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Side:綾小路 清隆
実に最悪な始まりだった。
4月。入学式。オレは学校に向かうバスの中、座席にゆられていた。
特にすることもなく窓の外を眺めていると、いつの間にか痴漢冤罪で逮捕されてもおかしくないほどの込み具合になっていた、制服を見るにほとんどが、俺が向かっている「東京都高度育成高等学校」の生徒だろう。
この混雑のせいで俺の前に立つ老婆もいつ倒れてもおかしくはない程に足がふらふらだ。まぁ事情あるのかもしれないが一本遅らせればいいだけなので自業自得だな。オレの停車駅が初めの方だったのは実に幸運だった。
このまま、外の青空のような清々しい気分で寝れたらどれほど気持ちよく眠れるだろう。
...いや、そろそろ現実逃避はやめるべきだな。込んでいるとは言ったがその中に、やけに空間が開いている場所がある。
優先席だ。設置された目的通り、優先席に座る、老人や怪我人のための助け合いの精神で、その空間ができていたなら、俺は現代日本人の美徳に心の中で涙の雨を流しただろう。
悲しいことに、実際に座っているのは、確実に人を一人殺めたことがある眼をした、乱雑な黒髪の男と、ガタイのいい整った金髪の男とその荷物なのだが。どちらも制服を見るに高校生、というかオレと同じ高校のようだ、クラスメイトになる可能性を考えるだけ憂鬱になるのでそれは、今だけ忘れよう。
黒髪の方は顔立ちは整っているが、近寄りたいと思わせる類の美しさではない。吊り上がった目。ほとんどというか全く動かない表情、まだ彫刻の方が人の温かみが感じられるだろう。そして、それゆえに感じる、威圧感。
頼むから窓の外を見ていてほしい、はた目から見たらいつ殺しのターゲットになるかわからず震えてしまう。
金髪の方は黒髪とは正反対だった。顔立ちは同じように整っているが、より長い手足に、均整の取れた身体。座っているだけでも分かる異様な存在感。何の苦労もなく自分が他人より優れていると信じている人間特有の、傲慢さすら感じさせる自然な姿勢。
こっちは自分の世界に浸りすぎであるもう少し他者を慈しんではくれないだろうか。
――黒髪と目が合った。
漆黒の目だ。何も考えていないようにも見える、だが、その目を見ていると、むしろ逆なのではないかとも思えてくる。何も考えていないのではなく、こちらが考えていること、俺の性格に至るまで全て、見透かしている。そんな錯覚を覚える目だった。
いや、そのまま見つめている場合じゃないな、このままでと因縁をつけていると思われてしまう。熊相手に目をそらすのは命取りらしいが、一応見た目は人間だ。そっと目をそらせば大丈夫だと思いたい。
...大丈夫か?大丈夫そうだな、なぜオレは入学式が始まる前に命の危機を感じないといけないのだろうか、さっき幸運といったがこのバスに乗った時点でオレの不幸は確定していたとでもいうのか。
すると金髪がとなりの黒髪に話しかけた。
「随分と静かな男だねぇ、新しい環境へ向かうというのに、凡人はもう少し期待や不安が表に出るものだと思っていたが、君にはそれがない、何を考えているのかな」
言葉の節々から感じる優越感、関わらないという俺の判断は英断だと自画自賛せざるを得ないな。
「…………」
黒髪は黙したままだ、まさか、自分に話しかけていると気づいていないわけでもないだろうに。
もしかして、オレと同じで人と話すのが苦手なのか。だとしたら親近感がすこし湧くな、心の中で俺は同類かもしれない男にエールを送る。
「おや、無視とはつれないじゃないか。魅力的な私に気後れする気持ちはわからないでもないが、せめて一言くらい返してくれてもいいんじゃないのかい?」
すごいな、自信過剰もここまでくると尊敬に値する。俺なら無視された時点で、荷物をまとめてバスを降りているだろう。これからの新生活を考えると、友達作りのためほんの少しは見習うべきなのか...いや無理だな。
