異物語   作:一兵卒

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100%趣味で書いた殺人です。


第七話:けいキラー・貮

011

 

 

 

 僕、阿良々木暦は吸血鬼もどきである。

 春休み、キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードに血を吸われ一度は正真正銘の吸血鬼となり、最終的に人間に戻ることはできたのだが、しかし後遺症が残り、僅かな吸血鬼性が全身に残留している。

 

 あまりひけらかすようなものでもないから隠しているのだが、正直ばれてしまったからなんだという感じだ。黒神の自動操縦(マニュアル)に近いのかもしれない。

 

「やあ阿良々木君、お噂はかねがね」

「黒神真黒……だっけか」

「そうだよー、変態にして魔法使いの真黒お兄さんさ」

 

 さっきの様子を見るに、どうやら兄妹仲が良いどころではないようだ。僕とは大違いだな。

 

「もしかしてお前も」

「そ、知っているよ。理事長から聞いたって言うのもあるし、僕の異常性(アブノーマル)もあるしね」

 

 またアブノーマルか。まったくすさまじい力である。僕は変態(アブノーマル)でも異常(アブノーマル)でもないので、まったく縁遠い話である。

 

「……隠してて悪かったな。そんなわけでまあ、僕は吸血鬼もどきで、ある程度の不死身性は持っているんだ」

「吸血鬼か……にわかには信じがたいが」

 

 だろうな。でも、僕から言わせてみれば黒神、お前の存在のほうがよっぽど信じがたいけどな。お前みたいな存在がそんな一人や二人……いや僕はもう一人知ってはいるけども、それでもいてたまるかってんだ。

 

「そうだめだかちゃん、しばらくその姿(乱神モード)でいると良い。気休め程度だが回復速度も上がるからね」

「……それじゃあ僕の相手は誰がしてくれるんだ?僕は誰を殺せばいい?言っておくけど、暦は対象外だよ」

 

 ――何せ。

 

 ――殺しても死なないからね。

 

「……ッ、お前何言ってんだよ!暗器とか!吸血鬼とか!そんなことはどうでもいい、こいつは人間の首をこうもあっさり!」

 

 ここで沈黙を貫いていた人吉が声を上げた。

 

「だから人吉、僕は吸血鬼もどきで死なないことをわかって宗像は……」

「それでも!人の形をした()()の!首を刎ねるなんてまともじゃ――!」

 

「だから僕は異常(アブノーマル)なんだよ」

 

「~~~!」

「あんまり驚くことはないよ。当然の事さ」

「彼は人殺しのテクに異常なほどに長けた、指名手配中の殺人犯なんだから」

 

 双子曰く。

 宗像の最初の殺人は五歳の時、犯行動機は「殺したら死ぬのか確かめたかった」から。以後、彼は世界各国であいつは数えきれないほどの殺人を犯してきた。

 人間を見れば殺すことしか考えられない。

 人間と会えば殺すことしかできない。

 人間と話せば殺している。

 そんな彼が普通(ノーマル)の生活を送れるはずもなく、今はフラスコ計画の協力と引き換えに理事長に匿われているそうだ。

 生まれついてのシリアルキラーが、宗像形なのだ。

 

「……人を無差別殺人犯みたいに言わないでよ。傷つくな……僕は理由なき殺人者じゃない。理由ありきの殺人者だ」

 

――僕は作業中だ、だから殺す。

――君たちの相手をしている暇はない、だから殺す。

――通せんぼしない、だから殺す。

――僕は争いだ嫌いだ、だから殺す。

――黒神さんをメンバーを引き入れるつもりはない、だから殺す。

 

 殺す、殺す、殺す。

 

「今日はとてもいい天気だ。

 

 

お昼御飯がおいしかった。

 

楽しみにしていた映画の封切が近い

 

携帯電話の電池が切れそうだ

 

特に何もない

 

 

 

だから殺す

 

 

すべての道がローマに通じるよう

 

僕にとっては全ての現象が殺人に通じるだけなんだよ」

 

 

 

 ――こいつと会話が成立することが恐ろしいレベルで、宗像は狂っている。

 

「自己紹介中に失礼するけど!君の相手を誰がするかだっけ?心配しなくてもそんなことは決まっているよ――行けるね?善吉くん

 

 真黒は正気か!?正真正銘、只の普通(ノーマル)の人吉が宗像に勝てるわけ……!

 

「……はい、行けます!」

 

 一瞬の葛藤はあったものの、いい返事、だった。

 確かにこいつは普通(ノーマル)かもしれないけど、それでも、黒神の隣に13年いた男だ。まいったな、普通にカッコいいぞ。

 

「人吉、一応言っておくが、()()()()()()()()()()、仮にお前が死んだとしても蘇生させることができるんだけど……」

「カッ、縁起でもねえこと言わないでくださいよ。それに俺は、人間のまま生きて、人間として死にてえ!」

「……余計な世話だったな――行ってこい!」

「応!」

 

 そういって、人吉は宗像と相対する。

 

「女子を庇って前に出るなんて、君はきっと優しい子なんだね。とても仲良くなれそうな気がするよ……だから殺す。

 

「やってみろよ限界野郎、俺も殺されたぐらいじゃ死なねえよ!

