異物語 作:一兵卒
これもひとえにめだかボックス、及び化物語のネームバリューによるものですが、しかしそれでも、皆様の機体に0.01%でも応えられるよう努力していく所存であります。
そんなわけで、120%の感謝をしながら書いた第五話です。
007
「黒神、お前は俺の真逆なんだよ
「俺には生まれつき、異常で過剰な反射神経が備わっていた
「お前には、反射神経が一切無いんだ
「腕を掴まれても
「腕を引っ張られても
「腕を折られても!
「てめえはそれに逆らうこと無くデータを狙った!
「それこそ俺のキックにも一切反応しなかったよなあ!
「そんなこと、普通の人間には普通に不可能だ!
「訓練の成果なのか生まれつきなのかは知らないが
「お前にはあるべき反射神経が一切無い!
「肉体を完全に手動で操作している
「道理で俺の異常性を見抜いてくれるわけだぜ
「ベクトルは逆でも、俺とお前は絶対値が同じなんだ
「俺が自動操縦ならなら」
「お前は自由操作ってことだ!」
……そう高千穂仕種は、腕が関節とは逆方向に曲がった黒神めだかへと断言した。
008
なぜ黒神の腕が逆方向にへし折れているのか――事の顛末をざっくりと伝えよう。
高千穂の異常性である反射神経が判明すると、人吉は黒神にアドバイスをし、そして黒神はそれを実践した。
そのアドバイスの内容は、分身の術を繰り出せというものだった。
実際彼女は無数に分身――要は無数のフェイントを仕掛けたが、人吉は反応と反射の意味を履き違えていた。
反応ができなくとも、反射で動くことはできるのだ。
実際彼は、なんてことなく無数に迫る黒神の中の本物の腕を掴み――そしてそのまま、膝蹴りでへし折ったのだ。
無論彼女も、ただで腕をへし折られたわけではない。
黒神は腕一本と引き換えに、目的のUSBを入手していた。
この一連の流れから、高千穂は黒神の異常性を見抜いたのだった。
黒神は腕の一本ぐらい安いと言うが、何を言っているのか。吸血鬼でもあるまいのに……こいつは自己犠牲精神がすぎる。
まるで、まるで――
――奴隷じゃないか。
しかも彼女は、そんな肉体の完全制御など取り立てて隠しているわけでもないと言う。僕からしてみれば、十分驚きの事実なんだけれども。それを聞いた高千穂の返答は「気前が良い」。そして「優劣が完全についた」、だった。
「……優劣はともかく、勝敗はついたのだ。データが手に入った以上、貴様と戦う理由は――」
「いやメンゴメンゴ、それ実は偽物なのよ。こっちが本物!」
そう言って高千穂は懐から、黒神が奪取したUSBよりも一回り大きいものを取り出す――。これでは、文字通りの骨折り損のくたびれ儲けである。
「……黒神、僕が出る」
吸血鬼体質がバレてしまうが、
しかし返ってきたのは、明確な拒絶であった。
「いや、阿良々木先輩のお手を煩わせるまでもない。何、
そして彼女は徐に裸足になった。
その様子を見た人吉が、異様に慌て始める。一体何が始まるというのだ。
「みんなもっと離れろ!お前らもだ――そこにいちゃあ
「……?何慌ててんだあいつ?」
高千穂が疑問を口にするが、それは最もである。裸足になったから何というのか……?
「どうせまた分身の術だろ?バーカ、何人増えても無駄だってんだよ」
「……いや、今度は増えるのではなく――」
――消える。
彼女はそう言い残し、その場で跳躍を開始する。
とーん、とーんと、リズム
……あれ。
なんだか段々、着地と着地音がズレてきているような……。
とーん。
とーん。
とーん。
とーん。
と ー ん。
と ー ん。
「あれ?」
「音が」
「遅れて」
瞬間。
黒神めだかは、先の宣言通り――消えた。
そしてその直後に、高千穂が何やら甚大なダメージを受けた様子で血を吐きながら、迷宮の壁に叩き付けられる――。
そしてそれからわずかに遅れて、物体が超高速で動いた時のような破裂音を響かせながら、全身血塗れの黒神が姿を現した。
「……人吉、あれは一体なんなんだ」
「あいつはこの超・超高速移動に、『黒神ファントム』と名付けました」
く、黒神ファントムかぁ……彼女は案外、ネーミングセンスが欠落しているのかもしれない。
「不規則な垂直飛び出タイミングをずらし、相手が瞬きをした瞬間を狙って動く……だけだそうです」
「んなバカな、そんなことが人間にできるのか!?」
「……そのための自動操縦ですよ。全身を自在に動かせるってことは、痛覚を無視して――生物のリミッターを無視して行動できるってことです。めだかちゃんは今、最速ならぬ最適を選んだんです――こうしちゃいられないッ、めだかちゃん!」
高千穂を攻略するには極限まで省かれた反射を攻略しなければならない、ほとんど存在していない虚を突かなければならない。
故に彼女は、増えるのではなく、虚になることを選択したのだ。
確かにこれは、高千穂の突破だけを考えるのなら最適かもしれない――でも、でも!