「何故オレに話しかける?つまらない男だ...話す価値もない」
あまりにも平坦であった、そこには何一つ感情が乗っていなかった。
どうやら、耳鼻科の予約をした方がいいのかもしれない。対話を望む人間に返したとは思えない暴言が聞こえた気がするな。彼は同志ではなさそうだ、というか同じ類の人間とは思われたくないな。オレも言葉には気を付けるとするか。
「はっはっはっ! そう卑屈になることはないさ。君にはそれなりの見込みがあるとも。なにせ、この私が自ら声を掛けているんだからね。光栄に思いたまえ」
自信満々に金髪の男は笑っている。
無敵か?こいつ。どう聞いてもお前に対するセリフだと思うが。ここまでポジティブだと人生が楽しそうだな。
すると、金髪の男は満足したのか再びイヤホンを耳にはめ込み、自分の世界に戻っていった、黒髪の男は相も変わらず無表情のまま辺りを伺っている。
全くひやひやしたな、どうせなら今のうちに、混雑の緩和のために誰か金髪の男の荷物だけでも、どけるように言ってほしかったが。とはいえ、あんなあからさまに厄介な奴らに話しかける奇特な奴もいない...
「お婆さんが困ってるんだから、席を譲ってあげようって思わないの君達!!」
勇者は実在した。
信じられない、虎の尾を踏むどころか、虎の目の前で爆竹を鳴らすかの如き愚行。まだ物事の通りをよく知らない幼稚園児であっても、もう少し相手を選ぶだろう。見た目通りなら、社会人の女性か、日本の必修科目、空気読みを受けていないのだろうか?実に悲しいことに、このバスはあと学園につくまで、あと30分地獄の空気になるのが確定した。
さらば、オレの平穏...
いや待て、その判断は少し早計か、確か限られた優しさしか持てない人間もいると本で読んだことがある。彼らが実は老人や子どもにはとても親切で、やさいせいかつになる可能性も否定はできない。
「実にクレイジーな質問だね、レディー?なぜこの私が老婆に席を譲らなければならないんだい?どこにも理由はないと思うがねえ」
優越感をにじませながら男は語る。
ダメそうだ、現実は甘くないな。少なくともあの本の内容は今すべて忘却した。せめて巻き込まれないよう空気に徹するとしよう。
「君達が座っているのは優先席!お年寄りに譲るのは当然よ」
「優先席に法的な義務は存在しないよレディ?いいお勉強になったかな。それとも若者だから譲るべきだとでも?それこそ実にナンセンスな考えだと言わざるを得ないねぇ」
「確かに私はとても健康体だ、立つことに何の不自由も存在しない、けれど立つのだから、この私といえど座っている時よりも体力は消耗する。まさかそれを見返りもなしに要求するつもりかな?謝意としてチップくらい渡すのが礼儀というものではないかねぇ?」
それからも女性と金髪の口論は続く、いや口論というより一方的な論破ではあるが。そんなことより女性は周りを見て気づいてほしい。助け出そうとしている老婆が今にもバスを飛び降りかねないくらい、いたたまれない表情を浮かべているのだから。
「も、もういいですから...」
「おや、物わかりのいい老婆じゃないか。日本のご老人も捨てたものでないねぇ、存分にその余生を謳歌したまえ」
さすがに限界だったようだ、老婆が女性をなだめる。だが、学生に侮辱されかなり癪に障ったであろう、怒り心頭な彼女は、その矛先をもう一人に向ける。
「あなたも黙ってないで何か言ったらどうなの!!」
「・・・・・・」
この期に及んで無言を貫くあの姿勢は日本人の鑑なのかもしれない、決して見習うべきものではないと、そう思うが。
「無視は止めなさい!!」
本当にもうそろそろあきらめた方がいいと思うのは、俺だけなのだろうか。いや他の乗客も思ってそうだ、よかったオレは一人じゃない。
そして、意外なことに黒髪は口を開く。
