ダンジョンに愛を求めるのは間違っているだろうか 作:新グロモント
ボンドルド親子が再び
この時、ベル・クラネルはレベル4という第一級冒険者の一歩手前にまで成長を遂げていた。本当に少し前には、プルシュカとニーナから新米冒険者として洗礼を受けて焼かれていたはずなのに、恐ろしいほどのペースで成長を遂げている。神々や冒険者達から不正を疑われるのも無理はなかった。
そして、彼の傍らにいるヴィーヴルの
偶然にしては出来過ぎているとボンドルドは思ったが、それは相手方も同じであった。ボンドルド親子の隣にいる
「皆さんお揃いですね。それにしても、ヴィーヴルの
「ボンドルドさん……いや、あの、これは……」
ベル・クラネルの背に隠れるヴィーヴルの
「あたし、プルシュカ。名前。名前を教えて」
『ウィーネ……』
プルシュカから差し伸べられた手。それをどうすべきなのかウィーネは迷うが、ゆっくりとその手を握り返す。すると、嬉しそうにブンブンと上下に腕を振るプルシュカ。
「これで、あたしたちお友達だよ、ウィーネちゃん!」
『ぷ、プルシュカちゃん……』
手を繋いで楽しそうにはしゃぐ二人に、その場にいる誰もが思わず笑みをこぼしてしまう。プルシュカを連れてきたのは正解だったとボンドルドは実感していた。一方、
「少々順序が前後してしまいましたが、フィアさんをお連れしました。あと、あちらにいる子が私の娘のプルシュカです」
『えっと……ただいま、リド』
『あぁ、よく無事に帰ってきたな! それと……すまなかったな、ボンっち。オレっちは今の今までアンタを信じてなかったんだ。すまねーーーっ! だって仕方ねーだろ、顔も見せない黒装束に鉄仮面の怪しい奴なんて、とても信じられねーって!』
ベル・クラネル一行も「本当にその通りだ」と心の中で深く頷いていた。だが、下手に口を開けば災いのもとになりかねないため、必死に笑いを堪えるほかなかった。
「お気になさらず。よくあることです。それとフィアさん、雇用契約の成功は、あなたにかかっています。期待していますよ」
『はい! 私に任せてください、ボンドルドさん。あなたに保護され、どれほど素晴らしい生活を送っているか、皆にしっかりとお伝えします!』
そう言って、少し頭を下げてなでてほしそうにするフィアを、ボンドルドは優しく手でなでる。その光景を見ていたリリルカ・アーデは、「あの面構えで、ベル様と同じような空気を出していますね……」と呆れたように呟く。
「心外ですね」
………
……
…
中間管理職のような立場で、非常に申し訳なさそうな顔をしたフェルズがその場に現れた。ウラヌスの指示とはいえ、ベル・クラネルとボンドルドを最悪のタイミングで引き合わせてしまったのだ。
それの何が問題なのかといえば、理由は単純である。ベル・クラネルの持つ驚異的なトラブル引き寄せ体質と運命力だ。小さな問題であっても特大の事件へと発展させ、最終的には英雄の偉業へと昇華させてしまう。そして、ボンドルドを含めた【アスクレピオス・ファミリア】の幹部たちの異次元とも言える対処能力。これらが合わされば、どんな難題であろうと迅速かつ的確に処理できると神ウラヌスは考えていた。
仕事とは、できる者のもとへ集まるものなのだ。
「フェルズさん、私と最初にお会いした時からウィーネさんの所在を知っていましたね? 彼女はどこにいたのですか? ベル・クラネル君と一緒にいたことを考えれば……」
「そうだ。【ヘスティア・ファミリア】のホームで彼女は匿われていた。悪質な冒険者に襲われていたところを、偶然ベル・クラネルが見つけたのだ。本当に偶然だ。私も関与していないし、知っていたら関与などさせなかった」
そのウィーネを襲っていた冒険者こそが、ボンドルドの取引相手であった。彼らに素直に捕まっていれば、今頃【アスクレピオス・ファミリア】で安全に保護されていたことだろう。だが、結果的に無事であったのなら良しとするべきかもしれない。
