ダンジョンに愛を求めるのは間違っているだろうか 作:新グロモント
近年におけるオラリオ最大規模の
そのファミリアの名は、【ヘスティア・ファミリア】。
彼女のファミリアのメンバーは総勢でも5名しかいない超少数ゆえに、そんなこともあるかもしれないと思うだろう。だが、現実は違う。【ミアハ・ファミリア】の唯一の眷属であるナァーザ・エリスイスはヘグニとヘディンのペアによって殺されている。
策士の采配により、彼等の配置は考慮されている。
現時点で人的損耗がない。この
参加したファミリアのほぼ全てが、大事な眷属たちを失っている。
神ヘスティアは、もうこんな
答えは絶対に許さない。許されるはずもない。
その最中、
闘技場は半壊し後ろにあった岩々が溶解、水平線が見える程に綺麗に消し飛んでいた。これが、”壊れない魔剣”を使った必殺の一撃だ。
「や、やったのか!? ベル君、急いでフレイヤの所に向かうんだ。もう、これを止められるのは君しかいない」
ヘスティアが最強の『オッタル』を倒したと思うほどの攻撃。彼という障害が消えれば、後はフレイヤが待つ場所まで障害となる存在などいない。どの戦場でも、【フレイヤ・ファミリア】の者達は死屍累々だ。
ヘルメスが盗み見ている映像……そこに映る絶望に、神々は驚愕する。あの一撃を受けて立ち上がる存在がいるなど誰が思うだろうか。足元がマグマみたいに融解する程の温度の攻撃を食らって立ちあがり、闘志をむき出しにしている。
背に背負っていた覇黒の剣を構えなおす。
胸のプロテクターも壊れ、大きな焼け跡を残しているが、それでもオッタルの闘志は変わらない。絶好調だ。
◆◇◆◇
【フレイヤ・ファミリア】のヘグニとヘディン……たった二人相手に、【アストレア・ファミリア】筆頭の選抜部隊は劣勢を強いられていた。ハデス・ヘッドで姿見えないヘディンが戦場で暴れているのが原因だ。
これぞ無法と言うべき暴力的な魔法に加え、近接でも高次元の戦いができる魔法戦士の到達点ともいえる存在。
「永争せよ、不滅の雷兵 カウルス・ヒルド」
詠唱が聞こえた方角に攻撃をするが、既に移動しておりかすりもしない。だが、雷の魔法だけは確実に放たれ、どんどん殺されていった。
ヘグニに至っては、ヘディンを信頼しており好きに動いている。ヘディンの陰からの魔法支援も受けており、実戦経験が豊富なアリーゼ達でも対処に困るほどだ。ギリギリ均衡が保たれているのは、レベル・ブーストの恩恵があるおかげ。
だが、レベル・ブーストの制限時間が尽きようとしている。
魔法をかけなおすにしても春姫の居場所が露見すれば、間違いなく殺される。相手もレベル・ブーストなんてインチキ魔法を放置する程バカではない。自分が死んでも殺す覚悟があるだろう。
起死回生を図る為、リュー・リオンが新たな魔法を使う。
「使命は果たされ、天秤は正される。秩序の砦、清廉の王冠、破邪の灯火。女神の名のもとに、天空を駆けるが如く、この大地に星の足跡を綴る。正義は巡る アストレア・レコード!!」
その魔法の効果は、『正義継承』。リューと共に戦ったアリーゼ達【アストレア・ファミリア】十人の魔法を継承し、行使することができる魔法。その行使できる魔法には、今横で戦っているアリーゼや輝夜も含まれている。
これには、アリーゼも苦笑いするしかなかった。死者の魔法を借りるという異常な魔法。今横でその使い手がいるのに、どういうことだと。
「アリーゼ、貴方の魔法を借ります!! 花開け アガリス・アルヴェシンス」
「リオン、人を勝手に死んだ事にしないでよ。それに、私の魔法は高いわよ」
そんなやり取りもしているが、決して気楽な状況ではなかった。例え、リュー・リオンが新しい魔法で戦力が強化されようとも、攻撃を当てる事が出来ず削り取られる。精々、生存時間が伸びる事くらいしかできない。
輝夜は、この状況を打破する方法を実は思いついていた。だが、告げるか迷う。告げてもいいのだろうかと。偶然、目が合ったアリーゼは、輝夜が考えている事を察する。彼女も同じことを考えていたからだ。
リオンが攻勢をかけるが、やはり決め手に欠ける。ヘグニを相手にすれば、後ろから切られ雷の魔法を撃ち込まれる。だが、ヘグニの相手を辞めれば、周囲にいる派閥連合の戦力を削り取りに走る。
「永伐せよ、不滅の雷将 ヴァリアン・ヒルド!!」
ヘディンの雷撃がリオンに直撃する。Lv5を殺せる威力と定評のある魔法だけあって、リオンという戦力を半殺しにできるだけの威力があった。浮遊していた彼女が落下してくるのをアリーゼが受け止める。
