王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶 作:dwwyakata@2024
ついに。
ミランと、侵略者の指導者の直接邂逅の時が来ました。
それはもはや生物であるかも怪しい、怪物以外の何者でもありませんでしたが。
序、侵略者の中枢
激しい戦いを続けながら、白鳥星系第三惑星に迫る。トラップもあれば、敵もわんさか出てくる。
もみ合いに近い戦闘になる事もある。
その過程で、味方が次々と損耗し。後方からの新手と後退する。
そんな中、ミランはずっと最前衛での戦闘を続けていた。
流石に疲弊が酷くなってくる。
エネルギーの残量もそろそろまずいか。
ウォーリア四型になって殆ど気にならなくなったが、これほどの連戦を続けると、流石にまずい。
エネルギーの消耗が、生産を追い越し始めている。
更に機体のダメージも小さくない。
厳しい戦いだ。
通路がどんどん狭くなってきている。もう少し先だと、ナビは来ている。工作部隊を守らなければならない。
それもあって、負担がとにかく厳しい。
「負傷者二名、後退!」
「後続は!」
「シャフトの制圧は完了! しかし惑星の各所からまだまだ敵が来ていて……」
「分かった。 どうにかする」
作戦指揮はベルヘルト少佐が執っている。ちなみにベルヘルト少佐はウォーリアではなく重戦車で指揮をしていた。
特務でも、ウォーリアよりもこっちが生存性が高いと判断しているのだろう。
実際その通りなので、ミランは何も言わない。
地上に降りると、ウォーリア四型の羽を広げる。
消耗がそれだけ激しいと言うことだ。
「ドローンが隔壁を確認! 恐らくは最後のものです!」
「よし……」
「ただし死地になっています! 最前衛で無人ドローンが交戦していますが、親衛軍ウォーリアがいます!」
「分かりました。 対応します」
どうにかする。
既にこの惑星に降り立ってから、十機の親衛軍ウォーリアを倒した。
侵略者の指導者がいるのなら、いてもおかしくはないだろう。
後方からの援軍は無し、一気に片付けるしかない。
全軍一丸となって前進。
通路を抜けると、早速猛烈な砲火が迎え撃ってきた。重戦車が位相変換シールドを展開して防ぐが、それでも限界がある。
ウォーリア隊が展開。
即座に、弾幕を張ってきているイーターをたたき落とす。更には、続いた戦車隊も、砲撃を開始。
苛烈な戦闘が開始される。
ミランに立ち塞がってきたのは。
通常よりもだいぶ大きなウォーリアだった。
こういう場所を守るための特殊な機体なのかも知れない。全身黒づくめで、それでも形状はウォーリアだ。
そして背丈は倍はある。
「肉、殺す、殺す、ころ……」
「もういい。 黙っていてください」
若い雌の声に聞こえたが、もはや正気を保っていない。
親衛軍の意識や人格自体が作られたものだが。
この親衛軍に対しては、正気を作る気すら、指導者にはなかったようだ。
反吐が出る話である。
即座に斬りかかる。
全身からレーザーを放ってきた。これは、全身がレーザー砲台になっているのか。
ウォーリアの形状にする意味はどこにあるのか、ミランは困惑したが。
だが、研究を思い出す。
どうやら古くに侵略者の娯楽にあった人型兵器を、指導者が無理矢理現実に作り出したのが、ウォーリアであるらしい。
それに、こういった兵器が出てきたのかも知れない。
敵味方関係なく、浮遊してレーザーをばらまきまくる巨大ウォーリア。まさに化け物だが。
ミランとしては、今までの機体のような怖さは感じない。
ジグザグに距離を詰めると、袈裟に切りつける。
がつんとはじいてきたが、これは位相変換シールドだな。しかし動きが鈍い。
「火力を集中してください」
「了解!」
展開している味方ウォーリアには、特務が多く乗っている。皆即座に、持ってきている……殆どはパルスレーザーだが。それを放つ。
