Fate/alter Seven Sight ――the First Sight――   作:どっこちゃん

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三章ー1

(月曜日・夜)

 

「ええい、何も見つからんではないか!」

 

 そりゃそうだ。と、私は足元に群を成している猫を撫でながら思った。

 

 ようやく方針の足並みが揃ったかに見えた私達は、勢い勇んで再びこの夜の街にもどってきた。

 

 わけなのだが――無論のこと、適当に散策したところですぐに敵を見つけられるはずもなく、そのうちに時刻は夜の深奥を過ぎ去り、目下持て余した威勢の発露を見失ったライダーの機嫌は急激に下降しつつあった。

 つまるところ、先程からぶつくさとうるさくてしかたがないのだ。

 

「フン。だぁいたい、おぬしは先刻からなぁにをしとるのだ! あちこちで野良猫と戯れてばかりではないか。そんなことでは何も解からんだろうがっ!」

 

 無論、誰もただ適当に歩き回って敵が見つかるとは思っていない。

 

 私は最初からそのための用意をしていたのだ。しかしそれをライダーに説明しても、どの道いらぬことまで根掘り葉掘りと他愛無い詰問攻めにあうだけなので、私は何も言わずに適当に相槌だけをかえしていたのである。

 

 しかしどの道うるさいことには変わりないらしい。

 

 やる気がないというもの問題だとは思うが、しかしいざやる気が出たら出たでいい加減、面倒くさいヤツだ。

 

 こんなに扱いにくいサーヴァントというのも珍しいのではないだろうか。それとも、サーヴァントというのは皆こんなに扱いにくいのだろうか?

 

「……これでいいの。準備はちゃんと進んでる」

 

「フン? では、何か策があるのか」

 

「……でも、一度使うとまた一から準備しなくちゃならなくなるんだけど……」

 

「かまわん、かまわん。貴重な時間を無碍にすることこそ罪というものだ」

 

 やおら渋面を一転させたライダーは、嬉々として急かしてくる。

 

 どうやら早く戦いたいというよりは、暇な探索が面倒で仕方なかったらしい。本当に諜報には向かないサーヴァントである。

 

 私が立ち上がると、それが合図のように猫たちは闇の中に散っていった。これでちょうど総ての下準備が済んだことになる。

 

「……貴重な時間、ね」

 

 確かにこのまま無駄に散策していても事態は好転しないということは解かりきっている。ならばやはり、ここが使い時か。

 

 私は腰の皮ベルトについている五つのフィルムケース大の容器を開けて、指でそのペースト状の内容物を掬い取った。

 

「なんだ? 化粧でも始めるのか」

 

「……「魔女の軟膏」って知ってる?」

 

 言いながら、五色のうち赤と青のペーストを取って練り合わせ、それをアイシャドウのように目蓋に塗りこんだ。

 

 次いで今度は赤と黒の軟膏を練り合わせた物を唇に塗った。

 

 確かにそれだけを見たなら簡易な化粧とも見えただろう。それを興味深げに見ていたライダーが、先ほどとはうって変わって感嘆の声を上げた。

 

「ほほう。そうしてみると、フフン。なかなかどうして妖艶ではないか。女とは化粧ひとつで化けるものだ……うむ?」

 

「…………一応、……離れ、といた、ほうが……いい」

 

 軽い陶酔感を感じながら、私は星一つない天を仰ぐ、視界はすでに混濁し始めている。

 

 さらに私の手は多めにとった赤と白の混合物を鎖骨から臍の辺りにまでべったりと塗りつけていく。私の礼装が肌を露にしているのはこの魔術様式のためなのだ。

 そのころになると、すでに私の意識は全身の感覚から徐々に手を話し始める。もはやライダーが何を言っているのかも判らない。

 

 耳だけではない。地についたはずの足裏の感覚すら曖昧だ。

 

 夜気の臭いや湿った空気の味すらも、今の私には無縁のものとなっていく。あらゆる感覚だけが肉体を残して浮遊し、虚空に紛れた私の五感は完全に三次元の頚木から切り離される。

 

 そう、これは人為的に操作された無我の偽装だ。

 

 この軟膏は唯の色付きのペーストの類ではない。これは私自身が魔術的工程を経て調合したものなのである。

 

 その成分は非常に揮発性が高く、肌の上に塗ると体温によってすぐに気化して私の鼻腔や口腔に注がれ、私の意識を別の次元へと連れ去って行くのだ。

 

 もっとも、卓越した魔術師ならこういう手順は要らないらしい。私のように素養の薄い見習いにはどうしてもこのような煩雑な手間が必要になってくるのだ。

 

 これを触媒として体の諸所に塗ることで、私は魔術発動のスターターとして使用しているというわけだ。

 

 手間に加えて出費も馬鹿にならないものがあるが、しかし効果はある。そして、効果と共に無論のこと危険も伴うものでもある。魔術とは常に己命は秤にかけながら行うべきものなのだ。

 

 

「……Bastet mau bastet(我 は 求め 訴え たり).…… Self is thou king(我 は 汝ら の 王 ).Thou are the kings of self(汝 ら は 我 の 王). My viewpoint is thou viewpoint(我が 視点 は 汝ら の 視点 なり). See on a tree (樹 上 に 見よ).See from planar void(虚空 の 狭間に 見よ).See from clinging darkness(縋り つく 深闇に 見よ)The herd daze of jade color(翡翠 色の 凝視 の 群れ よ).It should begin of yhe (光点 の 雨 と なりて)Luminescent rain and wink at Strands of night(いざ この 夜 の 断片 に 瞬かん).……Bastet mau bastet(我 は 求め 訴え たり).……」

 

 

 スペルを唱えると、私の体内にある霊的サーキットが励起するのが感じられた。

 

 すぐに漆黒に閉じられていた私の視界には、暗闇の雲が晴れるかのように無数の星を内包し始める。

 

 この街中に点在する無数の目が、今私の意識と接続され現時刻の街の様子を映し出していく。

 

 この街の薄闇に堆積する闇を見通す裏路地の散歩者たちが、くまなくこの夜の内腑の底を暴きだしていく。私の視界はまるで光の如き速度で街の要点を探っていく。

 私自身には目しようもないことだが、このときの私はまるで夢遊病患者のように、ふらふらと歩き回っていたことだろう。何かを探すように、あるいは使い魔になりきったつもりで四つん這いになっていたかもしれない。

 

 まるで満天の月の如く街中を俯瞰した私の視界は遂に、ある種の霊体の存在を知覚した。ゆっくりと移動していく強力な、そこいらの亡霊などとは一線を画す強壮な霊格の気配。

 

 だがその気配は英霊と目するにはあまりに粗暴で澱んでいた。

 

 故に判じるのは容易かった。あれは昨夜対峙した敵。バーサーカーに相違ない。私の視界はさらにピントをずらしてその周囲の景色を確認する。見覚えがある、確か郊外の古い住宅街の辺りだ。

 

 今から追えば捉えるまでそう時間は掛からないだろう。

 

 そしてさらにピントを絞り、その粗暴な霊を引き連れるようにして歩く女の姿を捉えた。栗色の髪を無造作に束ねた。精悍な感のある女性だった。

 

