Fate/alter Seven Sight ――the First Sight――   作:どっこちゃん

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 あとがきのキャラクタープロフィール書き直してみました。
 よければ見てみてください。


二章-1

(月曜日・朝)

 

 空は生憎の曇り空だった。

 予報では明日にも雨が降り始めるという。念のために鞄に折り畳みの傘を忍ばせておく。

 

 いつもとは勝手が違うので少々手間取ってしまった。

 家を出発したのはいつもよりも一時間は遅い時間帯だった。

 

 しかし、これでいいのだ。いつもは山一つ向こうからバスに乗ってこなければならないのでそういう時間になるのだが、今日は歩いて登校できる。

 

 本来ならこの時間差をうまく使っていろいろと些事を片付けられそうなものなのだが、今日ばかりはそうもいかなかった。

 

 朝から体が重い。完全に疲弊しきっているのだ。これでも体調管理には気を使っているほうなので、こんなコンディションで登校するのは初めてのことかもしれない。

 

 やはり無理をせずに適当な理由をでっち上げて休みを取るべきだったのだろうか? 

 

 足を引きずりながらそう考えたが、私はすぐにその考えを打ち消した。ここで無闇に休みを取るのはあまりいい手とは思えない。

 

 そういう些細な行動が誰かの違和感となりそれが不信感となって、余計な詮索を招いてしまうことも考えられるからだ。ここは無理をしてでも平時と変わらぬ行いを心がけるべきだ。

 

「……平時と変わらぬ、か……」

 

 我知らず漏らした独り言と溜息は自己憐憫にも等しい響きがあった。

 

 昨夜、この世のものとも思えぬ奇怪なカーチェイス、もしくはデッドヒート、あるいは常識の埒外で行われたチキンレースとでも呼ぶべき地獄から、命からがら生還した私こと小高森涅は一夜明けてもなお気が滅入るような曇天の空のもと、それでも懸命に重い脚を引きずって平時通っている公立高校へ向かっているのだった。

 

 ちなみにライダーは拠点となる新住居に置いてきた。

 

 本来なら聖杯戦争の間はサーヴァントを霊体化させたまま随所に同伴させるのがセオリーなのだが、あのバカヤロウがこんなところでなにをしでかすかという心労を溜め込むくらいなら多少の危険を甘んじて受ける所存である。

 

 それに、この学校には私以外の魔女や魔術師がいないことはとうの昔に確認してあるので、校の敷地内にさえいればそれはそれで安全な場所だともいえるのだ。

 

 教室内はいつものとおりにざわめき立っている。私は安息の息を漏らしながらその光景を眺めた。

 先日までは何ら思うところの無かった、何の変哲もない日常の一幕が、今となってみればこうもすがすがしく清涼なものに感じられるとは思っても見なかった。

 

 実際にやる気は毛頭ないが、今回ばかりはこの光景に向かって「ありがとう」と声を上げられなくもない。それくらいに、癒されている自分がいるのである。

 

 ありがたい、今はこうして日常の中に身を浸して静かに身体を休めることができるだろう。そう思いながら、私は自分の席に着くなり突っ伏した。もはや身体を支えることさえ重労働に思えていたのだ。

 

 私達の通う学び舎は公立ではあるが、私服での登下校も許可されている自由な校風を主張しているのが特色で、それ目当てでこの学校を選ぶ者も多いらしい。

 きっと、この少子化のご時世に生徒を確保するのに必死なのだろう。

 

 最近の高校や大学の求人策には形振り構わぬものも多いようである。それで本分が疎かになっては本末転倒だろうなどと、傍から見ているだけの私は無責任にも思ったりもするのだが。

 

 とはいえあまり悲観したものでもない。そのような状況にもかかわらず、我高の風紀はそれほどに乱れきっているというわけではないのだ。

 むしろ、そんな「自主・自由」とやらをウリにしている割に、ここの学生は驚くほど「普通」の規格からはみ出ていない。要するに、普通の人間が集まる普通の学校というやつなのだ。

 

 ちなみに私がこの学校を選んだのはまさしく「普通」の学校だからである。私のようなマイノリティーの人間が身を隠すにはこういう場所の方が都合がいい。

 

 あまり個人に焦点を当てようなどというお節介を焼いてくるような学校は魔女たる私にとって芳しくないのだ。

 

 もっとも、私個人としては別に高校に通わずとも魔女としてはやっていけると、当初は考えていたのだが、そのことを師に伝えると今時高校にいっていない人間のほうが希有なのだから、目立ちたくないのなら、それなりの学校に行けばいいと言われたのだ。

 

 難色を示した私に、しかし師は最後まで譲らなかった。

 

 そのとき恩着せがましいことは何も言わなかったが、きっと師は私が最終的に魔女であることをやめたいと言い出した場合のことを考えていたのではないか、と私は思っている。

 

 基本的に私が率先して魔術を続けることを快く思っていない節があるのだ。自身は先代たちの長い探求の末に結実した魔道の血筋の集大成だというのに、師はどこか魔道そのものを忌避しているかのように、私は感じることがある。

 

 数年前、師の晩酌の世話をしていたときのことだ。

 私が魔女としての才能を持っていないことを師はうらやましいと言った。「才が無い」と言うならいつものことなのだが、「うらやましい」とは耳慣れない師の台詞である。私は相打ちを打つようになぜかと問うた。

 

 師は呟くように、「そうすれば自分も魔道以外の生き方を夢見ることくらいはできたかもしれない」と言った。

 

