魔法少女リリカルなのはS.G.   作:月想

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開いて頂きありがとうございます。
いわゆる説明回です。
なのは世界は本当に二次創作が作りやすいなと、改めて作品自体に感謝したくなりました。
ガンブレ、面白過ぎますね←


第2話『鋼鉄の乙女(アイアン・メイデン)

フェイト・テスタロッサ・ハラオウン。

 

言わずと知れた管理局の敏腕執務官。

"闇の書事件"や"JS事件"等、名だたる大事件を解決に導いた立役者であり、おまけに超が付く程の美人。

 

彼女の出自やその穏やかで優しい内面は限られた友人にしか知られていない為、一般市民からすればまさに高嶺の花。

日常で関わることはまずないと言っていい。

執務官自体がそもそも捜査のプロ。

重い事件を扱う業務であることからも、通常は街で起こったボヤ騒ぎに首を突っ込むことはない。

 

だが、今回は少し事情が違った。

1つは、彼女が()()()()()()()()はとある事情から解決が急務であり、残業どころではないレベルで深夜まで仕事詰めだったこと。

2つは、彼女が偶々通りかかったタイミングで、異常な程強力な魔力反応を感じ取ったからである。

 

担当事件に関連があると思ったわけではないが、市街地で戦闘が起きているのは間違いない。

ならば、向かわないという選択肢はフェイトにはなかった。

ご存知の通り、彼女はそういう人間だからである。

 

眠気覚ましのコーヒーを一気飲みし、愛車で現場に急行。

彼女を待っていたのは、隕石でも落ちたような巨大なクレーターと、ダメージを負い気絶した魔導師。

そして、何故かその近くで気持ち良さそうに眠っている一人の女学生であった。

 

困惑しながらも、魔導師については過去に犯罪歴を見留めた為、今回の被疑者として連行。

女学生についてはフェイト自ら病院に運んだ後、命に別状はないと確認し、そのまま重要参考人として取り調べを行うこととした。

 

ここで一つ、彼女なりの"テクニック"を披露することになる。

 

"事件に巻き込まれたと思われる若者との会話は、出来る限りその対象者がリラックス出来る場所が良い。"

 

という簡単なものだ。

管理局の取り調べ室は狭いし圧迫感もあるし、犯罪を目撃した一般市民には精神的によろしくない。

捜査にある程度の自由がある執務官だからこそ、被害者や参考人に最大限配慮するのが彼女のやり方だった。

相手も気を許して話をしやすくなるし、まさに一石二鳥。

だから今回も、彼女はその定石を実行した。

()()()()()()()()

 

「ぷはぁー!おいしぃー!!夜ごはんはもう食べたんですけど、気疲れからかすっっごくお腹空いちゃってて!!深夜営業って偉大ですよね!!」

「あ、あはは...そうだね...。」

 

"がつがつ!がつがつ!"

そんな擬音が聞こえて来そうな勢いで、様々な料理が運ばれては消えていく。

テーブルに積み上がったお皿の山。

それを平らげているのは件の女学生、ただ一人である。

短めのポニーテールを揺らし、幸せそうにその明るい表情を更に輝かせている。

精一杯の大人の余裕で愛想笑いをしながら、ひっそりと静かに財布の中身を確認する。

 

"大丈夫。今時キャッシュレスが使えないお店なんて都会にはない。私にはまだ、魔法のカードがある!...魔法少女だけに。なんちゃって!"

 

などと普段の彼女が言わない台詞を思い浮かべるくらいには圧巻の食べっぷり。

 

『好きな物を頼んでいいよ。』

 

なんて気軽に言うんじゃなかった。

経費で落とす方法を模索すべきか。

後悔が思考を支配しそうになるのを必死に堪え、本来の目的である取り調べに集中する。

 

「しかも憧れの、あのフェイトさんとお話できるなんて...!厄日が一転、逆転満塁ホームラン!!やたーー!!」

「喜んで貰えるのは嬉しいんだけど...。」

 

少し困った顔をして、すぐに表情を引き締めるフェイト。

真剣な表情で、彼女は話を続ける。

 

「そろそろ事件のお話、聞いてもいいかな?」

「ゴクン...あ、はい。そ、そうでした。」

 

女学生こと重要参考人こと、星宮真はその姿勢を正して憧れのフェイトと向き合う。

交差する視線。

真が冷や汗を流す理由は、何も有名人と会話することによる緊張だけではない。

 

「何故貴女は現場で倒れていたの?