しかし、今やオラリオ中の注目を集めている【ヘスティア・ファミリア】のホームで
【イケロス・ファミリア】の手が伸びてくるのも時間の問題だろう。
「ギルドとは手を取り合い、
「彼らも
それが真の理由であるならば、【ガネーシャ・ファミリア】がこの場にいない説明がつかない。そもそも、すでに計画を理解し、完成に近い未来を描けるファミリアが揃っているところに【ヘスティア・ファミリア】を混入させれば、バランスが崩壊するのは明白だった。
彼らは未来のためではなく、目の前の『今』のために動くのだから。
「【アスクレピオス・ファミリア】は、ベル・クラネル一行が関与する形であれば、
「待ってくれ! 確かに意図的であったことは認めよう。ベル・クラネルは台風の目だ。彼が
三日という短い期間だと思うかもしれない。だが彼らのポテンシャルをもってすれば、わずか三日で【アポロン・ファミリア】を滅ぼし、【イシュタル・ファミリア】を壊滅させ、
フェルズの恐ろしい提案を、受諾する者などいるはずがなかった。
「フェルズさん。私は神ウラヌスの眷属ではなく、アスクレピオス様の眷属です。そのような無理難題を押し付けるのはおやめください。なにより、それではベル・クラネル一行の成長に繋がりません。自分のケツも拭けないような英雄を作り上げるつもりなら、一度計画を最初から見直すことをお勧めします」
「私もそう思う」
何が起こるか分からないトラブルの尻拭いを一人で背負うことが決定したフェルズ。存在しないはずの胃が、激痛で痛むのを感じていた。ボンドルドは連絡用に預かっていた
「
「ウィーネちゃん、おいでよ! プルシュカたちの家にさ! あたしとニーナちゃん、ウィーネちゃんの三人で冒険したいな。きっと楽しいよ!」
妹分ができたと喜ぶプルシュカが、グイグイとウィーネを勧誘する。他にもフィアの話を聞いて、暗いダンジョンの底で隠れ潜むより、地上へ出たほうがいいのではないかと考え直す
フェルズの指示通り隠れ続けていては、いつ地上に出られる機会が訪れるか分からない。それならば【アスクレピオス・ファミリア】の手を取ろうと、勇気ある
だが、その中にウィーネは含まれていなかった。彼女はベル・クラネルという存在に深く惹かれすぎていたのだ。一度焼かれてしまえば二度と治らない不治の病――『愛』。ウィーネは、ベル・クラネルが自分に手を差し伸べてくれるのを静かに待っていた。
だから、プルシュカと進めない。
「そっか……ウィーネちゃん、焼かれちゃったんだね。異性関係で絶対に苦労するよ……。次に来る時はニーナちゃんと一緒に会いに来るからね! その時は絶対に一緒に冒険へ連れ出すんだから!」
「良いお友達ができましたね、プルシュカ。どうですかリドさん、あなたもこちらへ来ませんか? 実質的なリーダーであるあなたが率先して来てくだされば、他の皆様も安心できるかと思いますが」
『すまねーな、ボンっち。オレっちは行けねーよ。それに、深層に修行へ行っているアステリ
ボンドルドも実は気にしていた。推定レベル5のリドを超える猛者。確かに、彼女がいるならば、無理に誘うまでもないと踏ん切りがつく。
ボンドルドに懐いているフィアの話によれば、その猛者は生まれながらにして胸が焼け焦げるような熱い執念と憧憬を抱いているという。出会ったことのない『誰か』と再び巡り会うために。
「そうですか。では、彼女にお伝えください。『あなたの渇望が成就することを願っています』と。人もモンスターも変わらぬ感情がある。それこそが『愛』ですよ」
数名の
最強のヒロイン現る。
本作品では、アステリオスではなく、アステリメスです。
ボ「アステリメスさんにお似合いに相応しい防具ですか…。戦争遊戯で使われなかったアイズ・ヴァレンシュタインさんと同じ防具がありますので、差し上げます」