エバーグリーンの陽炎   作:つるみ鎌太朗

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4、

 

 エイハブはスピードキング並みに車をトバしていた。一刻も早くラッキーのもとへ戻らなければならない。

 言われたポイントをナビゲートにセットし、アクセルを踏み込む。

 

——この星は何なんだ?

 

 まばらな林が見えてきた。その中央に、ひときわ輝く水面。

 コニーの言う湖だ。

 急ブレーキをかけ、車から飛び出す。

 柔らかな芝生を踏み締めてエイハブの眼前にひろがったのは——。

 

 明るい陽光の中、生まれたままの姿で暴れ狂う船員たちだった。

 

 酔っているのか? と頭をよぎるがそれにしたって異常だ。

 ババが雄叫びをあげてドラミングするのを、スピードキングが壊れたからくり人形のように指差して笑い転げている。

 バシャバシャと水しぶきをあげ、二人は幼児に戻ってしまったかのよう。

 

 料理長であるクックはもぎたての果物をひたすら洗っている。それを底の抜けたカゴに放り投げるものだから、いつまでも終わらない。

 時折、ガブリとかぶりついては『うめえ! うめえ!』と舌鼓を打っている。

 

 エイハブが驚愕で立ち尽くしていると、背後からヒュンと切っ先が飛んできた。慌てて避けるとムッツが『キェェェェェェ』などと叫んでセラミック剣をぶん回している。

 修行と称し、正確な剣筋を持つ彼にしては大ぶりで粗雑な剣さばき。目が完全に白目になっていたので、後ろから押さえつけてやめさせる。

 

「待て、待て。それじゃ自分の大事なモン斬っちまうぞ!」

 

 やっとの思いで剣から手を離させ、岩にもたれさせるとブツブツと念仏を唱えだした。

 エイハブの背筋に悪寒が走る——そしてさらに鳥肌を立たせる相手が背後に迫っていた。

 

「エ・イ・ハ・ブぅ〜〜〜ン……」

 

 気色悪い声で背を指でなぞられる。

 後ろに目をやれば素っ裸のホワイトハットが薄い頭を擦り寄せてきていた。

 

「おい、ナンだその目は。やめなよ……妻子ある身だろが」

「うゥ〜ン、あの夜が忘れられないのォ」

「黙れ! ンな夜があってたまるか!」

 

 べりっと引き剥がすも尚も近づこうとするので殴り飛ばしてしまった。

 肩で息をしながら見下ろす。

 しかしホワイトハットは頬を腫らしながらもケタケタと笑っていた。

 エイハブは周囲を再度見渡し、すっかり豹変した集団に戦慄する。

 

「ナンで俺が野郎ばかりのヌーディスト・ビーチに招待されなきゃなンねェんだ。冗談じゃねえ……」

 

 口では強がりながらも後ずさり。

 すると脱ぎ捨てられた衣服の中、見覚えのある服が目に留まる。

 外套の下に、モスグリーンの着込まれたチュニックとベルト。黒のインナー。履き古した靴。

 他とは違い、キチンと折りたたまれている。

 

「デュウ……」

 

 こんなに几帳面に畳んであるなら、デュウ本人が置いていったのだろう。それと、脱衣しているならそう遠くに行くハズがない。

 衣服を脇に抱える。アトレの服も周囲に投げ散らかっていたので回収。

 各人の服の周囲には食い散らかした果物もあり、刺激臭がした。

 先ほどクックが食べていたのと同じものだ。

 まさか、これのせいで船員がおかしくなったのか?

 

「二人はどこだ」

 

 転がっているホワイトハットへ聞けば、

 

「アッチ」

 

 と木々の密集する方向を示される。

 エイハブは二人分の服を手に、まだ騒がしい連中に向かって叫ぶ。

 

「いいか、戻ってくるまでに服を着ろ! ラッキーが待ってんだ……はしゃいでいる場合じゃねえ!」

 

 だが船員たちに聞こえたかは定かではない。彼らはうつろな顔でうろつくばかりだった。

 デュウとアトレの衣服を小脇に林へ駆け出す。

 むわっとした緑が太陽をいくぶんか遮ってくれた。ずっと肺の奥に溜まっていた熱気が冷まされてゆく。

 

「デュウ! デュ〜ウゥゥゥゥ! アトレーッ‼︎」

 

 名前を呼びつづける。このクソッタレな星で、あの二人だけ普段と変わりないから……。

 すっかり木々が空を覆う場所に辿り着くと、湖面にぷか〜と何かが浮かんでいた。

 