魔導師が倒れていたすぐ側に。」

「それはぁ...その...よく、覚えてなくて。」

「覚えてない?」

「は、はい。...アルバイトが終わった後に、小さい女の子が走っているのが見えて。」

 

ゆっくりと、真は今日あったことを説明する。

追われるように逃げる女の子を見つけ、助けなきゃと思ったこと。

何とか女の子と合流し、逃げ切れたと思ったところであの魔導師が現れたこと。

魔導師の攻撃には対応できず、あえなく気絶。

その女の子が、一人で逃げるところまではギリギリ覚えていたこと。

気づいた時には病院にいて、今こうしていると。

 

そう、()()()()()

 

「...なるほど。じゃあ、貴女は何も知らないんだね。」

 

フェイトにはすぐに、それが嘘だと分かった。

眠っていたのは気になるが、彼女が魔導師を撃破したというのが一番自然だ。

 

それに加え、分かりやすいくらい真は嘘を吐くのが下手なようだった。

一言一言を紡ぐ度に、"悪いことをしている"と躊躇うような間があった。

 

"いい子なんだな"、とフェイトは思う。

どうしても言えない事情があって、本当のことを言いたいのに言えない。

だから辛くて、謝りたくて。

彼女は今そういう顔をしている。

 

執務官であるフェイトに嘘を吐くというのは、はっきり言って良いことではない。

だがそれを分かった上で、何かを隠している。

この素直で、自分に憧れていると真っ直ぐな瞳で言う少女がそこまでして隠そうとする何か。

執務官である前に一人の人間として、どうしても答えが気になった。

 

「じゃあ、その女の子を助けて、魔導師を倒したのは別の誰かなんだね。」

「そうですそうです!私なんて、フェイトさんに憧れるばっかりで才能もない、普通の...なんの変哲もない女の子なんですから。

ほら、デバイスだって学園から支給されてるやつしか持ってないですよ!」

「...確かに。普通のデバイスだね。」

 

差し出されたデバイスを預かり確認するが、戦闘に使用された形跡やそういった機能は見られない。

真の言葉通り、彼女の魔法資質も高くないことは調査済だ。

 

「その、すみません!せっかくフェイトさんが時間を作ってお話してくれたのに...。私、何の手がかりも渡せない...。」

 

そう言って謝る彼女を見て、フェイトは事件の真相ではなく、星宮真という人物を見定めようと決めた。

 

「...貴女は人を助けるのが好きなんだよね?

女の子を助けたのが自分じゃなくて、悔しく思ったりはしない?」

「え?...そりゃあいつも、私にもフェイトさんみたいな力があったらって、ずっと夢見てますけど...。あの子が助かったなら何でもいいです。

目の前で困ってたり、悲しんでる人を見ない振りしたくないだけですし。

私が弱いせいで、あの子には怖い思いをさせちゃったから...もし次があるなら、何より速く、一瞬で助けてあげられたらなって。そう思うだけです。」

 

そう言って遠慮がちに、しかし花のように笑う姿が"ある人物"と重なるような気がした。

お人好しで、誰よりも頼りになり、誰よりも心配な親友に似ている、と。

真の答えを反芻し、フェイトは1つの結論に至る。

彼女は悪意を持って人を傷付ける人間ではない。

いつだって人を疑うというのは気分が悪い。

息を抜き、彼女も漸く自分らしい笑顔を浮かべた。

 

「そっか...。そうだね。私も、そう思うよ。」

 

そう優しく言って微笑む憧れの姿に、真はつい見惚れてしまうのであった。

 