「恥知らずにも、席を望むか、媼よ」
「え!えぇ足が悪いから、譲ってくれるならありがたいのだけれども」
「良いだろう、座るがいい」
目を疑ったが黒髪は席を譲った、いや言い方はどうかと思うが席を譲ったのは事実だ。さっきの本も意外と役に立つ、どうやら、特定の人には優しい人は実在するようだ。オレは先ほどの本の内容を思い出し、頭の本棚にしまった。
ちなみに金髪はずっとにやにやしている、俺には何が面白いのか全く分からない。
「だが、媼よ。身の程を知れ、まさか白痴なわけでもあるまいに、長生きはできそうもないな」
俺は先ほどの本を忘却し、ブラックリスト入りした。フィクションのくせに実用書だと騙らないで欲しかったな。
にしてもキツイ言い方をする、老婆が泣きそうになってるぞ。
「そして、そこのおまえもだ」
女性の方を向き男は言う。
「な、なによ!言っておくけど、私は間違ったことはしてないんだからね!!」
さすがの物言いに女性も少し引き気味だった。
「あぁそうだな、とてもオレには真似できない、見るに耐えない行動だ。目が腐り果ててるとしか思えない」
殴り合いになるまで秒読みといったところか...頼むから本当に俺を巻き込まないでほしい。さっきから、にやにやしている金髪は仲裁でも、いや無理か事態が悪化するだけだな。
「人が良かれと思って言ったことに、そんな言い方をする必要がありますか!?」
少し間が空いた。
そして。
「オレの落ち度だな」
女性が止まる。
「すまない、おまえの声量が、まさか動物園の猿にも勝るとは思っていなかった」
沈黙。女性は完全に言葉を失った。謝罪の言葉を取って付けただけの、ただの罵倒。そのあんまりな物言いに、周囲の何人かは、思わず顔を逸らしている。俺もそのうちの一人だ。
どうやら人は怒りが限界に達すると言葉を失うようだ、良い学びだった、今後の人生で生かされることがない事を祈るが。女性の表情もすごいことになっている、筆舌に尽くし難い顔というのはおそらくああいう顔のことを言うのだろうな。
すると、パチ…パチと手を叩く音が聞こえる。...金髪だ。
オレは瞼を閉じた。限界だった。これ以上この混沌に巻き込まれたくはなかった、まさかどこでもすぐに眠れる技能が日本の公共交通機関の中で生きるとは思わなかった。いや本当に...修得していてよかった。
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Side:高円寺 六助
「はっはっはっ! 実に紳士的だねぇ、君は。なるほど、そういう振る舞いが自然にできるとは……さぞかし教育の行き届いた環境で育ったのだろうねぇ、その自己犠牲のあり方には尊敬の念を禁じ得ないとも」
公共交通機関で通うなど、実にくだらないと思っていたのだけれどねぇ。
わざわざ他人と同じ空間に押し込められ、見ず知らずの人間と時間を共有する。高円寺六助にとって、それは退屈以外の何ものでもなかった。
だが、存外悪いものでもないらしい。まさか、こんなにも興味深い人間に出会えるとは思っていなかった。
あの少年は実に奇妙だ。相手を蔑んでいるわけではない。むしろ、他人に対し誰よりも深い敬意を持っている。にもかかわらず、口を開けば悉く言葉選びを間違える。
尊重しているはずなのに、なぜか相手を苛立たせる。普通の人間なら、そもそも「性格が悪い」で片付けるだろう。けれど、高円寺には、それがただの性格の悪さではないことが分かっていた。
おそらくは、他人に好かれようという欲求が皆無なのだろう。だから、わざわざ自分を飾らない。相手を立てるために自分を偽ることもしない。それでいて、人そのものを軽視しているわけではない。つまり彼はこの上なく朴念仁かつ実直、そして謙虚であり慈愛に満ちた人間なのだろう。
なんとも奇妙な人間で、そして――そういう人間を見抜くことは、高円寺にとってさほど難しいことではなかった。