ジリ貧で負けるより、仲間の中で最大戦力を生かすのは定石だ。
「ごめんなさい。輝夜、ライラ、リャーナ、セルティ。皆の命をちょうだい。私は、リオンを助けたい」
同じセリフをまた使う事になるとは思わなかったと、アリーゼが心苦しそうに言う。
「いいぜ、乗ってやるぜ。あたしは自分の命が一番大事なんだ。でも、このまま戦ってもどうせ真っ先に死ぬだろうからな」
それは、こっちのセリフだと言わんばかりにライラも応える。
「ああ、死に場所はここでいい。選択すべき時がきたということだ。だが、団長あなたは生きるべきではないのか?アストレア様とあなたがいれば真の正義は貫ける」
輝夜も苦笑する。正確には、元・団長であり、もはや真の正義とは何処にあるのだろうかと。だが、過去を思い出し、余韻に浸る。確かに、あの時はこうだったなと。
「いいえ、輝夜。人の数だけ正義は存在する。何が正義かなんて今も私は答えは出せない。でもリオンなら正しい事を選び続ける。自分の正義を貫き通せる。リオン、聞いてアイツらを倒すために貴方の魔法が必要なの」
リオンの脳内に過去の記憶がフラッシュバックする。
いつの間にか忘れそうになっていたが、彼女たちは5年前に一度死んだ存在。あまりに普通にそこに居るので一瞬忘れそうになっていたが、それは間違いない事だった。
「私達がアイツらの動きを止める。だから、貴方はここで歌っていて。お願い、約束よ、リオン」
首を振るリオン。そのセリフは、もう聞きたくないと。どうして、またこんなことになったのかと、自問自答するが彼女は答えを持ち合わせていなかった。
アリーゼがリオンの小指から手を放す。
「そして、いつか叶えてあんたの理想を」
「うっ……ううう」
涙を流すリオン。だが彼女の神経はヘディンの雷でボロボロにされている回復魔法を使っても暫く動けない。
「じゃあね、リオン」
「そこにいろ、リオン。お前は生きるんだぞ」
「これは、くれてやる。形見と思わず存分に使え。強くあらんことを私の好敵手」
「よくわからないけど、じゃねリオン」
「ばいばい、リオン」
旧【アストレア・ファミリア】の決死隊。
敵が見えない。だが、それが何の問題だろう。切られるならばそこに実体が存在している証拠だ。
ヘディンは、自爆兵でないにも関わらず、仲間の為に喜んで自爆するライラを予想できなかった。爆風の煙により透明になっていたヘディンの位置がばれる。
輝夜がヘディン目がけて飛び込み、切られる…だが、ヘディンの手を握り決して話す事は無かった。事切れるまで絶対に離さない覚悟がその目に宿る。リャーナ、セルティがヘディンに纏わり付き抑え込んだ。三人がかりでようやくだ。
アリーゼに相打ち覚悟でヘグニを抑え込んでいた。この命を使い切る。30秒持てばよいという後先考えない戦い方だ。
「アルヴァリア!!」
「今は遠き森の空。無窮の夜天に
アリーゼの決死の魔法でヘグニの位置を完璧に調整。ヘディンも逃げ場を失っている。これを逃しては次にこの二人を倒せる機会は二度とこない。同じ手が通じるような敵ではない。
だからこそ、完璧な一撃をもって仲間もろとも葬らなければいけなかった。
「あああーーーっ!! ルミノス・ウィンド」
疑似的Lv7である彼女の最大出力の広域殲滅魔法が放たれる。
腕や足、首などが飛び散って降ってきた。真っ赤な血の雨が降り注ぐ中、リュー・リオンは佇むことしかできない。彼女の目は絶望に染まっていた。
………
……
…
映像越しにそのすべてを見せられていた神アストレアは、後悔の念に駆られていた。自身がリュー・リオンを助けて欲しいと懇願した結果がこれだ。神アストレアが知っている
重傷などもあれど、人死にが出るのは非常に珍しく競技の範疇に収まるレベルだ。
「アリーゼ、輝夜、ライラ、リャーナ、セルティ。貴方達は、また私の下から……」
大粒の涙を流す神アストレア。だが、彼女以外の神々も今まさに涙を流す経験をしている。どうして、こんな
そんな神の心など知らない下界の子供は、こういった。
『やりました!! これで、『白黒の騎士』を倒しました。春姫さん急いでベル様の下にお願いします。これで勝利は目前です。ほら、リオン様もヒールを使って早く立ち上がってください。ベル様の下におねがいします』
その声は、神アストレアをオラリオに呼び込み、リオンの賞金首を解除する為に尽力したという指揮官の声であった。
や、やっと終わりが見えてきた。
派閥大戦も長くなったな。
ここから原作並のハッピーエンドに向かう方法を考える作者。
だが、なにも思いつかないのは発想力がないからです。
ごめんなさい。