―――――――――――――――――――――――

 

「それじゃあ、何か思い出したらまたいつでも連絡してね?」

 

ファミレスでの取り調べを終え、

車で真を自宅まで送り届けるフェイト。

ちなみに支払い総額は、軽く彼女の二週間分の昼食代金程度であった。

"こんな時の為に貯金をしているの!"と思う自分と、"経費だから!これ経費だから!"と泣く自分の葛藤があったのは内緒である。

 

真の端末に連絡先を登録し、気さくに手渡す。

 

「フェイトさんの連絡先...!?い、いいんですか!?私ファンなのに!?これはライン越えなのでは...!?」

「あ、あはは...。まあ、程々ね?」

 

あくまでも捜査の為の連絡先共有なのだが、純情な彼女には少し刺激が強過ぎたらしい。

その胸に大事そうに抱えられている"色紙"もあり、フェイトは微妙な表情をせざるを得なかった。

 

「あの、サインもありがとうございます!今日は本当の本当に、ありがとうございましたっ!」

 

笑顔のまま頭をしっかりと下げる真を見ていると、慣れないサインを書いた甲斐があったかなとも思える。

その感謝に手を振って応え、彼女は車のエンジンをスタートさせた。

 

真にとってはまさに夢のような一夜だった。

走り去っていくフェイトの愛車が見えなくなるまで、真はいつまでもその場に立ち尽くしていた。

...が、手元のサインが視界に入った途端に、すぐにだらしのない顔になってしまう。

 

「ふふ、えへへ...フェイトさんのサイン...。」

 

『ほーん?そんなもんが嬉しいのか?』

 

「嬉しいに決まってるよ!あのフェイトさんのサインだよ!?もう末代までの家宝だよ家宝!...ってうわぁ!?!?」

 

突然頭に響くどこか聞き覚えのある声。

遅れて驚いた真のお腹から、光の玉のようなものがが現れる。

やがてそれは人の形となり、これまた覚えのある姿となったのだった。

 

「いちいちうるせーんだよ!おまえ、騒がしくないと死ぬ生き物か何かか?」

 

小さな体躯に人形のように整った顔、銀髪。

そこに乗った不機嫌そうな表情に、可愛い声に似合わない口の悪さ。

見間違えようがない、それは今日という日を決定付けた、件の少女であった。

 

「何か出てきた!?今までどこに!?いったいぜんたいどんな仕組み!?」

「だからうるせー!教えてやるからついてこいばか!」

 

そう乱暴に言って、少女はツカツカとどこかへ向かって歩き出す。

真のアパートに入るつもりは1ミリもないらしい。

 

「...へ?いやぁその。流石に眠いし、明日もというか今日も学校だし。宿題やってないし夜更かしは女の子の敵だからなる早でシャワ」

「い い か ら こ い っ!」

「ひゃいすびまぜん...。」

 

さらば愛しの我が家。

すぐに帰るからね、マイスイートホーム。

声に出したらまた怒られそうなので、心でそう誓う真。

小学生の圧じゃないよ...とぼやきながら、真はしょぼしょぼとその少女についていくしかなかった。

 

「...ねぇ、さっきまで私の中にいたの?」

「そうだ。」

「どういう仕組み?」

「後で説明する。」

「あれ、夢じゃなかったの?」

「おまえばかか。」

「お前じゃないよ、私は星宮真。」

「知ってる。」

「キミのお名前は?」

「...うっさいばか。」

 

道すがら少女に色々質問を投げ掛けるが、どれも素っ気ない返答ばかり。

反抗期入り立てだろうかと見当違いな感想を浮かべながら、真は少女の後を追う。

 

「...着いたぞ。」

「着いたって...え?」

 

どんどん人気のない(深夜だからいないのは当たり前なのだが)、つまり古めかしい街並みになっているとは思っていた。

しかし、今目の前に建っている建物は特筆して酷い。

塗装の剥げたコンクリートに植物の蔦、とても人がいるようには見えないボロボロの外観。

はっきり言ってしまえば、"廃墟"でしかなかった。

 