 年のころは二十台後半から三十台前後。全身を黒一色でそろえた長身と、凄味のある目つきがこの女性が唯の一般人でないことをと、その尋常でない心境を物語っていた。

 

 これがバーサーカーのマスターか。おそらく、今から何かしらの事を構えるつもりのようだった。

 

 兎角、それで充分だと判断した私は意識をその場から回収した。収穫はあった。

 

 私はゆっくりと目を開いた。目の前には不本意ながら見知った(いか)めしい顔があって、私は無事に戻ってこられたことを確認した。どうやら地べたに座り込んでライダーに背中を支えられているらしい。

 

「気が付いたか。フン。一体なにを始めたというのだ」

 

 呆れ顔で言ってくるライダーに私は開口一番告げた。

 

「……見つけた」

 

「なに?」

 

「……冷たっ」

 

 私は下臀部に感じた冷気から逃れるようにして、ふらつく足で立ち上がった。

 

 こんな格好では冷えるのも当たり前かとも思ったが、気が付けばパラパラと細い雨が降り始めていた。指で帽子に合図すると、大きかった鍔がさらに大きく広がり、傘のように雨を遮った。

 

 あまり歓迎したくない雨だ。

 

 穏行の助けにはなるかも知れないが、私の場合格好が格好だ。あらかじめ全身に擦り込んでいた霊薬や香油のおかげで凍えることはないが、降り注ぐ雨はそれでも気付かぬうちに小柄な私の体から体力を奪ってしまうだろう。

 

 時間をかけ過ぎればよくない事にもなりかねない。

 

「見つけたとは、敵のことか? 一体なにをしとったのだ」

 

「……街中の猫の視界を一時的に借りたの。一度にそれを統合して街中を見渡せるネットワークを作った。それでたったいま、霊体化したままで歩いていたサーヴァントを一体発見した」

 

「猫? さっきまで遊んどったのもそうなのか? はて、しかし使い魔の類とは見えなんだが……」

 

「……あれは一時的に契約してただけのただの猫。パートタイムみたいなもの。私はこの街中の殆どの猫たちと契約してるの。有事の時だけ力を借りれるようにね」

 

「それでこの広い市街をくまなく見通したというのか? 一体全体、何匹の猫を使ったのだ」

 

 私は暫し考え込み、応えた。

 

「……多分、二百、……三百? いや、もっとかな? 四百くらい? ……正確な数は数えたことないけど」 

 

「それらと一々契約して回ったというのか、一匹ずつ? それではさすがに割りに合わんのではないのか?」

 

「……別に問題もないけど? 私は用がなくても知らない猫がいたら会いに行くし……」

 

 なぜか、このときばかりは奇妙なものを見るような目でライダーが私を見てきた。私がおかしいとでも言いたげだ。

 

 だが何もおかしいことはない。ちょっと猫好きな魔女なら街中の猫と知り合いになっていてもそれほど不可思議なことではないだろう。

 

「まぁ、その、なんだ。……フン、それでよくサーヴァントが見つかったものだな」

 

「……問題ない。猫の瞳は、人間のそれよりも霊を見通す能力が高いから」

 

 古来より、猫の目というものは多かれ少なかれ人の視界には映らない霊的存在を捉える力を持っている。

 その力は並みの魔術師よりもよっぽど上等で、中世の古より魔女や魔術師がこぞって猫を己の使い魔として徴用してきたことからもそれは明らかであろう。

 

「フン。――して、見つけたサーヴァントとはどんな奴だ」

 

「……たぶん、昨日のバーサーカーだと思う。マスターも一緒だった」

 

 それを聞くと、ライダーは飛び上がらんばかりに狂喜の声を張り上げた。

 

「そいつは重畳! フフン。昨日の今日で取り逃がした怨敵を見つけるとは何たる僥倖か!」

 

 さっそく捕えて打ち殺そう。などと物騒な物腰で意気込むライダーだったが、しかし私は簡単には賛同しかねた。いきなり間近で炸裂した大音量に聾しかけた耳を押さえながら待ったをかけた。

 

「なんだ。ここまでやって、よもや見送るなどとは言うまいな」

 

「……そうは言わない。言わないけど、気になることもあるの」

 

 そう、懸念があるのだ。

 

 バーサーカーとそのマスターはどこかへ向かっていたのだろうか。それも総身に鬼気を纏って、である。その行く先に何かがあるのは明確だ。

さて、その渦中に飛び込んでしまっていいものか。

 

 出来ることなら、もう少し動向を見守りたいところだ。……うまくいけば漁夫の利を拾うこともできるかもしれないのだし。

 

 しかしそうして思案していた私を、ライダーは有無を言わさず摘み上げてしまった。

 

「……ちょっ、ライ……」

 

「敵を見つけたならさっさと言えばよかろう。後はオレ様に任せておけぃ。フン。それで万事旨くいくというものだ!」

 

 とは言うもののこいつの場合、また何の根拠も無いに違いない。

 

「さぁ、来たれッ、我が愛馬よ!」

 

 ライダーが再び手にとった画戟を振りかざすと、その月牙の照り返す光が極まり閃いて近くに止めてあった違法駐車車両が内側からめくり返されるように粉砕された。

 

 しぶき始めた雨を次々と宙空で気化させながら、灼熱の蒸気を紅の天衣の如く身に纏う巨獣が現に躍り出て来る。

 

「お前もまだまだ血が冷めやらんだろうからなぁ! フン。待っておれ、もうしばしの辛抱だぞぉ、相棒!!」

 

 がははと大笑するライダーに呼応するように嘶いて、もはや馬というよりは、恐竜か何かなのではないかとさえ思えるほどの巨獣は、巨岩のような馬体を揺らして意気込みを伝えてくる。

 

 ライダーと居並ぶ、身震いするだけでアスファルトを粉砕してしまうその威容はこの上なく頼もしくも見える。

 

 確かに、敵陣を看破しながらあれこれと策を弄して攻め入るのを躊躇している自分が、馬鹿らしくなってくるほどだ。

 

 しかし、それを安易に吉兆とだけ判ずることは私には出来なかった。そうして居並ぶ無双の威容は見ようによっては鬼に金棒というよりもむしろ狂人に核ミサイルといった諸刃の危うさを孕んでいるのだった。

 

 それは言い換えれば、これほど強大な両雄を己に御しきることが出来るのか、という私自身の危惧の裏返しであるともいえる。

 

 このサーヴァントの力は強大だ。むしろ強大に過ぎるといえる。その力の矛先は不安定で、いつ私のほうを向いても可笑しくない。

 

 このサーヴァントの手綱をいかに御するか。やはり、それは私がこの聖杯戦争において居並ぶ敵サーヴァントを打破すること以上に専心しなければならない難関なのかもしれない。

 

 ――、一方、当のライダーはそんな私の危惧も何処吹く風で、まるで自重を感じさせないような足取りで揚々と愛馬の背に跨り、私を自分の腹の前に乗せた。

というよりも置いたというほうがよいだろうか。私は文字通り借りてきた猫のように成すがままにされるしかなかった。

 

 こうなってはもはや私がなにを言っても止まらないだろうということだけは確かなので、私は振り落とされないように身体を丸めているしかなかったのだ。

 