 続けて、どの方面についても何の才覚も持ち合わせていないということは、言い換えれば定められた道がないということであり、自分で行きたい道を作っていけるということだとも。

 

 それは最初から安楽な道を用意してあることよりも苦痛を伴うことかも知れないけれど、それでもずっと幸福なことなのだと、叨々と語った。

 

 後で、酔った勢いに任せたことだから忘れなさいといってたが、私にはひどく印象的なことだった。

 

 私には想像するしかないことなのだが、あまりにも突出しすぎた才能というのは、当人が望む、望まずに関わらず、その道を決定付けてしまうことがあるのかもしれない。

 

 師は私の進む先を強制したくないと考えているのだ。

 

 生前、私の母が私を魔女にすることを強く望んでいた事を師も充分承知している筈である。けれど、それでも私が今からでもただの人間として生きたいといったなら、きっと、師は皮肉をいいながら十全の配慮をしてくれるに違いない。そういう人なのだ。

 

 普段は倣岸不遜で文句なしの人でなしを装っているくせに、変なところで気を廻してしまう人だ。

 

 魔術師としては文句のつけようも無く完璧ではあるが、人としても人の親としても何処か不器用で欠点だらけな人なのだと思う。

 

 反故にしてしまえばいい口約束のために、私のような不詳の弟子にまで親代わりとしての責務を感じているのだから。

 

 本当に難儀な人だな、とは思いつつ、そんな人に立場上とはいえ、歯向かうような真似をしたのは、やはり、些か心苦しくもある。

 

 私は突っ伏していた顔を上げた。

 

 止めておこう。そんなことを考えていても気が滅入るばかりだ。何かをやった後でそれを悔いても始まらない。今は真っ直ぐに前を見据えなければならない。

 

 とはいえ、今必要なのは休息であった。私は机の上に伏せたまま、改めて頭を回して教室内に視線を巡らせた。

 

 制服と私服の割合はせいぜいが半々といったところだった。

 

 制服そのものは全員に行き渡っているはずなので、あえて私服を着ているのは件の餌にまんまと食いついてしまった、そのためにわざわざこの普通な学校を選んだという半ば自意識過剰な、柔らかく言えば思春期特有の自己顕示欲の豊富な人々ということになる。

 

 そういう、毎日学校に来ていく服を選ぶ努力を惜しまない、ある意味で気合の入った人種か、あるいは私のように、もったりとした型どおりの制服では動きにくいからというだけの理由でつとめて簡素な服飾をローテーションしている人間ということになる。

 

 では斯様な校風の学び舎においてわざわざ制服と着用しているのはどのような生徒なのか。

 

 ここで、自刃して果てた侍よろしく死んだように机上に伏せている私に声をかけてきたヤツの姿があった。

 

「んー? ねぇ、どしたのクロ? 元気ないわねぇ。ねぇ? あんたどしたのよ?  

 ねぇ? あんたらしくもない。――つっても、あんたいつも元気いっぱいってキャラでもないけどねぇ♪」

 

「…………」

 

 私は殊更にうんざりとした顔をそいつに向けてやった。できれば構わないでおいて欲しいというメッセージが張り付いていた筈なのだが、そいつにはまったく通じなかったようで、

 

「ねぇ、なんかあったのー? ねぇねぇ、いつもはもっとしゃんとしてんのにねぇ。あ、まさか――いや、でも、ねぇ? ……あんた、今日はあの日じゃないわよねぇ?」

 

 などとたわけたことを執拗にのたまってくる始末だ。

 

「……何で、人のを正確に把握してるの」

 

 私はそれだけ言って再び突っ伏した。

 

 朝の第一声から身も蓋もない下品なことをのたまっているこのバカは不本意ながらも友人として紹介しなければならない人物である。

 

 名前は那須秋乃(なすあきの)。ふざけた名前だが本名だそうだ。

 

 制服組の大半はこういう手合いである。入学当初こそ明文化された自由の象徴である私服生活を楽しんではいたが、そのうちに服を選ぶのが億劫になり、次第に制服を愛用するようになってしまった。いわばずぼらな奴等である。

 

 そしてこいつはその代表格のようなやつだ。

 

 ちなみにクロとは私のことだ。涅(くろむ)だからクロ。

 

 どうも彼女(コイツ)は友人の名を二文字にまとめなくては気がすまない性質らしく、近しい友人を皆そのような愛称で呼ぶ。ちゃんと相手の了承を取っているのかは定かではない。ちなみに私は断りを入れられた覚えは無い。

 

「そぉんなに恥ずかしがんなくたっていいじゃないの。ねぇ? あんた毎月正確だからわかりやすいんだってぇ。それに、ねぇ? あたしとあんたの仲じゃないの。ねぇ? ……もうお互いに見せ合っていない場所なんてないじゃない……ねぇ?」

 

「……誤解されるからやめて、ホントに」

 

 息を荒げ、不遜な笑みを湛えつつ淫らにしなを作って迫り来るバカヤロウの粘っこいスキンシップの魔の手(なんかベタベタする)から逃れようと、私はバカの顔を引き離そうとしながら言った。

 

 べつに私も過剰に人目を気にするほど自意識過剰ではないが、さすがに限度と言うものがある。それに時勢が時勢だ。そんな誤解を伴った好奇の目で注目されるのは正直言って願い下げだ。

 

 しかしいつもならもっと毅然と突き放すのだが、今日ばかりは身体に力が入らなくて体力満天なバカの不埒な介入を赦してしまう。

 