そしてただそれだけならば、暇つぶしの相手で終わったかもしれない。だがそうはならなかった。
無駄を削ぎ落としたような身体つき。細身ではあるが、決して華奢ではない。制服の上からでも分かるほど、身体の隅々まで鍛え抜かれている。
なるほど、格闘技か。しかも、複数の格闘技を身に着けているのだろう。身体の使い方を知っている人間特有の、無駄のない筋肉のつき方。肩、背中、腕、そして下半身。単純に筋肉量が多いのではない。必要な場所に必要なだけ付いている。ふむ、メインにやっているものはどれなのだろうか、ふと手元に目をやれば、拳には特徴的な硬さがあった。
――パンチダコ。
ボクシングなのだろうねぇ?。
さて、そうなると少々興味深い。身体能力だけに限って言えば――自分と並ぶ可能性すらある。もちろん、実際に動いているところを見なければ断定はできないが。
だが、高円寺六助の直感そして見識は、これまで一度として誤ったことがない。
彼は、もしかすると――単なる暇つぶしの遊び相手にとどまらず、私のライバルになり得るかもしれないねぇ。
そう考えると、実に愉快だ。自分と肩を並べる可能性を秘めた人間など、そうそう現れるものではない。ましてや、これほど早い段階でその可能性を感じさせる人間となれば、なおさらだ。
さて。まずは、私に対してどのような対応を見せるのかな?こちらの期待を裏切るような、つまらない人間でないことを願いたいものだねぇ。
「祖父母の教育の賜物だ。俺は恵まれている。……おまえは、そういう環境には恵まれなかったのか?それにこの程度の労苦を、犠牲と呼ぶほど脆くはない。」
驚いたねぇ。
相手への尊敬しか抱かない、まるで仏のような男だと思っていた。だが、どうやらそうではないらしい。今の言葉は、明確な挑戦状だ。
――お前は紳士的ではないのか?
――そして、その程度のやわな男なのか?
もちろん、そんなことを本気で言っているわけではないのだろう、私がそんな男ではないと確信した上で、あえてこちらを挑発しているのだ。
その胆力。そして、あの鍛え抜かれた肉体。
はっはっはっ、面白いじゃないか、少なくとも彼には、私のライバルになる資格はあるようだねぇ。
まぁ、少々腹立たしくもあったが……ここまで見事に誘われてしまったのなら、乗ってあげるのが紳士というものだろう。
「そこまで言われたなら、しょうがないねぇ」
高円寺は口元を愉快そうに歪める。
「そこのレディ、座り給え。短い間にはなるが――私の至高の肉体を鑑賞する権利を、特別に与えようじゃあないか」
そう言い、先ほど仲良く雑談をしていた女性を優しく座らせる。
そして、何の躊躇もなく立ち上がる。背筋を伸ばし、肩の力を抜き、最も美しく見える姿勢を取る。
我ながら、惚れ惚れするほどの美しさだねぇ。
女性も、周囲の人間も、思わず言葉を失っている。感動のあまり声すら出ていないのだろう、高円寺六助は、満足そうに笑った。
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それからしばらく経った後、目的地である「東京都高度育成高等学校」につき二人はバスを降り、目的地へ向かい天然石で作り上げられた門をくぐり抜け歩いていく。
不思議なことに彼らが降りてからしばらく経たなければ、他の学生達は降りてこず、またバスも止まったままであったが、二人は特に気にすることはなく堂々とその歩みを進めた。
「いやぁ、どうかな? 私の肉体美は。素晴らしかっただろう?」
「口に出す必要もない」
「そうだろう? 私自身、つい自分に酔いしれてしまうほどだったからねぇ」
高円寺は満足そうに笑った。そして、ふと思い出したように業を見る。
「ああ、そうだ。クラス分けが発表されるまでの間だけでも、私の供をする名誉を与えようじゃないか。無論、クラスが同じだったなら、そのまま一緒で構わないよ」
