ダンジョンに愛を求めるのは間違っているだろうか 作:新グロモント
【アポロン・ファミリア】が主催する「神の宴」。男神の思いつきで、今回は新しい趣向が取り入れられた。それは「参加する神は、必ず眷属一人を同伴させる」というものだ。神々に自慢の眷属を見せびらかすための場である。
必然的に、主神アスクレピオスが誰を連れていくのかという話になる。
4人の院長たちは、神の宴などにはさして興味はない。だが、宴に連れていかれるということは、他の院長より抜きん出ていると神が認めた証左でもあった。これに対して、主神アスクレピオスは体調不良を理由に欠席すら試みた。
だが、それは他の神々から却下される。例え主神アスクレピオスが欠席しようとも、眷属を一人、神の宴に参加させろと厳命されていた。その理由は、希少なソーマの供給源が【アスクレピオス・ファミリア】であるためだ。
4人の院長たちは、同伴を選ばなければソーマは提供しないと明言している。
院長たちは、下手な神よりも目立つ存在と言える。美の女神ですらその姿に目を合わせられないほどだ。悪い意味で。一片の曇りもない心を、なぜこんな化け物たちが持っているのか。ベル・クラネルにご執心の某美の女神ですら、普段はやらないような努力をしてまで彼らを視界に入れないようにしているほどである。
「どうして私だけがこんな心労を負わねばならんのだ。神たちはこれを機に、ソーマの入手経路を増やしたいという思惑もあるのだろう。だが、得る物より失う物が多くなるぞ」
アスクレピオスの手元には、眷属たちからの研究資料が度々回ってくる。知らぬ存ぜぬでは通らない。一蓮托生ですらない。院長たちは本心で「全てはアスクレピオス様の御心のままに」と考えている。故に、嘘が分かる神々が彼らの誰かを詰問しても、全て「神の御指示」と捉えられる。
神側がいざという時のしっぽ切りの対象となっている。
眷属たちは恩恵を失ったところで影響は皆無だ。ステイタスの更新すら行っていないため、恩恵を刻んだ時に発現したスキルと魔法が一時的に使えなくなるだけである。その事態に備えて、生きた神の確保も既に終わっている。
【アスクレピオス・ファミリア】眷属『ボンドルド』の計画書――「無償の神愛」
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下界の子供達を愛する神々。恩恵を与え、子供達をダンジョンに送る日々。不安ではありませんか。寂しくはありませんか。大きな夢を抱えた眷属たちがダンジョンで不幸になるかもしれない。だが、神はダンジョンには入れない。神にできることは、眷属たちが無事に帰還することを祈ることだけ。神だというのに、何に祈るというのでしょう。
ですが、その日々も今終わりを告げます。神が眷属に与えられるのは恩恵だけではありません。その血、肉、骨、精神、魂……全てが眷属を新たなステージに導く鍵となる。
神をも恐れぬ神造兵装……『骨肉弾頭』。
今この時をもって、新たな形で神と眷属の両者が力を合わせる。さぁ、共に未来を目指しましょう。
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アスクレピオスは、頭を抱えながら最後までしっかりと報告書を確認した。
確かに成果だけを見れば素晴らしい。英雄譚になってもおかしくないレベルの話だ。実質的にほぼ恩恵なしに近い人間がLv4相当のゴライアスを完封したのだから。報告書には「量産された暁には、次なる階層主も遠距離から一方的に潰せる撃破が可能」と綿密な計画が添えられている。【ロキ・ファミリア】から提供された階層主の情報と地形などを考慮した狙撃ポイントまで既に決められており、後は弾丸の量産を待つだけ。そして、おまけのように原材料違いによる『骨肉弾頭』レポートまであった。奉仕活動中の原材料、魂が抜けた原材料……染色体XYのほうが威力が高い、染色体XXは弾速が早いなどと。
「神と人が手を取り合い、初めて討伐した階層主……。嘘一つない報告書で纏められているのが恐ろしい。だが、これに比べればマシなのだな」
アスクレピオスは、人間の無限の可能性に恐怖する。
【アスクレピオス・ファミリア】眷属『フェイスレス』の計画書――「みんなを笑顔に」
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下界の子供達が命を落とすのが嘆かわしい。些細な事から争いに発展し人は死んでしまう。産まれるはずだった者が産まれず、死なないで済んだものが死んでしまう。下界に降り立った神々も、眷属が笑顔で暮らせないと不安で仕方がないはず……だから、私が『みんなを笑顔に』する魔法の薬を完成させた。
神薬”ゾナハ病”。
戦争より笑顔が一番だと伝えるため、ラキア王国へ向かう。笑顔で戦争を終わらせてくる。
歌で戦争を終える事ができる英雄がどこかにいるかもしれない。だが、笑顔で戦争を終わらせられる英雄は誰もない。だからこそ、新たな偉業をこの神薬で試す。
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そして、申し訳ないレベルで神の宴に参加できるならば、ラキア王国への出立は見送ってもよいと書かれていた。フェイスレス以外、笑顔で戦争を止められる英雄は過去も未来にも現れないだろうと、アスクレピオスは自信を持って断言できた。
誰も選びたくない。だが、選ばなければ笑顔で戦争が終わってしまう。本当に終わってしまう。
そして後日、フェイスレスが神の宴の同伴として、アスクレピオスの横に立っていた。その腹いせに、各院長たちが足踏みした【ソーマ・コンティ】が会場で振る舞われたことを知る者はいない。
戦争遊戯 (ウォーゲーム)の観戦が始まるぜ!!
ちなみに、ショウ・タッカーの計画書は人造ゼノス計画。涅マユリは、人神計画と言ったところです。