 実際、これも何時もなら軽く受け流せる程度のバカヤロウのジャブなのだが、しかし特大のバカの後だとこの程度のバカでも辛いものがあるのだ。

 

「てか、あんたマジで辛そうじゃね? ねぇ、なにやったのよほんとに。ねぇ?」

 

 人の身体に抱きつきつつ、脱がしつつ、好きに弄る手は止めず、バカは矢庭にバカらしくない深刻そうな声を上げた。

 

 ある意味面倒見がいいというのか、こういうことに敏感なので余計にタチが悪いのだ。昔から自主的に集団から孤立しようとする私を、あくまで善意から邪魔してくれる腐れ縁の旧友というわけなのである。

 

 ちなみに、私に忍者云々に関して要らぬ雑学を吹き込んだのもこのバカである。

 まさかその雑学が役に立つ日が来ようとは夢にも思わなかったが、考えてみもみれば役にたったのではなく、役に立ちそうになっただけである。

 

 このバカのもたらしかけたメリットは昨夜もう一人のバカヤロウによってシャットアウトされていたのであった。

 

 なぜだろう? バカのもたらす好機は別のバカによって摘み取られるという法則でもあるのだろうか?

 

「……別に、ちょっと引越しのせいで寝る暇がなかっただけ」

 

 私はあわや因果律の謎にまでその思考を飛躍させるところだったが、何とか意識を留め、努めて冷静を保って応えた。

 

 疲労している本当のわけを言うことは出来ない。私は用意していた遁辞を述べたのだ。

 遁辞と書くとこれもまたなにやら怪しげに聞こえるが、ようするに怪しまれた時のための逃げ口上のようなものである。別に特異な術ではないが、現代社会では下手な忍術よりもよほど役に立つと考えていい。

 

 私は本来ここ笹ヶ谷市から山をひとつ隔てた場所にある通称「晦(つごもり)の里」からバスでここまで登校していたのだが、今後ひとり立ちをすることを踏まえてこちらの笹ヶ谷市で独り暮らしをしてみることにした。

 

 ということような内容の文句を、この那須秋乃はじめ親しくしてくる人間にそれとなく仄めかしておいたのだ。

 

 彼女らは私が天涯孤独の身で知り合いの屋敷に住み込んでいるのだということも知っている。故にそれで皆納得した。不審に思う者はいなかったはずである。私が師と対立してもこれで堂々と己の陣地を確保できるというわけだ。

 

 とはいえ、本当に優秀な魔女ならこんな遁辞を用意するまでもなく、そもそも親しくして来るような、プライベートまで踏み込んでくるような友人などつくってはならないはずなのだ。

 

 もちろん私も平素の学校に通うにあたりそのつもりでいた。自分から友人を作るような真似をした憶えはない。

 

 常に誰とも接点を持たず、目立つこともない、教室の隅にいつの間にかいるような存在となるよう努めてきた。――筈なのだが、この馬鹿を筆頭になぜか私にちょっかいというか、ある種の好意をもって絡んでくる人間というのは少なくないのだ。

 

 迷惑この上ないのだが、この秋乃はじめクラスの内外に関わらず私はなぜか半ば人気者のような扱いまで受けているのだった。

 

 まったくもって不本意である。なぜなのかは全くわからないのだが、どうやら私は動物からも(動物的な)人間からもちょっかいをかけられやすい性質を持っているらしい。

 使い魔の制御が容易だとか、魅了の魔術の成功率が上がったりと、利点もないわけではないのだが、やはり人の注目を引きやすいというのは現代に隠れ潜む魔女としてはおおいなる弊害となってしまう。

 

 このことについて師には、「やはり魔術師としての才がない」と苦笑ついでに溜息を吐かれたことまである。

 

 中世の魔女狩りの例を挙げるまでもなく、社会の影に生きる魔女が他人との接点を持ちすぎるのはよいことであるはずがないのだ。

 とにかく、私が何をしていても、このように声をかけたり要らぬ心配をしてくれたりする輩が後を立たないのにはいい加減辟易してしまう。

 

 何時もなら仕方がないと思って受け流すことなのだが、今回ばかりはこれが地味にきつい、説明に無理がないように気を使ってしまい無駄に気力や体力を消耗してしまうことになるのだ。

 

「なぁんだ、日曜だったんだから言ってくれりゃ手伝いに行ったのに。ねぇ、にしても、ほんとにあんたらしくじゃないの。ねぇ、それで体調崩してたんじゃだめじゃない、ねぇ?」

 

「……こういう時だってある。……だから、今日はほっといて」

 

「そっか、アンタだって人間だもんねぇ。そういう時もあるかぁ。わかった。みんなにはあたしから説明しとく」

 

 しかしそんなおせっかいも役に立つこともあるようだ。ありがたい。これで皆に一々説明しなくても済むかもしれない。

 

「…………じゃ、お願い」

 

 と、私が言うが早いか、バカはなぜか威勢良く両手を振り上げ、

 

「はーい、ねぇねぇちょっとぉ、みんな注目~~ッ!」

 

 と大声を上げてクラス中の注目をまるで熊手か何かで掻き集めるようにて荒め取った。

 

 ……ちょっと待て、なぜそこまで大仰に喧伝する必要がある……!?

