってくるウォーリアを、次々に打ち倒す。
ヘリは想定以上の戦力を発揮していて、装備している二連レールキャノンが咆哮。次々に敵ウォーリアを血祭りに上げていく。
背後から斬りかかったウォーリアの一撃を、装甲でいなす。
至近距離から撃ち込まれたパルスレーザーも耐え抜く。
だが、無敵ではない。
敵ウォーリアに接近戦を挑まれ続けると流石に不利なようだ。集っている敵ウォーリアを、味方が蹴散らす。
戦車隊が着地し始めると、火力にものを言わせて面制圧を開始する。
シャフト最下部はドッグになっているが、まるごと制圧させて貰う。
工作車両をミランは守り、立て続けに四機斬り伏せた。
ウォーリア四型になり、反物質炉を改良してから、エネルギーの残量はほぼ気にしなくても良くなってきたが。
それ以上に敵のネタが切れた事が大きいかも知れない。
この戦闘では、今まで雑魚か、倒したことがある親衛軍ウォーリアしか出てきていない。その上、親衛軍ウォーリアは全く進歩していない。
武装も中の侵略者もだ。
弱いとは言わない。
だが、この状態では、ミランも負ける要素がない。
勿論不意を突かれたり、様々な要素が重なって負ける可能性はあるだろう。それにしても、脆いのではないかとも思う。
ともかく。
今は工作車両を守る。
隔壁に細工をし始める工作車両。
隔壁と言っても、ウォーリアが何機も同時に出入りできるような巨大なものだ。
「安定まで少し掛かります。 少し離れていてください」
「了解!」
「うわっ!」
いきなり隔壁が殺人的な速度で落ちてきて、敵のウォーリアを粉砕していた。敵味方関係なしか。
おぞましい。
ともかく工作車両がハッキングを支援。
相手も押し戻そうと必死になっているようだが、いずれにしても此処を抜けるのは自殺行為だ。
わらわら周囲から来るウォーリアやドローンを相手にして、立ち回る。増援はどんどん来るが、やられる味方も多い。
そんな中、空中で固定砲台と化しているヘリの奮戦が凄まじい。
文字通り敵をなぎ払って、ドローンも寄せ付けていない。
「すげえなあれ」
「古くには一般的な兵器だったらしい。 色々な要因が重なって、今ではほとんど見なくなったらしいが。 ただ、かなりの重カスタム機らしくて、量産する場合はコストを下げたものが出回るらしいが」
「連携戦であれば頼りになる!」
「そうだな……」
兵士達がそんなことを話す中。
ミランは激しく開閉している隔壁の向こうから来るウォーリアを、次々斬る。少しずつ、装甲にもダメージが蓄積してきている。
完全に無傷とはいかないのだ。
「隔壁安定!」
「よし、固定具を噛ませろ!」
「突撃します。 後に続いてください」
「了解!」
ミランはそのまま、隔壁の向こうへと突貫する。
ウォーリア以上に、予想通り出てくる。
つなぎだけを着た、膨大な一般侵略者個体だ。自走爆弾と化した彼らに、ドローンが容赦ない掃射を浴びせる。
それでも大量に来る。
前衛になった戦車隊に組み付いてくる。そして、その場で自爆してくる。
戦車隊は簡単にはやられない。
だが、兵士隊が怯えて声を上げる。
それはそうだ。
ここまでいかれた相手だ。
恐怖するのが普通だろう。
まるで表情も感情もなく、無言で全力疾走してきて、自爆テロを仕掛けてくる知的生命体の成れの果て。
侵略者の指導者が、アポカラプスの民が言っていた怪物と同一人物である可能性は極めて高い。
そうなると、奴が独善的で選民思想に足首をつかまれていた者達とはいえ、それでも侵略者をここまでの木偶人形に変えたと見て良い。
しかもモノだ。
いくらでも作り出され。
いくらでも気分次第で廃棄される。
こんな知的生命体のあり方など、あり得てはならない。
どんな真社会性生物でも、此処までの扱いなどしない。
ドローン部隊が自爆に巻き込まれ、次々に落とされる。敵ウォーリア隊も戦意旺盛で、どんどん仕掛けてくる。
それでも、前進する。味方も損害を受けた機体は下がり、次が来る。
時間はどんどん減っている。
あまりもたついている余裕は、ない。
作戦に参加した六百五十万隻余が、ほぼ全て戦闘状態にある。
パーミルトン大将は、第三艦隊を指揮して、次々に現れる敵増援と交戦しながら、全体の指揮を執っていた。
各前線でも、一隻も敵を後退させない勢いで、猛攻を続けている。
それだけではなく、後方の地域でも、第∞艦隊から派遣された八百万隻余が分散して、未制圧地域を抑えに掛かっている。
現在支援者艦隊の四割が動いている状態だ。
