ダンジョンに愛を求めるのは間違っているだろうか 作:新グロモント
ダンジョンの72階層……そこは、人類未到達の領域。かつての【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】が引き返した最終地点だ。ボンドルド達もそこに到達し、彼らが引き返した理由の一端を知ることとなった。
71階層までは大きな問題ではない。今まで突破してきた階層と大きな差異はなかった。問題は72階層だ……そこには階段ではなく、広大な縦穴が存在していた。底が見えないほど深く、数階層分はあろうかという規模である。
ボンドルド達が覗き込む。ルートは間違っていない。道しるべとしてきた”星の羅針盤”も下を指し示していた。つまり、ここが正規ルートである。
「おやおや、これは困りましたね。彼らが引き返したのもこれが原因ですか。降りることは簡単ですが、登ってくるとなると少々手間が掛かりそうです。落ちた先に何があるかも分からないので、全員で一緒に進むのがいいでしょう」
「パパの意見に賛成!! ここまで来たら一蓮托生よ。まぁ、壁に沿って錬金術で階段を作ればいいのよね。ニーナちゃん、何時ものお願い」
だからこそ、かつてここに到達した者が引き返す決断をした。この先は、戻れぬ覚悟も必要になる。
錬金術で壁に沿って階段が作られる。
「引き返すという選択肢はありません。外部参加者の皆様には恐縮ですが、お付き合いいただきます。ここから自力で帰るのもお辛いでしょう。前に進むことこそ、生存の唯一の方法です」
「大丈夫よ。皆で力を合わせれば絶対負けないんだから。プルシュカが先頭ね。丈夫だし、一撃じゃ死なないわ。それに、
地獄の深層ツアーの開催となった。
常識を覆すダンジョン……72層以降はモンスターではなく、環境面での厳しさがあらわになった。
重力10倍の階層、酸素がない階層、
ならば、下手に有象無象のモンスターにリソースを割くより、強力な1体を準備するか、劣悪な環境で相手を潰す。ヒトが生存できない環境にすることで侵入を拒むのだ。水もなく、食料も確保できない階層が続けば、常識的に考えれば到達不可能。少なくとも生きて地上に帰れない。
………
……
…
リヴェリア様の年齢マイナス10階層――。
未確認の階層主やモンスターなどを叩き潰しながら進み続けたボンドルド達。底知れぬダンジョンに、これがどこまで続くのだろうかとリューが疑問を呈した。
「
「ボンドルドです。ダンジョンは、我々の反射法弾性波探査によると推定100階層です。おや、どうされたのですか? そんな鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔をされて。もしかして、我々が無策で深層攻略に挑んでいたとでもお思いなのですか? 一体、何年の準備期間があったとお考えなのです」
既に【アスクレピオス・ファミリア】内部では共通認識であった。だが、外部参加者たちにとっては初耳だった。ダンジョン攻略において事前の調査と準備を行うのは当然だったが、一般的な冒険者達は武力での力押しに偏りすぎていた。
そもそも、攻略などせずに外部から海水を流し込んで水没させようとすら、一時期彼らは考えていた。実現すればモンスターをすべて水圧で圧殺できたが、それは同時にオラリオの経済を完全に破壊する。水没したダンジョンでは魔石回収ができなくなるからだ。
ダンジョンの自動修復能力をもってしても、海水の流入量が上回れば永遠に壊れ続けることになる。
「……どうして、貴方達はそのような情報を誰にも共有せず、他のファミリアに助力を依頼せずに攻略しようとしたのですか? 少なくとも【フレイヤ・ファミリア】なら、貴方達が望めば惜しみない協力があったはずです。オッタルだけでなく、他の幹部すら総動員したと思います」
「モンスターへの対処だけならばそうでしょう。しかし、貴方も経験してきたはずです。ここに来るまでは、環境への適応が必要となる局面ばかりでした。少数精鋭の我々だからこそ乗り越えられたと考えています」
重力対策には、虎杖院長の
