エクシーズ時空のティアナたちが気になる今日この頃。
自分はStSも好きでした。
「民間人から通報がありました。魔法による危険行為は禁止されています。」
ゆっくりと地上に降下し、自身のデバイスである"バルディッシュ"を回収するフェイト。
真と緑の少女との間に立ち、少女へ投降するよう事務的な呼び掛けを続ける。
「フェイト、さん...私...」
「...。」
嘘だとバレた。
もう誤魔化せない、クラレントを身に纏った姿を見られてしまった。
真の胸に去来するのは罪悪感と、どうしようもない不安感。
説明したいと思う気持ちと、逃げるべきだと思う気持ちがぶつかって、真は上手く言葉を紡げずにいる。
そんな真をフェイトは一瞥するが、またすぐに意識を少女の方へと向ける。
「っ...管理局の、"閃光"...!」
少女の表情に緊張が走る。
状況が変わった。最悪だ。
ターゲットであるクラレントは問題ない。
力を解放しさえすれば、あんな素人に負けない自信が彼女にはあった。
しかし、目の前の執務官は違う。
それこそ、次元が違うと言っていい。
噂で聞いただけでも管理局最強レベルの実力者であり、潜ってきた修羅場の数も質も段違い。
実際に今さっき見たあの凄まじい雷も、フェイトにとっては虚仮威しでしかないのだ。
まだ本気ですらないのに、勝てるビジョンがまったく浮かばない。
単独で相手取るにはあまりに荷が重過ぎる。
「投降...するわけねぇデスよッ!!」
不意打ち気味に刺々しい魔力の刃が放たれ、フェイトを八つ裂きにしようと殺到する。
ちょうど真と重なる位置、回避を選択すれば真にこの凶刃が殺到することは想像に難くない。
きっとフェイトは真を庇うはず。
ダメージを与えられなくとも防御体勢さえ取らせれば、その隙に逃げ出せる。
ここは離脱しかない。
少女の判断は冷静で的確だった。
「大人しく、投降を。」
「ッ...!?」
気付いた時には、少女の真後ろに彼女がいた。
放たれた凶刃はまるで幻だったかのように跡形もない。
あまりの速度に知覚出来ていなかったようだが、フェイトは防ぐことも回避することもしなかった。
凶刃を自らのデバイスで全て斬り伏せ、瞬時に少女の背後を取ったのだ。
このスピードこそ、フェイトが"閃光"と呼ばれる由縁。
これでもまだ手加減をしているのだが、少女に力量差を理解させるには十分だった。
「無用に傷つけるつもりはありません。
武装を解除して、」
「ふざけるなッ...!」
あくまで手を出さず降伏を迫るフェイトだが、少女は決してそれを受け入れない。
得物を唸らせ振り向き様に斬りつけようとするが、やはり軽々と躱され触れることすら出来ない。
「捕まってたまるかっ...!アタシは絶対にッ!!」
「...仕方ありません。バルディッシュ。」
『"了解。"』
必死に抵抗する姿に投降の見込みがないと諦め、デバイスを"スタンモード"へ。
回避するだけだった攻撃を受け止め、がら空きになった首筋にバルディッシュの刃をそっと当てる。
「ごめんね。」
「ぅ...!?っ...」
糸の切れた人形のように少女の身体が崩れ落ちる。
スタンガンの要領で少女の意識だけを刈り取り、対象の無力化を達成した。
「スゴい...。」
『見惚れてる場合か!やべーぞアイツ!?さっさと逃げねぇと...!?』
憧れの人の鮮やかな手並みをただ呆然と眺めていた真。
レンが拘束を恐れて逃走を提案するが、僅かな動きですら許さぬ鋭い視線が真の足を縫い止めた。
「...星宮真さん。
貴女は、嘘を吐いていましたね。」
「!...それ、は...。」
初めて見る、フェイトの険しい表情。
そこには騙されたことに対する怒りより、信用されていなかったことへの悲しみが強く表れているように思えた。
真の嘘に気付いていたとしても、いざそれが当たってしまえば残念に思う。
フェイトの優しさを察して、真はより深い罪悪感を覚えた。
「貴女を連行します。その武装について、そして昨日の事件について。話を聞かせてもらいます。」
「っ...はい...。」