苦闘しているのは、この突入艦隊だけではない。
翌日作戦を成功させるには。
それだけの戦力投入が必須なのだ。
「敵増援、更に来ます!」
「だがどうやら旧式の艦隊のようだな。 一蹴してやれ」
「了解!」
パーミルトン大将麾下の精鋭である第三艦隊は、規模二十万隻。
だが、それらには最新鋭艦が配備され、クルーも歴戦の猛者揃いだ。
ヴァーグラット戦線での被害を回復させるためにしばらく後方で再編成を続けていたが、腕を鈍らせるわけにはいかない。
既に二百万隻ほども現れている敵艦隊と激しい戦闘を続け、片っ端から返り討ちにしているが。
まだまだ来る。
それでいい。
後方の予備艦隊も、いくつかの艦隊に別れて、それぞれ死闘を繰り広げている。敵はどうやら、この動きを見る限り、偶然突出した艦隊だとみているようだが。
逆に言うと、まだ狙いは悟られていないと言うことだ。
白鳥星系に敵が向かい始めるようなら、乱戦状態を維持したまま、前衛艦隊に支援を無理矢理送らなければならない。
パーミルトン大将とともに交戦している三百万隻余の艦隊も、総力戦を続行している状態だ。
敵が寄せ集めを急いでよこしてきたとはいえ。
それでも数が数だ。損害も出る。
不意に、敵が火力を集中してきた。
最前衛で機動力と火力を生かして暴れ回っていた第三艦隊に、火力を集中するつもりであるらしい。
後退しながらいなすが、それでもどうしても被害が出る。
旗艦にも多数の直撃弾。
激しく揺れるが、相手にもそれ以上のダメージを与え続ける。一度旗艦の照明が落ちたが、すぐに復旧する。
激しい戦闘の渦中にあって、パーミルトン大将はずっと指揮シートから動かない。
「敵艦隊、どうやら自爆特攻を開始するつもりのようです!」
「迎え撃て」
戦力を集めきれないと判断したのだろう。
それぞれの艦艇が、無理な突撃を開始する。
既に乱戦で複雑怪奇な戦線になっている状況だ。これをまともに迎え撃つのは難しい。
だがこの翌日作戦に参加している艦隊、司令官、いずれもが歴戦の猛者だ。それぞれが、どうにかする。
整然たる火力が、無理な突撃をしてくる艦隊を次々に蒸発させる。だが、それでも盾艦が瞬く間に撃ち減らされていく。
火力をフルに使って、突入してくるのは旗艦級戦艦か。火力をこちらも集中して破壊に掛かるが、旗艦級戦艦の性能を無理矢理に生かして、強引な突破を狙ってくる。それでも、第三艦隊の猛攻を受けて、ついに火球と化した。
パーミルトン大将は誰にも言わないが。
まずいなと思った。
想像以上の被害が出るかも知れない。
それに、である。
前衛艦隊は、惑星を鹵獲して戻らなければならない。恐らくだが、相当にボロボロになっている筈。
最悪それを護衛しながら戻る必要がある。
この艦隊までボロボロになっていては、かなり厳しいことになるだろう。
「! 後方の味方第十九艦隊より入電」
「如何したか」
「敵艦隊をほぼ殲滅! これより前線に向かう、とのことです!」
「そうか、急いでくれると助かる」
第十九艦隊は規模三十万隻余。
移動ルートを指示して、前衛艦隊に合流して貰う。聞こえ来ているだけでも、あのパドフ中将でも大苦戦をしているようだからだ。
第十九艦隊には、無事な超大型盾艦を届けて貰う必要がある。
パーミルトン大将は、味方に冷静に指示を出していた。
「恐らくまだ来るぞ! 備えろ!」
「敵、ワープアウト! 要塞艦です!」
「そうか、要塞艦まで来たか」
「こ、これは直径500㎞! 小惑星の規模を超えています!」
確かに巨大だ。
とはいっても、そのサイズをまとめて武装させるのは、相当な高コストだ。本来は拠点としているものを、無理矢理引っ張り出してきたのだろう。
それでも、危険な相手には変わりは無い。
乱入してきた超大型要塞艦に、火力を集中させる。しかし、連戦での損害も大きく、少しずつ押され始める。
ましてや敵は損害を全く意に介さず、自爆特攻同然の攻撃を続けてくるのだ。どうしても被害は増える。
パーミルトン大将は決断する。
「第三艦隊、総力であの超大型要塞艦を粉砕する。 他は他艦隊に任せろ。 全艦隊、斉射準備」
「はっ!」
「艦隊のリンク開始!」
「エネルギー出力上昇!」
突っ込んでくる超大型要塞艦。
やはりというべきか、巨大さに対して装備は貧弱だ。圧倒的な戦力はなく、質量兵器として投入されたようである。
本来は戦闘用の要塞艦ではなく、輸送や補給を目的としているものの可能性が高い。
それでも出してくるほど、敵が追い詰められていると言うことだ。