「アッ、船長。元に戻った?」

「何言ってんだアトレ……お前こそ無事か?」

 

 アトレが浮き輪に背を預け、腹に麦わら帽を置いて完全に脱力している。

 いつもどおりの小憎たらしい笑顔があった。

 

「おれェ? 気持ち悪いのはだいぶ善くなったよ。

あの信号機をじっと見ているとよくねえや、ヤッパリ自然が目にやさしーよね」

 

 言って手にした果物を一口。エイハブは息を呑み、叩き落とす。

 

「食うなッ!」

 

 湖に浮かぶ果物がゆうらり流されていく。

 アトレが名残惜しそうにした。

 

「ダイジョーブだよ。デュウが食べてもいい、って言ったんだ」

 

 言われてみればクックが食べていたものとは若干ちがう。

 だが意識はアトレが口にした名前に持っていかれていた。

 

「デュウ……、デュウはどこだ! どこにいる⁉︎」

「アッチ」

 

 あごをしゃくるアトレ。

 エイハブが視線を向けると、湖のほとりの、木々の枝の合間に白い背中が見えた。

 鮮やかな緑の葉。ライトグリーンの木漏れ日が肌を淡く彩る。

 ただ一点、頭に乗せた麦わら帽だけがチグハグだった。

 

「デュウ! 無事か!」

 

 呼びかけると、ゆっくりと体を向けられる。

 長い髪を鎖骨から胸へ垂らし、指先にはトンボを留めていた。

 それを宙へ逃して歩いてくる。

 目の前までやってくると、すみれ色の瞳がコチラを窺う。

 手のひらに点のような光を灯し、見せられた。

 

「この光を目で追って……」

「ナンだ、ナンの真似だ。それどころじゃねェんだ、ラッキーがコニーと……」

「落ち着いて。認識に異常がないか調べている」

 

 続いて膝をトントンと小突かれた。

 

「叩かれているのがわかりますか?」

「あーッ、もう! 何してんだよ、辞めてくれよ。俺が異常者だってのか!?」

「船長。コニーをおれは知らない」

 

 淡々と告げられる。

 エイハブはギョッとしてデュウをまじまじと見た。視線を受け、湖からあがってくる。

 向こうにいる連中と違ってしっかりとスパッツを履いていた。

 持ってきた衣服に入っていないのを確認すると、横で腰かけながら、

 

「速乾性だよ」

 

 とデュウが教えてくれる。

 

「別にンなこた聞いてねえ……それより、コニーを知らないってのは?

あの家で話しかけてきただろう。若い女だ」

「おれにはあなたが独り言を言っているようにしか見えなかった。黒焦げの家の前で——虚空に向けて」

 

 ブワッと全身から汗が噴き出た。

 アトレも岸に手をつきながら茶化してくる。

 

「ホント、ホント! 船長、幽霊にでも話しかけてンのかと思ったよ。なあデュウ」

「その様子だと船長は自分の異変に気づいていなかったようだ。

今は、認知に異常は見られないが……」

 

 自身が幻覚にむしばまれていたと知らされ、天地がひっくり返ったような心地になる。

 アトレもあがってきて、エイハブの持ってきたタオルで体を拭きはじめた。

 デュウにも渡してやると濡れた髪を抑えている。

 

「他のみんなも『若い女』を認識している……共通の幻覚を見ている。

何かしらの精神干渉を受けている。おそらく、あの信号機がトリガー」

「俺としたことが……」

「船長が比較的軽症なのは片目でしか光のパターンを受け取らなかったから」

 

 アトレに至っては背が低いため、信号機のシグナルが不完全にしか見えなかったらしい。

 デュウが説明を続ける。

 

「惑星全体に微弱な電磁波が流されてる。そこへ信号機によるサブリミナル効果をきっかけとし、強い幻視を引き起こした」

「誰が、何のために?」

「それはわからない。ただ、強烈な悪意にしか感じられない……」

 

 そうは言いながらも、その仮説はほぼ当たっているように思えた。

 エイハブはこの恐ろしい星へ着陸許可を出したのを悔やむ。アカとデュウによる提案だったが、最終的に決断したのは自分。

 唇を噛んでいると尋ねられる。

 

「船長。ラッキーは?」

「ラッキー……コニーに預けて…… 」

「コニーなんて女性はいない」

 

 デュウの視線が空へ向けられた。

 先ほど逃がしていたトンボが戻ってくる。肩にとまるまで目で追いかけ、透きとおる羽をじっと見つめていた。

 

「ここに来るまで生態系を調べていた。

この星には苔やバクテリア、小魚……それから昆虫類ぐらいしか確認できない」

「人間は……」

「確認したかぎり、あなた方しかいない」

 