 

 

 結局、バカのおかげで私はホームルームの時間までクラスメイトに取り囲まれてしまった。

 前言撤回である。バカのやるお節介は得てして害悪しかうまないらしい。きっとそういう風になっているのだ。

 

 にしても、皆心配してくれるのはいいとして、これでは気の休まる暇がない。途中、教室に入ってきた担任の教師(島原耀子二十八歳独身)や廊下に居た別のクラスの人間まで交えて騒ぎ立てるものだから気丈に振舞って皆を安心させなければならかった。

 

 何で魔女である私がこんなことに苦心しなければならないのだろうか。

 

 それでも昼休みになるころには、だいぶ持ち直していた。なんでもない平穏な時間が過ぎたことで、私の心身は近日の現実離れした怪奇な体験の連続から一時的に乖離され、それなりに癒しを感じていたのだ。

 

「いや~~、ごみん、ごみん。みんなにほっといてあげてって言うつもりだったんだけどさ~。ちょっと不幸な行き違いがね。ねぇ?」

 

 バカが何か言っているので無視する。

 

「ねぇねぇ~、ねぇってばぁ。なんだよ~。無視しなくてもいいじゃんかよ~。ねぇ? 私だって好意でしたことであってさ〜、別に悪気があった訳じゃないのよ? ねぇ、ただちょっと失敗しちゃっただけ、てへっ みたいな? 

 ねぇ? そんな健気な私に対してそんな鞭打つような仕打ちは人としてどうかと思うのよ? ねぇ、だから許そう? ね、許そうよ。許してよ。許す人になろう? 許せる人になろうよ。ねぇ、ね、ね? ね〜〜〜〜!?」

 

「初めての部屋ってなかなか寝付けないもんね。私もそうだったもの」

 

 無視されても喋る。君が気付くまで喋るのをやめない! とでも言わんばかりに私の脇で喋り続けているバカヤロウに救い舟を出してくれた心優しき声の主は私の反対側の席に陣取っている人物であった。

 

 すらりとした長身とその豊かな肢体は椅子に腰掛けていても何ら損なわれることは無く、ともすれば大人びすぎていて人を寄せ付けがたいほどの美貌は優しげな眼差しと今時珍しい長い三つ編みのおかげで年相応の幼さを垣間見せている。

 

 彼女の名は百朶文目(ももえだあやめ)。

 

 得てして普通の人間ばかりが集まっているこの学校にあって、まさしく規格外という文句の相応しい存在。それが彼女である。

 

 所謂完全無欠人間というやつで、他の追随を赦さぬ、この学校、否この界隈切っての才女である。

 

 私があの大バカに紹介するといって餌にしたのは他ならぬ彼女のことだ。

 

 とりあえず、師やその息女のような魔術関係者を除けば、彼女以上の美女というのはわたしの知り合いには居ない。

 

「へぇ~、アヤでもそうなんだねぇ。以外だにゃ~。私なんて何処でも寝れるのに」

 

 マシンガンの如くしゃべり続けていた馬鹿は助成を得たとばかりに立ち上がり、椅子ごと移動して私とあやめの間に割り込み、別の角度から私に戯言を向けてくる。

 

 どうやら既に持参の弁当を平らげたようである。どうやってああもせわしなく喋りながら食べれるのか。

 

「あんまり自慢することじゃねえと思うぞ」

 

「合宿とかでも真っ先に寝るもんね、アキは」

 

 そんなバカの脇から淡々と相槌を打っているのが秋乃と同じ女子バスケ部所属の音芽と鹿取である。

 

 音芽妃菜(おとがひな)。

 

 妙に可愛らしい名前の割に、堂々とした体躯を制服というか、ジャージに包んだ長身の女子バスケ部エースである。

 

 本人のために弁明しておくが彼女の場合、私服で登校したいのだがイメージがあってできないというのが本音らしい。

 

 彼女自身は少女むけの愛らしい服装というのが何よりも好きらしいのだが、しかし自分では着れないので、結局はジャージで登校せざるを得なくなるのだという。

 

 何を隠そう、彼女の身長は180cmを超えており、通称笹ヶ谷のタワー・オブ・バベルとまで呼ばれる絶対的女子バスケ部のエースなのだ。

 

 彼女もまたその恵まれた才ゆえに己の望む道をとざされている一人なのかもしれない。

 

 私との身長差はそれこそ三十センチ程になる。

 

 身の丈の足りていない身分としては頭一つ分以上もある彼女の長身はうらやましい限りなのだが、才人には才人の悩みというものがあるようだ。

 

 性格は非常に穏やかで先輩には可愛がられ後輩には慕われるのだが、いかんせんその中性的な外見から異性との接触がまるでないというのが永劫の悩みらしい。

 

 しかし問題なのは、なぜかその鬱憤を晴らすために私に件の愛らしい服を着せようとしてくるということである。

 

 自分では着れないので人に着せたいらしいのだが、そんなことで着せ替え人形にされるのは正直迷惑である。

 

 私以外にも被害者は多数居るらしく、私は彼女と二人きりにはならないよう注意している。普段は本当におとなしくていい人なのだが……。

 

 逆にこの時期になっても、頑なに毎日別の私服で着飾っているのは鹿取千江(かとりちえ)。

 

 少々アウトローな一面をもっており、規格外のあやめを除けば、あまり優等生のいない代わりに飛びぬけて悪い人間もいないこの学校にあって、密かに「裏番」などと称されることもあるほど凄味のある風貌をしている。

 

 バスケ部のマネージャー件主務で、戦略参謀でもあるらしい。監督のいない女子バスの陰の立役者なのだそうだ。

 

 一部からはヤンキー、もしくは陰の番長などとも呼ばれている。彼女も私と同じように放って置けば教室の隅でおとなしくしている手合いなのだろうが、例によって例の如く先ほどから忙しなく立ったり座ったりを繰り返しているバカヤロウによっていつの間にかこのグループに巻き込まれていたらしい。