 とはいえ、ただ一言これだけはいっておかなければならないことがあった。いくら違法駐車してあったとはいえ、伝説の英馬の現出に際して無残にも粉砕されてしまった高級外車を鑑み、是非とも聞いておかねばならないことである。

 

「……この仔は何か壊さないと出てこれないの?」

 

 もしもそうなら、今度からはなるべく被害の少ない物を指定してやる必要が出てくるだろう。

 

 

 ほどなくして、私達は人家も疎らな西南部郊外の平野に虚ろな隻影を捉えた。

 

 ここから西側には起伏の少ない平地が広がっており、広い田園風景が沈殿した夜の滓に包まれている。街の東側を取り囲むような連峰のシルエットも、ここからでは深夜になっても落ちることの無い街心部の光彩の帳の向こうに霞んで見えるだけだ。

 

 やはり、その影は見初めていたバーサーカーだった。しかし、何故か先ほど一緒に居たはずのマスターの姿はない。

 単騎のバーサーカーは実体化しており、その体の各所はすでに歪に捩れ始め、背中や肩には長い獣の毛皮が覆い始めている。昨夜と同じように獣人化現象(ゾアントロピー)が生じているのだ。

 

 面貌からはすでに人間らしい表情が抜け落ちており、後は事前に下された命令だけをただひたすら繰り返すだけの存在となるのだろう。

 

 それを目にした私の剥き出しの背筋には、言い様のない悪寒が湧き起こった。それが勢いを増し始めた雨のせいばかりだとは到底思えない。

 

 今宵改めて目にするあのバーサーカーの異形は、私の心胆を縮ませるには充分すぎるほどに醜悪であった。同時にやはりあのバーサーカーの危険性が、しかと感じられたのだ。

 

 だからこそ今、安易に接触を試みるのは憚られた。

 

 昨夜のことを鑑みる限り、幾らライダーが強かろうともあの獣相手に傷を負わない保障もない。トーナメントならそれでもいいのだろうがこの闘争はバトルロイヤルの形式をとっているのだ。

 

 よしんば速やかにバーサーカーを下したのだとしても、そこをほかのサーヴァントに突かれたのではよくない展開になる。

 

 そして、私達には気付いていないはずのバーサーカーが臨戦態勢でいるというなら、それはおそらくこの先にバーサーカーをわざわざ向かわせる必要のある敵がいるということなのだ。

 

 それは即ち、(くだん)の三竦みを成立しうる第三のサーヴァントの存在を意味する!

 

 バーサーカーが不意に立ち止まった。と見る間に、二本足の獣は凄まじい跳躍を見せ、その場から一跳びで目の前にあった高い塀を越えてしまった。私達も急いでその塀を目指した。

 

「フン。よし、追うぞ」

 

 騎馬を駆ったままそれを飛び越えようとするライダーを、しかし、私はとどめた。

 

「……待って、このままじゃ目立ちすぎる」

 

「なぁんだ? まぁたコソコソするのか。もういいではないか、ここまできたら素直に正面から」

 

「…………だめ」

 

「わかった、わぁかった。そう睨むな」

 

 ライダーはねめつける私から顔を逸らせて地に降りると、ぼやきながら愛馬を時空の彼方へ送り返した。

 

 張り切って(許可もなく)召喚したのだから渋るのもわからないでもないのだが、そうもいっていられないのだ。

 

 じっさい彼の英馬の守りは、攻めに特化したライダーのそれに見合うかのように凄まじく、幾重にも重ねられた城壁のそれすら凌駕する。

 

 それゆえに頼もしくもあるのだが、いかんせん、ただ移動のためだけに使用するには燃費が悪すぎるのだ。正味な話、その魔力消費の増大は私には荷が勝ちすぎる。用のないときにむやみやたらと呼び出されてはたまらない。

 

 私は透視してこの塀の向こうがなんなのかを調べた。

 

 どうやら、ここは廃工場跡のような場所らしい。かなりの広さがある。

 

 確かに、ここなら人目を気にすることはないだろう。そういう意味では魔術師の要害としても悪くない。最も、居心地がいいかは別だろうが。

 

 しかしかなり厳重に封鎖されている。やはり押し破るのは得策ではない。私は腰のベルトに据えつけられていた容器からまた軟膏を手にとった。多めにとった黒の軟膏で塀のすぐ下の地面に魔術陣を描いていく。

 

 普通、ウィッチクラフトでこのような陣を画く場合は、生贄の生き血や男性の精液、もしくは魔具や魔獣を燃やした灰などを使用する。

 

 錬金術師なら水銀を使うこともあるだろうし、それぞれの魔術師特有の物品を使うこともあるだろう。ちなみに私の師はこういうとき自分で精製した「魔塵」なるものを使用する。

 

 そして私の場合は、この魔女の軟膏がそれに当たるわけだ。

 

 手早く魔方陣を描いていく。肌の上に塗っているわけではないのですぐに気化するというわけでもないが、揮発性が高いことには違いない。こういうときは速度が重要だ。

 

「なにをする気だ? それで中に入れるのか」

 

「……まあね。ここから敷地内に向けて五十メートルくらいの塹壕を作ってその中を進むの。認識を阻害するから簡単な探知くらいならすり抜けられる」

 

「――まさか、このオレ様に穴掘りをしろなどとは言うまいな」

 

「……物理的にじゃなく、空間そのものに隙間を作るような感じでやるの。壁抜けの要領でね」

 

 つまり幽鬼のように実物の壁を透過してすり抜けるという、まぁ初等レベルの魔術の応用というわけである。無論痕跡など残す筈もない。

 

 だいたい本当に穴なんて掘り始めたら目立って仕方が無いし、時間もかかりすぎる。……もっとも、この男がその気なれば地下トンネルの五十や五百メートルくらいすぐに掘り返せそうな気もするが。

 

「フン。なんだ、まどろっこしい。やはり、あのバーサーカー(犬っころ)のように飛び越えて行けばいい話ではないのか」

 

「……中でなにをやってるにしろ、出来ればしばらくは様子を観察したいの。そのためにはこっちの正体を隠蔽しなくちゃならない。私は消えることは出来ないし、あなただって霊体化しても存在そのものが消えるわけじゃないでしょ。

 この穴の中にいれば、気配を察知されることもないはず」

 

 再三愚図るライダーに説明しながら、私は黒の図形の上にさらに赤、青、緑の軟膏のラインを書き足し、複雑な図形を形作っていく。

 

 魔術師としての位階が高ければこういう複雑な術式も要らないのだろうが、自力の足らない私はどうしてもこういう作業が煩雑にならざるをえない。

 

 ライダーは辟易したように声を漏らしてそっぽを向いてしまった。わからないでもないが、諜報とは元来そういうものだ。毎回毎回真正面から喧嘩を売っていたのではこちらの身が持たない。

 

「ちょっとぉ、だぁめよ。あなぁたッ」 

 

 図形に最後の白のラインを書き足そうとしたところで、唐突な声に捕まえられて私は全身で飛び上がりそうになった。

 

 フガフガと息の漏れるような口で声をかけてきたのは、犬を連れた老婆だった。

 

 こんな時間に、それもこんな雨の中を出歩いていることにも驚いたが、この距離まで気付かなかったということにもまた肝を抜かれる思いだった。見るとライダーも呆気にとられたような顔をしている。

