異物語 作:一兵卒
001
黒神めだかと言う少女を、完璧に言い表した熟語を僕は知っている。
完全無欠、だ。
もはやこの四字熟語は彼女のためだけに作り出されたような気もする。頭がよく、身体能力に優れ、そして美しい。加えて人を助けるために生まれてきたと明言するような『いい奴』なのだ、もはや完全無欠の四文字ではすべてを言い表すことはできないだろう。
加えて彼女は一年生にして、箱庭学園生徒会長なのだ。その支持率は驚異の98%。見知らぬ他人のために生まれてきた、と言う一声によって当選した。その思想を信条として、24時間365日悩みを受け付けることを公言、「目安箱」を設置したのであった。
そんな人物と僕は、人生において接点すら持つことはなかったはずなのだが、何の間違いか同じ学園に在学し、あまつさえ『立派な先輩』という、まったくの的外れな評価を得て慕われてしまっている。僕も何とかその評価を正そうと頑張ってはいるのだが、しかし依然として変わらない。
僕の話はここまでにしておこう。
黒神めだか。
身長166.2cm、体重56kg。誕生日は10月2日。
箱庭学園第九十八代目生徒会長の一年生。
眉目秀麗・博学多才・文武両道――完全無欠。
黒神グループの次女。
一年生にして支持率98.8%の『完璧』な――否、『異常』な生徒会長。
本物にして、化物の様な生徒会長。
これは、そんな生徒会長を筆頭とした彼女らを僕、阿良々木暦が語る物語である。
平凡、どころか平凡未満である僕では負完全に語ることしかできないだろうし、偏見に満ちているうえにクオリティも保証できない。しかしまあ、そこは高校生の二次創作だと思っていただければ幸いだ。
タイトルは陳腐に異物語。
開幕だ。
002
それは、七月十五日の放課後であった。
ショートホームルームを終え、家へ帰ろうと教室を出ると、そこには一人の女子生徒が立っていた。
「誰かと思えば不知火じゃないか」
不知火半袖。
常に何かを食べていて、そして不敵な笑みを浮かべている一年生の後輩だ。概ね人吉善吉と言う男子生徒と行動していたのだが、彼が生徒会に所属してからは一人であることも増えた。
なんやかんやで彼女らとは交流があったのだけれど、不知火一人で接触してくるという事は今までになかった。
「こんにちは、アルル木先輩」
「……あのな不知火、確かに僕は魔導物語からのファンであるけど、だからと言って僕の名前をそんな天真爛漫で普通のかわいい女の子みたいな名前と間違えるな。僕の名前は阿良々木だ」
「失礼、噛みました」
「違う、わざとだ」
「噛み締めました」
「やっぱりわざとだッ!」
と言うかそれ別の奴のネタだろ!しかも二人分の!
「で、何の用だ不知火」
「あっひゃっひゃ☆阿良々木先輩はせっかちですねー。用事がなければ親しい先輩を訪ねてはいけないんですか?」
「いや、そういう訳じゃあないが……」
という事は、普通に遊びに来たという事だろうか。
「ま、それはそうとして用事はあるんですけどね」
「おい」
何が面白いのか、目の前の後輩は「あっひゃっひゃ☆」とワンピースよろしく一風変わった笑い声をあげている。
「ところで先輩、
「いや、まだ寝てるけど……起こせば起きる時間帯だと思うぞ。あとおばあ様なんて呼んでやるな」
「いやいや、あの妙齢の幼女をちゃん付けなんてできませんよ」
……普通にさん付でいいと思うのだけど。何かしらあるのだろう、健啖家どうし。
「なんだ、忍に用事か?」
「んー、正確に言えば、忍おばあ様に用事があるわけではありません。だけどまあ、彼女の存在はあったほうがいいですし」
「話が見えてこないな……」
「あっひゃっひゃ☆でしょうねえ」
にたり、と彼女は笑みを浮かべた。
「阿良々木先輩、フラスコ計画、と言うのはご存じですか?」
「……いや、不勉強で申し訳ない、寡聞にして聞いたことがないな」
「いえいえ、先輩が不勉強と言う訳じゃあありませんよ。何せこの計画は秘匿されて、学園地下でひっそりとおこなわれていますから」
「そんなまるで、悪の組織の非人道実験みたいな……」
「そうなんですよ」
不知火はびしっと、こちらに指を突き付けながら、いつになく真剣な面持ちで続ける。
「これは、『天才を人為的に生み出す』計画です」
「それは……いいことなんじゃないか?」
僕のような凡才以下からいてみれば、それは全国の落ちこぼれを救うような素晴らしいことだと思ったのだが、そうは問屋が卸さないようだ。
「いえいえそうもいきません――何せこの計画は箱庭学園の一般生徒を大量に犠牲にしてなされる計画なのですから」
「――なるほど」
突飛な話である――僕が、ついこの間の春休みからの経験がなければ、到底信じることはできなかっただろう。
――春休み、僕は吸血鬼に襲われた。
何の変哲もない田舎町で、四肢をもがれた世にも美しい吸血鬼。
鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼――キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードに、魅入られ、そして僕も吸血鬼へと
その日を境にして始まったヴァンパイアハンターとのバトル。春休み最終日の、彼女自身との決着。
それに加えて、怪異に憑かれた少女たちとの交流があったからこそ、不知火の話を飲み込める。
「なるほどな――だけどな不知火、僕にその計画を阻止しろって言うんなら、そいつはできない相談だぜ」
「いえ、そんなことを頼もうなんてしていません。出来るわけないでしょう」
……分かりきっていたことだが、こう人に言われると腹が立つな。
「私が頼みたいのは、ずばりこの計画を阻止するために動いた黒神めだか生徒会長のサポートですよ。ほら、あなた死んでも死なないでしょう」
「……ま、それもそうだな」
「おや、そういえばコンプレックスでしたっけ」
「今はそうでもないよ」
何がおかしいのか、彼女はやはりいまだ笑っている。
「……ん?ってことは、バトルがあるってことか?」
「ええそうですよ。六人ほど、計画の阻止を阻止する人がいます――
加えて黒神めだかの目的地を告げてから、彼女は僕の教室から踵を返してどこかへと去ってしまった――。
場所は時計台地下である。
ちなみに知り合いはめだかボックスの原作キャラクターです。