 

 そのつてで怪我をして以来やめていたバスケ部にマネージャーとして招かれたのだそうだ。

 

 一見正反対だがなぜかあやめとだけは馬があうらしく、休日など行動を共にすることも多いのだという。

 

 バスケ部には所属していないあやめがこのグループに居るのは彼女との関係ゆえであるらしい。

 実際、彼女は規格外すぎてこのクラスの優等生グループには馴染めないようなのだ。

 

 彼女自身もあやめと変わらぬ長身と真逆のベクトルの美貌、そして長い赤毛をなびかせた美人である。

 

 とまぁ、そのようなメンバーで寄り集まっていた。だいたい、昼休みはこういう状態になる。

 

 一応言っておくが、私としては、これは不本意なことなのだ。

 

 入学当初は何とか独りになろうと努力して見たのだが、いらぬお節介をする馬鹿のおかげで今では無駄なことだなということで諦めもついている。

 

 きっぱりと断ればいいような気もするのだが、自分の優柔不断さが怨めしい。

 優秀な魔術師ならきっとこんなことにはならないのだろう。一般人にお昼に誘われてもおそらくは華麗にスルーしてやり過ごすのだろう。

 

 出来れば早くそうできるように私もなりたいものだが……。

 

「しっかし、クロは料理上手いよねぇ。うちの母ちゃんにも見習って欲しい」

 

 そんな私の苦悩を余所に、馬鹿が私の作った「採れたてアスパラと根菜の揚げ物」をパクつき舌鼓を打っている。

 

 別に私の弁当箱に勝手に手を伸ばしてくるというわけではない。

 

 不本意だが、弁当持参となった入学当初からそのような狼藉が耐えないので、私はこのグループがみんなでつまめるような物を、自分の弁当とは別に持ってきているのだ。

 

 バカの蛮行から昼食を護るために仕方なく始めたことなのだが、最近ではこのメンバーだけではなく他のクラスメイトや噂を聞きつけた別のクラスの人間まで味見をしに来る始末である。

 

 ……本当にどうしてこうなってしまうのか。

 

「ほんとだね、去年の合宿とかすごい助かったよ。ご飯がおいしい、とみんな気合入るしね」

 

「…………」

 

 ヒナも体育会系丸出しの意見と共に、長い腕で箸を伸ばしながら屈託無く笑う。

 悪意が無いだけにこうなると私としてもあまり邪険にはできない。困ったものだ。というか非常に困るのだ。こんな時までこの調子では……。

 

「確かに、去年はとくに助かった。何せ部員だけじゃ手が廻らなくかったからな。イヤ、ホント去年は助かった。去年のように今度の合宿もいければと思うんだけどな。去年のように……」

 

 こっちはこっちで千恵がなにやら邪悪な笑みを浮かべて私にメッセージを送ってくる。確かに去年はさる事情から安易に引き受けてしまったのだが、今年はそんな予定は入っていない。

 

「……今年はちょっといそがしいから」

 

「え、何? オレは去年の話をしてただけだぜ? そうか、今年か~~。今年は考えてなかったぁ。いや、どうしたもんかな、今年は」

 

「………………」

 

どいつもコイツも人の苦悩などお構いなしのようである。

 

「チエ。あんまり無理強いは駄目よ……。それに」

 

 そう言ってあやめが本気で心配そうな視線を向けてきた。大きな瞳だった。控えめでピンと跳ねた形のよい睫毛に彩られて、慮るように私をじっと見つめてくる。

 

「涅ちゃん、大丈夫だったの? 具合悪いのにこんな……」

 

「……自分の弁当のついでだし。仕込みは殆ど昨日のうちにやってあったから」

 

 私は努めて素っ気無く言った。かといって、あまり構われるのも良くないのだった。按配の難しいところだ。

 

「大丈夫だってチエ。クロはわかってくれてるよ。ねぇ? 今年も困ってるあたしたちを見捨てたりはしいって」

 

「んー、だよな~~。いや、心配はしてなかったんだけどな。もー、アレだよなクロは、ツンデレだっけ?」

 

 今度はがっちりと肩を組んだ校内屈指のバカと裏番マネージャーが、相談するふりをしながら横目でこちらを窺ってくる。

 

「……ところで、アヤちゃん。今週末とかってヒマ?」

 

「え?」

 

 私は調子に乗った愚か者どもを無視して、あやめには話しかけた。

 

「ごめんなさい! 怒んないでください! ねぇ、無視しないでぇ。マジで合宿はお願いしますぅ! チエの料理じゃだけじゃ力が入んないよぉ。モチベーションがあがんないんだよぉ!」

 

「勝手なこというじゃねえよコノヤロウ! 自慢じゃねえけど、もともとそういうのは苦手なんだよオレは! なのに一人でこいつらの面倒なんてみてらんねえんだよ。ホントに、マジで助けてくださいお願いしますぅ!」

 

 二人は私の足に亡者よろしくすがり付いてきた。

 

 結局は泣き付いてくるのである。ここで本気で突き放して恨みを買うのもどうかと思うのだが、このまま流されるのも癪にさわる。

 

「……考えとくから、離れて」

 

「嘘だぁ! そう言って助ける気なんてないんだろ? ねぇ、頼むよ? 今うんっていってくれれば楽になれるからぁ! ね、ね、ね~?」

 

 バカが食い下がる。こんなところで、(そしてこんなことで)体力を消耗するのは、是非とも避けたい。さてどうしたものか……。

 