『おまっ、そんな素直に...はぁ...ったく。』
最早走り出す気力もなかった。
言われるままに従うことを真は選択した。
レンは勿論叱責しようとするが、先程見せられた力の差に逃げようがないことは既に分かっている。
悪態を吐きながら、結局は諦めてしまったようだ。
フェイトは一息吐くと、捕縛する為に倒れた少女へ近付いていく。
その時だった。
「っ!?」
突如として、彼女たちを
今度は迎撃するわけにいかなかった。
倒れた少女に真。
庇うべき対象が多すぎる。
だが、理由はそれだけではない。
「何て威力っ...!」
展開した障壁を、凄まじい熱量と光が襲う。
少しでも気を抜けば貫通されてしまうであろう攻撃力。
手の先が痺れる感覚は、かつて受けた親友の砲撃を嫌でも思い出させる。
「いったい誰が...」
「フェイトさん、あの子がっ!」
「!?」
何とか凌ぎ切り視線を下に向けるが、いつの間にか倒れていた少女が
"今のは囮だ。"
いち早く気付き、砲撃が放たれた方向に振り向く。
「...硬い。」
上空に浮かぶ一人の少女。
長いクリーム色の髪をツインテールにした可愛らしさとは裏腹に、少女の表情は人形のように固まっている。
体には先ほどの少女の物と対称的な、白と桃色の鎧を纏っていた。
目を引くのはその得物。
巨大な砲門を持つ"バズーカ"を二丁、肩に背負っている。
先ほどの砲撃は彼女が原因で間違いないだろう。
「え...あの子今朝のっ!?」
『ただの行き倒れじゃなかったのか...!』
声を上げたのは真だった。
衣装は変わっているが、その容姿は今朝出会った腹ペコ少女にそっくり。
というか、まさに本人で間違いなかった。
どうして朝は見逃されたのかは分からないが、彼女もまた刺客として真を待ち構えていたことをレンは悟る。
「
何故なら先ほどの少女が意識を取り戻し、"ミラ"と呼ばれた少女の近くに控えていたからだ。
状況証拠的にも、二人が仲間であることは疑いようがない。
「ん。
「はい...仕方ありませんよね...。」
緑の少女"イズナ"は落ち込んだ様子で頷くと、すぐにキッとこちらを睨み付けチェーンソーを構える。
「今回は逃げてやりますっ!次は絶対、切り刻んでやるッ!覚悟しとくといいのデスッ!!」
「待ちなさい!逃がすわけには」
捨て台詞を許さず捕縛しようとするフェイト。
彼女に対しまたしてもミラの砲門が向けられる。
咄嗟に防御体勢を取ろうとするが、彼女たちの狙いは攻撃ではなかった。
イズナが別タイミングで撃った魔力弾は空中で弾け、強烈な
「わっ!?」
「しまった...!」
一瞬だか視界を奪われる真とフェイト。
回復した時には既に、謎の少女たちの姿は空から消えてしまっていた。
「逃げ、ちゃった...。」
『あたしらも逃げるべきだったぞばか。』
呆気に取られた意識を引き戻されて目線を隣に動かすと、真剣な表情で真を見つめるフェイトの姿が。
「武装を解除してください。話は、局で伺います。」
「...ひゃい。」
人生終わったかもしれない。
生唾をゴクリと飲み下し、真は憧れの執務官に二日連続で取り調べを受けることとなった。
―――――――――――――――――――――――
「貴女が何かを隠していることは、昨日の時点で気付いていました。だから念の為近くに待機するようにして、監視していたというわけです。」
「監視、ですか...。」
昨日とは違う、何もないが圧迫感はある一室。
向かい合うフェイトの顔をチラリと覗くが、事務的な言葉と同じく表情は固い。
戦いの後、真は言われるままにフェイトからの取調を受けていた。
真の方はと言うと、当然ながら暗い。
俯いて手をギュッと握り、見るからに落ち込んでいる。
どう言い訳したものかと悩んでいるからでもあるが、憧れの人に信用されていなかったのはかなりショックだったようだ。
当然嘘を吐いたことは悪いと思っている。
そんな喪失感と罪悪感が交じり合って、真の感情はぐちゃぐちゃになっていた。
「...昨日からお家に帰ってないよね?
