息抜きに書きました。
オリ主初投稿です
ハロー、父さん、母さん、爺ちゃん、婆ちゃん。あとポチ。
元気ですか?
ボクは元気じゃないです。助けてください。
どこにでもあるアパートの天井はなぜか夜空に生まれ変わり、滑らかだった木の床はいつの間にか古びた石畳にフローリングされていて、目の前に知らない人の生首が転がってます。
誰この人。
「ほーりーしっと」
落ち着こう。
ボクの名前は[編集済み]。どこにでもいるごく普通の大学生……だったはずの男だ。
昨日は土曜日だったので夜更かししようと夜中の一時までスマホを開いてゲームをしていたのまでは覚えている。
そのあと多分寝落ちして……なぜか肌寒く感じ、瞼を開いた時、目の前の光景は何もかもが一変していた。
「ここどこぉ」
知らない天井どころか天井すらない。あたりは閑散としていて人の気配はほとんどせず、風の音が虚しく通り抜けていく。
学校の教室ぐらいの広さの部屋の真ん中で、ボクは惰眠を貪っていた。生首と添い寝しながら。裸で。いやん。
初めての添い寝はこんなムサいおっさんの生首じゃなくて、可愛い娘としたかったなぁ。
なんて腑抜けたことを考えている場合ではないのだが、いかんせん寝起きなせいで頭が回らないのだ。許してほしい。
体を起こし周りを見渡す。
やはりボクの部屋ではない。少なくともボクの部屋にはこんな鉄格子みたいな窓はついていなかったし、無惨に散らばった死体もない。
ある者は爆ぜたように首から上を無くして倒れ、ある者は体が全身黒焦げになった状態で壁に埋もれている。
生きている者は誰一人としていない。
どれもこれもが本当に不愉快で気分を悪くするものでグロテスクで、そしてなぜかボクはそれに忌避感を感じることができなかった。
夢……にしては随分と鮮明でリアルだ。そしてこんなにショッキングな映像はボクの中では悪夢に分類されるので、すぐに醒めないといけないのではと思うわけで。
「とりあえず……寒いな」
日本の春にしては随分と肌寒い夜だ。やはり日本ではないのか?
周囲の人間の死体はほとんどが白人か黒人。アジア人らしき姿もあったが、損傷が激しすぎて判別がつかない。
夢遊病にしては随分と大胆な遠出だ。もしくは拉致?身寄りのいないボクに身代金を払ってくれる人などいるはずがないので、その可能性は低い。
何か羽織る物はないかと死体を弄る。正直、知らない人間の、それも死体の衣服を着ることにはさすがに抵抗を覚えたが状況が状況なだけに仕方がないと諦めた。
お腹が冷えるのはきらいだ。
「なんでこの状況でボクはこんなに冷静なんだ……?」
やっぱり妙だ。
寝ぼけ眼もそろそろ覚めて、目の前の惨殺された死体がフィクションのモノでないことはわかってきている。
少なくともボクはただの一般家庭出身で、このような血溜まりを見慣れているような精神状態で過ごしてはいない。絶対吐くし、腰が抜けて動けないはずだ。
死体の服装はみんなバラバラ。
白衣を着ている人もいれば、修道服のような服を着ている人もいる。宇宙服のようなものを着ているのもあれば、この……芋虫?みたいなよくわからないものを着ているのまである。
えーっと、ハロウィンか何かでもしてたのかな?その割にはトリックが過激すぎる。もしくはトリートされたあとなのかな。
しかしそれにしても……
「なんか…………デカくない?」
少なくともボクは身長175cmの平均ちょい上の成人男性だったはずだ。
死体のほとんどは大柄な外国人ぽかったので、多少サイズが合わないのは仕方がないだろう。
にしても袖が出過ぎである。ズボンもブッカブカで転びそうだし、靴のサイズも二回り大きい。
いや、おかしいのは服のサイズではなくボク自身か?