これの何が最適だよ!
あいつは確かに勝ったさ、でも、相手よりもよっぽど深い傷を負いながら!
「衝撃波で全身ボロボロじゃないか……」
「……いや……これは全身の筋肉が無理な駆動で断裂しただけだ……」
そのまま彼女はうつぶせに気絶する。
しかも今の挙動で、本物のUSBは大破してしまった――。
――「ふん。なんだいその女、死んじまったのかい?」
ぞっとした。
振り返るとそこには、今まさに気絶していたはずの、全身血みどろの褐色肌の巨漢が――高千穂仕種が、立っていた。
「そいつがあくまで研究データを狙ったおかげで助かったぜ!直接俺のボディが狙われたわけじゃなかったから、ギリギリ!立ち上がることが出来た!」
確かに、人吉の話を聞く限り黒神ファントム(どんな名前だ)のメインはあくまで高速移動なのだろう。その破壊力と衝撃波は、あくまで物体が高速で移動したことによる副産物に過ぎない。
「……高千穂。これ以上戦うのなら僕が相手をする」
「阿良々木ィ……俺は理事長からお前の『異常体質』を聞いているがよ、今興味あるのは黒神だけなんだわ」
「その黒神が限界だって言ってるんだよ」
「なんだ、動揺もしねえか。それにあの女生きてんの?」
「ああ、しっかりとな」
「カッ、つまんねえ」
僕が箱庭学園に転校してきたのは、たしか高校一年生の――。
――やめだ。思い出したくもない。
「大丈夫だ、阿良々木先輩。私はまだ……立ち上がる事が出来る」
……そういって彼女は血にまみれながらも、凛として立ち上がった。
「それにこれ以上戦う理由はない。階下に向けて体力も温存しておきたいし――それに高千穂三年生。貴様も立っているのがやっとであろう」
「ッ、待て、待ってくれ!!――、いや、待ってください、だ!」
彼は吼える。
骨は間違いなく折れているであろう、内臓も破裂しているかもしれない。それでも彼は叫んだ。
――戦う理由はある、と。
「研究データも!フラスコ計画も!今はもうどうでもいい!今は只、黒神めだか――お前と言う化け物と語り合いたいだけなんだ!」
僕たちが戦う理由はない。
彼に戦う力は残っていないだろう。
しかしそれでも、黒神めだかは逃げない。
なぜなら彼女は365日24時間。
敵でも。味方でも。普通でも。
人でも。
化け物でも。
誰からでも相談を受け付ける、生徒会長だからである。
「……いいぜ、好きにしろよめだかちゃん!
「ああ、任せたぞ」
「さ!やろうか!」
「おう!ありがとう!」
勝敗は明言しない。
強いて言うなら高千穂仕種は、殴られて尚――殴られることに対して満足そうに笑っていたし、黒神めだかもまた、殴り合いの触れ合いが楽しそうに笑っていた。
お互い満足そうだったが――懸念が一つ。
最終的に黒神は、高千穂の異常な反射神経を獲得していた。
へえ、自在にオンオフを切り替えできるのか――なんて思ったが、人吉が言うには違うらしい。
黒神は、この戦いで反射神経を習得した。
……もしかすると、これは
黒神の真骨頂は「最適」を選び取る事が出来る
この視察では、多種多様な
その戦いを通して、黒神を成長させることすら目的にあるのであれば、『
――フラスコ計画は進行する。
――
と言うわけで、拙作の暦君は『高校一年生の学級裁判後に箱庭学園に転校してきた』ルートです。
化物語、たぶん暦くんとヒロインズが別の高校でも成立する話だと思うんですよ。概ね。
なので異物語においての暦と戦場ヶ原ひたぎが交際関係にあるかは非常にあいまいです。
ぶっちゃけこの二次創作、100%が見切り発車で始まったのでプロットも糞もないんですよ。なので大幅変更の可能性ありです。矛盾点とか出たりね。
そんな感じの負完全な二次創作ですが、『不都合』を、『矛盾点』を、『見苦しさ』を、『痛々しさ』を、愛しい恋人のように受け入れてもらえると嬉しいです。
ま、それらをあんまり生み出さないのが我々の義務なんですけどね。