 エイハブの背後でアトレがぽつりと呟く。

 

「それって、ラッキーは一人きりってこと? ……危険じゃねえ?」

 

 判断を誤った。

 いくら幻視に侵されていたとはいえ、蓄積された違和感を無視するべきではなかった。

 エイハブが言葉を失っているとデュウが静かに提案してくる。

 

「戻ろう、船長」

 

 同時に林の奥から呻き声が聴こえた。複数の声が重なり、地獄のような合唱と化している。

 アトレがエイハブの腕を引っ張った。

 

「なあ、アレ、向こうにいたみんな……だよな?」

 

 濡れるのも構わず、エイハブは二人を引き寄せる。

 湿気た熱気が身にまとわりつく中、ひやりとした体温が目を覚まさせた。

 

「離れるな。……この星は危険だ。

さっさとラッキーを回収して、ズラかるぞ」

 

♢

 

 コニーとの時間は幼かったころを思い出させる。

 ラッキー……サチコは今よりも幼かった時に母親とパイを焼いた。

 資源は少なかったものの、なけなしの材料で作ったものだ。

 兄のシローも神童ぶりを発揮してはいたが、まだレジスタンスのリーダーではなく、いつだってそばにいてくれた。

 みんなでパイを囲んで食べた日のことが忘れられない。

 あの時も、カスタードのフィリングに焼きリンゴが入っていて、サクサクで……。

 今、まさに目の前にある焼きたてのアップルパイとそっくりだった。

 

「さあ、まず味見をしてみましょう。ラッキーさん」

 

 コニーがニコニコと薦めてくる。

 ラッキーは迷わず切り分け、白い皿にひと切れ乗せた。

 フォークで刺すと口に運び……。

 

「やめろォォォォォォォーーーッ!!」

 

 耳をつんざく音ともに皿が床で割れた。パイもぐしゃぐしゃ。

 気づけば隣でエイハブが汗みずくで立っていた。

 

「何をするんだ!」

 

 あまりの出来事に声を荒らげたがエイハブが弱々しく肩にすがってくる。

 

「ここは……家なんかじゃねえ。周りをよく見てみろ。

黒焦げの廃墟だ……」

 

 ラッキーは周囲を見渡した。

 たった今、パイを薦めてきたコニーの姿はどこにもない。それどころか暖かな陽ざしに透けるカーテンも、大きな窓もなく、ただ崩れかけた木枠から日光が差し込むだけ。

 だんだんと体じゅうが熱くなってきた。いつのまにこんなに汗をかいていたのだろう。

 朽ち果てたコンロの前でデュウが何かを調べている。

 パタパタと足音が聴こえた。

 

「船長、デュウ! ラッキーは!?」

 

 血相を変えたアトレだった。

 ラッキーはもやのかかったような頭を振りかぶり、立ち上がる。

 ここはどこだろう? どうやって来たのかも覚えていない。

 デュウがコンロで瓶を並べていた。

 

「ヒ素、タリウム、ストリキニーネ、青酸カリ……」

 

 彼は振り向き、まだその場にへたり込んでいるエイハブへ報告する。

 

「船長。明確な罠だ。焼け跡というだけならまだしも、毒物まで置いてある……」

 

 何の話か、と聞こうとした瞬間にエイハブがうわ言のように言った。

 

「よかった、間に合って」

 

 アトレと一緒に顔を覗き込むと、心底疲れ果てた顔をしている。

 伏せたまぶたが震えていた。

 

「本当によかった……手遅れにならなくて……。

——帰るぞ、レディ・ウィスカーへ」

 

 床に落ちたパイは灰色で、泥みたいだった。

 

5、

 

 恍惚(トランス)の先に地獄が待っていた。

 すっぽんぽんで野生に戻っていた連中はその後、激しい脱水症状と下痢とで苦しまされた。

 原因は、やはりあの木の実。アトレが口にしていたものと似ていたが、別物で毒性が極めて高いという。

 

『バカ野郎! 急病人ばっかり連れ帰りやがって!』

 

 悪態をつきながらもドクがつきっきりで治療を行った。

 おかげで全員一命をとりとめ、カンパニーは誰ひとり欠けることがなかった。

 幻視も残っていたが、エバーグリーンを離れれば徐々に薄れていった。

 