あの廃墟で、あなたは何をしていたの?」
「それは...その...。」
『ちっ。見られてたか。お人好しに見えてなかなかどうして。』
変身を解除してもレンとの融合は維持出来る。
その為、今のところは知られたくない部分については追及を免れてはいる。
しかし出たくても出られないのはレンにとってはストレスらしく、一々愚痴っぽい感想が頭に響いてくる。
真の代わりにいい言い訳を考えてくれる気はまったくないようだ。
「...言えないんだね。」
「ごめん、なさい...。」
口ごもって何も答えない真に対し、フェイトは質問の方向性を変えることにする。
答えないなら、
「それは、知られては困ることがあるからかな?」
「えっと...」
「さっきの、あの姿と関係があるの?」
「それは...」
「知られて困るのは、あなたではない別の誰かですか?」
「っ...」
「私に知られたら、守りたいモノを守れなくなる。そう思ってはいませんか?」
「...。」
質問に対する反応は言葉よりよっぽど真実をフェイトに伝えた。
答えようがありそうな時は何かを言おうとし、図星であれば押し黙ってしまう。
まるで子どもを叱る親の気分になりながら、フェイトは自身の予想が当たっていることを確信した。
事実、真が気にしているのは
もし自己保身の為であれば、彼女は既に全てを話しているだろう。
博士からの説明で、クラレントが所謂"ロストロギア"であることは記憶している。
もしクラレントのことがバレれば、管理局はまず間違いなく彼女を"保護"しようとするはず。
その保護が、
調査という名目でクラレントを物として扱い、彼女の人間性を踏みにじるようなことをするかもしれない。
リーナだってクラレントから引き離され、その上捕まってしまうかもしれない。
真は確かに管理局に入りたいと願い、執務官に憧れている。
しかし、"管理局"という組織が単純な正義の味方じゃないことも彼女は分かっていた。
かつては大事件の原因自体が、管理局起因だったことすらある。
フェイトは間違いなく、真にとっては正義の人だ。
しかしそんなヒーローでも、組織に属している以上どうしようもないこともあるだろう。
クラレントもリーナも、決して悪人などではない。
ただ置かれた状況を理解して、対応しようとしているだけだ。
嘘を吐いた自分ならまだしも、そんな彼女たちを昨日の今日で危険に曝すわけにはいかない。
お気楽そうな彼女であっても、世間知らずのお子さまというわけではないのだ。
「私は、信用できないのかな?」
「...!そんなこと、ないですっ!信じたい...!信じたい、けど...っ」
万が一何かあれば、犠牲になるのはクラレントたちだ。
リーナが研究所を秘密にしているのにもそれなりの理由があるはず。
それを無駄にするなんてことは出来ない。
たとえ、憧れの人に失望されることとなってもだ。
『...傷つける覚悟はないくせに。
一丁前に守る決意だけはありやがる。』
真の考えや感情は、一体化しているレンにはだだ漏れ状態だ。
苛立つ彼女の心にも、真の偽りのない"守りたい"という気持ちは届いていた。
憎まれ口を叩きながらも、そこに乗る気持ちは幾分穏やかな音を響かせた。
「...真ちゃん。もしあなたが悪いことをして、それを隠しているのだとしたら。
私は真相を知らなくちゃいけないし、然るべき対処をしないといけない。
それが、執務官という仕事だから。」
そんな真が本当の意味で、分かっていないことがただ1つある。
それは、
名前や功績、大体の人となりが分かっていたとしても、その本質を理解しているとは言えない。
フェイト・T・ハラオウンは、決して人の気持ちを踏みにじることを是とする人間ではない。
執務官になったのも、自分が少しでも手を差し伸ばせる範囲を広げる為だ。
心から信頼する友人たちと同じく、彼女は管理局員である前に一人のフェイトという人間なのだ。
それを忘れていないが故に、彼女はこうして今真の前に座っている。
「...でも、あなたとは昨日初めて会ったばかりだけど。真ちゃんが良い子だって、私は思ってる。
きっとあなたは、誰かの為に戦える人。
お友達から聞いたよ。
自分が狙われていると分かっていて、巻き込まない為にわざと離れて行ったって。」
実は、今日の騒動を通報したのは真の友人トリオである。
彼女たちは急行したフェイトに己の恐怖ではなく、まず"真を助けて欲しい"と伝えていた。
自分たちを傷つけない為、危ないと分かっていて一人で行ってしまったと。
いつもそうやって、自分を犠牲にする優しい友達なのだと。
そう必死に伝えてきたのだった。
「だからこれは、執務官としてではなく。
私として、フェイトとして聞きたいの。」
「フェイトさんとして...?」
「何か、困っていることがあるんじゃないかな?