酸素対策には、ボンドルド親子の遺物を用いて酸素を発生させて凌ぎ切った。リュー・リオンとニイナ・チュールの結界魔法を併用することで空間に酸素を満たす手法だが、大人数であれば誰かを置いていく選択を迫られていただろう。
強酸対策には、階層を抜けるまで錬金術で床の素材を加工し、酸の雨を防ぎ続けた。不壊属性の全身装備でもしていなければ、ここで装備や物資をすべてロストしていたはずだ。
暗闇対策には、涅院長の服が眩しいほどに輝いて周囲を照らし続けた。それでも光源の範囲には限界があり、周囲20メートルほどの狭い領域のみ。そのわずかな光を頼りに進んだのだった。
瘴気対策にはニイナ・チュールの回復魔法に頼ったが、彼女の精神力にも限界があるため、どれだけ早く階層を抜け切れるかという時間勝負となった。彼女を担ぎ上げ、全員で全力疾走を敢行した。
当然ながら、この間もモンスターは徘徊しており、それらを処理しながら階層を突破しなければならなかった。極めて特殊な魔法やスキルを持たない限り、第一級冒険者以下はお断りの過酷な空間である。
「言われてみれば、そうかもしれません。もしかしてですが、貴方達は深層に何があるか予想しているのですか?」
「随分と面白いことを言いますね。ダンジョンの最深部に何があるか、それを知っているのは神です。神ウラノスが祈祷でここを封じ、神の立ち入りを禁止しており、神威を発動すればダンジョンが反応して黒いモンスターを生み出す。むしろ、貴方は【アストレア・ファミリア】のアストレア様から何も聞いていないのですか?」
「ポンコツお姉ちゃん達って、もしかしてダンジョンに何があるかも神様から教えてもらえないまま頑張ってたの? 神様は何があるか知っているのに? それっておかしくない? 命を賭けているのに、何に命を賭けているのか知らないなんて」
その外部参加者の全員に突き刺さった。
なぜ今までそのことに疑問すら抱かなかったのだろうか。どうして神々は何も教えてくれないのだろうか。ダンジョンは稼げるし強くなれる絶好の場であることは間違いない。だが、深層攻略を目指す探索系ファミリアなら何があるか知っていても不思議ではないのに、誰も知らないのだ。
「では教えてください、
「
勝ち誇った顔をしているリュー・リオン。
「あってるでしょ」
「いい性格していますね、リューさん。知らずに行くより、知っている方が何倍もよいでしょう。貴方達は神が住むと言われる天界の存在を聞いたことがあると思います。神々はそこで長い月日を生きて地上を覗いていたと。疑問には思わないのですか? なぜ今になって神々が地上に降臨したのかを」
一般的には、神々が地上に溢れるモンスターに苦しむ人々を哀れみ、精霊を遣わしたとされている。そのおかげで一時期人類は優位に立ち、年月を経てモンスターはダンジョンへ追いやられた。
いずれ、精霊だけでは手が足りずに神が仮初の肉体で降臨してファミリアを作り上げた。
だが、ここで疑問なのがダンジョンの存在だ。
ダンジョンには意志があり、神を恨んでいる。それはなぜか……。
「それはね、ポンコツお姉ちゃん。ダンジョンは私達より前の世代の知的生命体の成れの果てよ。神様達は、ずっと昔にも地上に降臨していたことがあったのよ。当時の神様が娯楽のために『神酒』や『恩恵』を与えたの。当時はモンスターなんていないから、ヒト同士を戦わせるためにね」
「おや、驚かれましたか、リュー・リオンさん。知的生命体同士を戦わせ成長させた。だが次第に神々は危機感を覚えたのです。神すら殺せる力を得るまでに成長した彼らの制御をいつ失うかと。当時の生命体は、現在の我々ほど理性的ではなかったようですからね。
モンスター……今では、そう呼ばれている。
ここまでネタ明かしをされれば、誰もが理解してしまう。今まで彼らがモンスターとして討伐していたのは、この世界に存在していた過去の知的生命体の成れの果てなのだと。
「待ってください!! では、このダンジョンとは!?」