あのサイズの兵器に、位相変換シールドを詰めたとしても、殆どの場合一瞬しか持たない。
全身を滅多打ちにされる敵巨大ウォーリア。
簡単には崩れない。
動きも鈍く、レーザーの火力はあるが、それだけだ。
ジグザグに再度接近。
また高出力レーザーを、もはや言葉になっていない繰り言を喚きながら放ってくるが、それでも。
レーザーを発射している場所は確認。
回避回避、更に回避。
床も壁も、群れている侵略者の一般個体も、更にはイーターもスウォームも、片っ端から切り裂く巨大ウォーリアのレーザー。
重戦車が前に出て、必死に味方を守る。
戦車部隊もそれに倣うが、戦車隊は爆発するものも多い。次々にロストしていく。
至近。
既に位相変換シールドを失っている巨大ウォーリアを、何度か斬り伏せる。
肉厚だから、一発で両断とはいかない。
いつもは腰から胸に掛けてコアがあるようだが、この機体はどこにあるかもよく分からない。
鈍重に腕を振るってくるが、無視してくぐり抜け、腕を逆に切り落としてやる。
どんと、凄まじい音を立てて巨大ウォーリアの腕が落ちる。
形状を変えようとする巨大ウォーリアだが。
ミランはそうはさせない。
蹴りをたたき込み、わずかに揺れた所に、パルスレーザーを至近距離からたたき込んでやる。
凄まじい悲鳴のような音を。
巨大ウォーリアが挙げていた。
「痛いいたいいたいいたい助けてお兄ちゃん助けて」
「そのお兄ちゃんとやらは何処の誰ですか」
「……え」
「そんな存在はいない、でしょうね」
どんな意図でこの巨大機を作ったのかは知らない。
無理矢理現実に持ち込んだ創作の兵器を、それっぽく再現して、パイロットにした親衛軍の精神まで弄り倒した。
その結果だとすると。
助けを求めている相手なんか、いないのだ。
尻餅をつく巨大ウォーリア。
レーザーが切り裂いてくる。
ウォーリア四型の肩口をごっそり抉られた。相手が動いたことで、回避しきれなくなったのだ。
だが、もはやコアの位置は特定した。
長槍で貫く。
それで、巨大ウォーリアは動かなくなった。
辺りは地獄絵図だ。
此奴が暴れ狂ったせいで、相当な被害が出ている。だが、後続がやっと到着。負傷者を守り、かなりの兵力が下がった。
工作車両はどうにか無事だ。
隔壁をこじ開けに掛かる。
ウォーリア四型の修理もしてもらうが、戦場だ。応急処置しか出来ない。どうにか動かせるが、それが限界だ。
まだ来る。
ウォーリアも、ワーカーも、それに侵略者の一般個体も。
侵略者の一般個体は、どれも全裸だ。
もたもた動いて、殺気だってこちらに向かってくるワーカーに踏み砕かれて。その場で爆発している。
ワーカーもワーカーで、どう動いて良いか分からないようで、右往左往している状況である。
敵は相当に混乱している。
其処に今の巨大ウォーリア……とさえいえない、ただの無差別破壊兵器の攻撃から生き延びた戦車隊が、榴弾砲を連続してたたき込む。
通路ごと殺戮する凄まじい火力だ。
戦車隊の猛射を生き延びた敵ウォーリアも、味方ウォーリアが対応する。
ミランも応急処置が終わり次第、即座にそれに加わった。
ヘリが来る。
シャフトで奮戦していたヘリが入ってくると、大火力を振るって敵を叩き潰し始めた。イーターが落とそうとするが、まるで効いていない。逆にイーターを一蹴していく。重カスタム機とは言え、大したものだなとミランは思う。
ただ、それでも此処は死地だ。
周囲の全方向から、敵が迫ってきている。
「工作班、急げ!」
「システム解析中! まだ少し掛かる!」
「もう時間が無いぞ!」
「分かってる!」
時間が無い。
その通りだ。
そもそもとして、ここまで来られた事を、侵略者の指導者がまずいと思うのは自然の帰結だ。
今、動力炉を黙らせるべくハッカー部隊が動いているようだが。
それがうまくいっていないのは、まだ敵が全然元気に動いている事からも明らかすぎるほどである。