もしそうなら、聞かせて欲しい。
優しい子が困っているなら、助けたい。
その気持ちは、あなたになら分かってもらえるはず。」
「...!」
真にはフェイトが、自分を助けようと必死に手を伸ばしているように見えていた。
恐がって、疑って。
そうしているうちに、自分はどんどん取り返しのつかない方へと落ちていく。
思い返せば、真たちが廃墟に入った時点で踏み込むことも出来た。
さっきだって、フェイトがいなければレンを守りきることは出来なかったかもしれない。
武器を持ったイズナたちに対しても、手を出さず無闇に傷つけようとはしなかった。
この人は本当に、自分が憧れた通りの人なのかもしれない。
真っ直ぐに見つめる赤い瞳に、そう信じる価値はあると思ってしまう。
『...はぁ。まったく。どーせ捕まった時点で逃げても追われる立場なんだ。信じた方がまだマシかもしんねーぞ。』
迷う真の背中を押したのは、意外なことに秘密そのもののレンだった。
端から逃走を諦めていたのもある。
だが、心変わりの一番の決め手は1つの経験である。
昨日経験したばかりの、
そういう人間もどうやらいるらしい。
だから、レンもフェイトをその類いではないかと信じたくなったようだ。
『信じようが信じまいが選択肢はねぇだろ。
勝手にしろ、バカマスター。』
『レンちゃん...ありがとう。』
自分だけでなく、レンもまたフェイトを信じると言っている。
それならば、もう迷う必要はない。
覚悟を決めて、たとえどうなってもレンを守るという決意も再び握り締め。
真は俯いていた顔を上げ、フェイトの目を見て言葉を紡いだ。
「フェイトさん。
私...フェイトさんのこと、信じます。」
「...ありがとう。
私も、約束する。
真が守りたいモノを守れるように、私が出来ることを、全力でやってみせるから。」
―――――――――――――――――――――――
轟音が鳴り響く。
かつて華美な意匠で人々の心を高揚させたその船内は、最早見る影もなく。
今はもう瓦礫と海水で一面埋め尽くされている。
この豪華客船による優雅な旅は、1つの巨大な氷塊によって呆気なく崩壊してしまった。
単純でありながら、凄惨な事故だった。
魔法生物が発生させた巨大な氷の塊。
それが運悪くぶつかった部分から浸水が始まり、一瞬にして船内は地獄と化した。
既に犠牲となった乗客も多い。
ただひとつ不幸中の幸いだったのは、管理局の中でも特に秀でた"魔導師"が偶々乗船していたことだろうか。
彼女たちの活躍により、被害は最小限に抑えられた。
しかし、それでも全てを救うことはできない。
失ったものは、決して戻ったりはしないのだ。
「パパ!パパはどこですか...!?」
「リーゼ...!パパは...っ...早く逃げないと...!お願い、今は言うことを聞いて...!」
父親を呼び泣き叫ぶ幼い少女と、気丈に娘を救わんとする母親。
「ママっ!?」
「っ!?」
無情にもその親子に、崩壊した瓦礫の雨が降り注ぐ。
凌ぐ術などない。
1秒と経たずに彼女たちは押し潰され、その命は海の藻屑となるだろう。
その瞬間。
「レイジングハート!」
『"了解です、マスター。"』
いつまで経っても、親子を襲うはずの衝撃がやって来ない。
母親が恐る恐る目を開くと、彼女たちの頭上に大きな"魔法陣"が見えた。
瓦礫を物ともせず、その障壁は二人を完璧に守りきる。
「大丈夫ですか!?ケガはしていませんか!?」
思い遣りと焦りを含んだその声は、宙に浮かぶ少女のものだった。
親子の元へ降り立ち様子を確認すると、安心したように僅かに笑顔を見せる。
「あなたは...?」
「管理きょ...魔導師の、高町なのはと言います。助けに来ました、もう大丈夫ですよ!」
降り立った少女は白いバリアジャケットを身に付けており、魔導師の証である杖を携えていた。