「って怖い!?深夜に見ていいビジュアルじゃないよね!?...はっ!つまりもしかして!キミおばけっ!?」

 

そういった感想が出るのが普通だが、少女には気に食わない内容だったらしい。

乾いたいい音を響かせ、真の頭に可愛い衝撃が走る。

 

「誰がオバケだ、誰が。」

「痛いよぉ~...。」

 

見た目の可愛いさと裏腹に、なかなかどうして重い一撃。

これは実体があると嫌な納得のし方をしつつ、再び廃墟を眺めて冷や汗を垂らす。

 

「さ、入るぞ。」

「あ、ちょっ!?ま、待ってよぉ...!」

 

こんな深夜に廃墟前で取り残されたらたまったもんじゃない。

引き返すこともできず、真は結局銀髪小学生についていくことに。

 

暗い道を黙々と進んでいく。

そんな中で、彼女をある"違和感"が襲った。

 

「こんなに入り口、遠かったかな...?」

 

真っ暗な、霧がかかったような道。

少女の後を歩いて、もう何分経ったのか。

そもそも、()()()()()()()()()()()()()()

次第に彼女の認識自体が、歪にチグハグになっていった。

 

"おかしいな?何で私こんなところに?"

"あの子に来いって...。"

"...あの子って、誰?どこ?"

"あれ...何だかすごく、眠い..."

 

そこで彼女の意識は途切れた。

本日二度目の気絶。

少女の呆れたようなため息が静かに響き渡る。

 

「人選ミスったな、こりゃ。」

 

―――――――――――――――――――――――

 

「"結界"を無理矢理突き抜けたら、負荷がかかるに決まっているでしょう?」

「おまえが連れてこいって言ったんだ。やたらごねてきてめんどくさかったんだからな。」

「だから、待ってなさいって言ったのに。」

「いいだろ別に。手間を省いてやったんだ。」

 

ボヤけた意識に言い合いをする誰かの声が刺さる。

不思議なもので、目が覚めると同時に今までの経緯はしっかりと思い出していた。

また気絶したんだなぁと我がことながら呆れて、ゆっくりと目を開く。

 

「あら。目が覚めたみたいね。」

「...知らない天井だ。」

 

真の目に映ったのは、普通の白い天井。

先程見た廃墟とは反対の、綺麗な天井だった。

ムクリと体を起こし、辺りを見回してみる。

沢山の書類と机、パソコン。

モニターにホワイトボードと、他にも何だかメカメカしい物が部屋一面に広がっている。

散らかってはいるが、日常で見ない場所ではない。

こういう部屋には覚えがあった。

 

「研究、室...?」

「ピンポーン!その通り。

頭の方はすっかりお目覚めみたいね。」

 

その言葉の出所を確認すると、そこには見事な大きさの胸を張る、白衣を着た女性が立っていた。

フェイトとはまた違った色合いの金髪。

無造作に見えて、艶やかな長い髪をかきあげながら女性はこう続ける。

 

「歓迎するわ。

()()()()()のマスター、星宮真ちゃん。」

「くら、れんと...?マスター、って...え?」

 

聞き慣れない単語に言われたことのない肩書き。

ついでに知り合いでない人に知られている自分の名前。

意味の分からない状況に疑問符が次々と浮かぶ。

そんな混乱は予想通りだったのか、予め用意していたマグカップを差し出し、女性はニコリと笑ってみせる。

 

「分からないことだらけだと思うけど、安心して?ちゃんと説明する為に、あなたをここへ案内したんだから。はい、あたたかいものどーぞ。」

「あ、えっと...あたたかいもの、どうもです。」

 

女性のフレンドリーな様子にとりあえずの警戒心を解き、渡された飲み物を一口。

しばらく不安が強い状態が続いていたからか、ただのホットドリンクでも染み渡るような美味しさを感じられた。

 

「ふぃ~、落ち着くぅ~...。」

 

