後夜祭用です。
異界から現れた勇者が魔王を打ち破り、早500年程が経ちました。
魔族との融和政策もまた進み、最近では最果ての地に生息していた異界神たちともコンタクトに成功しつつあります。
女性優位、魔族法の見直し、人間クン……人族の男性の希少価値は今や大変高価なものとなり、人間クンに手を出しづらい社会となりました。
昨今の魔族による満員ドラゴンカーゴの痴漢及び強制猥褻事件の増加を受けて、『勇者庁』は新たに『人類優勢保護法』通称『パラディン法』が魔王党の指示を受けて、元老院を通過しました。
水晶テレビの中では蝙蝠のような立派な羽を四枚広げた青肌の女性が、スーツに身を包み羊皮紙を読み上げている。
現代でいうところのニュースが淡々と読み上げられているが、そのどれもがこの世界にいる男性が天使やら、獣人やら、妖精やら、淫魔とやらに誘拐されたり、手込めにされたり、洗脳されたりしている。『イージス』という治安維持組織もまた存在しているようだが、手が回らないのが現状だと嬉しそうに青肌の女性は語る。
信じられない光景が眼前に広がっている。
簡単に言うのであれば、貞操逆転もの転生もの上位種族ものの世界に入ってしまったようだ。
そんなテレビから目を離すと、豪勢な回転ソファーに腰をのせている。
なまめかしいストッキングの二足が組み変わる度に視線が左右する。悔しいが白衣に扮した彼女は魅力的だ。
「で、どうしたんだい? 助手君折り入って話があるなんて珍しいじゃないか」
「全てを知っている所長なら分かるかなって」
まるでゲームの世界だ。と言葉を零す。彼女は片眉を上げてそれに反応した。
「確かに、キミの言う『ロールプレイングゲーム』の世界に入ってしまったとして、何か問題が?」
「現代に戻る方法を探したいんだ」
「止めておいた方がいい。きっと無駄足になる」
すぱん、と切られるように、にべも無く断られる。
それでも、と一歩詰めよると、深いため息と共にギシッ、と椅子が音を立てた。
「残念ながら君の言う歪さというのはだね、この世界にとっては些事なことなのさ」
言葉に詰まる。ピンと張り詰めた緊張感がゾワゾワと背筋を駆け抜けた。立ち上がった彼女の影が自身に降りてくる。
モデル体型の身体がつかつかと距離を詰めてくるのを、蛇に睨まれた蛙のように竦んで待っていた。
「現に君は隠居した元魔王に近づいて寵愛を受けている。その恩恵を受けておきながら帰ろうなんて虫がよすぎるじゃないか? なぁ、助手クン」
ずい、と豊満な胸が迫る。もともと2メートル以上ある身長の女性だ。立っているだけで威圧感がある。それが覆いかぶさるように包み込んでくる。視界が張りのある双丘で埋め尽くされて、頭が固定された。
抵抗しようにも花の蜜を煮詰めたような甘い香りが鼻から侵入し、脳をシェイクする。グズグズに溶けた思考が視界をグラグラと歪ませた。
息が苦しい。唸り声が喘ぎに変わる頃、急に視界が開けた。空気を求めて大口を開けると口の端から涎が垂れる。それを彼女がツゥと舐めとって、半月に笑う半開きになった口にナメクジのような舌が侵入し、口腔を蹂躙した。
「んちゅ……。それに君を呼んだのは私だ。邪悪なる魔王は勇者に敗北し、一切の痕跡を残さずに消え去った。これがついこの前のことだ」
何を言っているかは、もう分からない。ただフワフワとした気持ちよさだけが、ぐにゃぐにゃのスポンジになった脳に染み込んでくる。蠱惑的な声でいきり立つ下半身と、背筋が凍る程の恐怖がない交ぜになって、アドレナリンがエクスタシーを齎してくる。
プチプチと上半身が脱がされ、されるがままに舐られる。細長い指が蟻の途渡りを伝って、先端を優しく刺激する度に脳みそがスパークする。
「あれから何人も試したけど、どれも最後には帰りたいと言っていて困ってしまってね」
前世からの恋人、幼馴染、命の恩人、先生、師弟。と指折り数えては折り返す姿がピンク色のフィルター越しに流れていく。
ゲームの中みたいと言っていた恋人も何人かいたよ、と所長? が話す。その言葉の一言一言が、快楽を司る物質にズブズブに浸かった脳を掴んで揺らす。
「だからね。助手クン。キミは助手であり続けなければならなかった。そのロールプレイを外れた時点で
君はゲームの中の住民では居られなくなったのさ」
放ってしまえば、終わる。
終わってしまえば、キモチイイ。
トドメとばかりに、ぬらぬらとした光沢を纏った舌が侵入してくる。手の動きが天上へと導いていく。
抵抗の言葉すら、最後の意思すらも彼女の肉体が舐めとって消し去った。
「ゲームオーバーだよ」
目の前が真っ白になった。
◆◆◆◆◆◆◆◆
あぁ、それとそこのキミ。
そう私の言葉を聞いている『キミ』のことだ。
門は開いている。いつでもここに来れる。きっと楽しいはずだ。
今は探偵もののロールだったが、次はきっと『再び現れた勇者』をやってもらうかもしれない。
待っているよ。
私を外から覗いている『キミ』へ。
今夜、会いに行く。