幼いリーゼを見て考え直したのか、正式な自己紹介をやめて微笑む少女。
容姿には未だ幼さを残すものの、その瞳には優しさと、彼女たちを守ろうとする強い意志が宿っていた。
「まどーし...。」
「ありがとう、ございます...っ」
そんな少女の姿は容姿と合わせて、救いの"天使"のように見えたのだろう。
安心から母親の足は力を失って座り込んでしまう。
「ママ!?」
「だ、大丈夫...少し気が抜けてしまって...。」
魔導師の少女は崩れていく船内を冷静に観察し、二人に手を差し伸べてこう話す。
「掴まってください!すぐにここから離脱します!」
「ぱ、パパっ!パパがいないんです...たすけてっ!」
リーゼの言葉に、少女は明るかった表情を固くする。
「...お父さん、は?」
分かっていても聞かずにはいられない。
母親は辛さを押し隠して答える。
「私たちを、守って...」
「っ!...」
少女は拳を固く握る。
"また、助けられなかった。"
いつもそうだ。
誰かを助けたいと願って必死に手を伸ばし。
一人では届かないと知ってからは、同じ想いを持つ仲間と助け合い更にたくさんのモノを救おうとした。
それでも、どうやっても全員は救えない。
救えたと思っていても、その人は既に何かを失っていて。
もう少し早ければ、自分がもっと強ければ。
その想いが消えることはない。
しょうがないと思える程、利口になる気にもなれなかった。
そんな悔しさを噛み殺し、少女は母親に告げる。
「お母さんは、その子を絶対に離さないでください!」
「...はいっ!」
母親がリーゼを抱きしめる。
子どもながらに、この時リーゼはもう父親には会えないと悟った。
ここを離れれば、もうどうやっても父親は帰って来ないと。
「ママ!パパが...!!」
「っ...安全な場所まで、一直線だから!」
この二人だけは、必ず守る。
生きて、無事に帰す。
そう願い犠牲となった父親の為にも。
「絶対に、助けるからっ...!」
少女の瞳に決意が漲る。
海水が雪崩れ込み、親子も少女も流されてしまいそうなその刹那。
「ディバイン!バスターーーっ!!」
桜色の暖かな光が。
瓦礫も海水も、迫る脅威を全て貫いた。
少女は親子を抱き、一直線に空へと飛び上がる。
リーゼは忘れない。
自らを救った星の光を。
決して忘れない。
自らを救った少女の、悔しさに満ちたあの顔を。
"高町なのは"。
リーゼにとっての、二人目のヒーロー。
それが彼女たちの出会いであった。
―――――――――――――――――――――――
ふと、懐かしい光景を見た。
相当疲れているのか、起きているはずが眠っているような。
そういう曖昧な感覚になることが増えてきた。
「いけませんね、弱気になっては。」
よりによってあの記憶を見たということは、それだけ
そんなことではダメだ。
一人でやり遂げると決めたのだから、泣き言なんて許されない。
「これで、4つ目...。」
黒衣に身を包んだ少女が"目標"を見据える。
眼下に広がるのは工業地帯。
この辺りで製造されているのは一般家庭に流通するような、普通の電化製品群である。
「っ...。」
少女が空中に投影されたカーソルを操作すると、程なくして工場の一区画が赤く染められる。
スキャン結果に苦々しい表情を浮かべ、少女は彼女の"武装"を構えた。
白と紫のカラーリングをした、メカニカルなスナイパーライフル。
黒い外套に身を隠しながら、少女は目標の倉庫を睨み付ける。
"怒り"が、僅かに指先を震わせる。
「ふぅ...。」
感情はいらない。
ただ目的の為、スコープを覗く。
「...シュート。」
引き金に呼応して紫色の光が射出される。
障害物を潜り抜け、狙い定めた一撃が閉ざされていた扉を一発で破壊する。
「やはり...ありましたか。」