マグカップで暖を取ると、段々と意識がクリアになっていく。

いつの間にか心も頭もスッキリした気がする。

 

「ごめんなさいね?ここはあまり人に近づかれたくない秘密の場所なの。

負担をかけないよう、迎えに行くつもりだったのだけど。その子、せっかちさんなのよ。」

「...ふんっ。」

 

バツが悪そうに拗ねている少女。

その顔に、先程聞いた名前が漸く重なった。

 

「クラレントちゃんって、言うんですか?」

 

名前というには珍しい、というか女の子とは思えない響きに戸惑いながら聞き返す。

白衣の女性は首肯し、詳しい説明を始める。

 

「そう。この子はクラレント。

人の姿をした、属に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

反逆の剣。"逆剣クラレント"ってとこかしら。」

「げき、けん...。」

 

"ロストロギア"。

失われた世界の遺物、現在では再現不可能な技術、物品の総称。所謂、オーパーツのことだ。

それくらいは真でも知っている。

だが、それと目の前の少女が一致する気はどうしてもしない。

だって、彼女はそんな冷たいモノなんかではない。

確かに温かい、生きた人間だと真は感じていた。

 

「...信じられないのも無理はないわ。デバイスと言うには、あまりにも過剰な人間性。

研究者の私でも、"人ではない。"なんて言い切るのは躊躇うもの。」

 

顔を背けたままのクラレントを見つめ、女性は柔らかい笑顔を見せる。

説明する本人自体も、真とは同意見らしい。

 

「自己紹介が遅れたわね。

私は"リーナ・バレンシュタイン"。

彼女たち、"鋼鉄の乙女(アイアン・メイデン)"の研究者。

専攻は考古学だけど、他の分野も軽くかじって博士号は取っているわ。

つまり、稀にみる天才ってわけ。

よろしくね?」

 

リーナと名乗るこの女性。

ウィンクが様になる美人というだけではなく、どうやらとんでもない天才らしい。

まだ20代にしか見えないが、それで博士号持ちとは天才も天才である。

真の友人であれば、『アニメだ!!』と喜びそうな話だ。

勿論、本当の話であればだが。

 

「来てもらったのはこの子のことと、()()()()()()()をすぐにでも知ってもらう必要があったから。」

「クラレントちゃんと、私...?」

「そう。"レンレン"と真ちゃん。」

「だからその呼び方やめろ!!バカみてーじゃねーか!!///」

 

リーナの特徴的なあだ名が相当恥ずかしいのか、クラレントは顔を真っ赤にして身振り手振りで精一杯の抗議をする。

"やっぱり普通の女の子じゃん。"と思ったり、

"パンダみたいなあだ名で可愛い。"と思ったり。

真の中では、自分の感覚は間違っていないと早くも結論が出ていた。

 

「えー、パンダみたいで可愛いじゃない!」

「誰がパンダだっ!!///」

 

奇遇なことに、リーナからしてもパンダの意識はあった模様。

この人とは上手くやっていけそうだと、少しほんわかした表情になってしまう。

 

「おい、そこのバカ。バカなこと考えてるのは分かってんだからなバカ!」

「バカバカ言い過ぎだよぉ!この数時間で()()()()()は何回私をバカと蔑むの!?」

「うるせー!バカは逆立ちしたってバ...てめっ、レンちゃん言うなっ!!///」

 

自分もちゃっかり呼び名を決め、そこはかとなく距離の短縮を図る。

この星宮真、成績は悪いが友達は多いタイプである。

 

「ふふっ、仲良くなれたみたいで何より。

説明を続けていいかしら?」

「はい、お願いします!」

「仲良くねぇ!!///」

 

駄々っ子を軽くスルーしつつ、リーナ博士の説明が再開する。

 

「私がレンレンに会ったのは一年程前。

遺跡の研究をしていた私は、偶然休眠状態の彼女を見つけたの。」

 

操作されたモニターに遺跡と、豪奢な細工が施された1本の剣が映し出された。

遺跡とは不釣り合いな程綺麗で、傷などまったくと言う程見られない。

 