 それはラッキーも同じ。

 男たちのように危険物を口にしなかったぶん、数日の軽いふらつきだけでほぼ回復した。

 だがすっかり塞ぎ込んでしまっている。

 エイハブは彼女がどんな幻覚を見ていたか知らない。コニーは共通しているようだが、それ以上は、ただ残酷な光景だったのだろう、とだけ窺えた。

 船室の隅でうずくまるラッキーへエイハブはゆっくり近づく。

 壁に背を預け、話しかけた。

 

「ラッキー。近くの星に寄るから、一応看てもらえ。

ドクは腕はイイが充分な設備がない。デカい病院で検査してもらったほうがいいとよ」

 

 俺もだけどな、とから笑いで付け加えた。

 ただいらえはない。

 構わずエイハブは続ける。

 

「そんで、俺らは他よか軽症だから、すぐ検査なんざパスして、すこし休もう。海があって泳げるってよ。

あと水族館があって、遊園地もあって、風船もらって……」

 

 楽しげな話題を並べ立てると、のそのそとラッキーが顔を見せた。

 目が赤い。

 

「オレ、そんなに子どもじゃないよ……」

 

 そんな抗議にズイと顔を寄せる。

 

「いいじゃないか、ちょっとくらい。

楽しむのに子どもだとか、オッサンだとか関係ねえ。羽目を外して遊べばいいんだ」

 

 エイハブの目には明るい輝きがあった。

 ラッキーはそれをしばらく見つめ、ぼんやりしているようだったが、やがて口もとをほんのすこし綻ばせる。

 つられてエイハブもニカッと笑い、『決まりだ!』と言った。

 

 そんな二人を角から盗み見していたのは、乱痴気騒ぎで人泣かせだった一行。

 出歩けるぐらいには回復している。

 バカンスと聞いて、いてもたってもいられないようだった。

 

「海だって!」

「今度こそ水着美女が大勢!」

「ラッキーって、どんな水着着るんだ?」

「あれくらいの子はワンピースか、タンキニか……」

 

 口々に勝手な予想をする中、ムッツがぽつりと言った。

 

「スク水……」

 

 騒がしかったのが一瞬だけ静まり返る。

 しかし、すぐさまドッと笑いが湧いた。

 

「ま、マニアックすぎる」

「おまえまだ幻視があるんじゃないか」

「ババ、コワイ。ムッツ・ムッツリ」

 

 船内には普段の空気が戻ってきている。

 

♢

 

 メインモニタに次の惑星が映っている。

 デュウのかたわらには麦わら帽子が置いてあった。

 急いでいたので持ち帰ってしまった。アトレも同様で、夏の思い出とばかりに自室に飾っている。

 あんなに恐ろしい星の記憶など忘れたほうが身のためだが……。

 キーボードを叩いていると扉が開く。

 

「デュウ。ここにいたのか」

 

 アカデミアスだった。

 デュウとエイハブが急患をトラックに縛りつけて戻った際、すっかり修理を終えてくれていた。

 だから即座にエバーグリーンを脱出できたのだ——アカとドクが機能していて本当によかった。

 隣までやってきたアカがモニターを覗き、ため息をつく。

 

「それにしても、なんて悪意のある星だったんだ……修理に集中していたから気づかなかった」

「それが功を奏した。ドクの二日酔いもちょうどよかった」

「今は疲れて寝てる」

 

 次の星まで数時間。

 病院へ症状の説明もあるだろうから、ドクにはゆっくり休んでもらおう。

 二人で話していたら、ふとアカが神妙な顔でこぼす。

 

「デュウ。あの星は……すこし調べてみたけれど」

「おれもだ。核爆発のあと、近隣の星で戦争があったらしい」

「ああ……ただ争いなんて長い宇宙開拓史で珍しいことではないから」

「連邦による不自然な介入が確認できた」

 

 アカもうなずいた。

 おそらく同じ結論に辿り着いている。デュウは静かに語りつづける。

 

「あれは戦時にかこつけた人体実験。迷い込んだ敵国の兵士を……いや、もはやどちらでもよかったのかもしれない。

戦争の間は『名誉ある戦死』で片付けられる」

「無差別としか考えられない……ひどい話だ」

「あの人たちならやりかねない」

 

 はっきりと、デュウは断言した。

 すみれ色の瞳に明確な嫌悪がにじむ。

 

「人の歴史は陵辱の歴史。目を覆うような業の上に今がある。

連邦はその最たるもの」

 

 吐き捨てるような物言いだった。 

 

「あの人たちは、人間など……駒か実験動物程度にしか思っていない……」

 

 肩を震わせていると、アカから歯切れ悪く指摘された。

 

「……見てきたように言う……」

 