扉の先、スコープに映る巨大な"影"。
物言わぬ
「スターティアーズ、フルパワー。」
『"承知しました。"』
少女はさっきよりも多くの魔力をデバイスに込め、照準を迷いなくその機械たちに合わせる。
必ず破壊しなくてはならない。
一発で、撃ち抜く。
貫くのだ。
己の正義を押し通す。
「シュート...!」
再び引き金が引かれる。
細く、それでいて閃く一撃。
寸分の狂いなく真っ直ぐに放れたその光は、
一瞬標的をキラリと照らし。
「なっ...!?」
工場に届く前に、
「見つけたぞ。」
スコープの先には一人の魔導師が立っていた。
歳は20歳前後。
血のように紅い髪に鋭い目つき、何よりも彼女の長身にも不釣り合いな程大きく、武骨な"対艦刀"が目を引く。
女性は地上から、空中に佇む黒衣の少女を睨み付ける。
「っ!」
すかさず少女は紅髪の魔導師目掛け魔力弾を連射。
狙いは正確、吸い寄せられるように魔導師に向かうが、全て容易く斬り捨てられてしまった。
怯まず射撃を続けるが、魔導師は一歩一歩少女に向け前進。
気付けば、会話が可能な距離まで接近を許していた。
「お前を逮捕する。...リーゼ。」
「"クレア"、先輩...。」
「もう先輩ではない。敵だ。」
赤髪の魔導師、クレアから放たれるプレッシャー。
それは彼女が本気で少女を、"リーゼ"を打ち倒す覚悟であることを伝えていた。
「...立ち塞がるのであれば。誰であろうと倒します。」
リーゼも身体に身に付けていた外套を脱ぎ去り、正面からクレアを見据える。
淡い紫色の髪に、黄緑色に輝く瞳。
髪を飾るリボンとティアラは優雅で清廉な印象を与えるが、胴体は白いバリアジャケットに覆われ腰に下げたカートリッジが武骨さも感じさせる。
かつての教官とよく似た姿に、一瞬眉をひそめるクレア。
しかしすぐに剣を握り締めると、リーゼに向かって飛び上がった。
「この...!」
リーゼも即座に狙撃モードのデバイスを構え、砲撃を行う。
狙い澄ました一撃ではないが、代わりに出力は高く威力も上がっている。
空中でジャンプしているだけのクレアには避けることすら難しい。
「甘い!」
避ける必要はないと言いたいらしい。
やはり先程と同じように砲撃を切り裂き、そのままの勢いでリーゼを捉えて真っ向から切り下ろす。
「くっ!」
寸でのところで回避。
狙撃モードから二丁拳銃モードにデバイスを変化させ、至近距離からの射撃を行う。
障壁を使い、時には身体だけで回避し。
距離を離そうとするリーゼを決してクレアは逃がそうとしない。
リーゼもまた、間近で振るわれる刃をギリギリで回避し、隙間に射撃を挟み込んで防戦一方とはならない。
放たれる弾丸、振り払う刀。
埒が明かない。
「ならっ...!」
幾度か同じやり取りをした後、先に動いたのはリーゼだった。
射撃を行いつつ、片手を空ける。
クレアが刀を振り、弾丸をを斬り払った瞬間。
「なにっ...!?」
刀を持つ腕が
手首には魔力の鎖が絡み付いている。
「"バインド"...!」
リーゼの最も得意とする戦法。
相手の動きを止め、確実に高威力砲撃を命中させる。
シンプルだが強力な技術。
憧れに教えられた技だった。
「ディバイン...!」
魔法陣が展開され、彼女の全力の魔力が解き放たれる。
「バスターーーッ!!」
気合いと共に放れた紫の極光。
それは無防備なクレアに直撃して、激しい爆発を起こした。
「ハァ...ハァっ...」
互いに手の内を知り尽くしている相手。
上手くいくかは賭けだったが、バインドが決まった以上直撃したはず。
こうなれば、無傷ではすまない。
疲労困憊の身体を慰めるように心がそう願いを発する。
しかし、それが油断となってしまった。
「ッ...!」
煙からクレアが飛び出し、空中のリーゼに接近。
そのまま対艦刀を彼女の華奢な身体に叩きつける。