 

「……あ、の……」

 

 本来なら見られた以上すぐに拘束するなり何なりしなければならないのだが、咄嗟のことすぎて機を逃した。思わず閉口していると、腰の曲がった老婆は続けて、

 

「だぁめよぉ。落書きしちゃあ。最近、この辺りに落書きしてるの、あなたたちなのぉ?」

 

「……ち、違います。その、これはそういう落書きとは違って、すぐ消えますから」

 

「それにだめよぉ。女の子がこんな時間まで出歩いてちゃあ」

 

 この老婆は目が悪いのかなんなのか、私の格好については何の言及もなかった。

 

 本来なら真っ先に追及されるところなのだろうが、雨とその翳が落とす暗闇のせいでこちらの姿も良く見えないらしい。

 

 正直言って助かった。相手がこの老婆でなければまず通報されるか妙なちょっかいを出されるに決まっている。

 

「……すみません。すぐに帰ります。……お婆さんはどうしてここに?」

 

 私は応えてから水を向けた。とにかくあまり騒がれるのは良くない。すると老婆はおっとりとした声で話し始めた。

 

「それがねぇ。この子がねぇ、どうしてもお散歩にっていうのよぉ、いつも来てたんだけど、最近腰が痛くてねぇ、なかなか来てあげられなかったから、ちょっとだけって思ってでてきたのよぉ。

 私の家はねぇ、すぐ近くなのぉ。でもねぇ、いつもお散歩してておもってたのよぉ。せっかく静かできれいなところなのに、あちこちの壁に落書きがあってねぇ、ひどいことをする人がいるんだなっておもってたのよぉ」

 

「…………わかりました。ちゃんと全部消しておきますから」

 

「ほんとぉ? ありがとうねぇ。あなた良い子だわぁ」

 

「……ありがとうございます」

 

「さあさ、ピンキーちゃん。そろそろ帰りましょうねぇ。足も冷たいものねぇ。それじゃあねぇ」

 

 そう言うと、老婆はそろいの雨合羽を身につけた小型犬を連れて、また音も無く去っていった。

 

「…………」

 

「……フン」

 

「……あとで壁の塗り直しに……来なきゃならないの……かな……」

 

「阿呆。あんな口約束、馬鹿正直に守るつもりか」

 

「……やるって言って、やらなかったら気分が悪いでしょ。……まぁ、手伝えとは言わないけど。……にしてもライダー、何で人が来たのに気が付かないの」

 

「フン。俺も少々肝を潰しておるところだわ。殺気がないのは当然としても、あのババアめ、気配すらなかったぞ。死に掛けだからなのかなんなのか……」

 

「……ババアとか言わないの」

 

 ライダーは珍しく深刻そうな顔で考え込んでいるようだったが、何のことはない。こいつは本気で喧嘩以外がからっきしのサーヴァントだということなのだろう。

 

 殺気、敵意、害意の無い相手は察知できないらしい。なんというか、偏っているというのか、ある意味ではこれも戦闘代行者たるサーヴァントとして正しいというべきなのか……。

 

「それは兎も角として、ほれ、急がんといかんのだろう」

 

「……やり直したほうがいいかも」

 

 時間が経ちすぎて、せっかく描いた図形がほころび始めていた。慎重さに万全をきたすなら、最初からやりなおすべきだ。

 

 しかし――そうも言っていられなかった。私が改めて黒の軟膏を取り出そうとしたとき、中からは痛烈な破砕音が響き渡ってきたのだ。

始まっている!

 

(いとま)はない。行くぞ!」

 

 私は反駁しなかった。

 

 こうなっては仕方がない。このまま、いつまでもまごついていてはここに来た意味がなくなる。私は半ば強引に敷地内への簡易塹壕をこじ開け、霊体化したライダーと共に中に突入し、先ほど聞こえた音の方位を頼りに一路進んだ。

 

 そして塹壕の突き当りまで進み、罠の類が無いことを確認して外に這い出した。まず目に付いたのは大きな倉庫のような建物だった。厳重に封鎖されているそれを通りすぎると、その裏には闘技場のような開けた場所があった。

 

 雑多な砂利が敷き詰められていて、おそらくは運送用の大型車両が出入りするための駐車スペースか何かなのだろう。

 

 私達の近くに、ちょうど身を隠すのに都合のいい大型の廃トラックが放置されていた。その巨体が作り出す陰翳にまぎれながら、私達は広間のほぼ中央で向かい合う二つの影に注視できる位置に移動した。

 

 予感は的中した。バーサーカーはサーヴァント戦を行うためにこの場を目指していたのだ。

 

 すでに人獣と化し、その醜く捻じ曲がった凶爪を振り乱すバーサーカーに対峙するのは、ひとりの青年だった。

 

 この位置からでも分かるほど壮麗で背の高い、いっそ女のような顔と見える美青年だった。

 

 頭頂から流れ落ちるような長い髪が鳩尾の辺りまで伸びている。その金の髪の端末と、まるで溶け合うかのような白を基調とした装束は雨の帳の向こうでさえ、その明るい光沢とゆったりした柔らかな質感をうかがわせた。

 

 青年は、しかし隠しようもなく老獪な視線を湛えていた。先ほどより勢いを増した暗夜の飛沫雨の向こうに、私は確かに老成した精神の鋭さを見たのだ。

つまりはピンと来た、といえる。

 

 実際そこにいるのは一見年若き青年と見えても、その実はすでに一度人生を極めた老獪な魂なのだということが直感的にわかったのだ。

つまり、あれは間違いなくサーヴァントなのだと言うことが、一見しただけで確信できたのだ。

 

 そも、考えてもみればサーヴァントとは並べてそういう存在なのだ。

 

 若々しく、雄々しい全盛期の肉体を持ちながら、しかし老成し、哲学の極地に至った、あるいは完成した精神の輝きを兼ね備えるという、元来は在りうべからざる存在としてこの世に現界して然るべきなのである。

 

 それこそが英霊の物質化という、魔導においてさえ奇跡と称される「聖杯」の御業。その証明なのだ。

 

 私は魔道に携わるものの端くれとして、振るいたくなるような高揚感を感じていた。今自分が目にしているのは現に示された奇蹟の具現なのだ。……しかし、

 

「――なんだ男か、紛らわしい格好をしおって詰らん。……フン。そうだな、一度英霊の座に至った女というのも見てみたいものだ。なにせ伝説に名を刻むほどの女どもだ。さぞかし見目うるわしかろうなぁ。

 ……おっと、いかんいかん。今からそのような漫ろな気を起こしては、麗しの君に申し訳が立たんな。主よ、今のは内密に頼むぞ」

 

 ……ならば私の隣にいるこいつはいったいなんなのだろうか? もしかして、私はものすごくクジ運が悪いのではないだろうか。

 

 なんだかとても哀しいような気分になってくる。

 

 しかし――状況はそんな感慨にふける暇を与えてはくれなかった。

 

 隣の馬鹿はさて置くとして、私は目の前の闘争に注視した。にらみ合っていた両雄に動きがあったのだ。

 