「いや、クロ。無理しなくていいからね。ほんとお願いするようなことじゃないんだし」

 

 ヒナはヒナでこんなことを悪意なく言ってくるのだから始末が悪い。結果的に逃げ場がなくなるじゃないか。

 

「……仕方ない。……ほら、わかったから離して」

 

 ほんとに仕方がないのでそう言うと、亡者どもは立ち上がり、

 

「ハッハーッ! 言質はとったぜ。もう逃げられねぇぞ、クロォ!」

 

「ナイスヒナ! しっかし結局は泣き落としで落ちるってねぇ、クロってばあいかわらず甘いよねぇ、ねぇねぇねぇ~!」

 

「まったくだぜ、お御足スッベスベじゃねえか。いい足してんなーオイ。今からでいいからバスケ部は入っちまえよー!」

 

 ヒーハーッ! と吠えんばかりに勝ち誇るバカどもを一瞥すると、当日なってからスッポカしてやろうかという黒い念が湧き起こってくるのを禁じ得ない。

 

 いい歳してなんでそんなに元気なんだお前ら。

 

 

 はぁ、私はため息をついた。

 

 ……いつものとおり、騒がしい限りだ。

 

 沸き興るバカどもにべちべちとケリを入れつつ、心底そう思う。まあ、何処だって学校というのはこういうものなのだろう。

 

 バカどもの饗宴が一段落したところで皆席に戻った。いい加減にしないと昼休みが終わってしまうところだ。

 

「しかし、とうとうクロもこっちに来たかぁ~。こりゃねぇ、あれですよ? 遊びの予定がぐっとひろがってもんだねぇ、ねぇ?」

 

 私が用意したタッパーを舐めるような勢いで掻き込んで、秋乃はいけない妄想に浸るかのようにあらぬ虚空を見上げ眼を細めた。

 

「前から引っ越すとは言ってたけど、ほんとにやるなんてね」

 

 ヒナも相槌を打つ。

 

「……まあ、とりあえず一月だけしか契約してないし、その後はまた戻るかもしれないしね」

 

「そんなんでいいのかよ? ひとり暮らしっつったらもっといろいろと遊べんだろ?」

 

 チエがまるで呆れたようにそんなことを言う。

 

「……遊ぶって……」

 

「そりゃ、あれだろ。同性を招いて夜遅くまで騒いだりよぉ、もしくは異性を招いて夜遅くまで……」

 

「な、なんてこというの! そんなのだめよ、チエ!」

 

 優等生らしいあやめの言葉に、知恵は邪悪な苦笑を湛えて肩を竦めるばかりだ。……なんであやめはこんな性質の悪そうなヤツとつるんでいるのだろうか?

 

 そして、今度は脇にいた秋乃が妙な笑みを湛えてその優等生の方へにじり寄った。

 

「アヤはうぶいな~、そしてお堅いな~。いいじゃん、ねぇ。そのくらい。普通だって」

 

「で、でも、そんな」

 

「ねェ? それにねぇ? ねぇねェアヤは何が嫌なの? ねェ? クロに男がいてもそんなに怒ることじゃなくない? クロならそんなろくでもないヤツには引っ掛かんないってぇ」

 

「でも――そういう問題でもなくて、その」

 

「それとも。ねェ……それってヤキモチィ?」

 

「!?」

 

 あやめの耳元でぼそぼそといっていたバカの言葉に、あやめは顔を真っ赤にして言葉を失っていた。チエはそんな様はニヤニヤと眺めている。

 

 私はやりとりの意味がよくわからず傍観していた。

 

「でも、クロってそんな相手いたりするの?」 

 

 同じく傍観気味に成り行きを見守っていたヒナが高いところから聞いてきた。座っていてもあまり身長差が変わらないので、私は視線を上げることなく彼女声だけで応えた。

 

「……いや、ぜんぜん」

 

 率直なところを答えたまでである。

 

 というか事実だ。確かに今は馬鹿でかい居候がいるわけだが、あれは男だとか女だとかの前にまず「超兵器」と言う分類があり、しかるべくその後に「バカヤロウ」と分類されるべきなのだ。というか、もはやそうとしかカテゴライズ出来ない自分がいる。

 

 真っ赤になっている優等生を解放した、犯罪者一歩手前といった格好のバカが、ゆらり、とようやく自分の席に納まってから、なおも勝手なことを言ってくる。

 

「わかんないよぉ、わっかんねぇよぉ! クロってこう見えて男に人気あるし、人がいいからさぁ、下手に部屋の中に上げたりするとねぇ。ねぇ? 無害そうに見えた男が姿を消し、いきなりウルフガイが現れて」

 

「……何の話?」

 

 いい加減馬鹿の話が長引くのがあれなので、私は呆れぎみに相槌を打つ。

 

 第一、これほどく苦心している、しかも魔女たる私に対して「人がいい」とは何事か。それに、「こう見えて」とはどういう意味なのか。

 

「え、知らない? ねぇねぇ知らない? ねぇ知らないのぉ? 不死身の狼男が活躍するさぁ、ねェ、ハードボイルド小説」

 

「イヤ、知ってっけど、何年前の話だよ。それ。オレら生まれてねぇじゃん」

下手したら親の代だってまだかもしんねぇ。とチエは続けた。言う割りにコイツも随分詳しいような?