流石に敵中枢。
堅牢だ。
ウォーリアを次々に倒す。まだまだ来る。どれだけ蓄えていたのだと思うほど来るが、これは恐らく違う。
地上の戦況も聞こえてくるのだが、そちらはどうもこちらが有利になりつつあるようなのだ。
だとすると、本来は地上での橋頭堡を潰すべく動かすべき戦力をこちらに無理矢理ねじ込んできていると見て良い。
指導者が最優先。
そういう思想が垣間見えて、ミランはまた苛立つ。
工作班を必死に守りながら、戦闘を続ける。力なく歩いてくる侵略者の一般個体は、こちらにたどり着く前に倒れて爆発することも多い。
まだ不完全な状態で、クローン培養槽から出したのだろう。
むごい結末だ。
「こちらハッカーチーム! 自爆装置停止、成功!」
「やったか!」
「ただし、動力炉はまだだ! それに最上位権限が指導者にある! 指導者をどうにかしないと、なんどでも自爆装置が起きてくる可能性がある!」
「分かっている!」
ベルヘルト少佐が叫ぶ。
流石に苛立ってきたらしい。
ミランも気持ちは分かる。
だから、ベルヘルト少佐を責められなかった。
流石にウォーリア四型でも限界が近いか。ついにレッドアラートがつく。エネルギーの残量が限界。
更には、敵がまだまだ来る。
装甲などのダメージもかなり厳しい状態だ。機体がこれでは、もうまともに動かなくなる。
飛びかかってきたワーカーを、四体連続で斬り伏せるが、一体にもろに体当たりを貰う。ずり下がりながら、地面にたたき落とし、長槍で貫く。
呼吸を整えながら、顔を上げる。
まだまだワーカーが来る。
新しく来た戦車隊が必死に応戦しているが、とにかく死地での戦闘だ。どうしても敵が有利だ。
味方ウォーリア隊が来る。
十機。
十機だけか。シャフトを制圧しても、まだまだ戦力を送り込むわけにもいかないのだろう。
「ミラン大佐、少し下がってください」
「いえ、どうやらその必要はなくなったようですね」
「工作班、隔壁のロック解除します!」
「! やった!」
隔壁が、重い音とともに開いていく。
ベルヘルト少佐が、指示を飛ばしていた。
「各機此処を守れ! 特務、ミラン大佐とともに突入! 隔壁にはジャッキを噛ませろ!」
「了解!」
「工作班も一緒に入れ!」
隔壁の奥は真っ暗だ。
此処が、本当に中枢なのか。
即座にライトを照らす。そして、ミランは見た。
其処にあったのは。
侵略者が粉々に砕けるのは何度も見た。頭部には思考器官である脳みそが入っている。
その脳みそそのものだ。脊髄と眼球も着いているが、他のものは一切ない。ガラス容器の中で、液体の中で浮いている。
そして、それの大きさは。
一般の侵略者の百倍はある。
いや、これは違う。
そもそもとして、膨大な脳みそがつなぎ合わされて、一つの脳みそになっているのだ。
これが、侵略者の指導者なのか。
「な、なんだこれは。 侵略者の一般個体と違いすぎるぞ……」
「脳みそだけですね……」
「なんだって」
「私は侵略者の死体を何度も見ましたが、これは脳みそだけを極限まで肥大化させたように見えます」
ごくりと生唾を飲む兵士達。
ミランも、あまり彼らを責められない。
「とにかく、DB等を確保してください。 データを破壊されると困ります」
「工作班!」
「さ、作業します!」
此奴、起きていないな。
或いはだが、休眠中のスペアボディなのかも知れない。
ミランがウォーリア四型に乗ったまま歩み寄る。巨大なシリンダの中に浮いている、異形の存在。
それは、不意に動いていた。
「無礼な肉どもが……宇宙でもっとも神聖不可侵たるこの私の寝床に、土足で踏み入るか!」
「そのものいい、貴様が指導者だな」
「喋って良いと誰が許可した! 今すぐ此処を立ち去れ! 立ち去っても全て死刑に……」「システムは掌握済みだ。 そんなことは出来ない」
工作班が、手を振っている。