だから突出した艦隊を、何が何でも仕留めたいと。
まさに愚か者の思考だなと、パーミルトン大将は考えた。
第一射。
敵の位相変換シールドに大きなダメージを入れる。
第三艦隊に倣って、他の艦隊の一部も火力を集中。直径500㎞にも達する超巨大要塞艦だが、やはりシールドも其処まで強力ではない。
第二射。
立て続けの猛撃で、要塞艦にダメージが入り始める。下がりながら、猛攻を続ける。旗艦級戦艦は、反物質砲を用意。
第三射。
ついに敵超大型要塞艦の表面で、爆発が連鎖し始めた。とどめだ。
反物質砲をたたき込む。
一斉に撃ち込まれた反物質砲で、一瞬の沈黙の後。超大型要塞艦は、爆発四散していた。ただし、その規模が尋常ではなかった。
とんでもない衝撃に、パーミルトン大将はデスクから放り出されて、壁にたたきつけられていた。
呻きながら立ち上がる。
警報が鳴っている。
旗艦は、どうなった。
少なくとも空気漏れの類は起こしていないが、それでも周りは地獄絵図のようだった。
「こちらパーミルトン大将! 何が起きた!」
「敵の爆発、想定以上です! 第三艦隊のかなりの数が爆発に巻き込まれた模様……!」
「そうか、自爆目的で突っ込んできていたのか。 恐らくだが、爆発の瞬間には、反物質炉を暴走させていたな……!」
あれだけの巨艦だ。
数十億単位で侵略者の一般個体を乗せていただろうに、それを一切合切気にせず爆破したと。
正確な損害について報告を受ける前に、体の骨が何カ所も折れているのにパーミルトン大将は気付く。
医者が来る。
非常電源が点灯し、艦橋の惨状が見えてきた。
呻く。
横になって治療を受けながら、それでもパーミルトン大将は指揮を執る。
「今ので損害は」
「第三艦隊の前衛五万隻が、ほぼ消滅……。 他の艦隊も、数万隻単位の被害を出した模様です」
「そうか……」
立て直しを急がせる。
精鋭の大きな損害は極めて痛いが、今ので敵艦隊がそれ以上に巻き込まれたのも事実だ。あそこまで非常識な作戦行動を取ってくるとは、流石に想定外だった。
混乱に乗じて、敵が攻勢に出ている。
パーミルトン大将は、病床から、味方艦隊に声を聞かせる。
「こちらは方面軍司令官パーミルトン大将だ。 旗艦に被害が出て、第三艦隊も多くの損害を出した。 だが、敵はそれ以上の被害を出している。 各艦隊、冷静に対処せよ。 此処で踏ん張るのが、我らの仕事だ」
「了解!」
「! 敵艦隊、密集隊形を取り始めました! これは、第三艦隊を狙っているようです!」
「逃げ切れません!」
敵の残存艦隊が、それでも戦力をまとめて、集中的な火力を浴びせてくる。
第三艦隊の旗艦はもうもたない。
だが。
其処に、今回の作戦に同道している第十五艦隊が割り込んできた。
ありったけの盾艦を投入しながら、必死に猛攻を防ぐ。
同時に、他の艦隊もそれに連携して動く。
パーミルトン大将が指示はしていない。
それぞれの提督が、その場の判断で動いたのだ。
第十五艦隊が盾になって被害を受け止め、他の艦隊が敵の密集隊形を包み込み、猛射を浴びせる。
旧型艦も多い敵艦隊は、それで崩れ始める。そもそも、主砲を放った瞬間に爆発してしまう艦までいた。
やがて敵の突破作戦は失敗。むしろ包囲され、四方から容赦の無い攻撃を受け続け、逃げることすら出来なくなり、殲滅されていく。
パーミルトン大将はその間、何度か血を吐いて、意識を失って。
医務室に移された。
味方の艦隊も甚大だ。
特に第三艦隊は、三割を失った。毎回第三艦隊は大損害を受ける艦隊として知られているが、それでもである。
更に敵艦隊出現。
規模は十万隻ほど。各艦隊が即応して、一気に殲滅に掛かる。敵はうまく連携がとれていない。
今更この戦場に、こんなに遅れて十万隻を出してきて、何が出来るというのか。
逐次投入の見本だ。
ただでさえ戦力が足りないだろう敵だが、それを更に加速させるだけである。
だが、それでも、小規模の敵が次々に来る。
無視するわけにもいかず、対応を続けなければならない。
これは厳しいな。
そう治療を受けながら、パーミルトン大将は思った。
パドフ中将も相当な苦戦を強いられているようだ。第十九艦隊が戦場に突入するには、しばし掛かるだろう。
医師に休むように言われて。
パーミルトン大将は、呻いていた。それほど傷が厳しいのか。いや、厳しい。何度も吐血しているのだから。
「分かった。 ただし、何かしらの大きな変化があれば私がどんな状態であっても聞かせよ」