 ハッとなって彼の表情を窺う。どこか哀しげで、かつ恐れているように見えた。

 デュウは自然と漏れた感情の出どころを探ろうとしたが、どうしても辿り着けない。

 

「なぜ、そんなことを思ったのか……でもあの人たちは……いや、しかし、おれこそが……?」

 

 自分の心が勝手に舵を切るのは、怖かった。

 誰かが内側から突き破って出てくるようで。

 デュウが混乱していると見かねたアカが話題を変えてくれる。

 

「船長が、次の星で海に行くらしい。水族館とか、遊園地だとか、アトレやラッキーを連れて……きみも一緒に行くといい。

きっと今回の件で疲れたろうから休むといい」

 

 それは彼も同じなようで、ウーンと背伸びすると来た時と同じく扉を開けた。

 去る間際に振り返る。

 

「デュウ。きみがいてくれてよかった」

 

 礼を言われ、デュウはすこしだけ落ち着いた。

 あの星で、みんながレディ・ウィスカーに戻ってこられたこと。それは確かだから……。

 脇に置いていた麦わら帽を手に取る。まだ夏のにおいが残っている気がした。

『エバーグリーン』は美しい星。

 緑豊かで、いちど壊れかけた生態系もゆっくり還りつつあった。

 だが招かれざる客を拒みつづける。

 あの信号機は壊れるまで稼働し、今後も迷い込んだ人間を幸せな夢に閉じ込めるだろう。

 かつての幸せな記憶。終わらぬ夏の再現。

 さながら陽炎のように、手の届かぬ幻だけがいつまでも灼きついている。

 

 おわり





あとがき

 ドキッ! 野郎だらけのヌーディスト・レイク〜パニックホラーを添えて〜

 こんにちは、つるみです。
 真夏なので納涼系ホラーSFを書こうと思いました。不気味で、うっすら怖い雰囲気を感じていただければ嬉しいです。
 ↑がギャグっぽいけれど……いえギャグでした。ホラーの皮を被ったギャグになっていました。

 それでも『わたしの推しがキャラ崩壊してる』と思われた方はごめんなさい。

 物語の都合上そうなりました。
 フォローは入れたつもりなんですけど。こういう二次創作を書く時、『普段はこんなキャラじゃないですよ』とヘイト管理するのは大事だと思っています。
 それにしても幻視もある中、よくぞ誰ひとり欠けずに生還できました。推しを活躍させすぎた気もしますが、やっぱり船長がね、最後まで諦めなかったのが勝因かと思います。



 ラッキーが途中で過去にパイを焼いたとありますが、モチロンねつ造です。
 今回のお話を書くに至り、ちょっと原作の情報をまとめてみたのですけど、モアドに酸性雨が降り注いだのは劇中から15年前だそうです。
 ラッキーがキングクーロンに来たのが4699年。
 で、やっぱりモアド到着で白鯨爆発まであと9ヶ月と言っているので、あの話をした時点では4700年。
 ラッキーが物語最初で14歳なので……話をした時に誕生日が来ていれば15歳? ラッキーの生まれた年に天災が起きた? のかな?
 ということは環境汚染されていないころのモアドを知らない世代なんですね。
 それでもモアドを守りたい、信じたい、と思っているんだ……改めてイイ子だ。

 そんなイイ子をえらい目に遭わせてごめんなさいでした。
 やっぱりね。比較的安全と思われた子が実はめちゃくちゃ危険なところにいた、としたほうが最後にゾーッとなるかなって。
 ホラーSFですから。
 語られていない中で、こんな冒険もあったんじゃないか? と妄想するのも一興です。
 ヲタクの自給自足。たのち、たのち・・モグモグ・・(自分のしっぽを食っているとかげ)



 あと今回は一応オールキャラだったので各キャラの口調をさすがに調べました。だいたい一人称は調べたと思いますが、ただひとり。

 ムッツだけわかんない。

 この人、最後は壊れぎみですが大体は寡黙ですからネ。どこかの回にあるんでしょうけど、よかったら先輩方教えてくださいませ。
 ちなみに、ムッツはテレスペのごえもんみたいだな〜と思って視ていました。修行修行と言っているのに脇が甘いよ……でもナンか機械とかぶった斬ってるし、やべえやつ。
 今回のお話でイチバンやべえ状態になっちゃってすみません。謝ってばっかだな!!

 そんな暴走ぎみなホラーSFでしたが、楽しんでいただけたら幸いです。懲りずに、まだ白鯨の二次創作を書こうと思います!
 世間はお盆。暑さにお気をつけて、良いバカンスを。それでは次のお話までごきげんよう〜。

   つるみ 2026.08.08
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