どうやら此処のシステムは意外と簡単らしく、指導者が出来る事は既にないようだ。
DBは問題なし。
動力炉も、まもなく掌握できると連絡が来た。
凄まじいわめき声を指導者が上げる。
「おのれおのれおのれ! 何処までも無礼、何処までも非礼! 知能無き愚かな肉どもが、宇宙で唯一の知性体にて、最も尊い私に対して、どれだけの無礼を働けば気が済むというのか!」
「貴様が宇宙で一番尊いだと? いさなに瞬時に多数の肉体を破壊された程度の存在で?」
ミランが指摘すると、もはや言葉にならないわめき声を指導者が上げる。
そして、突然、ふつりと動かなくなった。
恐らくだが、他の肉体と並列化が出来ていない事を察したのだ。
超光速通信を既に遮断している。
今までの迎撃は、恐らく機械的にプログラムで行われていたと見て良いだろう。
そして此奴は。
何もかも好きに出来ないと判断して、接続を切った。
それにこの星を巻き込もうとして失敗した。既にシステムは工作班に掌握されている。だからヒステリーを起こした挙げ句に、黙り込んだのだ。
「よし、中枢は制圧!」
「複雑な気分ですが、どうにか成し遂げたようですね」
「……掃討戦を開始する!」
ベルヘルト少佐が指示を出す。
同時に、第四艦隊から、今までとは比較にならない規模の地上部隊が投下される。これで、どうにか第一段階は達成できた。
問題は、此処からだ。
この惑星を抱えたまま、安全圏まで撤退しなければならない。既にこの時点で、被害は無視できないレベルになっている。
更に此処が完全に落ちたことを察した指導者が、何をしでかすか分からなかった。
既に侵略者の機動戦力は枯渇しているはずだ。実際問題として、前線に出てくる戦力にすら、旧式艦や、まだ未完成の要塞艦が増えてきているのだ。
それらをかり出してきていると言うことは、侵略者の生産能力が現時点で枯渇している事を意味している。
ましてや自分を宇宙一尊い存在だとか考えている輩が、旧式艦を引っ張り出すような状況だ。
奴は相当焦っていると見て良いだろう。
第三惑星の制圧が開始される中、ミランは工作班の護衛を続ける。既に掃討戦が開始されているが、問題はまだまだある。
パドフ中将の状況が良くない。
星系に侵入した艦隊は、大きな被害を出しながら敵の要塞を全て沈黙させることには成功した。
しかしながら問題は第二惑星と第一惑星で、これらは第四惑星同様に、星そのものが凶悪な重粒子砲発射装置と化している。
しかも亜光速で発射される重粒子砲だ。
少なくとも、ワープでもしない限りその射程からは逃れられない。
第三惑星が落ちた今。
これを巨大な工作艦が抱えて逃げ切るまで、どうにか現有戦力で防ぎきらなければならない。
盾艦は限界近いと聞いている。
もはや一刻の猶予もない。
最悪、此処を放棄して、必要物資だけ回収して逃げるとしても、まだまだ時間が掛かる。制圧も完全には終わっていないのだ。
それに、ウォーリア四型も限界だ。
一段落したら、戻らなければならないだろう。
勝ったが、状況はまだまだかなり危ない。
此処からひっくり返される可能性は大いにある。まだ油断など、出来る状況にはなかった。
※侵略者の指導者端末
脳部分だけを大量にクローンして増設したものです。
基本的に指導者は既に肉体に価値を見いだしておらず、自身の優秀(と考えている)頭脳だけを大量に培養して増設し、性能を上げています。
実際、古くには他と比べて圧倒的な頭脳を持っていたこと、劣化せずに遺伝子情報からクローンを作れることからも、これは戦略としては間違ってはいません。
問題は体のスペックではなく、思考が老いたということですね。どうしようもなく。
本作にどういった要素がほしいですか。要望があれば遠慮なくどうぞ。
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