 

 

 

012

 

 

 

 人吉と宗像のバトルを見守っていると、真黒が話しかけてきた。正直噂程度でしか聞いたことがないし、黒神(めだかのほう)とのやり取りを見るに話が合いそうにもないんだけど。

 

「めだかが世話になっていると聞いてね」

「まさか、真逆だよ、世話になってる」

「あはは、上手いね」

 

 ?どういう……あ、真逆(まさか)か。サムっ。

 

「噂は時々聞くよ、中学時代なんかは有名だったらしいじゃん?」

「そんなことねえよ。地味ーな奴だったよ」

 

 ま、それは今も大して変わらないだろうが。何せ廊下で一日中寝て過ごしたところで、誰一人として声をかけることはなかったのだから。

 

「いや、廊下で寝ている人がいたら誰も話しかけないよ。怖いもの」

 

 うぐ。

 

 正論だった。

 

「一番好ましく思っているのは善吉くんだし、一番好きなのは宗像くんだけど、一番興味があるのは君だよ、阿良々木くん」

「……はあ?僕も人吉と同じ、只の普通(ノーマル)だぞ?……吸血鬼体質の話か?」

「いや、それを抜きにしてさ。どうも君は普通(ノーマル)でも特別(スペシャル)でも、()()()()異常アブノーマル()()()()ような気がしてね」

「……気のせいだよ」

「でもね。普通(ノーマル)にしては異常だし、特別(スペシャル)にしては普通すぎるし――異常(アブノーマル)にしては()すぎる」

 

 ……馬鹿にされているのだろうか。

 

「僕は二人ほど、君に似ている人間を知っているよ」

「……その二人もろくな人間じゃあないんだろうな。友達は選んだ方がいいぜ?」

「はは、まったく言うとおりだよ。本当にあいつらはまともじゃなかった」

 

 まったくひどい言い草である。しかし歪か……確かに、僕が絡んだことで事態がしっちゃかめっちゃかになったことなんて無数にある。それこそ春休みとかな。

 

「ま、それはそうとして、吸血鬼体質にも興味があるんだけどね……先天的なものではないんだろう?まさかヴァンパイア・ハーフってわけでもないだろうし」

「大したもんじゃないよ。普段はちょっと常人より傷の直りが速い程度だし」

「それでも十分だと思うけどねえ……」

 

 と、そんな感じでだらだらしゃべっていると、爆発音とともに水面が炸裂する……まさか手榴弾か!?お前戦争でもするのか!?人吉も同じこと言ってるし。

 と言うか余裕で対処する人吉も人吉もだ。こいつが特別(スペシャル)でもない箱庭学園ってなんなんだよ。一体いつからこの学園は奇人変人吃驚箱になったのだろうか。

 続けてあいつが取り出したのはロケット砲。狼牙棒を取り出したあたりから思っていたけど、やはりこいつの暗器スキルは暗器の範疇を越えてるな……影にでも仕込んでるんじゃないか?

 

 しかし、あいつの言うところの最後の暗器すらも、人吉は信管や爆薬の位置を避けて蹴り壊す。

 何で知ってるんだよロケット砲の構造を。

 

 喜界島が今度こそやったと言うが、真黒に言わせればあいつは暗器使いである前に人殺しであるという。

 刀による斬殺。

 鈍器による撲殺。

 狼牙棒による刺殺。

 拳銃による銃殺。

 手榴弾とロケット砲による爆殺。

 いずれも通じなかった宗像が選んだ最後の殺し方は必殺!

 

 暗器をすべて捨て、身軽となった宗像は素手で人吉に襲い掛かる――!

 

「暗器は終わりだと言ったけど!殺人(ぼく)はまだ終わらない――!」

 

 しかし、視覚から襲い掛かったその攻撃は。

 

 完全な不意打ちは、人吉善吉には通じなかった。

 

 カウンターでこめかみに正確無比に叩き込まれた強力な蹴りが、宗像の意識を刈り取った。

 

「いいや終わりだよ、お前はすでに限界だ」

 

 いわばカウンターのカウンター。宗像が受けた攻撃もまた、意識外のモノだったのだ。受け身を取ることすらできず、あっさりと斃れ伏した――。

 

「……えっと。今度の今度こそ、『やった』でいいんだよね?」

「うん!いいよ。実に申し分ない」

 

 真黒は噛み締めるようにして言う。

 

「普通の人間による、普通の――」

 

 

 

 

 

 

「え。」

 

 今、素っ頓狂な声を上げたのは僕ではない。人吉善吉だったのかもしれないし、黒神めだかだったのかもしれないし、はたまたそのほかの誰かだったのかもしれないし、僕だったのかもしれない。

 

 不意に鮮血が飛び散る。

 

「げ、ほ――」

 

 体からいくつもの刃物が飛び出ている。

 みんなが、宗像すらもが呆けたようにこちらを見ている。

 

暗殺。……のつもりだったんだけどな」

「忘れていたな、そういえば――」

 

 本日二度目の死亡の衝撃は、変わらず全員に伝播する。




善吉くんが暦を馬鹿にしてるとかはないですよ、念のためにね。

なんか評価が赤バーになりました。皆様の応援のおかげです、ありがとうございます。
これからも拙作をよろしくお願いします。

そんなわけでも、感想・評価、よろしくお願いします。
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