「神々が地上を捨てた際、残された知的生命体を処分するために作った蟲毒です。この巨大な縦穴にすべての廃棄物を集めて埋め立てた。ですが神も予想していなかったのでしょう……その中に神の子を宿した生命がいたことを。当時の神々はかなり身勝手な振る舞いをしていたようですね。この地に廃棄され、埋められた知的生命体たちの集合体……それこそがダンジョンです。つまり我々は、古代の生命体の体内を探索しているようなものなのですよ」
ダンジョンは、モンスターを産み落とす。
不要な存在としてここに捨てられた者たち。神を深く憎むのも当然の理由があった。勝手に地上へ降臨し、気まぐれに恩恵を与えて争わせ、不要になれば一箇所にまとめて破棄したのだから。
当時は、『神威』に逆らうなどできる生命体がいなかった。
だからこそ、ダンジョンは彼らに対抗する為に『神威』を無効化する黒いモンスターを作り出した。
「じゃあ、アストレア様達もそのような事を行ったとでもいいのですか?」
「当時誰が降臨していたかまでは、それこそ神にしか分かりません。ですが、現在オラリオにいる神々の中でも何名かは関与していたでしょう。特に神ウラノスはほぼ確定です。このダンジョンに祈祷を捧げて封印しているのですから」
今の知的生命体もいつ、第二のダンジョンにされるか分からない。神達がその気になれば、明日にでもできるだろう。実行しないのは、今のダンジョン問題と黒竜問題があるからだ。
そして、ヒトからの反逆にも備えて、神たちも警戒だけは怠らなかった。地上での『神威』の乱用禁止である。『神威』を解析されたり、それに対抗するスキルや魔法が芽生えないよう、使用を極力抑えているのだ。
ヒトの可能性でそういう能力が目覚める事も十分あるからだ。
「では、最深部には……」
「我々の前の世代……知的生命体の成れの果て。モンスターを製造する装置となり果ててもなお、神への復讐心が消えない存在がそこにいます。現在の冒険者に求められているのはその消滅です。『神威』を無効化するモンスターが大量に溢れ出せば、天界に帰ってもいずれは狙われるでしょう。だからこそ、何も知らない眷属にダンジョン攻略を行わせているのです」
世界の真実とは、残酷であった。
だが、これには、まだ続きがある。
神たちは、ダンジョン攻略と黒竜の討伐が完遂した後にどうするか――。神を脅かす脅威が消えれば、今の恩恵を受けた者たちをどのように処分するかだ。下手をすれば、彼らが第二のダンジョンになりかねない。
よって、恩恵をすべて破棄して地上を捨てるのがプランA。
適切に人間を管理し、神の娯楽のために生かし続けるのがプランB。
どちらの展開になっても生き残れるよう、ヒトのみの手で技術を磨き上げてきた【アスクレピオス・ファミリア】の眷属たち。神の抜け殻を確保して恩恵を自ら刻めるようにしたり、半神を産み出したりしてきた。
神すら恐れぬ【アスクレピオス・ファミリア】が辿り着いた答えが……天界への進出だ。神という資源が降臨してこないのならば、此方から狩りに行く。ヒトに恩恵を授けるだけのマシーンにしてやるというプランCだ。
現在、降臨している神々がプランBを遂行予定だが、ボンドルド達のプランCは天界への侵入方法を探っている。幾人かの神を送還した時のデータを集め、分析し天界の座標をさがしていた。天界から下界が観測できるのだから、下界から天界が観測できない道理はない。
この恐るべき世界の真実を知らされた外部参加者――オッタル、リュー・リオン、ニイナ・チュール達は、最深部を前にして大きな精神的衝撃を受けるのだった。
あと数話・・・ダンジョンの最深部を紹介して、エンディング予定!!
閑話でこんなのも考え中です。
・初恋ハンターならぬ、初物ハンターで「私はいつもヤり過ぎてしまう」という親友に絶縁されたド淫乱エロフ
・人格排出系ヒーラーでオラリオ最強にまで上り詰めそうになる温泉の出汁
・処女受胎してエルフ信仰で神とまで言われた新たな処女神とまで言われ風評被害とキれるエルフの王族
・オッタルの胃袋を掴んだミア母さんをマジで母さんにするオッタルさん
・気が付けば子沢山されていた虎杖悠仁
・子種をばらまき捲った
・成長した子供店長……悪い大人になる(助けてくださ〜い!