「了解……」
「各艦隊、各司令官、君たちは歴戦の猛者達だ。 奮戦を期待している」
それだけいうと、集中が切れたからか。
パーミルトン大将は、意識を手放していた。
クアーラ議長の所に、戦況が次々に届けられる。
各線戦は大善戦している。
第∞艦隊から派遣された八百万隻余は、空白地帯や、敵の残存戦力を徹底的に刈り取りながら制圧を進めている。
しかし、翌日作戦の突入部隊の苦戦は酷い。
それは即座に伝わるほどだった。
「既に前衛の艦隊は十万隻以上を損耗。 中軍のパーミルトン大将は負傷、第三艦隊は三割以上を喪失。 現在、間断なく現れる敵増援に、苦戦を余儀なくされています」
「これ以上の増援は出せませんか」
「厳しい状態です」
敵より物量が上とは言え、今回の作戦は天の川銀河の命運を賭けたものだ。侵略者がもし盛り返すようなことがあれば、それはこの天の川銀河が独善的な選民思想を拗らせた邪悪な個人の手に落ちることを意味する。
そのようなことは、あってはならない。
いさなの存在は、大きな教訓となった。
天の川銀河にだって、発見されていないだけで、ああいった超存在がいるかもしれないのだ。
同じになってはならないのだ。
「前線に可能な限りの支援を。 この作戦は総力戦です」
「は。 承知しております」
三元帥もそれぞれ動いている。
クアーラ議長は、後方から出来る範囲での支援を行う。
この作戦がうまくいけば、侵略者をまとめて屠れるとまでは、クアーラ議長も考えてはいない。
自分を並列化しているような存在だ。
侵略者の指導者は、いくらでもバックアップを取っているだろう。
全部を破壊しても、いなくなった場合にどこかしらで新しく自分を作るようなシステムを組んでいる可能性が高い。
極めて厄介な相手だ。
だが、相手は今回はっきりしたが、既に進歩を止めている。
最前線のミラン大佐の報告は受けている。
親衛軍ウォーリアは、倒した時から全く進歩していない。
再度出てきても、対処は全く難しくない、と。
完璧だと自認した結果、努力と試行錯誤を止めた存在。
だったら、勝ち目はある。
相手が対抗手段を作ろうとするよりも、こちらがそれに対策する方が早い。
それに、この作戦での敵の損失戦力は、最低でも一千万隻以上になると見込まれている。これは最も悲観的な予測だ。
ヴァーグラット戦線の敵の破綻と、他戦線での味方の勝利。更に今回の戦役の結果を考えると、敵の戦力は一億隻を下回る事は確実で。それを回復する余裕を与えなければ、更に戦況には余裕が出る。
それでも、あまりにも天の川銀河が広大すぎることが防壁になる。
仮に敵の機動戦力が一時的にゼロになったとしても、それでも侵略者を一気に屠ることは難しいだろう。
「お忙しいところを失礼します」
「構いません」
連絡が入る。
パデラクスではない。今あいつは、この作戦のバックアップを全速力でしている。
別のル・ルの科学者だ。
全く違う研究をさせている人物である。
「近々成果を報告できると思いますが、はっきりしたことがいくつかあります」
「聞かせてください」
「惑星アポカラプスから回収したデータと、コヴァルライト星系で回収したDBから復元したデータに、一部完全一致が確認されました」
「!」
なるほどな。
それはつまり。
「アルカラルドの民、アポカラプスの民、それに侵略者は同祖で確定ですね」
「はい。 ただし情報を確認する限り、彼らの祖が分かれた……コロニー船が指導者の下を離れた時には、既に体の情報……遺伝子情報ですな。 それに大幅に手を入れられていたようです」
「分かりました。 研究を続けてください」
問題は此処からだ。
この情報を生かして、この戦争を終わらせることを考えなければならない。
あの親衛軍NO3_009116を見る限り、元々野心的な種族の可能性が高い侵略者の祖先。
ひょっとしたら。
遺伝子情報などを復元した先に。
和平の道を、探ることが出来るかも知れない。
ただし、あの指導者を完全に葬ること。それが最優先事項なのは、明らかだった。
パデラクスも仕事をしています。ついに侵略者と、アルカラルドⅠの民、アポカラプスの民が同祖である事が完全確定しました。
共通の祖先に何があったのか。
それが分かるのはこれからです。
本作にどういった要素がほしいですか。要望があれば遠慮なくどうぞ。
-
詳細なマシンデザイン
-
圧倒的な武力による蹂躙
-
緻密な人間ドラマ
-
種族や文明の描写
-
近接した力量のライバルとの死闘