 

「アキはよく知ってるよねそういうの」

 

「昭和だしよぉ。七十年代だよ。何歳なんだよお前」

 

 狼男か、どうでもいいが聞いていると少々怖気の走るのを感じる。

 

 さすがに昨夜実物を見たとは言えない。しかもまだヤツはこの街にいるのである。あれに部屋の中まで攻め入られるというのは、なるほどたまったものじゃないだろう。

 

「それはそうとして、確かにクロあんまり頼まれたらいやって言わないし、あぶなくない? たしかに秋乃と違って人気もあるし」

 

「そうだな、秋乃と違って人気もあるしな」

 

「え、何? ねぇ何? もしかして、ねぇ、私にオチをつけろと言いたいの?」

 

「涅ちゃん、大丈夫? まだ具合悪い?」

 

 昨夜のことを思い出して私は俯いていたのだろう、すかさず、あやめが本気で心配そうに聞いてくる。

 

「……大丈夫。それにそこまでお人よしじゃないし」

 

「でも、その、最近あぶないって言うし……」

 

あやめは心底心配そうな声を上げる。

 

「何のこと?」

 

「あ、わかった。あれでしょ、ねぇ? 例の噂!」

 

 ヒナが聞き返すとあらぬほうからバカが声を上げた。眼を離すとすぐ席を移動しているのだ。小学生男子か。

 

「噂って、人がさらわれるってヤツか? ばかばかしい。家出する奴くらいどこだっているだろうさ。バカな保護者連中が騒いでるだけだろ?」

 

「でも、最近本当に物騒だって話もあるし……」

 

 チエは心底馬鹿らしいとばかりに失笑したが、あやめは表情を曇らせた。

 

 改めて正反対の反応だと思う。にもかかわらず、この二人は普通に仲がいいのだ。まるでタイプが違うというのに。

 

 似ているのは、そう飛び抜けた長身と、……バストカップ位だと言うのに……やはりその辺に通じるものがあると違うのだろうか?

 

 まあ、それはさておき、その噂については、私も聞き知ってはいた。しかしそれは唯の噂だと思っていた。何処にでもあるような、古い噂だ。

 

「じゃあさ、その辺の事の対策会議も含めてさ、ねぇ? 今日はみんなでクロの新居にお邪魔してねぇ、そんでねぇ」

 

「……悪いけど、いろいろと忙しいから。遊んでる暇ない」

 

「そ、そんな! それじゃあ! ねぇ? 私が持て余した暇は、ねぇ? どうしたらいいというの? ねぇ?」

 

「……あんたの暇なんだから、好きなようにしたらいい」

 

「アキ、持て余すも何も、今日もしっかり部活だよ」

 

「サボんなよ」

 

「おおう……」

 

 女子バスの絶対的エースと元締め件マネージャーが「稀代のムードメイカー」とか呼ばれる幻のベンチ要員(シックスメン)女に睨みをきかせている様はなんとなく癒されるものがある。

 

 何処でも馬鹿の扱いには手の掛かるものなのだろう。私も帰ったらあの巨馬鹿をどうやって誘導していくのか考えなければならないな、などと考えていると、

 

「涅ちゃん。なら、私だけでも、今日手伝いに行こうか? その、ひとり暮らしって慣れるまで大変なものだし」

 

「そういや、アヤもひとり暮らしだっけねぇ。ねぇ?」

 

 秋乃がそんなことを言う。そういえばそう聞いていたかもしれない。私も失念していた。案外この優等生のプライベートについては知らないことが多い。いや、知らない方が本来はいいのだが……。

 

「うん。その、わたしも最初はいろいろと大変だったし……」

 

 たまに、この優等生は物事を深刻に考えすぎるきらいがあるのではないかと思う。果てはただのクラスメイト相手にこんな献身的なことまで言い出す始末である。

 

「……いや、そこまでしてもわらなくても」

 

「そ、そうだよね……。ごめんなさい。……ホントに、ごめんなさい、私調子に乗って……」

 

 私がそう言うと今度はひどく落ち込んでしまった。どうにも私にばかり反応が過剰すぎはしないだろうか?

 

「……いや、そんな謝んなくても」

 

「だめだなぁ。ねぇクロ? あんたはアヤの気持ちをわかってないよ。わかんない? ねぇ? どうしてアヤがそんなことを言うのか。他の人には言わないよ? ね? つまりアヤはさぁ、アンタだからさぁ、ねぇ? ――」

 

「……は?」

 

「な、ななななに言い出すのアキちゃん!? へ、変なこといわないでぇぇぇッ!」

 

「――――――んねぶッッ!?!!」

 

 制止を振り切り何事かをのたまおうとしたバカの口を、凄まじい勢いで真っ赤になったあやめの手が鷲掴みにして塞いだ。すさまじい反応速度である。

 

 ちなみに彼女は美貌学力だけでなく運動能力のほうでも規格外らしく、彼女が本気で立ち回れば常人ではまず太刀打ちできないのだそうだ。

 

「……えーと?」

 

 とりあえず、このバカの自業自得は言うまでもないことなのだと察せられたが、やりとりの意味がよくわからなかったので、私は他の二人に水を向けてみた。

 

「今のはアキが悪いな」

 

「うん、今のはアキが悪い」

 

「……それはなんとなく解るけど……?」

 

「いや、解ってない」

 

「解ってないね」

 

「……?」

 

 言われても私はクビを捻るばかりである。なにやら判然としないこともあるが、とにかくこんな光景も何時ものことだった。

 

 とりあえず、ではあるが私を取り巻く日常はこの街の陰翳に影を落とす禍々しい側面とは乖離したものだと思えた。

 

