ダンジョンに愛を求めるのは間違っているだろうか 作:新グロモント
毎夜、賑わう豊穣の女主人。
オラリオ屈指の酒場であり、大人気だ。特に店員が他の酒場ではお目にかかれない程美人揃いである事も有名だ。女主人は、【フレイヤ・ファミリア】の元・団長であり
ある意味世界で一番安全な酒場だ。ここで問題を起こせば、ぶっ飛ばされる。だが、それでも飯はうまいから大手ファミリアも常連だ。席は、常に満席状態……の筈なのだが、ミア母さんの計らいで今日は貸切にされている。
テーブルを拭き、客を迎える準備をするシル。
「ミア母さんが貸切を許すなんて珍しいですね。誰が来るんですか?【ロキ・ファミリア】ですかね。何か、知ってますかリュー?」
「さぁ、ですがあの予約専用の
テーブルに並べられているのは、今は神フレイヤですら飲み切って手元にない銘酒達。
ボンドルド謹製の
ショウ・タッカー謹製のビアー・ソーマとニーナ・タッカー謹製のストロング・ソーマ・ゼロ。
涅マユリ謹製の大吟醸・ソーマ。
フェイスレス謹製のソーマ・コンティ。
どれも市場から消えて久しいソーマ達だ。
幻の銘酒と言われており、製造者が海の向こうのはるか遠い地にいる。今頃どこで何をやっているのかと酒好きの皆が思っていた。たまに世界的なニュースで所在が分かる事があるが、相変わらず理解に苦しむ活動をしていた。
・民族戦争が行われる紛争地帯での治療活動。
・僻地での環境調査と海洋調査。
・地上モンスターを食用として家畜化する研究成果の発表。
・
・存続が危ぶまれるエルフ王族を救うため、彼等の隠し子まで全てを網羅した王家家系図を世間に公表。100歳未婚リヴェリアより若い王族がいた……勿論、隠し男子だった。王族の未来が明るい事を世間に周知する。
など様々な活動をしていた。特に最後の記事は、全エルフの心をえぐるものだった。
「シル。一年前の戦争後、
「駄目よ、リュー。オラリオから出ていったプルシュカちゃん達が何処で何をしていたも関係ないんだから」
ボンドルド達は、オラリオが戦争している時に
「メヤァ」
そんな事を考えているシルとリューの足元にキモ可愛い生き物がポテポテと歩み寄ってきた。
「見てください。シル!! この可愛い生き物!! 兎のような、カエルのような」
「……う~ん。どっかで見たことあるような。前にヘルメスが絵に描いてたアレ?」
可愛い生き物に夢中になる店員。だが、他にも可愛い子たちがこれからやってくる。酒場の扉を元気に開けて入ってくる銀髪の子供。シルとリューに目が合うとニッコリ笑顔で答える。
「その子は、メイニャ!! パパが誕生日に造ってくれたの。それと、本日貸切で予約した【アスクレピオス・ファミリア】よ。あ、シルお姉ちゃんとポンコツエルフのお姉ちゃん。久しぶりね。元気にしてたかしら。プルシュカ、ただいま帰ってきたよ」
シルが駆け寄りプルシュカのほっぺをモチモチする。
プニプニと体のあちこちを触る。そして抱きかかえて、頬擦りしながら深呼吸して子供の匂いを嗅いでいた。完全に危ない店員だ。彼女はそのまま、プルシュカを抱きしめて、ミア母さんの所に向かった。
「ミア母さん、どうしてプルシュカちゃんが帰ってきている事を先に教えてくれなかったんですか。ウチのホームで盛大に帰還祝いができないじゃないですか」
「はぁ~、だから教えなかったんだよ。アンタの事だから盛大にやり過ぎるだろう。それに、プルシュカからサプライズがあるってさ。よかったね、色ボケ娘」
ぞろぞろと入店するオラリオでも随一に怪しい集団。そりゃ、他の客がいる時には呼べない。貸切にしなければならないのも当然だ。
糞ほど怪しい集団。神アスクレピオス、ボンドルド筆頭の
シルとリュー以外の店員もこのメンバーを見ては、流石に貸切に納得する。
「ニャー達じゃなかったら、通報ものだニャ。お、新顔がいるニャ」
だが、獣の直感が働く。下手に手を出せば火傷では済まない。あの額に継ぎ接ぎがある女性は、普通じゃないと。そして、その子供っぽい青年は、メスとしての本能をくすぶる何かを持っていると。
アーニャは、一応シルの方を確認する。
こういう、男を見る目は抜群に良いため、先に唾を付けると後で地獄を見る。そして、シルの顔をみて理解する。あぁ、こいつはいい男だなと。
「今日はね、極東から連れてきた新しい院長先生と子供を紹介しようと思ってたのよ。あっちの額に継ぎ接ぎがあるのが虎杖院長。初めての女院長だよ。そして、院長先生の子供の虎杖悠仁……分かっていると思うけど頭部の事は内緒よ。悠仁はね、尻と
「ねぇ、プルシュカちゃん。当然、紹介してくれるし色々サポートもしてくれるのよね。こんなきれいな子を見せられて、指をくわえて見てるだけなんて酷い事を言わないって信じてるわ」
どうして、神が若い燕に手を出そうと、下界の幼い子供になんてお願いをしているのだろうか。彼女の隣で親友のリュー・リオンが恥ずかしくて顔を覆っていた。その視線に気が付いたのだろうか、シルは大事な事を親友のリューに告げる。
「リュー。手を出したら駄目だからね。分かっていると思うけど、プルシュカちゃんが私に紹介してくれるんだから」
「なっ!? 私がまるで横恋慕の常習犯みたいな言い方は、聞き捨てなりません。エルフである私がそんな破廉恥な事をするはずありません。いいですか、そもそもお付き合いする前に誓いを立ててですね」
この発言には、ボンドルド達だけでなく豊穣の女主人側も「こいつ何言ってんだ」と、真顔になる。
それから、【アスクレピオス・ファミリア】は、楽しいひと時を味わった。院長達は物静かだが、代わりに子供や
その最中、シルは虎杖悠仁にお酒を注ぐ…謎の粉がサーーされた。その手際は、第一級冒険者も真っ青なレベルだ。以前は後れを取ったが、今度は先手必勝のシル…改め女神フレイヤ。
「プルシュカ、そういう事は良くないと思うな。後、そんなの使わなくても大丈夫よ。あたしが変な男を紹介するはずないじゃない。正攻法で……プルシュカが嘘を言った事ないでしょう。ほら、悠仁。紹介してあげるわ。ここの店員のシルさん」
「うわ~、すげー美人。俺、虎杖悠仁。極東からオラリオに来たばかりだけど、よろしくな。まさか、こんな美人な
これがいい男だ。一目で相手を神だと見抜いている。だが、態度は変える事はなかった。一人の女性として扱う事ができる男だ。
プルシュカが10点の札を挙げる。
ニーナもその様子を見ていて10点の札を挙げた。
そして、正攻法で進めるシル。母親である虎杖香織の承認の元、節度ある交際なら許可される。変な女にうつつを抜かされるより、神フレイヤが相手の方が幾分もマシである。既に、プルシュカが根回しをしており、この件に異議を唱える者はいなかった。
さて、後はウィーネ達の子作り問題やオラリオの婚活問題を片付けなければ。
他にも子供が欲しいけど作れなくて困っている人が増えるオラリオ。
その救いを求める先が何処かは決まっていた。
医療系の弱小ファミリアだが、権威だけは青天井になってしまいそう。