 兎角、なんにしてもここは静観するのが正しいだろう。わざわざ戦闘を始めたサーヴァントの間に割り込む意味はない。

 

 あの老婆に呼び止められたのはむしろよかったのかもしれない。そうでなければ案外、というか結構な確率でライダーがバーサーカーの背中に襲いかかっていたかもしれないからだ。

 

 それも既に戦闘が始まっているとなれば話は別だ。

 

 いま割り込めばあの両サーヴァントたちは協力してライダーを排除しに来るかもしれない。それを理解しているのかいないのかは定かでもないが、とりあえずはライダーもおとなしくしている。

 

 おかげで、私はじっくりと目の前で行われているサーヴァントたちの激突を観察することが出来た。

 

 やおら突進したバーサーカーが、まるで死神の大鎌のような爪の束を青年に叩きつけようとして振りかぶった。

 

 だがそれが届くより先に、踏み込んだ足許の地表が崩れ、そこから無数に煌めく白銀の刃が飛び出してきた。

 

 すでに人ならざる獣と化していたバーサーカーは全身のバネに力学的にありえない運動を起こし、いままさに踏み込もうとした方位の全く逆へと飛び退り、宙返りを繰り返して元の位置よりもさらに後方へと着地した。

 

 たとえ獣であろうが人であろうが、どの道ありえないほどの奇怪な運動性能といえた。もはや物理を超えているかのように、私の目には映った。

 

 キャスターの足元の地面から伸びた白刃の群は、そのままずるりとその全容を雨夜に晒した。

 

 それらは二本の腕と足と頭部の乗った胴体に備えていた。

 

 磁器の様につるりとした無貌のヒトガタ達が雨露に洗われながら立ち上がった。あれは錬金術師が使う自動人形(オートマトン)の類だろうか? 

 

 一、二、……全部で四体の自動人形たちは雨しぶく暗闇の中で、キリキリと関節を鳴らしながら、未だその面貌に人の名残を多く残す獣未満といった風貌の男を取り囲んだ。

 

 相対する敵の、耳まで裂けた口角に異様な、としか言いようの無い笑いが溢れたのを機ととったのか、その半獣の敵にも増して奇怪な面相の自動人形たちは、獲物に群がる蟻のようにバーサーカーの上に殺到した。

 

 ギチギチと、肉を削ぐような音が辺りに響いた。

 

 決して鋭利ではない刃を生き物の肌に当てこする音だ。人の情緒を介さぬ自動人形たちは、まさに昆虫の行動様式に沿うかのように淡々と獲物の解体にいそしんでいた。

 

 相手が唯の人間だったならばとっくに解体され、その内容物を整然と仕分けされていたことであろう。しかし依然として勤勉な動きを見せていた人形たちは一向に作業を終えることが出来ない。

 

 ――否、その実――それらは諸所の作業を始めることさえ(・・・・・・・)できていなかったのだ。

 

 パッと紙ふぶきが踊るような光景が目前に広がった。

 

 それらはまるで木っ端のように飛び散り、舞い上がった。昨夜と同じように四肢を歪に肥大化させた獣はたった一振りで小山のように群がっていた歯車人形たちを薙ぎ払ったのだ。

 

 その豪腕の表層を、まるでワイヤーのようなゴワゴワとした漆黒の獣毛が覆い尽くしていく。

 

 私は目を皿のようにしてその様子を見ていた。どうやらあの獣人化現象の起点となるのはあの男が最初から腰に巻いていた毛皮のベルトらしい。おそらくは狼の皮製のベルトなのだろう。

 

 あれがあの男の宝具なのだ。私はそう結論づけた。

 

 各々の規格が桁違いなのを除けば、宝具もある種の魔術を発動させる為の魔道器であるといえる。

 

 あの宝具の有する魔の機構摂理は、私にとっても理解しやすい部類に入る。なぜなら、その能力は私の得手する魔術ともあい通じる部分があるからだ。

 

 獣に成りきったり、その動きを模倣したりしてその能力を再現しようとする試みは魔術妖術に限らず、古今東西の舞踏や武術の随所に見受けられる。しかし、あのバーサーカーのそれはさすがに宝具と言うだけあって並みの魔術には真似の出来ないもののようだった。

 

 全身が強力に賦活され、その外皮は魔術を弾き、傷を塞ぎ、さらには感覚まで獣のそれに順ずるまでに鋭敏化されているようであった。

 

 あそこまで魔獣そのものに変容できるというのは、さすがは英霊の端くれだとしか言いようが無い。まさに規格外だ。

 

 自動人形たちをまるでガラス細工のように粉砕した獣はすでに二本足で立つのが億劫なようで、物騒な鉤爪を並べた手を地に付いて異様に膨れ上がった上半身を支えていた。

 

 そのまま、狼というよりはゴリラを思わせる四足歩行でゆっくりと歩を進めていった。

 

「む、無駄、――ダ。今のオレは不死――身ダ。貴様ニ――勝ち目ハ、無――イ。」

 

 今や身を護るものとて無い、眼前の巨大にして異形となった人獣と比較したならば、まるで一厘の儚い野菊のような印象さえ与えてくる優美な装いの青年は、しかし強大な凶気の塊となった魔獣に対して、さして臆したる様子も無い。

 

 その右手の白く長い指を、ゆるく結んで細い顎先に添え、なにやら深と考え込む風であった。

 

「ふむ、興味深い。その状態でまだ口が聞けるのか……」

 

 感心したようにその滑らかな喉から滑り出る声音には、何ら気負いは感じられない。

 

 あの青年。おそらくはキャスター。私はそう、当りをつけていた。もとよりその装備を見るならばあれが三騎士のクラスではないことは明白だ。

 

 そして今隣在している魔獣がバーサーカーなのだとすれば、残るはクラスはアサシンかキャスター。

 

 事前に聞き知った情報を信じるなら、アサシンのサーヴァントとはほぼ確実に髑髏の面をつけた暗殺者のサーヴァントが呼ばれるのが通例だという。

 

 ならば消去法であの青年の正体は魔術師のサーヴァント、キャスターだということになる。もっとも、三騎士以外のクラスはその時々によって変化することもありうるということだから、それだけなら別の可能性もありうるといえる。

 

 しかし私には彼の青年が魔術師(キャスター)であるという確信が私にはあった。彼が見せた魔術師としての特性が、私にその正体を確信させたのだ。

 

 魔術師には、大きく分けて二つの種類がある。

 

 己の心身を魔術行使の機関として成立させ、瞬発的な魔術行使をもって外界に干渉することを技巧大系の柱とするタイプの魔術師「ソーサラー」。もうひとつは己ではなく己が外界に則すように作り出したものを媒介として魔術を行使するタイプの魔術師「エンチャンター」。

 

 通常、魔術体系の機構が完全にそのどちらかに偏るということは少ない。

 事実、私もその両方の魔術を使うが、より高位の魔術師ほどそのどちらかの技術を専門的に磨き上げていくものなのだ。

 

 よって、あのキャスターのタイプも推察することが出来た。あれは魔具を作り上げるタイプの魔術師、エンチャンターに属するものだ。

 

 かつて師、曰く、戦闘において「己が最強である必要は無く、最強の物を作り出せばいい」という論理にのっとって魔術を行使するのが、そのタイプの特徴なのだそうだ。

 