 この日中の光に照らされた穏やかな日常はというものはあくまでいつもどおりに過ぎているように見えた。

 

 少なくとも、この時にはまだ、そう思えていたのだ。

 

 

 




 
キャラクタープロフィール

くろむのクラスメイト他
 
名前:那須秋乃(なす あきの)
一人称:あたし
性別:女
身長:168㎝
体重:58㎏
好きな物:お餅・正月・お祭り。他、楽しいことなら何でも。
趣味:特にないが、何かにのめりこむと後のことを考えず(周囲を巻き込んで)行動し始める。
悩み:最近、知らない人にまで「バカヤロウ」だと認識されていること。
備考:くろむのクラスメイトその一。
 くろむとは腐れ縁で、面倒見の良さから孤立しがちなくろむの世話を焼き続けてきたお調子者。他校にも知れ渡るレベルの「バカヤロウ」であり、生粋のムードメーカー。
 五人兄弟の真ん中らしく、面倒見が非常に良い。こいつが一人いるとクラスからいじめがなくなるらしい。
 バスケ部所属でポジションは『ワンポイントシューター』。基本的に補欠であり、さして見るところのない選手だが、ある一点において目覚ましい活躍を見せる。
 それは『どんな相手、どんな劣勢からでも必ず一度は「流れ」を持ってきてくれる』という特性であり、隠れた秘密兵器として一部で有名。
 ちなみに流れを持ってきたら電池切れで潔く去っていくそうな。
 

名前:香取千江(かとり ちえ)
一人称:オレ/あたし
性別:女
身長:173㎝
体重:55㎏
好きな物:何かしらの計画を練ること・アナログゲーム(勝ち負けには拘らないらい)。
趣味:買い物・家族への嫌がらせ
悩み:最近、一人の時間を持てなくなってきたこと。しかしそれがさほど苦ではないこと。
備考:くろむのクラスメイトの一人。Fカップ。バスケ部所属で、現在はマネージャー(以前は元パワーフォアード)
 実家は相当な資産家らしく、本人いわく所の成金。そのせいか、以前牢獄も同然のソルヴィエール女学院に入れられそうになったこともあるとか。
 家族とは軋轢があり、根本的に合わないらしく以前は相当荒れた生活をしていたらしい。今も一部からは素行のよろしくない生徒と蔑視されることもあるようである。
 バスケ部以外では「超」優等生の百朶あやめと親交が深い稀有な人材として、各方面から一目置かれている。
 本来は孤独を好む一匹狼のような性質だが、バカヤロウに巻き込まれて以来団体行動にも慣れつつある。


名前:音芽妃菜(おとが ひな)
一人称:私
性別:女
身長:181㎝
体重:60㎏
好きな物:バスケ・ゴスロリ衣装、とそれが似合いそうな少女
趣味:裁縫・服作り。と、それを人に着せる妄想。
悩み:着たい服が着れないこと・同性にモテまくること。
備考:くろむのクラスメイト。バスケ部所属。ポジションはセンター。チームの主軸たる絶対的エースであり、その実力は他校、どころか全国に聞こえているほど。
 一方で性格は控えめで、非常に「紳士的」であるため、同性(おもに後輩)にすさまじい人気を誇る。
 しかし本人は裁縫が得意で被服科に進みたいと考えているような普通の女子である。
 自分が着れないようなヒラヒラのゴスロリ衣装を作っては誰かに着せる妄想ばかりしている。
 その点、くろむは理想的な相手らしく、日々拝み倒しては着せ替え人形にするのを楽しみにしている。
 弟がいるらしい。
 

名前:百朶文目(ももえだ あやめ)
一人称:私
性別:■
身長:172㎝
体重:■■㎏
好きな物:■■■
趣味:フリーランニング
悩み:■■■■■■■■■。
魔術属性・特性:?
備考:
 くろむのクラスメイト。Fカップ。
 文句なしの絶世の美女にして、あらゆる面で人間の臨界と思われる能力を、「生まれつき」備えている『超人』。
 幼いころに両親を失い、教会の施設に引き取られ、『ソルヴィエール女学院』で中学卒業まで過ごしてきた過去を持つ。現在は特待生として市街地に一人暮らしをしており、高校も自分で選んだようである。経緯は不明。
 誰にでも分け隔てなく接するが、近しい友人はほとんどおらず、プライベートを知る人間はほぼいないといっていい。
 くろむに対しては特別な感情を持っているようだが……
 

  
名前:島原耀子(しまばら ようこ)
一人称:わたし/わたくし
性別:女
身長:166㎝
体重:54㎏
好きな物:小さな家
趣味:創作和菓子作り。
悩み:現在は特になし。
魔術属性・特性:不明
備考:
 くろむのクラス担任で、あやめが所属する郷土歴史文化研究会の顧問を務める。
 どこか浮世離れしたお嬢様然とした立ち振る舞いの美人だが、良くも悪くもあまり目立たない。
 魔導の大家「シマバラ」の直系であるが、魔術的素養をほとんど持たず、そのためか、今まで魔術の存在そのものを知らされずに生きてきたとされる。
 派手なところはないが、卒業生にも相談を受けるなど、生徒には広く慕われている。
  


 くろむの学校で交友のある人たちを中心に紹介してみました。
 しかし、バスケ部だけあってみんなデカイ。
 こんな連中に囲まれて街とか歩くくろむ(151㎝)はさぞや肩身の狭い思いをしていることであろう。
 とはいえ、くろむ自身も忙しいため放課後まで一緒に遊ぶとかはあまりない模様。
 

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