ダンジョンに愛を求めるのは間違っているだろうか 作:新グロモント
ボンドルドは、オラリオ全体から選抜された【ヘスティア・ファミリア】追撃部隊を見送った。彼等は、【フレイヤ・ファミリア】と【ロキ・ファミリア】の各主力戦力から抜粋された、目的のためなら殺人も厭わない者たちで構成されている。
この期に及んで不殺にこだわるような甘い考えの者は、邪魔でしかなかったからだ。
『ナイト・オブ・ナイト』のレオンが神ヘファイストスと契約を結び直し、再び
一方のオラリオには、フィン、リヴェリア、アイズ、オッタル、ガリバー兄弟たちが残っており、遠征部隊が戻るまで都市の防衛を維持するには十分すぎる火力が揃っている。
………
……
…
街の治安や医療体制も落ち着きを見せ始め、遺体の回収作業も順調に進んでいた。後の対応を子供たちや手伝いに来た
これには、深い事情があった。
あらぬ誤解や混乱を招かないよう、ボンドルドを含む4人の院長たちは神アスクレピオスに「ダンジョンに入る」とだけ告げ、裏口から上層、中層、下層、そして深層へと下りていった。彼らの目的は死体の回収ではなく、別のところにある。
「ダンジョンにこれほど人の気配がないというのは気味が悪いですね。この広大な37階層の“愛の巣”に行商にいきましょう」
「早く平和になって一休みしたいですね、ボンドルドさん。ホームの再建もまだ終わっていないというのに、忙しい毎日ですよ」
パチン
ショウ・タッカーが指を鳴らすと、前方に立ちふさがっていたモンスターたちが一瞬で消し炭となった。深層の怪物たちは大繁殖した死体を貪り食っていたせいか、人間の味を覚えて獰猛になっている。そのため、ボンドルドたちをも格好の獲物と判断して襲いかかってくるのだ。
ボンドルドの鉄仮面のスリットから
この「
誰もが足早に通り過ぎたいと思う階層だ。次の階層の入口は、分かっておりこの階層にメリットが無ければ誰だって素通りだ。
だからこそ、人目を忍ぶ“愛の巣”としては最高のロケーションだった。そして、この場所を提示したのがボンドルドたちである。
「ウィーネさん、アステリメスさん。ボンドルドです。ご所望の品をお届けに上がりました」
『プルシュカちゃんとニーナちゃんのパパたちだ。いらっしゃい~』
扉が開くと、何やら肌につやがあり満足気な表情を浮かべたウィーネが出迎えてくれた。
この家には地上との通信用として
少し下の安全階層にある無人販売所でも最低限の食料などは手に入るが、ここには
テーブルの上に並べられたのは、歓楽街御用達のオトナ向け商品の数々であった。精力剤、媚薬効果のあるお香、潤滑オイル、肌触りの良い高級タオル、そして一体どこで仕込んできたのかと言いたくなるような各種過激な下着やネグリジェ。さらには都市で配られた対”幸運”用の特製ブレスレット2個と、
「さすがに子供連れで納品するわけにはいきませんからね。ご安心ください。ブレスレットと拘束具以外は全て我々の手作りですので品質は保証します」
『ありがとう! これでベルも喜んでくれるね……はい、これ代金の『ヘスティア・ナイフ』。本当にこんなものでよかったの?』
実に実りある取引だ。神を討ち得る神造兵器の現物。刻まれた
「もちろんです。なお、その呪詛拘束具は対象の魔法を完全に封じます。ブレスレットは
『な、内緒』
実際には、二階からギシギシと絶え間なく激しい振動と凄まじい響きが伝わってきている。
ボンドルドは状況を察しつつも、形式上確認しただけだ。二階でナニが行われているかなど、訊くまでもない。
「そうですか、では深くは追及いたしません。それと地上の状況ですが……恐らく近日中に
『プルシュカのパパさんすごーい! こんな素敵なお家まで用意してくれて、いろいろ融通してくれて……絶対にお返しするからね!』
本当に素直で良い子であった。ただ、異性の好みと愛し方が少々苛烈すぎるのが玉に瑕と言えた。
「娘の友人であるお二人をご支援するのは当然のことです。それと、
『う~ん、やっぱりここがダンジョンの中だからかな、たまに迷い込んでくるモンスターが邪魔になるかも。倒せるんだけど、せっかく盛り上がっている時に邪魔されると外に出るのが億劫になっちゃって』
「モンスター避けに心当たりがありますので、対処可能です。少し調達に時間がかかりますので、少々お待ちください。ですから、それまでは
『任せて! プルシュカのパパさんって本当にすごいね、なんでもできちゃうんだから。あ、できればもう一部屋増築をお願いしてもいい?レイも今度同居することになったの』
ダンジョンの深層で監禁ハーレム生活をしている少年……二階から漏れ聞こえる「もう無理……!」という悲痛な叫び声がここまで届いていた。ゼウスの教えを守りここまでハーレムを作るとは最高神ゼウスの目をもってしても見通せんかっただろう。
こうしてボンドルドたちは、
本当ならば地上の【ヘスティア・ファミリア】を巡る問題が解決するまで死んでいてもらったほうが手っ取り早いのだが、それをすると天界でも最高位の神格を持つヘスティアが『神威』を解放して暴走しかねないため、使えない手段だった。
彼女の最愛である
「そういえば、お伝えし忘れるところでした。実は近々、5人目の院長を迎えることになりましてね。その方がモンスターと人間のハーフを創り出す技術を持っていると言ったら……興味はありますか?」
『ベルとの子供が作れるの!? パパさんたち天才!! 超天才!! いつ来るの!? 明日!? 明後日!?』
机に身を乗り出し、目を輝かせて歓喜するウィーネ。よほど彼との子供が欲しかったのだろう。だが、あいにく今日明日の話ではない。期待させてしまったのは不本意なので、誤解を解いておく必要があった。
「極東にお住まいの方でしてね。世界を旅する過程でお迎えする予定ですので、1年以上は先の話になります。ですが、まずは
『ちょっと本気出してくる! 工事が終わっても絶対二階の部屋は覗かないでね!』
ボンドルドたちは家を出て、受け取った『ヘスティア・ナイフ』を厳重に保管した。そして手早く地下水路を開通させ、室内には手押し式の揚水ポンプまで設置した。いずれ