視点を変えて、ボクはようやく真実がわかった。
「体がちっちゃくなっちゃった」
なんでぇ?
少なくともボクの昨夜の記憶では、幼馴染と遊園地に行った記憶も、黒ずくめの男の怪しげな取引現場を目撃した記憶も、背後から近づいてくるもう一人の仲間に気づかなかった記憶も、その男に毒薬を飲まされた記憶もない。
あれやこれやと考え続けても疑問が尽きることはなく、しかし考えても答えが出せるわけないので結果としてボクは考えを保留した。
「とりあえず部屋を探索してみるか」
ブカブカの袖や裾を捲り、なんとか部屋の周りを見てみる。
破けたカーテン。ボロボロになった壁。割れた電灯の破片。服装がどれも揃っていないバラバラの死体。
足音に落ちていた飛び散っていた紙を拾い上げて見てみれば、英語の文字がずらりと並んでいる。
真夜中なのに随分よく見えるなぁ。ボクってこんなに視力よかったっけ?
「えーっと……experiment、実験かぁ。ここの文字は……artifi……わかんないや、専門用語かな。…………ん?」
大事な資料かな。血が飛び散って、すべてが読めるわけではないが、その文字列の中に明らかに重要そうに記された太文字が目に入る。
「Bloods Breeds……ブロードブリード…………いや、血だからブラッドの方がいいのか」
ブラッドブリード……なんか、どこかで、聞いたことのあるようなぁ……
ブラッド、血、血液、血清…………血界。
「……
いや、いやいやいやいや、いやいやいやいやいやいや。
まさかまさかまさかまさかまさかまさか。
ボクは慌てて窓の外を見る。
少し遠くに見える、ビル群の明かり。霧のかかった街並み。
耳をすませば自動車がクラクションを鳴らす音が、銃撃音と不気味なぐらいに調和していた。
お月様は見えず、外界との接触は完全に禁じられた異界。
視界の先にはよく見慣れた知らない街の景色があった。
街の名前はヘルサレムズ・ロッド。元
先ほどの知らない景色というのは訂正しよう。あの街をボクはよく知っている。過去に何度もその文字を読んで、その光景を見ていたのだから。
血界戦線。
数年前、まだ中学生ぐらいだった頃に見たとある漫画の話。
最近はあまり読んでいないので内容は深く覚えているわけではない。だが、その名前を持つ種族は嫌になるほど障壁として彼らの前に立ち塞がった。
巷で知られているような、血を主食にして十字架とニンニクが弱点のテンプレートなものではない。
不死身であり、禁忌によって作られた元人間。なすがままに人を襲い、喰らい、暴れ回るバケモノ共。
単独で世界の均衡を崩すどころか、世界そのものを崩壊させかねない最悪の存在であり、世界を守護する主人公たちの前に用意された
もちろん中にはいい個体も……いたかな、いたっけな、いなかったかも。
いや、そんなこと今はいい。
大事なのは、なぜその名前が書かれた紙があるのか。そしてなぜそんな場所にボクはいるのか。
最も嫌な可能性が脳裏にこびりついた。それは否定すれば否定するほど、ボクの中で確実なモノだと形を作り上げていく。
「とりあえず……鏡だ」
そうだ。鏡。
奴らは鏡、監視カメラなどのレンズを通したものに映らない。そういう生態だったはずだ。
震える声と共に当たりを見渡し、ドアの近くに割れた姿見を見つける。
破片を拾い上げ、祈るようにボクは鏡の中を凝視する。
「ホーリーシット」
力が抜けて倒れるように座り込み、唾を吐き捨てた。
ボクの瞳の上で、その鏡が人の死体以外を写すことはなかった。
「よりによって、
その言葉を嘲る者も憐れむ者もいない。
ただむなしく風が吹き抜けていくだけ。
どうやら運の悪いことに、ボクは史上最悪の種族に生まれ変わってしまったようだ。
短めで終わる予定です