 ならばあのキャスターが主に錬金術師に代表されるエンチャンターなのは明白である。今までの攻防においてそのすべてをあの自動人形に任せているのがその証拠だ。

 

 もっとも、あの自動人形がキャスターの持つ魔術の「最強」のカードだったとしたら、もう勝負は付いたようなものだが……。

 

「ソレ、モ――こ、コまデ、――ダ。モウ、――オレ、ノ理性がモ、タ――ナイ。……持タス、理由モ――ナイッ!」

 

 バーサーカーはその場に立ったまま無造作に右腕を振り上げた。

 

 もはや踏み込みすら必要ない。その肥大化しすぎた腕と爪はすでに青年をその必殺の圏内に納めているのだ。

 

 泰然と直立したままそれに対するキャスターの手には、いつの間にやら、――何かが在った。

 

 それは丸い、何かガラスのような、球技に使うボール大のものと見えけられた。

 

 バレーボールほど大きくは無く、ソフトボールよりは大きそうだ。

 

 そのせいかガラスといいながらも、なにやら落とせば弾みそうな気配もあるように見える。鞠か? しかしその透き通るような体表面はほっそりとしたキャスターの長い指の上にあって余計に繊細な質感をうかがわせる。

 

 その滑らかな皮膚を決して阻害すること無く馴染んで見えるそれは、もしかしたら特大の黒真珠なのかもしれなかった。

 

 キャスターはその球体を両手に持ち、身体の前に掲げた。もとより掌の中に在ってさえ自重を感じさせなかった球体はそのまま虚空にふわりと浮かび上がり、その表面からは光が刺し始めた。

 

 光は一筋ではなく無数の線であった。虚空に浮かぶ青暗色の球体から、まるでウニか栗のイガように細い光が伸び、暗い周囲の空間に点々と光を画き始めたのだ。そして――

 

「――高次式普遍天移象球儀(メタ・ウニウェルサリス)――」

 

 呟くような、キャスターの滑らかなテノールが雨の帳の向こうから届いた。

 

 同時に奇妙な既視感が私を打った。あの光をどこかで見たような覚えがある。そのせいだろうか? いや、それよりも私の感覚に痛烈な針のようなさざめきを残したのはその威厳を含んだ言霊であった。そうだ、いまキャスターが呟いたその言葉を、私はどこかで聞いた覚えがあるのだ。それは、いつ、どこでだったか――。

 

 ほぼ一瞬の刹那に凝縮された私の感覚は、そこで途切れた。

 

 そうこうしている内に、バーサーカーの爪はすでにキャスターの命を掠め取れる位置まで迫っていたのだ。

 

 バーサーカーも一時はその光に反応して一応躊躇する気配を見せた。球体の発する光によって形作られた直系二メートル弱といった大きさの球状の幕は、一見キャスターを外敵から隔絶する防護膜のようにも見受けられたのだ。

 

 しかし、もはや制止もかなわぬほどに勢いづいていたのか、それとももはや極め付きに肥大しすぎたその腕が重すぎたのか、バーサーカーは構わずに巨椀を振り下ろした。

 

 すると、夜と雨と空気とを諸共に引き裂いた凶爪はその光膜をあっさりと素通りしてしまった。

 

 爪は未だ寂然と構えるキャスターの頭上に迫る。あわや両断。と、いうところで、両者の間に飛沫が舞った。紅い飛沫。鮮血だった。しかもそれは凶爪に晒されていたキャスターの物ではなく、今まさに決殺の爪を見舞おうとしていた獣の豪腕から散華していたのである。

 

 すると、途端にその毛むくじゃらの巨体が私の視界から姿を消した。

 

 と見えた瞬間、バーサーカーの巨体はまるで隕石のような衝撃と共に、私達の隠れている車両のほうへ、しかも後ろ向きのまま跳びのいてきたのだ。

 

 私は泡を食って声を漏らしそうになり、両手で口を押さえ込んだ。動くのが億劫そうな歪な巨体にも関わらず、バーサーカーの動きは常人の目には捉えられるものではなかった。

 

 だが、それほどの暴力を思わせる狂獣の後退も、無理からぬことかもしれなかった。その丸太のような巨椀からは僅かながら雨の雫に混じって確かな紅い筋が滴っていたのだ。

 

 しかし私にはなにが起ったのか皆目検討が付かなかった。

 

 ここから目する限り、今キャスターは何かを飛ばしたわけでも、バーサーカー向けて魔術を使ったわけでもないはずだ。ならやはりあの光の膜が何らかの作用をもたらしたのだろうか? ならば、やはりあの光の膜、もといその起点となる宝珠がキャスターの宝具なのだろうか? 

 

 その己の出した推論に、私は自ら首を捻らざるを得なかった。仮にあれがキャスターの切り札たる最強武装としての「宝具」だとすると、逆にバーサーカーの傷が軽微過ぎることが不可解に思えるのだ。

 

 今のバーサーカーの後退は与えられたダメージよりも、敵に何をされたのか解からぬ疑心暗鬼が故ではないのだろうか? きっと今の私と同じ、不可解な疑念にその思考を覆い尽くされているのであろう。

 

 ――結論から述べるなら、バーサーカーの後退に対する、以上の推測は半分だけ正解だったということになる。

 

 バーサーカーは更にキャスターから後退して私達が隠れている車体に近づいた。

 

 私は一瞬こちらの存在に気がつかれたのかと思ったが、違った。バーサーカーは私達でなく私達が身を隠しているこのトラックのほうに用があったらしい。

 

 ひしゃげるような金属の悲鳴が聞こえて、私はすぐに何が起ろうとしているのかを悟った。やおら、動く筈の無い巨大な車体が浮き上がったのだ。呆気に取られた私はもう少しで自分の穏行を忘れるところだった。

 

 バーサーカーは巨大なトラックを掲げ上げていたのだ。そして全身の筋肉を爆破させるように駆動させて、そのトラックをキャスター目掛けて、投げつけた。

 

 ――――の、だが。

 

 さて、ここでひとつ問題がある。

 

 その後キャスターはそれを難なくかわしてしまったのだが、私の主観においてそれをキャスターがどうやったのかをうまく述べ立てることが難しいのだ。

 

 それほどに、その光景は私にとって埒外のものだったのだ。

 

 先ほどキャスター自身を包んでいたいくつもの輝く点光が群を成す球上の光の膜が、今度は落下してくる巨大な影を包み込んだ。そのうちにキャスターはそそくさと迫り来る車体の下から移動してしまったのだ。

 

 つまり私の見たものを率直に言及するなら、トラックは暫しの間宙空でピタリと制止していたということになる。

 

 そしてキャスターの優雅な歩行が滞りなく雨ざらしの砂利を渡り終えるまでの間、トラックはそのまま宙空にあり続け、その後であっけなく落下した。凄まじい衝撃が、それを放り投げたバーサーカーの怪力とそれを簡単に回避して見せたキャスターの奇怪さを物語っていた。

 

『おい、こっちだ』

 

 トラックの陰に隠れられなくなった私は霊体のままのライダーに誘導されて、事務所か何かに使われていたらしいプレハブ小屋の上に飛び乗った。雨の勢いをまともに受けるのは癪だが逆にサーヴァントたちの動きはよく見える。