「これが、レンちゃん?」

「そうよ。

私が触れた途端、剣は今の姿に変化したの。

話を聞く限り、昔のことは何も覚えてないみたい。何でここにいたのか、どうして目を覚ましたのかもね。文献でわずかに確認できるのは、"聖遺物"と"鋼鉄の乙女"という単語のみ。レンレンの起源を解き明かすことが、とりあえずの目標ってところね。」

「なるほど...。」

 

かなり噛み砕いて説明しているが、真にとっては疑問が重なり情報パンク状態。

とりあえず訳知り顔で頷いてみるものの、クラレントの鋭い視線が突き刺さる。

 

「このバカ、何も分かってないぞ。」

「またバカって言った!?」

「ばーかばーか。」

「子どもか!」

「子どもよ?」

「そうだったちくしょう...!」

「子どもじゃねー!!」 

「まあまあ。真ちゃんが理解しないといけないのはこの後の話だから。」

 

程々に笑いも取り入れつつ、解説は続いていく。

モニターはまた別の映像を映し出していた。

 

「既に体験済みだと思うけど。クラレントは適合者の能力を()()()()()()()()()()()()()わ。

真ちゃんは学校の魔力判定がDランクだったわよね?これは学生としてのランクで、管理局基準で言えば...G-ってとこかしら。

それが装甲モードになると..."AAランク"くらいにはなるわね。」

「AA!?というか私の成績を何で!?G-なんて聞いたことない低評価なんですが!?」

 

AAと言えば、元スターズのスバル・ナカジマ。

リミッター制御下の高町なのはと数値的には同等レベルである。

真からしたら雲の上の存在レベルになれてしまうということだ。

それ以上に、本人は個人情報が駄々漏れなのと存在しないはずの低評価が気になるようだが。

 

「けっ、たかがそんなもんか。」

「そんなもんって...AAはすごく優秀な魔導師レベルだよ?」

「ロストロギアはそれほどの物なのよ。使うだけで戦況を引っくり返すバランスブレイカー。それに選ばれたのが真ちゃんなの。」

「選ばれたって、レンちゃんに?」  

「...あたしを使えるヤツは限られる。

条件があるんだ。

おまえみたいなのでも、レア中のレアなんだよ。」

 

酷評から一転、生まれて初めて言われた"特別"という意味の言葉。

嬉しいよりも、やはり何故なのかという疑問が強く感情を占める。

 

「ふふっ、その条件もレンレンには詳しく分からないらしいんだけど。きっと真ちゃんの何かが、レンレンをキュンとさせたのね。」

「誰がキュンだっ!?///」

 

1つ分かるのは、クラレントが思った以上に見た目通りの女の子であるということだ。

今日何度目かの赤面。

可愛いモノ好きの真としては非常にポイントが高い。

 

「そういうわけで。それだけ強い力を持っているレンレンは、あらゆる勢力に狙われる危険があるの。

あなたたちが襲われた魔導師も、その手の輩に違いないわ。」

 

そう言われて、真は襲われた時のことを思い出す。

あの魔導師は躊躇いなく自分を撃ち抜いた。

言葉にならない程の激痛と、一瞬で力が抜け意識が遠退く感覚。

自然と足が震える。

確かにあの時、星宮真は一度死んだのだ。

 

「...現状、真ちゃんはレンレンと繋いだパスによって生きていると言ってもいい。

いずれは回復するでしょうけど、今レンレンを失えば...助からないでしょうね。」

「!...。」

 

助かり切ってはいない。

その事実を受け入れるのに、意外と時間はかからなかった。

あれだけ痛かったのだ、そんな簡単に命が救えるものか。

今こうして立っていられるだけで僥倖。

クラレントのおかげで繋がるかもしれない命。

ならば、やるべきことは単純だ。

 

「つまり...レンちゃんに力を借りて、レンちゃんを守るしか道はないんですね?」

「ええ、そうよ。その為にクラレントはあなたを見初めた。」

 