一拍置いて、付け加える。
「ああ、これは提案ではなくお願いだとも」
「……承知した」
それからしばらく、二人は他愛のない話をしながら歩いた。もっとも、会話と呼べるものが成立していたかは怪しい。高円寺が何かを言っても、短く返すだけであり、その内容の大半は高円寺への辛辣な言葉だった。
傍から見れば、ただの喧嘩である。それも、妙に仲の悪い二人が延々と罵り合っているようにしか見えない。
けれど――当人達は違った。どちらも、この時間を思いのほか楽しんでいたのだ。そうしているうちに二人は、クラス分けが張り出された掲示板の前へと辿り着く。
高円寺は掲示板を眺めたまま、隣へ尋ねる。
「私はどうやらDクラスのようだねぇ、きみはどうだったのかな?」
「Bクラスだ」
「あぁ、それは実に残念だとも」
高円寺は僅かに肩をすくめる。
「ふむ、そうだねぇ……なら君には、私の供をする権利の代わりに――友となる権利をあげようじゃないか」
「分かった」
あまりにも迷いのない返答だった。
高円寺は満足そうに頷く。
「ならば、お互いに名前を知る必要があるねぇ。私から名乗るとしようか」
――高円寺六助。そう名乗った後、今度は日向へ視線を向ける。
「日向優慈」
「なるほど――日向、か」
高円寺は少し考えるような仕草を見せる。
「サンシャインボーイ、というわけだねぇ」
「……」
「実に君らしい名前じゃないか。覚えやすくて結構だ」
高円寺は愉快そうに笑う。
「それでは、サンシャインボーイ。三年間よろしくしようじゃないか」
「承知した」
あまりにも簡潔な返事。それでも高円寺は、満足そうに頷いた。
こうして二人は、クラスこそ違えど――奇妙な友人関係を始めることになった。
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Side:日向 優慈
実に最高の始まりだった。
朝から老婆をいたわる優しい女性と出会うことができた。しかも、オレはいつものように、少し失礼な物言いをしてしまったのだろう。それでも、あの女性はオレの謝罪を、文句を言うことなく受け入れてくれた。
それだけでも今日は良い日だと思えた。
だが、それ以上に素晴らしいことが起きた。友ができた。しかも、あだ名までつけてくれたのだ。
これはもう親友といってもいいのではないだろうか。
……いや、逸ってはいけないな。何せ、初めてできた友だ。少しずつ仲良くなっていけばいい。
それにしても、高円寺という男は実に面白い。あれほど自信に満ち溢れている人間は初めて見た。言葉遣いこそ独特だが、不思議と嫌な感じはしない。むしろ、俺のような人間にも臆することなく話しかけてくれるのはとても素晴らしい。一度話した者と何度も会話が続いたのは初めてだ。
「高度育成高等学校」、祖父母から、ここでは学力だけでなくコミュニケーション能力も鍛えられると聞いてきた。正直、少し不安だった。俺は昔から、人との距離感を間違えやすい。それで相手を不快にさせてしまったことも、一度や二度ではない。本当に改善できるのだろうかと気が気ではなかった。
実際に高円寺という友を得ることもできた。この調子なら、本当に変われるかもしれん。
祖父母がここへ送り出してくれた意味も、少しずつ分かってくる気がする。ならば励むとしよう、まずは三年間で、もう少し人との接し方を覚えるべきだな。
そして――できることなら、多くの友を得たいものだ。
そういえば、バスにも一人、妙な人間がいたな?茶髪のショートヘアの...あの男だ。制服を見るに同級生だろうが、まるでロボットが人間をなぞっているかのような異質さだった。
しかし、それにしても驚いたな、久しぶりの感覚だった。
――戦ったら、負けるかもしれないなどと。
いつか手合わせをしてほしいものだが、あの様子だと難しいかもしれない。まぁそれも含めて楽しい学園生活になるといいのだが。