 

 キャスターの奇怪な行動に、それからも暫し躊躇する気配を見せていたバーサーカーはしかし、すぐに考えることを放棄したようだった。いや、そのときすでに考える機能を失っていたというべきだろうか。

 

 今やその体からは人獣としての醜悪さは去り、そこにはあの夜と同じ、鈍い銀色に輝く毛先をたなびかせる美獣がいた。

 

 そうなれば、もう敵の手など斟酌しない。元来の獣が持ちえることの無い、歪んだ殺戮欲求を満たすためだけに後はどう「狩るか」それだけがあの魔獣の求めるところとなるのだ。

 

 狂獣は、今度は爪でなく特大の氷柱(つらら)の連なりのごとき牙でキャスターに襲い掛かった。

 

 対して、とうのキャスターはといえば、その死の先制に目もくれることなく、眼前に浮かび上がる球体にそっと手を沿え、ゆるゆると回転させていた。

 

 丁寧に磨くかのような手つきで球を回転させると、その度に周囲を覆っていた光の膜が変容した。球につられて回転し、その大きさを変え、膜の形を変え、光量を変えて滅暗を繰り返した。

 

 すると最終的に光の膜はキャスター自身ではなく迫り来るバーサーカーの巨体の前方に出現し、その巨体をすっぽりと包み込んだ。と、見る間に今度は紅い雨が逆しまに舞い上がった。バーサーカーの総身を、先ほどと同じ現象が襲ったのだ。

 

 しかし全身から血を流しながらも、バーサーカーの歩みは止まらなかった。再び間合いを測るように旋回ながら牙を剥きあげる。その向けられる凶気だけで、あるいは並みのサーヴァントの戦意を折ることも可能なのではないかさえ思える。

 

 すると、一時は巨獣に追いすがるかのように移動していた光の膜は、やおら虚空に静止し、次いで一気に拡張しこの敷地全体を包み込むまでに広がった。

 

 だが、斯様に展開した光膜もやはり敵を押し止めるような効果は無いらしく、今度こそ何物にも邪魔されることのないバーサーカーの牙は、キャスターに届いた。

 

 否、届いたと見えた。――が、しかし牙は衣服の裾を掠り、そのままどんどん遠ざかっていった。

 

 それを目にして、私はバーサーカーが後退したのかと訝ったが、そうではなかった。正確には退がったのではなく、その巨体が矢庭に縮んだ縮んだ(・・・)のだ。

 

「お、お、おおおおおお……ぉぉぉっぉぉぉぉぉ!? ……」

 

 バーサーカーの口からは驚愕らしき呻きが聞こえてきた。――にもかかわらず、私はそのとき、それに注視することが叶わなかった。

 

 私自身、どうしようもないほどの驚愕に直面していたからだ。たった今まで、この場所は雨しぶく漆黒の夜だったはずだ。

 

 記憶操作でもされているのでない限り、それはたしかなことだ。しかし……ならば今現実に見える光景をどう受け止めればいいのだろうか。

 

 今、私の目に映るのは夕焼けだった。鮮やかな赤だ。今、世界は確かに夕刻だった。

 

 それだけではない。空は次第に鮮烈な赤から清浄な青へと変容していくではないか。それに従い、バーサーカーの体は縮小し続け、最後には私達が始めて見た時の様に、青白くやせこけた唯の人間に戻ってしまった。

 

「ひ、ひ、ひィ……」

 

 あまりの混乱からか、もはや狂声を張り上げ、恐怖に狂ったように取り乱す男の醜態はひどく惨めでみすぼらしく、先ほどの完成された美を余すことなく秘めていた銀獣の面影は残っていなかった。

 

「――月の光を浴びながら日常のモラルを反転、逸脱、拡大するといった儀式は世界各地にその痕跡を見ることが出来る。

 とめどなく満ち欠けと繰り返す月は死と再生のシンボルとなるからだ。それは不死を連想させるものとして陰性の魔力の源となるのだ。

 古の精霊と共に生き、シャーマンの存在を受け入れてきた文化では魔女や狼男のような存在を、人間の心の奥底にあるもの、陰性、人間に不可欠な半身として受容してきた。

 そう、月明かりの夜に踊り狂う者たちの饗宴の儀式だ。

 つまりは重要なのは月の光なのだ。たとえ雨雲に遮られようとも、いまもこの世界に降り注ぎ続けている月光。

 つまりは月面に照り返す太陽の反射光こそが君の力の源。……ということのようだな。ふむ。なるほど、興味深い」

 

 唐突に声が響いた。この状況で雄弁を振るう者はただ一人しかいなかった。

 

「月の光でなければならないというのは、つまり太陽光からの直接の恩恵を受けられないということだ。

 月の光は一度死んだ光だ。だからこそ、そこで光の性質が陰性に変化する。その死光に満ちた世界でなければ君の宝具は使えないというわけだ。

 まさに世界に共通する陰性の魔力の象徴のような宝具だ。興味深いよ。

 そして君の宝具は強力である反面、その月光の満ち欠け、つまりは月齢に左右されざるを得ない。

 

 加えて言うならば、君の正体は元来からの英霊ではなく、獣人伝説に感染した唯の殺人鬼、といったところなのではないかな? 英霊として呼ばれたのは君自身ではない。

 

 狼男(ルー・ガルー)という伝説の存在を呼び出すための触媒として、偶然選ばれた悪霊が君だったというだけのことだ。

 

 故に、人狼としての性質を失った君にはもはやサーヴァント足りうる戦力は残っていない。……どうかね? バーサーカー、私の推論の程は?」

 

 

 講釈をたれるかのようなキャスターの声は明朗でよく通った。

 

 故にそれは私の耳にもよく届いていた。その解説を聞いて、私はあのバーサーカーについての懐疑に大方の合点がいっていた。今日の月齢はたしか十四。なるほど、ならば昨夜から今宵にかけてのバーサーカーの不死性や破壊力にも説明がつく。

 

 魔女にとっても、月は重要なファクターだ。また、狼男や魔女だけでなく、この地上にある万象は月の満引に影響を受けるのだという。それは何も魔術的な側面からだけではなく科学的な見地からも言及されて久しい。

 

 それは一般に生体潮流(バイオタイド)仮説と呼ばれるもので、この地球における地殻や海水、磁場といったものが月の引力の影響を受けているのと同様に、生物の体もまたあの天体の運行の影響を受けているのだという説だ。

 

 無論、人体もその影響を受けないわけには行かない。そも、今人類の生活を根本から支配している暦とはあの天体の満ち欠けを元にしているのではないか。

 同じ周期で繰り返される女の月経と月の満ち欠けも、その名の通り人と月の密接なる関係を表すものだ。そして、そのもっとも特異にして世に知られた現象こそが「ルナティクス」と呼ばれる、満月の夜に起る殺人事件や精神錯乱の事例である。

 

 人は月に狂うことを運命付けられた生き物なのだ。いや、この星に生の営みを根付かせる総ての有象無象すべからずそのえもいわれぬ狂気の淡い光の誘いから逃れることは出来ない。

 その甘美なる狂気こそがあの「狂乱の座に誘われた英霊(バーサーカー)」の強力さの秘密だったのだ。

 