何となく分かってはいた。

平凡で平和な日常は終わってしまったのだと。

もう二度と戻れないかもしれない。

それだけの体験をしてしまった。

 

「覚悟を決めてもらうわ、星宮真さん。

私と一緒に、クラレントを守って欲しい。」

 

さっきまでの雰囲気とは違う、酷く真剣な眼差しで真を見つめるリーナ。

もうとっくに覚悟は決まっている。

 

「本当は、すごく怖いです...。誰も傷つけたくない。人と競うのも嫌で、みんなと仲良くしてたい。

...だけど。」

 

クラレントの手を握り走った時。

その手が確かに温かったのを覚えている。

ロストロギアなんていうモノじゃない、繋いだあの手は温もりがある命だった。

 

魔導師から逃げている時彼女は。

必死に走るその目は、確かに怯えていた。

"助けて!"と、そう言ってるように見えた。

だから、真の選択は間違っていない。

たとえ望まない戦いだとしても、それをやり通す価値は絶対にある。

守れるのが真しかいないのであれば尚更だ。

 

「泣いてる子がいるなら、助けなきゃ。

痛くても、怖くても、弱くても。

手を伸ばさなきゃいけないって、知ってますから。だから私...戦えます。」

 

真の返答は期待以上のモノだったらしい。

リーナはじっと目を見つめその覚悟を推し測った後。

ニコリと再び笑顔を見せ、手を差し出した。

 

「合格よ。これからよろしくね、真ちゃん。」

「はい!よろしくお願いします!」

 

にこやかに握手を交わす二人。

それをまた気に食わなさそうに見つめるレンに、真が向き直る。

 

「私のこと、助けてくれてありがとう。今こうやって嬉しい気持ちになれるの、レンちゃんのおかげだよ!だから、ありがとう!」

「...んなこと面と向かって言うんじゃねーよ...ばーか...。」

 

顔を背けていても真っ赤になった耳は見えている。

この真の素直さが、へそ曲がりのレンとは合っているのかもしれない。

 

「これは本当に一目惚れだったり?おぼこく見えて実は天然ジゴロ。やるわねぇ...。」

 

茶化すように呟いた感想は本人の耳には届いていない。

()()()()()()楽しくなりそうだと思い、リーナは一区切りを着けることにした。

 

「さて。それじゃあ今日は泊まっていきなさい。

荷物はまた明日回収してあげるから。」

 

気付けば時刻は深夜2時過ぎ。

今から帰れば、寝るのは4時を越えかねない。

申し訳ないけど泊めてもらいしかないなと諦める真。

しかし、気にするべきはもっと他の部分である。

 

「......荷物?」

()()()()()()()()()()()

当然でしょう?」

「......私、二人部屋なんて初めての経験。」

「別部屋に決まってんだろ。」

 

こうして急に始まった三人の共同生活。

両親になんて説明しよう?

こんなに急に引き払ったら契約違反とかやばい?

等々。

家賃浮くじゃんラッキー!と真がプラス思考になるまでには、もうしばらく時間がかかりそうである。




□キャラクタープロフィール□
【名前】:星宮真
【年齢】:16
【血液型】:O型
【誕生日】:12/14
【星座】:いて座
【好きなもの】:カレーライス、映画、可愛いもの
【嫌いなもの】:虫(足が多いの)
【趣味】:人助け、映画鑑賞、トレーニング
【髪色】:明るい茶髪
【髪型】:短めのポニーテール
【胸の大きさ】:普通よりやや大きめ


【挿絵表示】


【名前】:クラレント
【年齢】:知るか
【血液型】:だから知らねー
【誕生日】:ねーよ
【星座】:ねーって言ってんだろ
【好きなもの】:肉、チョコ、可愛いもの
【嫌いなもの】:ピーマン、にんじん
【趣味】:んなもんあるか
【髪色】:銀髪
【髪型】:二つ結び
【胸の大きさ】:知るかばーか


【挿絵表示】
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