異物語 作:一兵卒
009
高千穂とのバトルを(黒神が)制し、地下研究所施設の二階を目指している時の事だった。
「そういえば先輩、高千穂の言ってた『異常体質』って何ですか?」
人吉が高千穂の漏らした言葉に対して疑問をぶつけてきた。
うーむ、どうしたものか。
正直なにがなんでも隠したいってものじゃあないけど、だけど今この場で話す事かと言われればそれは少々時間が足りないような気もする。
要点だけ話してもいいけど……よし決めた。
「いや、まあ、ついこの間いろいろあってな。その影響で、僕は人より
「露骨に誤魔化しますね」
「そう言ってくれるなよ阿久根。いずれちゃんと話すからさ」
僕は生徒会のメンバーじゃないけど、それでも彼らの事は仲間だと思っているし、きっと向こうも同じだろう。
ただ今は、少しばかり待っていてほしい。
「でもせんぱい、最初に高千穂に殴りかかった時は、普段よりもはやかったような気がするんだけど」
「ん、ああ、少しだけ運動力を上げる方法があってな。それもまあ企業秘密だけど、今日は限界値ギリギリまで強化してるから、それなりに戦えると思うよ」
――最も、当然ながら黒神には到底及ばないし、戦いとなれば人吉や阿久根の方が強いだろうが、まあいざとなれば囮になる事が出来る身体だ。死んでも死なないし、足手まといになるようなことは少ないだろう。
「よく言う。あの時は一番速かったくせに」
「偶々だよ。いざと言うときは肉盾にでもなるからさ――」
っと。
そんなことを話しているうちに、どうやら地下二階へと到達したようだ。
開いた扉の先に広がっていた光景は――。
「……え?あれ、なにこれ?」
人吉が困惑するのも無理はない。
何せ地下研究所の地下二階は、日本庭園だったのだから。
「……これは一種のビオトープだな。迷路に続いての実験施設だ――最も、目的は不明だが」
なるほど確かに、天井を見上げるとそこはディスプレイに青空が映し出されているだけだった。
にしたって屋内で屋外を再現か。とんでもなく苦労しそうな話であるが。
「悪いけど扉を早く閉じてもらえるかな。環境を一定に保つのにもそれなりの苦労が――って、おや?」
「――え!?」
素っ頓狂な声を出したのは僕だ。
庭園の水やりをしている青年を、僕は知っている。いや、知っているどころではないのかもしれない。
「宗像!?」
「暦じゃないか」
紹介しよう。
彼の名前は宗像形。『
「久しぶりだな――どうしてこんなところに?」
「どうもこうも、僕も『十三組の十三人』に所属していたというわけだよ」
……確かにただならぬ雰囲気を感じていたが、そうか、只専門家(見習い)だからと言うわけじゃなかったのか。
「知り合いなのか」
「ん、ああ。前に少しな――お前も戦ったりするのか?」
「いや?僕は争いが嫌いだし、それに今は作業中で忙しいしね。悪いけど後回しにしてもらってもいいかな」
「……だそうだ」
「ふむ、そういう事なら素通りさせてもらおう――」
十三組の十三人なんて言われてるけど、案外戦闘集団じゃないのかもしれない――。
……そんな考えは間違いだった。
さすがに、
「――阿良々木先輩!?」
まいったな。
どうしたものか。
010
宗像形。
怪異の専門家見習いにして、フラスコ計画の被験者・『枯れた樹海』。
常に強烈な殺人衝動が総身を支配する、国際手配中の大量殺人者である。
宗像は阿良々木暦の首を跳ね飛ばすつもりはなかった。と言うか、阿良々木暦がいることを知らなかった。
しかしそこに居るのなら話は別だ。
阿良々木暦は殺しても死なない。
人間は殺せば死ぬが、阿良々木は殺しても殺せない。死んだところで知ったこっちゃない。何より宗像の戦闘スタイル的に、阿良々木は相性が悪すぎる。
振るった凶刃は容易く阿良々木の首を斬り飛ばした。
「――阿良々木先輩!?」
宗像形は思案する。
はてさてどうしたものかと。阿良々木の首を斬り飛ばした日本刀には痺れ薬が塗布してある。しばらくは起き上がることも、飛んだ首を元に戻すことすらできないだろう。
「どうしたんだいそんなに取り乱して。――ああ、どこから日本刀を取り出したか不思議なんだろう?」
そういいながら、宗像はありとあらゆる隙間から無数の刃物を見せびらかす。
「御覧の通り僕は暗器使いでさ。制服中のあちこちかに武器や凶器を――ッ!?」
「貴様はもう喋らなくとも良い」
宗像は。宗像形は殴り飛ばされた。大量の暗器と口から吐き出された血反吐を撒き散らかしながら、地下二階の端から端まで殴り飛ばされた。
紅く染まった髪を振り乱す乱神に。
「
――黒神めだかの真骨頂・その④。
修羅の面をかぶり、逆巻く炎の様な髪の毛を振り乱すその形態は正に荒ぶる神の様。
宗像が殺人衝動に支配されているのであれば、今の彼女は感情に支配されている。
乱神モードと、人吉善吉は名付けた。
「おいおい待ってくれ、まさか知らないのかい?」
「知らない。知ったこっちゃない」
「速――ッ!」
振るわれた拳を寸前で回避する。掠めた宗像の頬はすっぱりと切れて、庭園の大地に穴が開く。再び拳が炸裂する瞬間、宗像がどこからともなく取り出したのは煙玉と閃光玉。
轟音を響かせながら黒神の視界を焼き、そしてその隙に危険距離から脱出する。
「いるだろう真黒!助けてくれ、君の妹に殺されてしまう!」
宗像は大声を――しかし緊急性はない――を上げながら真黒に呼びかける。
「やーやー宗像君久しぶり!覚えてくれていたみたいで嬉しーよ!」
そういいながら現れたのは、どこからともなく現れておきながら黒神の背後を取りつつ胸を揉みしだいた挙句ノータイムで殴り飛ばされた男の名前は黒神真黒。何を隠そう、変態にして黒神めだかの兄である。
「お兄さま、今はふざけている場合では……」
「おいおいめだかちゃん、人死にが出たわけでもないのにふざけちゃいけないとは、どういう了見だい?」
「何を言って――ッ!?」
真黒が無言で指をさす。
そしてその先にあったものは、黒神真黒・宗像形と
「びっくりしたよ宗像。お前がまさかこんな危険人物だったなんてな」
ゆらりと死体が起き上がる。
首なし死体が、地獄の底から這いずり出る。
「……世界を11日で滅ぼしうる君に言われたくはないね」
「それもそうだな」
阿久根高貴と喜界島もがなは、その光景を見てただ途方もなく驚いた。
黒神めだかと人吉善吉は、その光景を見て連想した。
倒れてもすぐに立ち上がる、当たり前みたいな不死身の
「阿良々木先輩、あなたは一体……!」
「――ただの化け物だよ。いつでもそこに居る――な」
阿良々木暦はにたりとも笑わず言った。
バレちゃったね、思ったよりも早かったね。と言うか一話以内に回収されたね。
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