「あぐぁっ...!?」
まるで野球のボールのように吹き飛び、リーゼは工場の壁を突き抜けていく。
空中と地上。
明らかなアドバンテージの差がありながら、クレアの強さは圧倒的だった。
魔導師としての強さというより、そもそも人を相手取る戦闘術に長けた戦士。
ベルカ式の魔法と合わせ、管理局のエース級とも渡り合える強さを彼女は持っていた。
「投降しろ。お前では、私に勝てない。」
着地したクレアは、ゆっくりとリーゼに近づく。
投降勧告は彼女の最後の思い遣りだろうか。
きつく眉根を寄せた表情で、対艦刀を大きく振りかぶる。
「まだ、です...。私は...っ...負けるわけには...!」
逃亡生活で既に体も限界に近い。
今のリーゼにはクレアの一撃を受けてなお、立ち上がる余力はなかった。
動こうにも立つことすら出来ないリーゼを見下ろし、クレアはその首に狙いを定める。
「...投降しないのならば、始末するだけだ。」
「せん、ぱいっ...」
何故、こんなことになったのだろうか。
目の前の女性は本当に優しい先輩だった。
一緒に馬鹿な話をしたし、夢を語り合ったりもした。
自身が管理局に入隊した時は、母親もとても喜んでくれて。
それに、憧れの人に直接教えを受けることも出来た。
私は変わった。
強くなれたはずなのだ。
それなのに。
何で私は勝てないのか。
守りたいものも守れず、こうして地べたに這いつくばっているのか。
「どうしてっ...!」
強くなったのに、どうして。
辛くて泣きそうな時。
自分が酷く情けなく思う、そんな時。
いつも思い出してしまう。
あの笑顔と、温かい手を。
「たす、けて...っ」
瞬間。
リーゼの目の前に、
「ぐっ...!?」
不意を付かれたクレアは防ぐこともできず、後方へ吹き飛ばされてしまう。
「え...?」
唖然とするリーゼ。
何が起こったのかまるで分からない。
すぐに逃げ出さないといけないのに、まだ足が動かない。
そうしてただ呆然と、目の前に落ちてきた何かを見つめるしかなかった。
「りー、ちゃん...?」
「......ぇ...?」
漸く晴れた煙の先。
そこに立っていたのは、見慣れない紅と白の鎧を纏った少女だった。
少女はリーゼに近づき、嬉しそうに。
だけど少し怯えるように語りかけた。
「いた...やっと会えた...私っ...私だよりーちゃん!覚えてる、かな...?」
瞬きもせず、その少女を見つめる。
忘れるものか。
その可愛らしいのに、どこか凛々しい顔を。
忘れるものか。
いつも差し出してくれた、温かなその手を。
私の心で、いつまでも輝いていたお星さま。
「まー、ちゃん...?」
かくして、流星を待つ少女の願いは叶えられた。
□キャラクタープロフィール□
【名前】:イズナ(名字不明)
【年齢】:16(たぶん)
【血液型】:AB型
【誕生日】:6/21(ミラと決めた)
【星座】:双子座(上に同じ)
【好きなもの】:ミラ、ミラが作った料理、可愛い服
【嫌いなもの】:男、管理局、ミラが嫌いなもの
【趣味】:ミラと一緒にいること、コスプレ
【髪色】:黒
【髪型】:ショートボブ
【胸の大きさ】:普通
【挿絵表示】
【名前】:ミラ(名字不明)
【年齢】:16(イズナと一緒)
【血液型】:B型
【誕生日】:6/21(イズナと一緒)
【星座】:双子座(上に同じ)
【好きなもの】:イズナ、イズナが作った料理、オムライス、うさぎ
【嫌いなもの】:男、管理局、イズナが嫌いなもの
【趣味】:イズナと一緒にいること、食べること、昼寝、動物鑑賞
【髪色】:真っ白
【髪型】:長めのツインテール
【胸の大きさ】:すごく大きい
【挿絵表示】
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