 その甘露なる蜜月の淡光を予期せず奪われることとなったバーサーカーは、巻く尻尾も無くしたまま足を縺れさせて形振り構わず逃げ出した。

 

 だがその逃亡先を、――いつの間に起き上がったのか――先ほど破壊されたはずのオートマタ達が塞いでいる。そして、行き先を変えて逃げようとしたバーサーカーの前に、またもや数体のオートマタが姿を現した。さっきバーサーカーに蹴散らされたのとは別のものだ。

 

 剣を持つもの。槍を持つもの。馬のような四足の半身を持つもの、黒いケープを纏ったもの。よく見ればそれぞれが別の意匠を与えられているのがわかる。

 

「私の自動人形(オートマタ)は全部で七体いてね。君が破壊したのはそのうちの四体だけだ。……もっとも、それらも今の間に復活してしまったようだがね」

 

 七体もの無貌の自動人形に囲まれたバーサーカーは、うろたえる様に腰に挿していたナイフを引き抜いた。幾多もの血を吸ったような、青光りのする寒々とした凶器と見えたが、しかしさすがにこの状況では焼け石に水というものだろう。

 

 宝具さえ使えれば物の数でもないのだろうが、今の状態では彼に勝ち目は無いことは明白だった。

 

「……拙い」

 

「確かにな。このままでは旨くない……」

 

 いつの間に実体化していたのか、私の呟きにライダーが声を顰めて同意した。さすがに馬鹿でもこのくらいのことはわかるらしい。

 

 このままキャスターがバーサーカーをくだすのは構わない。だが、ここで終わってしまったのではキャスターの能力や真名の正体を暴くことが出来ないのだ。それではせっかくここまで来た意味が無い。

 

 幸いキャスターはバーサーカーに気をとられて私達に気付いていないらしい。出来ることなら、キャスターの正体なり宝具の効果なりを看破できるだけの情報を得てから退散するのが最良なのだ。しかし、このままではそれも叶いそうにない。

 

 そうするうちにオートマタの一体が放った矢が痩身の男の足を貫いた。呻き声を上げて逃げようとする男に物言わぬ自動人形達が踊りかかった。

 

 ――ここまでか。そう判じた私が失意の退散を意識した、正にその時である。

 

 一陣の刃が総ての自動人形に先んじてバーサーカーの身体を両断した。

 

 哀れ、白昼の狼男は悲鳴を上げる間もなく灰燼と化して消滅した。だが、ひとつ幸いであったことをあげるのならば、今まさに彼に襲いかかろうとしていた憎き七体のオートマタたちもまた同じように両断の憂き目を見ていたことであろうか。

 ――それを孤独に散った狂人の慰めと見るのは、些か感傷的にすぎるだろうか?

 

 そんな馬鹿げた思考に逃げ込まねばならないくらい、私は眼前の光景について向き合うことを拒絶していた。私はさぞかしそれを唖然と見ることしか出来ていなかっただろう。

 

「いやぁ、あぶなかったな。フフン。もう少しで手柄を奴に持っていかれるところであったわ!」

 

 青天に変じた空の下、ゆうゆうと「舞台」に躍り出たライダーは、そう、嬉々として歓声を上げた。

 

 





 キャスターが登場。
 そしてバーサーカーはお早い退場となりました。
 不可解な能力を持つキャスターの攻略は後半で。


 ステータス更新

バーサーカー

真名:ルー・ガルー 

性別:男性

身長・体重:172~700㎝ 38㎏~3000㎏

属性:混沌・狂

筋力E~ 耐久E+~ 敏捷E~ 魔力E~ 幸運E~ 宝具E~

クラススキル

狂化:E~A
 変身能力を得たことで通常時はかろうじて正気を保てるが、宝具の使用と共に狂化のランクは上昇し、最終的には理性を完全に無くし一匹の獣になる。

保有スキル

攻性思考:A
 常に絶えることのない飢餓感が攻撃性を増大させ、外部からの精神干渉を阻害する。加えて、五感または直感などの知覚能力が鋭敏化する。

狼の紋章:B
 不死身の因子。人狼、或いは神狼や魔狼にまつわる逸話を持つ英霊にのみ与えられる特異スキル。
 精神及び肉体における驚異的な耐久力と治癒力が付与され、またごく低い確率ではあるが、時として致命に至るほどの傷を受けた場合でもそれを克服し、蘇生する可能性がある。その判定に成功した場合、そのダメージは行動に支障のないレベルまで改善される。

宝具:魔狼の獣帯(ガリシアン・ウルフヘズナル) ランク:C++
   
 狼皮のベルト。使用することで巨大な人狼へと変容する。バーサーカーの発揮する能力や、それに必要となるほとんどの魔力等はこの宝具からもたらされるものであり、バーサーカー自体の能力はほぼ皆無だと言っても過言ではない。
 強力だが制御するのは非常に難しく、その上「夜にしか使えない」というデメリットがある。
 宝具の使用と共に通常時は抑えられていた狂化のランクが除々に上昇し、全身を覆った獣の外皮が本人の状態やダメージに関係なく五体を疾駆させ、傷を強引につなぎ合わせる。最終的には狂化のランクはA になり、理性が完全に消失して一匹の獣へと変貌する。
 また、月の運行に影響を受け、月が満ちるほどに宝具の使用持続時間が延び、効果が強大になる。


 解説:サーヴァント本体ではなく、宝具の方が主体になって呼ばれるサーヴァントってのはどうかと思ってできたバーサーカー。
 加えて、狂戦士の根本的なモデルって言ったらやっぱこういうやつだよなというイメージもあります。
 人狼という「神秘」の知名度がすべてであり、それをおっ被った本人は英霊でもなんでもないという変則型召喚。
 今のところ噛ませ犬でしかなかったですが、使い方によってはもっと極大的な脅威となりうるサーヴァントでもあります。後々の活躍をご期待ください。
 元ネタとしては「ガリシアの獣」っていう人狼をモチーフにしたサイコサスペンスホラー映画DVDが元になってます。さほど面白かったわけではないんですが、印象に残ってたんですよね。
 人狼の「素体」が猟奇的な目をした殺人鬼なのはそのせいです。人狼伝説に魅入られた男。……ただ、あんまり細かいとこはもう覚えてないんだけど。
 それと、元ネタとしてはもう一つ。なんといっても「ウルフガイ」人狼と言ったら「ウルフガイ」なのである。
 作中でもちらっと出てきましたが、てか言わせてますが、言わずと知れた平井和正の代表作。でありいまだに色褪せぬ名作なのであります。
 不死身性が月齢によって変化したり、獣人化現象(ゾアントロピー)とか言ってたりしたのはすべてそのせいです。
 かなり古い小説なんであれなんですが、かなりおすすめの作品です。2012年くらいまでリメイクで漫画もやってたしね。





キャスター

真名:
筋力E 耐久E 敏捷D 魔力A 幸運A 宝具C

性別:男性

身長・体重 176㎝ 60㎏

属性:秩序・善

クラススキル

陣地作成:B
 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。“工房”の形成が可能。

道具作成:A
 魔力を帯びた器具を作成できる。
 
保有スキル

宝具:

 
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